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Neighborhood Watch 時計愛好家のためのサンフランシスコ・ベイエリアガイド

ベイエリアはApple Watchの聖地。しかし、意外にもIT技術者たちは自動巻きも愛用しているようだ。

HODINKEEのライターたちは常に移動しています。この新連載では、私たちの目を通して世界をご紹介。私たち(そして時計を愛する地元の人々)が、世界中のお気に入りの都市をどのように体験しているのか。GMTベゼルをセットして、私たちの旅にお付き合いください。

サンフランシスコ・ベイエリアは、面積が約1万8000㎡と広大で、人口は約780万人だ(ゴールデンゲートパークにはバイソンの群れが生息している)。この地域には、サンフランシスコのほか、北にマリン郡、東にバークレー、オークランド、エメリービル、南にサンノゼ、パロ・アルトがある。西側は太平洋である。

 ゴールデンゲートブリッジを越えたマリンに住む時計業界のベテラン、ザック・ピニャ(Zach Piña)氏に、彼にとって最もベイエリアを象徴する時計は何かと尋ねたとき、私はおそらく正解のない質問をしていることに気がついた。そして、“Apple Watch”以外でとはっきり言おうかと思ったが、いや、彼に好きなように言わせればいいと思い直した。

 しかし、彼が実際に意味のある、そして、客観的な真実がないなかで、可能な限りそれに近いホンモノの答えを持ち帰ったとき、私は驚き、感動した。最もベイエリアらしい時計は、何とモーザーのスイス アルプウォッチだというのだ。

moser swiss alp watch

H.モーザー スイス アルプウォッチ

 ご存じない方に説明すると、スイス アルプウォッチはApple Watchに似ていて、6時位置のスモールセコンドは、システムアップデートっぽいが、模倣というよりは皮肉的表現である。「スイスアルプスの時計は、破壊を目的とした破壊を体現しています」と、ピニャ氏は私に言った。「ベイエリアのテック系の人々が超希少で、もしめちゃくちゃ高価なApple Watchが、クレイジーな高級素材から作られていたらどんなものだろう? という疑問を誰も思いつかないような方法で解決したクールな時計を身につけることで、ある種の諧謔の精神を表しているのです」

 確かに、これほどベイエリアらしい時計はない。

 オークションサイトLoupe Thisの共同設立者で大物コレクターのエリック・クー(Eric Ku)氏はバークレー在住だが、彼はベイエリアが時計に関しては少し“鈍い”と感じているようだ。「もしかしたら、私が招待されていないだけで、ここで時計のミートアップが何百万と開催されているのかもしれませんが、心からそうとは思えません」と彼は言った。確かにサンフランシスコは、ニューヨークやマイアミとはいろいろな意味で異質だ。しかし、だからといって独自性がないわけではない。

 この地域でもモーザー(と、それを揶揄する時計)以外の時計も数多く手に入り、見ることができる。そして、この街の伝説的な渋滞(伝説的な景色と、もしかしたら途中の橋の通行料の1ヵ所や2ヵ所)を我慢すれば、モダンウォッチ、中古、ヴィンテージ、あるいはそのすべてが好きであろうと、時計好きにとってここには十分すぎるほどのものがあるのだ。また、買い物よりも眺めるのが好きな方には、ほかの時計愛好家が自分の宝物を見せびらかしているスポットや、時計の修理や点検を受けるための情報、道中のグルメ情報も紹介する。

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1906年のサンフランシスコ大地震後のシュリーブ&カンパニーの建物。Image: Courtesy of Shreve & Co.


