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Introducing A.ランゲ&ゾーネ オデュッセウス・クロノグラフが登場

これぞランゲのスティール製自動巻きクロノグラフだ。

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 かつて、そして少し前まで、ハイエンドなクロノグラフムーブメントは、プレシャスメタル製のドレッシーなケースにアリゲーターストラップというスタイルに追いやられていた時代もあった。パテック フィリップやヴァシュロン・コンスタンタンの手巻き、そしてもちろんA.ランゲ&ゾーネの大物たちのことだ。その後、パテックのRef.5980(およびRef.5990)やRef.5968が登場し、スティール製スポーツウォッチがハイエンドなクロノグラフを搭載するようになった。APは長いあいだF.ピゲ製ムーブメントをロイヤル オークに採用していたが、最終的に自社製の自動巻きをCODE 11:59ラインに最初に導入したのち、ロイヤル オークに搭載した。これらは素晴らしいハイエンドの自動巻きクロノグラフムーブメントではあるが、手巻きムーブメントに見られるような機械的な華やかさやトップクラスの仕上げがあるわけではない。実際、スティール製のスポーツウォッチ(40歳以下の人が関心を持つ唯一のスタイル)を作っているブランドで、超ハイエンドのクロノグラフを搭載しているモデルを思い出すのは容易ではない。

読み続ければ、すぐに解決することを誓おう。その価値は十分にある。

 待てよ、実は昨年、クロノグラフのカテゴリーで実に印象的な意欲作を何本か目撃したことを思い出した。チャペック(Czapek)の挑戦は素敵だが、ベースムーブにクロノグラフモジュールを追加したため、私は超ハイエンドの領域とは認めない。パルミジャーニ トンダPF  GMTラトラパンテも、可愛らしく美しい仕上がりだが、実際にはラトラパンテではない。MB&F LMシーケンシャルEvoや昨年のグローネフェルドのグローノグラーフ(GRÖNOGRAAF)などは、実に特別な時計だ。しかし、これらは厳密にはスティールブレスレットの時計ではない(それでも、どちらも壮観なので、時間をかけて調べる価値がある)。最後に、過去18カ月で最も興味深いクロノグラフの2本、パテックのRef.5470Pオメガのクロノチャイムが発表された。どちらも誰もやったことのないことを効果的にやってのけたが、パテックはドレッシーなPtケースにストラップ(確かにクールで“冷たい”ストラップだが)、クロノチャイムはゴールドで、どちらもスイス製超高級時計の基準から見ても、生産数が驚くほど限られているのが特徴である。ところで、数日前に発売されたペテルマン・ベダ(Peterman Bedat) Ref. 2941のスプリットセコンドをご覧になっただろうか? これは狂気の沙汰だ。とにかくスゴイ。

 このすべては、そこに偉大なクロノグラフの先達(ロレックス デイトナ、オメガ スピードマスター、ゼニス エル・プリメロ、タグ・ホイヤー カレラなど)があり、さらに偉大なハイエンドクロノグラフの多く(PP、AP、VC)が控えているわけだが、ブレスレット付きのスティール製スポーツウォッチの超ハイエンドクロノグラフの枠は存在しない。前述のように、ほかの形式で存在するが、直球のモデルは存在しないのである。

 確かに、私が単にハイエンドなクロノグラフと超ハイエンドなクロノグラフのあいだには歴然とした違いがあると主張するのは、つまらないこだわりだとわかっている。でも、私が言わなくて誰が言うのだ?

 今日、Watches and Wonders 2023の初日に、A.ランゲ&ゾーネがそのすべてを変えた。そして、それは素晴らしいものだった。

スティール製のオデュッセウス・クロノグラフだって? そう、これでOKだ。しかし、カウンターはどこにあるのだろう?

