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Bring A Loupe読者諸君、新年あけましておめでとう。今年最初のコラムを始めよう。筆者としてはしっかりと2週間の休養を取り、リフレッシュすることができた。読者諸君も同様に、年末年始の休暇を楽しんだのではないだろうか。さて、今年最初のセレクトをお届けしよう。今この記事を書いている私はマイアミにいる。アメリカで最大級のヴィンテージ時計イベントであるオリジナル マイアミ ビーチ アンティーク ショーに参加している最中だ。このイベントの様子は次の記事で詳しく紹介する予定である。印象的な時計やユニークなオブジェが数多く並ぶイベントの様子をフォトレポートとともにお届けする。しかし今回はいつもどおりの形式でいこう。ウェブ上で販売されている注目の時計を厳選して紹介する。
2024年最後のエディションで紹介した1960年代のホイヤー カレラ “Dato 45”は、激しい入札が行われた。しかしオークション終了間際に出品者が“because the item was lost or broken(紛失または破損したため)”として突然出品を取り下げた。だが、私はその説明を信じていない。おそらくプライベートメッセージで直接取引が成立し、時計は現在の市場価格である6000~8000ドル(日本円で約95万〜126万円)の範疇で新たな持ち主の元へ渡ったのだろう。最後にもうひとつだけお知らせがある。ブシュロンのトラベルアラームクロックが、1月11日土曜日(米東部標準時)にTennants Auctioneersで競売にかけられる予定だ。
それでは、今週の注目時計を見ていこう。
ロレックス バブルバック Ref.3372 ピンクゴールド&スティールのツートンモデル 1944年製
市場でロレックス バブルバックがようやく活気を取り戻しつつあることを報告できるのは、喜ばしいことだ。このモデルは数十年前に非常に人気を博し、多くのコレクターに収集されたが、近年ではヴィンテージ時計市場のなかであまり注目されなくなっていた。その理由はいくつかある。ケースサイズの小ささ、良好な状態の個体を見つける難しさ、そして再塗装(リダン)された文字盤が多すぎることなどだ。そのため特に熱心なヴィンテージウォッチのコレクターでさえ、ここ10~20年はバブルバックを敬遠してきた。
しかし最近小振りなケースサイズが“クール”とされるトレンドがあり、さらにカルティエが人気を集めるなかで20世紀初頭の時計デザインへの関心が高まっていることで、市場におけるバブルバック需要を高めている。2024年11月のジュネーブでのオークションシーズン中、TikTokで人気のディーラーであるマイク・ヌーヴォー(Mike Nouveau)氏と会った際、彼が素晴らしいローズゴールド(RG)のバブルバックを見せてくれた(ちなみに、その時計は私のYear In Reviewのメイン画像にも登場している)。ヌーヴォー氏はその時計を午前中に別のディーラーから購入し、数時間後には別のオーナーに売却していた。つまり、彼がその時計を所有していたのはほんの数時間だったというわけだ。
トレンドというのは、1本の時計がディーラーを介して瞬時に売れるだけでは生まれない。先日、Loupe Thisが別の素晴らしいバブルバックを出品していた。それは無垢のイエローゴールド(YG)製Ref.3372で、Giudici Milanoのダブルネームとツートンのサーモンダイヤルを特徴としていた。説明が長くなってしまったが、これは本当に素晴らしい1本だった。私自身も隠れたバブルバック支持者だが、落札価格が3万3000ドル(日本円で約520万円)になったことには驚かされた。この結果を見て、私のトレンド予測センサーが反応している。
今回、Loupe Thisが同じRef.3372をさらにピンクゴールド(PG)&ステンレススティール(SS)のツートンモデルで出品している。これは夜光を塗布したインデックスと24時間表示のインナートラックを備えた、よりスポーティな文字盤を持つモデルだ。同じオークションサイトで立て続けに2本のRef.3372が登場するのは珍しいことだが、ここで強調しておきたいのは、このようなオリジナルの文字盤を持つバブルバックを見つけるのは今やほぼ不可能に近いということだ。特に夜光文字盤の場合、ラジウムが経年劣化することで文字盤が損傷することが多く、その過程で所有者が“修復”するために再塗装してしまうケースが少なくない。しかし今回の出品物に関してはそのような手が加えられておらず、非常にいい状態で残っている。もし私の言葉を信じ、トレンドが本格的に到来する前にバブルバックを手に入れたいのであれば、これは絶好の機会だ。