どこで買い物をするべきか

 ギアリー大通り、パウエル通り、ポスト通り、ストックトン通りに囲まれたユニオンスクエア周辺は、観光客で賑わう場所だ。確かにサンフランシスコの小売店はパンデミックの影響を大きく受けたが、カルティエ、ウブロ、IWCといった高級時計ブランドのショッピングバッグを手に歩く買い物客を見れば、信じがたいだろう。

 オメガの新ブティックやスウォッチの店舗では、ムーンスウォッチがあるかどうかを確認するために人々が次々と訪れ、この地域に必要な小売業の息吹を吹き込んでいる。ピニャ氏は、「私はまだムーンスウォッチの入手が叶いませんが、友人の何人かは、タイミングよく在庫のある店舗に訪れて幸運を手に入れたと聞いています」と語った。

 これらのビッグブランドのすぐ近くに、サンフランシスコを代表する時計店があり、また州内で最も古い小売業者であるシュリーブ&カンパニーは、1852年から現在の姿をとどめている。「シュリーブ&カンパニーは、サンフランシスコのおしゃれな人たちが時計を買いに行く場所です」と語るのは、ミッション地区のヴィンテージウォッチショップHQ ミルトンのオーナー、スコット・カプラン(Scott Kaplan)氏。ミッション地区は時計以外では、歓楽街、週末のローライダーのパレードで賑わう地区だ。彼は、サンフランシスコの時計に関する伝説をいくつか教えてくれた。シュリーブ社は、アメリカ合衆国で2番目にパテック フィリップを扱った小売店だそうだ(1番目はティファニー)。

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パロ・アルトの現在のシュリーブ&カンパニー店舗。Image: Courtesy of Shreve & Co.

 この老舗宝石時計店と老舗時計メーカーの提携は過去のものだが、シュリーブはほかにも提携を継続しており、ロレックス、チューダー、ジャガー・ルクルト、パネライ、A.ランゲ&ゾーネ、IWC、ヴァシュロン・コンスタンタンなどの新品を探しているのなら堅い販売店だ。実際に購入できるかどうかは、当然HODINKEEがお約束できることではないが、探求を始めるには頼もしい店舗と言えるだろう。

 ユニオンスクエア周辺には、駐車場がないのでBART(地下鉄)のパウエルストリート駅からアクセスできるので、こちらを利用するのがおすすめだ。また、訪問し、楽しみながらも、手周り品には注意を怠らないこと。時計とレストランを紹介するGastrohorologyの共同設立者であるボー・メン(Bo Meng)氏は、昨年ルイ・ヴィトンの店舗が強盗に襲われたこの地区での時計の取り扱いについて、慎重を期すようアドバイスしている。「サンフランシスコが犯罪の巣窟であるかのように喧伝することはあまり信用していませんが、それでも大都市である以上、特に人通りの多いところでは何かと物騒なことが起こります。常識の範囲内で行動してくださいね」と彼は注意喚起している。

 ベイエリア中の時計マニアは、サンフランシスコ空港近くの101号線沿いのバーリンゲーム(Burlingame)にあるTopper Fine Jewelersがお気に入りだそうだ。グランドセイコー、オメガ、モーザー、グラスヒュッテ・オリジナル、ブランパン、ゼニス、ノモス、ロンジン、ゾディアック、オリスなどの正規代理店である。この店舗で扱えない中古時計はないといってもいい。ただし、ブルーダイヤルのミンは放っておいてほしい、私が目をつけているのだから。「ここはベイエリアの時計コレクターの中心地であり、時計コミュニティの精神的な中心地なのです」とピニャ氏は教えてくれた。1940年に創業したTopperは、最近、約140㎡の小さなスペースから、通りの向かいにある約650㎡のスペースに移転した。ボーナス情報:新店舗にはバーがあるそうだ。

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Image: Courtesy of Topper Fine Jewelers

 南に少し車を走らせると、Google、Facebook、Appleが本社を構える典型的なシリコンバレーに到着する。時計にまつわる矛盾がなければ、アメリカのハイテク産業の中心地と言い切れる場所だ。交通渋滞に巻き込まれながら、ワインセラーの温度調節をするために、デジタル空間で汗を流している人たちは、長い1日の終わりに何を欲しているのだろう。その答えは時計が持つ無邪気で素直なアナログ感覚なのだ! メンロパークの有名なサンドヒル・ロードにあるスティーブン・シルバー・ファイン・ジュエリー(Stephen Silver Fine Jewelryは、そんな人たちに人気がある。同社のCEOジャレド・シルバー(Jared Silver)氏は、「私が思うに、独立系の時計メーカーは、今日、最も興味深く、創造的な時計を製造しています。これらの作品は非常に少数しか作られていないため、我々の顧客に将来的なコレクター性を最も感じさせてくれるのです」。このように、落ち着いた雰囲気のなかで、エルメスやブルガリなどの有名ブランドから、ウルべルク、MB&F、スピーク・マリンなどの穴場的なブランドまで鑑賞することができるのだ。10月24日にはマックス・ブッサー本人が店舗にやってくるそうだ。1度インタビューしたことがあるが、直接会う価値があると断言する。彼のスニーカーはとてもきれいなので、極めて清らかなカーペットを汚すことはないだろう。