 ご覧いただいているのは、A.ランゲ&ゾーネ オデュッセウス・クロノグラフだ。シンプルだろう? オデュッセウスといえば、2019年から現行のカタログに掲載されているが(2019年にスティール、2020年にWG、そして2022年にチタン)、今日まで、偉大なCal.L155.1ダトマティックが動作する姿はまだ見たことがない。そして率直に言って、最も退屈な時計マニアでさえも興奮するものがあるとすれば、それはランゲの新しいムーブメントであり、特にランゲの新型クロノグラフムーブメントである。それを搭載するのが、まさにこのモデルなのである。

 しかし、そこはA.ランゲ&ゾーネのこと、私のかつての仲間たちがよく言っていたように、ドレスデンの友人たち以外で、この分野の真の時計愛好家が毎年興奮し続けることができるタイプの時計製造を継続的に行っている時計メーカーはひとつもない。そして、オデュッセウス・クロノグラフはそれを証明している。さて、長々と書き連ねておいてなんだが、クライマーよ、それは一体何なんだ?

 これは型どおりのクロノグラフではない。実は、時計の世界には、新しいロレックスやオメガがどうなるかだけでなく、新しいランゲがどうなるかも予測する人々がいる小さなコミュニティが存在する。実際、オデュッセウスファミリーにクロノグラフが登場するかもしれないという話が持ち上がったことがある。しかし、1815 クロノグラフのキャリバーとして知られるL951.5を、オデュッセウスのスティール製ケースに収めたものが登場するのではないかというのが、その前提にあった。なぜなら、そうならない理由がなかったからだ。このキャリバーは、間違いなく市場で最も魅力的な手巻きクロノグラフであり、その先祖であるダトグラフは、上記のようなストラップ付きのハイエンドクロノグラフの市場を作り出した張本人だからである。しかし、ランゲの名を冠する以上、彼らは安易な道を選ぶことはない。オデュッセウス・クロノグラフの中身は、L951キャリバーとはほとんど関係なく、初代オデュッセウスに搭載されていたL155.1に、かなり巧妙なトリックが仕掛けられていたのである。

オデュッセウス・クロノグラフに搭載されたL156.1は、自動巻きクロノグラフの新しい基準を打ち立てる可能性を秘めている。

 キャリバーL156.1について最初に気づくのは、ローターの存在だ。つまり、ランゲが製造した他の12種類のクロノグラフムーブメントとは完全に異なるということだ。そして、ダイヤル側を見てみると、クロノグラフに必ずあるはずのふたつのインダイヤルがそもそも存在しない。その代わりに、ランゲのDNAともいうべき大型の曜日・日付窓と、6時位置のスモールセコンドが見えるだけだ。では、どのようにして経過時間を把握するのだろうか。

赤い針はクロノグラフ秒針で、菱形の針はミニッツカウンター針だ。しかし、それだけではない。

 確かに、6時位置のインダイヤルはスモールセコンドを表示している。赤い秒針はクロノグラフ秒針だが、他のすべてのクロノグラフにあるような分積算計はなく、中央の菱形の針で分数を数えるのだ。センターミニッツカウンターは新しい概念ではないが、一般的ではない。その典型は、Cal.13ZNを採用したロンジンのRef.5699であり、戦前のクロノグラフのなかで最も崇められる時計のひとつだ。しかし、この類のクロノグラフはほかにもあり、私たちは10年ほど前にジェイソン・ヒートンがセンターミニッツカウンターへの素晴らしいラブレターを公開している。明確にしておきたいのは、ジェイソン・ヒートンが取り上げた13ZNもレマニア5100も、ここで紹介するような複雑な機構ではないが、そのルーツを思い出すことはいつだっていいことなのだ!

 センターミニッツカウンターは、このクロノグラフがオデュッセウスの中心的なデザイン哲学を維持することを可能にする、興味深くも歓迎すべきコンセプトであり、ランゲが彼らの時計に注ぐ思考のレベルの高さを示している。ほかのブランドであれば、単にダイヤルにいくつかのインダイヤルを追加して切り上げるだろう。ランゲのほかのクロノグラフの多くが、積算計の上限が30分となるのに対し、この時計の計測範囲は60分であることは重要なポイントだ。この計測範囲の拡大により、ランゲのムーブメント開発者は重大なトリックを追加した。4時位置のプッシャーを押してリセットすると、ミニッツカウンター針はすぐに帰零するが、秒針は「1分間に1回転し、ほんのわずかな時間で移動した距離をすべてカバーします。ミニッツカウンターがまだ30分に達していない場合、2本の針は反時計回りに帰零します。ミニッツカウンターが30分を経過していると、両方の針が時計回りに帰零します。まるで電光石火の如く、クロノグラフ秒針は分数の数だけぐるぐると回転します」とある。