オークションを主催するLoupe Thisはロサンゼルスに拠点を置いている(現地の皆さんの安全を祈る)。この記事を書いている時点での現在の入札価格は1万501ドル(日本円で約166万円)だ。このロレックス バブルバックのオークションは、1月15日(水)正午(米東部標準時、日本では1月16日の午前2時)に終了予定である。詳細はこちらから確認してほしい。
ロレックス オイスター パーペチュアル Ref.6332 ブルーエナメルダイヤル 1954年製
厳密に言えば、この時計もバブルバックに分類される。しかし誤解のないように言っておくが、これを“バブルバックだから”と紹介しているわけではない。今回のBring A Loupeにこの時計を取り上げた理由は、バブルバックであることは二次的な要素でしかないのだ。正直に言おう。私は火曜日の夜、マイアミでMomentum Dubaiのターリク・マリク(Tariq Malik)氏と夕食を共にした。6人のグループディナーで、勘定はきっちり均等に割った。ディナーの場所はToni's Sushi Barだったが、料理の印象は“まあまあ”だった。一方で、ターリクがその夜につけていた時計のほうが、ずっと記憶に残っていた。もちろん、それがこのブルーエナメルダイヤルの1954年製オイスター パーペチュアルだった。
エナメルダイヤルのロレックスは、常に私の心を掴んで離さない。しかし完全なクロワゾネエナメル(例えば先月、フィリップスニューヨークのオークションに出品されたRef.6100のようなもの)は、100万ドル(日本円で約1億6000万円)近い価格になるだろう。一方でこのRef.6332は、その価格の数十分の1でありながら私にとって心躍る感情を同じように呼び起こしてくれる。特に気に入っているのは、6時位置の“OFFICIALLY”という文字列に赤い文字が加えられていることだ。この文字盤全体のデザインはアメリカやフランス、イギリスなど、どこかの国旗の色あせたトリコロールを思わせる。販売者は文字盤の製造元について明記していないが、12・3・6・9の独特なフォントから判断して、おそらくこれはスターン・フレール社(Stern Frères)によるものだろう。この会社は、ロレックスのクロワゾネダイヤルをてがけたことで知られている。例えばRef.8171 パデローネの文字盤にも同じフォントが使われており、スターン・フレールがそれを製造したことは分かっている。
確かに厳密な意味では、この34mm径ケースのオイスターはバブルバックに分類される。しかし初期のバブルバックに見られる象徴的なケースと滑らかに一体化したラグがないため、この1950年代の個体は一般的なスクリューバックのモデルに見間違えられたとしても不思議ではない。実際、私もその間違いを犯していた。火曜日にターリク氏の時計を見たとき、それがバブルバックだと気づかず、この記事を書くために販売情報を確認するまで気づかなかった。
販売者であるMomentum Dubaiはその名の通りドバイに拠点を置いているが、この時計は現在マイアミにあることを私は知っている。このロレックスの販売価格は3万8116ドル(日本円で約600万円)だ。詳細はこちらで確認して欲しい(編注:すでに売却済み)。
パテック フィリップ ホワイトゴールド製Ref.3445 ギュブランとのダブルネーム 1960年代製
一見するとパテック フィリップのRef.3445は、“退屈なカラトラバ”のひとつかもしれない。しかし実物を見るか、あるいは所有する機会があれば、このモデルが日常使いのヴィンテージウォッチとして最高レベルの1本であることに気づくはずだ。オンラインでよく見る“ソルジャー”ショット(時計単体の直立写真)では、この時計のラグの鋭いエッジや、一見単調に見えるラグの微妙な曲線美、そしてカラトラバの文字盤が持つ洗練されたシンプルさを十分に感じ取ることはできないだろう。ただシンプルと言い切るのは少々語弊がある。このRef.3445は日付表示機能を備えており、カラトラバとしてはかなり複雑な機能を搭載しているのだ。さらに特筆すべきは、このモデルがパテック フィリップにおける最初の量産型自動巻き防水腕時計であり、日付表示機能を持つ初のシリーズ生産モデルであるという点だ。知れば知るほど、興味が湧いてくる時計である。
