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Introducing シチズンブランドの100周年を記念した、そのルーツを思わせる手巻き式懐中時計が登場

オリジナルの面影を残しながらもシチズンの“今”を反映した、次の100年を思わせる渾身の懐中時計が完成した。


クイック解説

1924年に尚工舎時計研究所より発表された、国産の懐中時計“16型”。

シチズン時計の前身となる尚工舎時計研究所が発足したのが、1918年のこと。当時の日本では、携帯用の時計と言えば海外から輸入されてきた舶来の懐中時計を指すものだった。そんななか、尚工舎時計研究所が目標として掲げていたのが時計の国産化だ。発足当初は国産の工作機械で部品を試作しつつ、欧米製の工作機械を輸入し、技術者育成のために時計学校も開設するなど着々と夢に向かって歩みを進めていった。そしてついに1924年、悲願となる国産懐中時計の製造を達成する。だがこのとき、記念すべき第一号となる製品には名前がなく、“16型”という品番で呼ばれていた。そこで同社は、当時の東京市長である後藤新平伯爵に命名を依頼、“永く広く市民に愛されるように”と、“CITIZEN”の文字が文字盤に刻まれることになった。これが今からちょうど100年前、シチズンというブランドが世に誕生した瞬間だった。この名前は1930年、尚工舎が新会社を設立するにあたり、社名として引き継がれていくことになる。

 まさにルーツとも言える存在の手巻き式懐中時計を、シチズンはブランド100周年を迎えた2024年の秋冬に100個限定でリリースすると発表した。

 サイズは径は43.5mmで厚さは13.4mm。ケース素材には、チタニウム合金を採用している。蓋がないオープンフェイスタイプで、塗膜研磨仕上げの電気鋳造文字盤のうえにはクラシカルな書体のアラビアインデックス、ブルーのブレゲ針、6時位置にスモールセコンドが配されている。オリジナルの資料画像を見る限り、書体の細部や針の形状に違いはあるものの、要素としてはオリジナルのものを参照しているように見える。一方、チェーンや紐をかけるために故障箇所となりやすいボウ(提げ環)は、よりしっかりとした肉厚なパーツが採用された。また、そこに結び付けられるのは古くから日本絵画や浮世絵にも使用されてきた藍墨色の正絹の組紐だ。ネイビーやブルーとは違う藍墨ならではの深い青みは、日本製にこだわった懐中時計にマッチしているように思う。

オリジナルモデルのムーブメント。表面にはコート・ド・ジュネーブが施され、ヒンジ近くには“CITIZEN SHOKOSHA”の文字が見える。

 また、この時計の見どころはシースルーバックから覗くムーブメントにもある。Cal.0270はフリースプラングテンプを採用し、平均日差−3〜+5秒の高精度と約55時間のパワーリザーブを有した新開発の手巻き式ムーブメントだ。曲線を強調し、丁寧な面取りを施したムーブメントの表面には美しいコート・ド・ジュネーブが施されている。また、1924年当時からの精度にこだわる思想を表現するべく、シチズンは今モデルにおいて完成状態から17日間にもおよぶ自社検査を行っている。6⽅向の姿勢、3段階の温度で設定したさまざまな条件下での検査に合格した証として、各製品には⾃社規格検定合格証が付属する。

 シチズンブランド時計 100周年記念 懐中時計ことRef.NC2990-94Aは、2024年の秋冬の発売を予定している。世界限定で100個のみ生産され、価格は110万円(税込)だ。特定店舗のみ(シチズン フラッグシップストア、シチズン プレミアムドアーズ、シチズン コンセプトショップ)での販売となるため、もし購入を検討しているならご注意を。


ファースト・インプレッション

1924年に誕生し、広く市民に愛されるようにと名付けられた16型こと“シチズン”懐中時計は、当時の価格で12円50銭(現在の価値で約5万円)で販売されていた。大正末期の初任給が50円〜60円ほどであったというから、決して手が届かない値段ではない。まさに市民に寄り添う国産時計であったわけだが、実はこの時計は当時昭和天皇も愛用されていたのだという。とある晩餐会の席で国産時計の精度の悪さについての話になった際、自身の懐中時計を取り出して「私の時計はとてもよく合う」と反論なされたという逸話も残っている。16型はシチズン初のオリジナルにして、時の要人も認める高い完成度を持つ時計だったのだ。その後100年にわたる、シチズンブランドの礎を築いた存在だと言える。

 しかし今回、シチズンは16型の完全復刻という形を取らなかった。オリジナルにオマージュを捧げながらも今ブランドが持てる技術を投入し、次の100年への第一歩を示す新作として100周年記念モデルを設計したという。

 いちから起こされたムーブメントに加え、それが現れているのがケース素材、そしてダイヤルの加工だ。シチズンは100周年記念モデルにおいて、1970年に世界初のチタニウムウォッチを発表して以降、研鑽を積んできたチタニウムをその素材に選んだ。今作の企画段階ではさまざまな素材が検討されたというが、最終的に美観と軽量性から現在のブランドを象徴する素材としてチタニウム合金が採用されたという。広報写真上では鏡面仕上げを施されたケースは美しい光沢を湛えており、ベゼルに設けられた段差上のあしらいがその輝きを強調しているように見える。また、まるで和紙のような温かみを感じさせる文字盤のテクスチャーは電気鋳造によって表現されたものであり、さらにそのうえから塗膜研磨仕上げを施すことでクリアな光沢を与えている。ともにシチズンブランドの最高峰に位置するザ・シチズンでも直近で採用されているテクノロジーで、特に電気鋳造は機械では実現できないナノメートルレベルの細かな表現を可能にする比較的新しい技術である。一見して、伝統に根差したクラシカルな懐中時計であるように見える100周年記念モデルだが、その細部にはシチズンが今なせる先端技術が詰まっている。

 懐中時計というただでさえ趣味性が高いアイテムをアニバーサリーモデルとして世に送り出すにあたり、軽さや精度など実用面にも配慮するところが実にシチズンらしいと思う(素材としてはWGやプラチナといった貴金属も選択肢としてあったはずだ)。しかしこの100周年記念モデルは、あらゆる面でシチズンブランドの現在と未来を象徴する時計として企画された。そう考えると、この設計も当然の帰結であるように見える。僕個人としては、手に持ったときのサイズ感とチタン合金の質感、実際のムーブメントの仕上げが非常に気になる。今回はオリジナルと比較して客観的な情報をもとにまとめたが、可能ならば企画担当者に100周年記念モデルが完成するまでのプロセスとそこに込めた精神性を、実機を前にしながら聞いてみたいところだ。


基本情報

ブランド: シチズン (CITIZEN)
モデル名: 「CITIZEN」ブランド時計 100周年記念 懐中時計
型番: NC2990-94A

直径: 43.5mm
厚さ: 13.4mm
ケース素材: チタニウム合金
文字盤色: 白
夜光: なし
防水性能: 日常生活用防水
ストラップ/ブレスレット: 藍墨色の正絹の組紐


ムーブメント情報

キャリバー: 0270
機能: 時・分表示、スモールセコンド
パワーリザーブ: 約55時間
巻き上げ方式: 手巻き
振動数: 2万8800振動/時
石数: 18
追加情報: 秒針停止機能付き、17日間に及ぶ自社規格検定合格証付属


価格 & 発売時期

価格: 110万円(税込)
発売時期: 2024年秋冬予定
限定: 世界限定100個

詳しくは、シチズンの公式サイトをご覧ください。