結論から言おう。ヴァシュロン・コンスタンタンは、ヒストリーク 222のステンレススティール(SS)モデルを発表した。この新モデルはオリジナルと同じ絶妙なサイズ感(37mm径、厚さ7.95mm)、同じムーブメント、そしてヴィンテージな意匠をそのままに、よりカジュアルで手ごろな価格のSS仕様となっている。価格は475万2000円(税込)で、文句のつけようがなく素晴らしい。
今年は時計業界において記念すべきアニバーサリーイヤーとなっている。ブランド創立記念から象徴的なモデルの周年まで、さまざまな祝賀行事が連なるであろうことがすでに約束されているのだ。しかしそのなかでもヴァシュロン・コンスタンタンの270周年という歴史的節目は群を抜いている。もちろん今後には華やかなパーティや盛大なイベントが控えているのだろうが、ヴァシュロンはすべてを後回しにし、時計マニアたちが熱望していた注目の新作をなんとプレスリリースひとつで発表するという大胆な手法を選んだのだ。それが、オーヴァーシーズの前身モデルである「ジャンボ」222のSSバージョンである。
2024年の末、幸運にもヴァシュロン・コンスタンタンからこの時計を1日以上にわたって試着する機会をもらった。そのため多数の写真とともに、この時計についての考察をここに記すことができる。ヴァシュロンファンが長年求めていた要素はいくつかあり(たとえば、マット仕上げの文字盤やデュアルタイム機能付きのオーヴァーシーズなどが個人的には強く望むところだ)、そのなかでもSS仕様の222は特に待望されていたモデルだ。そして今回、その期待に見事に応える一品が誕生したと言えるだろう。
ヴァシュロン・コンスタンタンが1977年に発表したオリジナルの222は、同ブランドの222周年を記念して登場した。ヨルグ・イゼック(Jorg Hysek)氏がデザインしたこのモデルは、それまでのヴァシュロンのデザイン言語から大きく逸脱したものであり、いわゆる“ホーリートリニティ”の一角を成すケース一体型モデルとしては最後に発表された。しかしほかのモデルと異なり、222はブランドのカタログに継続して掲載されることはなかった。そのため、2022年にヴァシュロンがヒストリーク 222のイエローゴールド(YG)版を発表した際にも、業界内では特に驚きはなく迎えられた。これは同モデルの45周年を記念したリリースであり、やや中途半端な周年ではあるが、十分に節目として認識される年数だ。ヴィンテージにインスパイアされた復刻版が登場するには適したタイミングだった。しかし時計愛好家たちはこのリリースに興奮しつつも、すぐにSS製のバージョンを求める声を上げた。
1年後、私はヴァシュロンの関係者にSS版のリリースについて尋ねたが、「製品開発は7年周期で行う」という説明を受けた。また、ブランドとしても222の需要がこれほど高いとは予想していなかったため、その時点でSS版の開発計画はまだなかったとのことだった。ただし、そのうち登場するだろうというニュアンスは感じ取れたものの、すぐには期待できないという印象だった。だが実際には、それほど長く待たされることはなかった。
「ジャンボ」222を際立たせている重要な要素のひとつに、極薄のムーブメントにより時計全体が薄型となっている点が挙げられる。37mm径、厚さ7.95mmというサイズ(1977年のオリジナルの7.2mmより、少し厚い)はロイヤル オーク “ジャンボ”(39mm径、厚さ8.1mm)やノーチラス Ref.5711(40mm径、厚さ8.6mm)とは異なるバランスを持つ。そしてこれら3種の現行モデルはいずれもヴィンテージのサイズ感をほぼ忠実に再現しているが、ヒストリーク 222の直径はほかのモデルよりも一層ヴィンテージらしさを感じさせる。
現代において、36mm径や37mm径のケースをフラッグシップモデルに据えるブランドは少ないが、そうした選択が222をより魅力的にする要因となっている。オリジナルモデルからの変更点もいくつかあり(YGのヒストリーク 222でも確認されたように)、ケース一体型ブレスレットのバタフライ式デプロワイヤントクラスプや、シースルーのケースバックがその例である。
この極薄のサイズ感は、装着時の快適さにも寄与している。もちろんYG版の222よりも軽量であり、特にホワイトメタル、具体的にはSS製の時計を好む人(私もそのひとりだ)にとっては、物理的にも心情的にもこちらのほうがしっくりくるだろう。ケースの防水性能は50mであり、より本格的なスポーツウォッチを求めるのであれば、引き続きオーヴァーシーズを選ぶのが賢明だろう。しかしこの時計の魅力は機能性よりも、その雰囲気や身につける楽しさにあると言える。
その他のディテールにおいても、この時計はヴィンテージモデルと見分けがつかないほどの仕上がりとなっている。新品のマットブルーのダイヤルにより少しパンチが効いた印象を受け、傷や磨き痕がないことでシャープな印象を与える。また、フルーテッドベゼルは他ブランドの“ジャンボ”モデルとは一線を画す特徴だ。なお日付窓は、文字盤と色が一致していない(これについては別の記事で詳述する予定だ)。加えて、右下のラグにはヴァシュロン・コンスタンタンのシンボルである金色のマルタ十字が施されている。
ムーブメントはシースルーバックから鑑賞でき、これはYGのモデルと同様だ。ムーブメントには2022年から搭載されているものと同じ、ジュネーブシール認定のヴァシュロン製Cal.2455/2が使われている。このムーブメントは2007年に発表されたCal.2455の進化版だが、正直に言うとやや古さを感じるスペックだ。振動数は2万8800振動/時で、オリジナルモデルの1万9800 振動/時に比べて向上している。パワーリザーブは40時間だが、この点は突出したスペックではない。しかし直径26.2mm×厚さ3.6mmという薄型設計の自動巻きムーブメントは、ヴァシュロンが薄型時計を作るうえで最適な選択であることは間違いないだろう。
数日中にはヴァシュロン・コンスタンタンの新作、ヒストリーク 222のHands-Onレビューでさらに詳しくお届けし、YG製の復刻モデルとの比較も行う予定だ。それまでのあいだ、詳細はヴァシュロン・コンスタンタンの公式ウェブサイトをご覧いただきたい。
基本情報
ブランド: ヴァシュロン・コンスタンタン(Vacheron Constantin)
モデル名: ヒストリーク 222
型番: 4200H/222A-B934
直径: 37mm
厚さ: 7.95mm
ケース素材: SS
文字盤色: ブルー
インデックス: ホワイトゴールド製のインデックスと針
夜光: スーパールミノバ
防水性能: 50m
ストラップ/ブレスレット: ケース一体型のSS製
ムーブメント情報
キャリバー: 2455/2
機能: 時・分表示、日付表示
直径: 26.2mm
厚さ: 3.6mm
パワーリザーブ: 40時間
巻き上げ方式: 自動巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 27
クロノメーター認定: なし
追加情報: ジュネーブ・シール認定
価格 & 発売時期
価格: 475万2000円(税込)
発売時期: 発売中
限定: 通常モデル、ただしヴァシュロン・コンスタンタンのブティック限定
詳しくはこちらをクリック。
話題の記事
Hands-On ニバダ グレンヒェン アンタークティック ダイバーにグリーンダイヤルが登場
Happenings HODINKEE.jp × PROSPEX Special Talk in Osaka
Introducing グランドセイコー SBGH368で桜が帰ってきた