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Image: Courtesy of Stephen Silver

 シュリーブ&カンパニーは、ユニオンスクエア地区の旗艦店のほかに、Topperから南に約40分のパロ・アルトにも支店がある。ここでは、自称“時計マニア”で、レッセンス Type 3を愛用している店長ジェフ・サウダー(Geoff Souder)氏を尋ねてみてほしい。今日は何をつけているのですか?「ノモス チューリッヒ・ワールドタイムです!」

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ジェフ・サウダー(Geoff Souder)氏  Image: Courtesy of Shreve & Co.

 ヴィンテージウォッチや上質な中古品を探すなら、市内に戻って(ただしラッシュアワーは勘弁)HQミルトンに行くのがいちばん賢明だろう。2007年にオープンしたこの店は、賑やかなミッション地区の上に位置し、時計好きなら夢中になり、一緒にいる友人や配偶者、子供も退屈しない、優れたユニークなショッピング体験が叶う。店内には、竹やマドローネの木で作られた美しい机、キャビネット、ケース、ディスプレイがあり、息をのむほど美しい商品を陳列するのにふさわしいプラットフォームとなっている。

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 HQミルトンは、アイボリーローマダイヤルの1979年製ロレックス デイデイト Ref.18038や、2019年製 A.ランゲ&ゾーネ リヒャルト・ランゲをお探しなら、ぜひお立ち寄りいただきたい場所だ。「私たちの販売チャネルの多くはメールやWebサイト経由での注文ですが、ここ6、7年は店舗での対面販売が増えており、ヴィンテージウォッチを理解し、楽しみ、購入する人が増えてきました」と語るカプラン氏は、今のところティファニーサイン入りダイヤルの1977年製ロレックス サブマリーナー Ref.1680がお気に入りだそうだ。「現代の時計も素晴らしい。でも、私はパティナ(経年褪色)とストーリー性のある時計を持つのが好きなのです」。彼はまた、ほかの人々が完璧なヴィンテージウォッチを見つける手助けをすること、そしてそれがうまくいくかどうかを確認することも好きだということだ。だから街にお立ち寄りの際は、是非予約して彼らのサービスを楽しんで欲しい。

rolex watches

Image: Courtesy of HQ Milton LLC


オススメのウォッチスポット

 サンフランシスコを訪れるなら、フリースを必ず持参してほしい。なぜなら、この街ではフリースがファッションアイテムとして選ばれているだけでなく、ラークスパーと街を結ぶフェリーの中で最高のウォッチングができるからだ。ピニャ氏はこのフェリーによく乗っていたが、さわやかな風と白波だけでなく、ほかの乗客たちの腕時計を見るのも楽しみのひとつだったという。「パテック フィリップ ノーチラスやアクアノートなど入手困難になる前はしょっ中見かけたり、F.P.ジュルヌのクロノメーター・ブルーを見たこともありましたが、使い込まれたシーマスターから、サンフランシスコ湾で船員が身に着けていたミューレ グラスヒュッテ(Mühle Glashütte )のS.A.R.レスキュータイマーなどの変わり種まで、興味深い日常使いの時計をたくさん見ることができました」。

