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Retailer Spotlight 安心堂 110年もの歴史と伝統を持つ静岡随一の老舗

1912年の創業時から常に挑戦を続けてきた安心堂は、自社で時計修理工房を持ち、1970年には海外出店を果たすなど、全国でも異彩を放つ東海地区最大規模の正規時計宝飾専門店だ。静岡に根ざし、地元の信頼を得た110年の輝かしいその歴史と伝統に迫る。

静岡駅前のメインストリート、呉服町通りに位置する安心堂 静岡本店やANSHINDO ウォッチギャラリー静岡をはじめ、ロレックス ブティックを含めて静岡県内に7店舗を展開する安心堂は、専門店として日本で唯一海外(フランス・パリ)に支店を構える時計・宝飾・アイウエアの老舗である。時計修理を原点として110年の歴史を歩んできただけに、日本初のロレックス公認技術者認定(1970年当時。※現在、この認定制度は存在しない)、国内専門店唯一のブライトリング公認技術者認定(2009年)を受けた自社時計修理工房を持つなど、他店にはない独自の店づくりは全国でも際立っている。

 「安心堂にとっていちばんの財産は、代々にわたって築きあげてきたお客様の信頼です。創業者の信念であるアフターサービスを基本に、“人にして欲しいと思うことをしなさい”という行動指針を社員にも徹底しています」と、創業者の孫にして2代目社長、そして現・代表取締役会長の永田正明氏は語る。

1947(昭和22)年。開店当時の安心堂時計店。とんがり帽子が特徴的。

赤ちゃんを抱く創業者、永田龍之介氏。

現会長(2代目社長)、永田正明氏。

 創業者の永田龍之助氏が、東京・神田で小間物商を兼ねた時計修理の商いを始めたのは1912年。天下泰平の世を築いた徳川家康公にならって静岡に移り住み、1930年代後半に静岡市で、時計修理を基盤にした安心堂時計店の看板を掲げた。だが当初は、時計修理の注文を受けるために民家を一軒一軒訪ね歩く日々。「お代金は1週間後にちゃんと動いていたらいただきます」。そう言って信頼と評判を築いた。戦時中には預かった時計を真っ先に防空壕に運び入れ、空襲から守った。人の役に立つことを信条にした誠実な商いは、今日に至る安心堂の原点となっている。

1958(昭和33)年11月1日、“ひかりの店”をコンセプトに作られた安心堂の新築店舗の記念写真。

 1947年、龍之助氏の跡を継いだ長男の永田正雄氏は静岡市でいちばんの繁華街である呉服町(現在の静岡本店の場所)に安心堂時計店をオープンさせ、1950年代には法人化。初代社長に就任した。店舗に設置されたとんがり帽子の時計台から1日3回、朝・昼・夕に流れるウエストミンスターのメロディは、街に時を知らせ、人々の心に響きわたった。と同時に、安心堂の名前も少しずつ広まっていったのである。

 順調に発展していた安心堂だが、1960年に過去最大のピンチに襲われる。まず1月に店舗が火災の被害を受け、ほとんどの商品が水浸しになってしまったのだ。その3ヵ月後には盗難にあって大損害を被った。だが、取引先の応援によって商品の即日補充ができ、お店を再開することができた。しかも地元の人々の支援もあって、その年は黒字決算で終えることができたという。当時のことは、のちの正雄氏の手記にこう記されている。「社員の潜在能力の発揮、挑戦意欲・愛社精神・団結力の発揮と、安心堂を支えてくれたお客様と取引先への感謝を一生忘れられない」と。

1965(昭和40)年代の安心堂 静岡本店、店舗正面。

 1970年、オメガ スピードマスターのアポロ11号月面着陸同行を記念した750本限定モデルを安心堂 静岡本店は世界で最も多く販売した。人類初の偉業というニュース性の高さもあって、安心堂の名は時計の世界に知れわたり、パテック フィリップ、ロレックスという超一流ブランドからオファーを受けて取り扱いを開始。時計専門店としての格も大きく上がる結果となった。

1970(昭和45)年に静岡新聞に掲載された、アポロ11号月面着陸記念限定モデルとして製作されたオメガ スピードマスター プロフェッショナルの発売を伝える安心堂の新聞広告。

1973(昭和48)年11月19日。静岡本店に来店したパテック フィリップ副社長(当時。現名誉会長)フィリップ・スターン氏と握手を交わす安心堂初代社長、永田正雄氏。

 「真に価値あるものを、一人ひとりに寄り添うよ(善)いおもてなしで、いつまでも美しく使い続けられるように」。安心堂の理念は“真・善・美”に基づいた本物の豊かさを追求すること。それを世界基準に高めるべく、海外へも店舗を広げた。1970年にアメリカ・ロサンゼルス、1976年にはフランス・パリにも出店したが、「お客様との絆を大切にする」という経営哲学は変わらず大手にはないユーザーとの密接な関係を築き、本当にいいもの、美しいものだけを提供して信頼を重ねた。

 特にパリでは高級宝飾時計店が並ぶリュー・ド・ラペ通りのカルティエ本店前に、日本の小売店として初めて店舗を構えることができた。1986年のことだ。それをきっかけにフランス、スイス、イタリアなど多くの欧州老舗ブランドから信頼を獲得し、取引が広がっていったという。

1976(昭和51)年、フランス安心堂(ANSHINDO PARIS S.A.R.L)を設立。写真はパリ日航ホテル店(当時)の様子。

1977(昭和52)年、バーゼルフェア(当時)での買い付けスタート。写真はその最初の訪問時に撮られた1枚。

1986(昭和61)年、リュー・ド・ラぺ店の外観。パリ出店から10年を機に、高級宝飾店が居並ぶラペ通りに拠点を移す。

 創業者の孫にあたる永田正明氏が1990年に2代目社長に就任し、さらには3代目社長に社員の横田孝之氏が登用された2019年以降も、安心堂のお客本位の姿勢は変わらない。

 現在の安心堂 静岡本店は、パテック フィリップとジャガー・ルクルトをサロン展開するほか、シャネル、オメガ、ブライトリング、グランドセイコー、ハミルトンなどの有力ブランドを取り揃える。また、2021年にオープンしたANSHINDO ウォッチギャラリー静岡では、チューダー、IWC、パネライを、それぞれのブランドの世界観までを体感できるようにコーナーを展開。これら2店舗で取り扱いブランドを明確に区別したことで、目当ての時計が選びやすくなり、一生ものの腕時計を扱うにふさわしい品揃えと洗練された店舗空間をつくり上げることができた。そして何より、静岡に根ざし、創業110年を誇る歴史と信頼はいまも揺るぎなく、安心堂の基盤となっている。

現在のANSHINDO ウォッチギャラリー静岡。

【安心堂 静岡本店】
■住所:静岡市葵区呉服町2-1-9
■TEL:054-254-0111
■営業:10:30~19:00 ※水曜休

【ANSHINDO ウォッチギャラリー静岡】
■住所:静岡市葵区呉服町2-2-12
■TEL:054-204-5666
■営業:10:30~19:00 ※水曜休

【ANSHINDO パリ・リュー・ド・ラペ店】
■住所:8 Rue de la Paix 75002 Paris, France
■TEL:+33-(0)1-40-20-07-65
■営業:11:00~18:30 ※日曜休

その他の店舗や、詳細については安心堂公式サイトへ。

Words: Takahiro Ono