 率直に言って、このことは理解しているつもりだが、自分の頭でイメージしたり、“なぜ”そうなるのかを理解したりすることは、まったくできていない。また、高速回転とはどういうことか、例えば31分経過した場合、秒針がゼロになるまでにどれくらいの時間がかかるのか、もっと理解したい。というのも、私たちはこれからこの時計を見る予定だからだ。

オデュッセウス・クロノグラフは、リセットされるたびにショーを繰り広げるようだが、その様子や詳細については、この後すぐご紹介したい。

 しかし、これで終わるわけではない! オデュッセウスのケースには、2時と4時の位置にプッシャーを配置するよう設計されている。これは、大型の曜日とデイト表示を設定するために使用される。しかしこのモデルはクロノグラフであり、これらのボタンが必要なのだ! そこでランゲは、ダイナミックボタンという二重の目的を持つボタンを採用した。リューズのねじ込みを解除して引き出すと、ボタンが曜日と日付を調整する役割を担う。逆にリューズをねじ込むと、クロノグラフのスタート/ストップとリセットボタンに切り替わるのだ。ダイナミックプッシャーの概念自体は必ずしも新しいものではないが、リシャール・ミルやときにはAP社以外ではあまり見かけない機構でもある。

オデュッセウスのケースに生まれたときから備わっているそれらの一体型プッシャーは、今やふたつの役割を担っている。実にクレバーではないか。

 ケースは3ピース構造で、直径42.5mm(非クロノは40.5mm)、ステンレススティール製である。表面はサテン仕上げで、エッジは面取りでアクセントをつけている。この時計は12気圧(または120m!)の防水性能を備えており、ランゲはもちろん、どんなハイエンドなクロノグラフでも間違いなくお飾りではない水準だ。ダイヤルはブラックで繊細な表記、ボタン装飾はWG製、分数表示はミニッツカウンターのすぐ外側にあるフランジリングに配置されている。ケースの厚さは従来の11.1mmから14.2mmに増加した。秒針、60分積算計、オデュッセウス・クロノグラフの文字はすべて赤で表記される。このシリーズの全モデルに採用されている、調整可能で非常に精巧に仕上げられたブレスレットは、実物とこのようなプレス向けの画像とでは、どれほどインパクトが違うか、強調してもしきれないほどだ。実際、時計コレクターのあいだでは、過去10年間に発売された時計のなかで、プレス資料よりも実際のほうがこれほどよく見えるものはない、というのが一致した意見だ。

期待に応えてくれる、プラスアルファの存在。

 さて、まったく新しいキャリバーL156.1ダトマティック・ムーブメントについてである。ブリッジとプレートは無処理のジャーマンシルバー製だ。テンプ受けには手作業でエングレービングが施され、ゴールドシャトンは深い青焼きネジで固定されている。目に見えないレベルの仕上げも、すべて手作業で精巧に仕上げられている。2万8800振動/時で動き、自社製ヒゲゼンマイ、4本の偏心のスクリューを備えた耐衝撃性テンプ、50時間のパワーリザーブ(それがもはや重要かどうかは別として)がこの時計の心臓部である。このムーブメントには、516個の部品が使われている。これは必ずしも品質のバロメーターではないものの、比較すると、パテックの自動巻きムーブメント、CH 28-520Cは308個だ。APのCal.4401は381個、VCのCal.5200は263個である。裏を返せば、ここで挙げた3つはいずれもランゲの新型キャリバーよりずっと薄いということである。

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 とはいえ、このランゲのキャリバーは、クロノグラフであろうとなかろうと、世界で最もカッコいい自動巻きムーブメントのひとつであることは間違いない。そして、それはランゲである以上、そうあるべきなのだ。しかし、どんな種類の自動巻きムーブメントであっても、美的感覚に優れたものにするのはとても難しい(だからこそ、ローラン・フェリエがマイクロローターを搭載したムーブメントが、当初から絶大な魅力を放っていた)のだが、ランゲはクロノグラフでこれを達成したのである。この仕上げを見たあとに、上記の自動巻きムーブメントの仕上げを見比べてほしい。正直なところ、「違うにもほどがある」としか言いようがない。