 このような集まりでは、この街で最高のウォッチスポッティング(時計観察)ができるので、クルマとコーヒーが好きな人はラッキーだ。毎月第一土曜日、バンド「グリーンデイ」のメンバーのひとりが経営する“キャント・フェイル・カフェ”でコーヒーを飲み、サンフランシスコからベイブリッジを渡ったエメリービルの旧EASYポルシェ サルベージヤードで行われる「ポルシェ・カーズ&コーヒー」のイベントが開催される。店舗は閉鎖されているが、伝統は生き続けている。タグ・ホイヤー、ロレックス、あらゆる種類の興味深いクロノグラフのセレクションに加え、クルマを見るなら9時前に到着することをおすすめする。


メンテナンスサービスを受けるには

 2020年製のオメガでも1931年製のレベルソでも、時計はいずれちょっとしたメンテナンスが必要になる。もしあなたが古い、あるいはそれほど古くないクールな時計を持っていて、それを修理する必要があるなら、ユニオンスクエア地区のポスト通りにあるインディペンデント・ウォッチ・サービスセンターに持ち込むとよい。ここは元ロレックスの公式サービスセンターだったので、サブの保証を受けるならここが間違いない。

 ピニャ氏曰く、「珍しいものや特別なものをお持ちなら、ブリアナ・ルーは絶対におすすめの時計修理屋さんです。ミニッツリピーターやアニュアルカレンダーをお持ちの方は、ぜひ彼女のところに持っていってください」。彼女の会社はTimeLêといい、Instagramの@TimeLe_BayAreaで見つけることができる。


グルメ情報

 もしあなたが本物の時計フリークなら、時計の買い物は単に時計をもっと買いたいという欲求を満たすだけだが、もっと具体的な栄養が必要なときもあるだろう。

 私はサンフランシスコによく行くのだが、ユニオンスクエアにはあまり行かないので、メン氏に尋ねてみた。「ユニオンスクエアにあるニーマン・マーカス・ロタンダ(Neiman Marcus Rotunda)は、有名な販売代理店やブティックの近くにあるため、食事をしながら素敵な空間で時計を眺めるには最高のスポットです。ただし、行列は覚悟してくださいね。

 また、サンズ&ドーターズ(Sons & Daughters)も彼のリストの上位に挙げられる。「ここのテイスティングメニューは死ぬほど美味しいんですよ」。もうひとつ。マエストロズ(Mastro's)は高級ステーキハウスチェーン店で、料理は常に定評がある。「食事も美味しく、人間観察も楽しめます。トイレの係員も含めて、SFはラスベガスに近いと思います」とメン氏は言う。

 HQ ミルトンで夢のリネンダイヤルのロレックスやYGのカルティエ タンクを選ぶためにミッション地区まで来た人は、その後ミッション通りを歩いて5分もかからないところにあるフォーリン・シネマ(Foreign Cinema)に向かうのも悪くないだろう。エレガントで高い壁のあいだにあるパティオでオイスターをご馳走になり、ソーヴィニヨン・ブランを飲み過ぎないように注意しよう。というのも、シルバーダイヤルのゼニス S58が欲しくなって、ミルトン本社に戻ってしまうかもしれないからだ。隣にはLaszloというバーがあり、オイスターは遠慮して軽食を楽しみたい方にはおすすめだ。

 さらに、ベイエリア南部のパロアルトまで足を伸ばせば、一石二鳥の“ノブ パロ アルト(Nobu Palo Alto)”があるとサウダー氏は言う。この店では誰もが腕時計をしていて、しかもそのほとんどが非常に気合が入ったものだそうだ。ここはディープなシリコンバレーなのだ。「ここでのロレックスは、ほかの地域のセイコーと同じようなものです」とサウダー氏は言う。黒タラの味噌漬けを注文して、次々と現れる高級時計のオンパレードを楽しんで欲しい。

rolex

Image: Courtesy of HQ Milton LLC


押さえておくべき時計たち
H.モーザー スイス アルプウォッチ
H. Moser & Cie. Swiss Alp Watch

 ネタにいいかも。

Apple Watch Ultra

Photo by Zach Piña

 名産品。

レッセンス Type 2
Ressence Type 2

 なぜなら、この街はデザインにこだわるを持つ人が多く、この時計もその点ではトップレベルだからだ。