これ以上見栄えの優れた自動巻きクロノグラフムーブメントがあるのだろうか。しかし、残念なことに、人生に完璧なものなどないのだ。

 しかし、このオデュッセウス・クロノグラフが完璧だと思うかというと、そうではない。人生において、完璧なものなどほとんどないのだ(もちろん、妻を除いて)。この時計は、幅が42.5mと大きめ(しかし、恐ろしく大きいわけではない)で、厚さは14.2mmとかなり厚めだ。これはランゲが5年前、10年前、15年前に発表したどんな素晴らしい時計についても書くことができた(そしておそらく書いた)一文だ。ランゲは、実際に機能し、一緒に暮らすことができるハイエンドな複雑時計を作るという考えのもと、臆することなく、このような時計の開発に取り組んでいる。このモデルは516個の部品から成る自動巻きクロノグラフで、120m以上の防水性能を持ち、中央にミニッツカウンター、ダイナミックなプッシャー、そしてワイルドなダイヤルの演出を備えている。薄くなるわけがない。その薄さが十分かどうかという疑問には、まだ答えられない。それは、今日この後、私が試着してからのお楽しみだ。そういえば、この時計は100本しか作られないんだっただろうか? これは決して多いとは言えないし、EDC(毎日持ち歩くモノ)の一部としてスティール製のスポーツウォッチを使うという発想には少し反すると思う。このキャリバーがいかに特別なものであるかは理解しているし、12カ月前に発表された250本のチタン製オデュッセウスをランゲがまだ納品していないことも理解しているが、それでもこの数は非常に少なく感じられる。

 もうひとつ、これは純粋に個人的な意見だが、クロノグラフの黒/赤の組み合わせは新しいものではないし、私の好みにも合わない。Ref.6263のデイトナ ビッグレッドがすべてだと思っている人たちが思いついたのだろうか? 120万ドルで買って、85万ドルで売った人のことだ。でも、それは私だけだ。そして、最後に考えるべきことは、この時計とパテック、AP、VCの同種の時計との比較について述べたことと非常に関連性が高いのだが、この時計は本当に高価でなければならない、ということだ。まだ価格は決まっていないので、後ほどお知らせするとして、私見では、この時計が6桁(1300万円)以下の価格で販売される可能性はまずない。

 上記の時計、特に30万ドル台前半で販売されているVCと比較した場合、時計製造のなかで何に最も価値を見出すかを判断する必要がある。私が大切にしているのは、新しいことに積極的に挑戦する時計メーカーだ。伝統的な時計製造の限界に挑戦し、可能な限り美しく仕上げられたキャリバーを実現し、同時に非常に使いやすい時計を作る。その点で、オデュッセウス・クロノグラフは、ランゲが(ほぼ)いつもと変わらず、またもや過剰なまでの期待を持たせてくれたのである。


基本情報

ブランド:A.ランゲ&ゾーネ
モデル:オデュッセウス・クロノグラフ
型番:463.178
 
直径:42.5mm
厚み:14.2mm
ケース素材:スティール
ダイヤルカラー:ブラック
インデックス:アプライド
夜光:あり(針、マーカー)
防水性能:120m
ストラップ/ブレスレット:一体型スティール製ブレスレット、マイクロアジャスト機能付きセーフティ・デプロワイアントバックル 


ムーブメント情報

キャリバー:ランゲL156.1 ダトマティック
機能:時・分表示、スモールセコンド、日付、曜日、60分クロノグラフ(センターに分・秒表示)
直径:34.9mm
厚み:8.4mm
パワーリザーブ:50時間
巻き上げ方式:自動巻き
振動数:2万8800振動/時
石数:52
その他の仕様詳細:手作業による装飾と組み立て、片方向巻きのPt950製ローター、手作業によるエングレービングが施されたテンプ受け


価格&発売時期

価格:要問い合わせ
限定モデル:100本

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A.ランゲ&ゾーネの時計については、同社のウェブサイトをご覧ください。