とりわけこの時計について話すと、ヴィンテージのパテック フィリップをeBayで購入するには覚悟が必要だ。しかしこの個体は写真を見る限り、状態は悪くないようだ。写真から判断する限り、この時計が“ファーストシリーズ”の盛り上がったロゴを持つハードエナメルダイヤルのモデルなのか、“セカンドシリーズ”のフラットな文字盤のモデルなのかははっきりしない。しかしホワイトゴールド(WG)ケースで、ギュブランのダブルネーム付きであることを考えると、この価格は非常に魅力的である。もちろんリスクもある。出品者のフィードバックスコアは8と高くはない。しかし、私はこの時計の価格は市場価格を下回っていると踏んでいる。
この時計はフランスのレ コンタミン モンジョワに拠点を置くeBay出品者によって、1万2061ドル強(日本円で約190万円)の即決価格で出品されている。詳細情報や写真はこちらから確認してほしい。
ギュブラン トリプルカレンダー 1940年代製
引き続き、ギュブランをテーマにした時計を紹介しよう。プライベートレーベルのトリプルカレンダーであり、非常にお買い得な1本だ。このコラムを長く読んでいる読者であれば、私がギュブランの名が入った時計に目がないことはすでにご存じだろう。私は、販売店名が刻印された時計を非常に興味深い存在だと感じている。だがこうした販売店のロゴが入ったプライベートレーベル時計は、ヴィンテージ市場において評価が難しい。なぜなら、どのブランドが製造したのかが不明なケースが多いためだ。その結果、ほかのヴィンテージ時計と価格を比較するのが難しく、適切な相場を見極めにくい。
このギュブランのトリプルカレンダーについても、どこが製造したのか特定するのは難しい。正直に言えば、私もこのトリプルカレンダーがどのメーカーによるものかはわからない。しかし、それでも販売価格に対して十分に価値があると評価できる要素はいくつもある。この時計は1940年代のスイス製であり、バルジュー製キャリバーを搭載している。この時代のバルジュー製ムーブメントを使用した複雑時計で5000ドル(約79万円)以下で手に入るものは、非常に少ない。私は個人的にバルジュー 90に特別な愛着がある。それはトリプルデイトカレンダーの時計に目がないということもあるが、このムーブメントが伝説的なバルジュー 72のファミリーに属しているためだ。基本設計はヴァルジュー 72に基づいているが、このキャリバーをじっくり見てみると、オーデマ ピゲが使用していた初期の13リーニュ ヴァルジュー“VZ”ムーブメントの面影も感じ取れる。
この時計の状態は非常に良好だ。オーバーサイズの38mm径ケースは未研磨と見られ、しっかりとした存在感がある。文字盤にはラジウム塗料が使用されており、経年変化による色褪せが見られる。しかし変色は均一であり、こうしたヴィンテージらしい風合いが好みの人には魅力的だろう。
このギュブランの時計は、イギリスのルイスに拠点を置くeBayの出品者が即決価格2475ポンド(日本円で約39万円)で販売している。詳細はこちらから確認してほしい。
モバード 1966年サンボウル記念モデル 1960年代製
私がヴィンテージのモバードを愛していることは、読者諸君のあいだでもよく知られているだろう。しかしカレッジフットボールに対する私の熱意については、あまりご存じでないかもしれない。実は先日もマイアミでの時計イベントの合間を縫って、オレンジボウルでノートルダム・ファイティングアイリッシュがペンシルバニア州立大学に勝利する試合を観戦し、ナショナルチャンピオンシップへの出場権を手にする瞬間を目の当たりにしてきた。
そんなこともあって、1月10日のコットンボウルでシーズンが正式に終了することを考えていたときに、1966年サンボウルの記念モデルとして作られたこのモバードが目に留まったのだ。この時計は基本的には一般的な防水ケースを備えたモバードの腕時計だが、文字盤の中央に大きく描かれたサンボウルのロゴが非常に印象的だ。もし先日のアンティークショーで購入する時計を見つけていなければ、私自身がこの時計を買っていただろう。だが私が購入しなかったことで、この時計を手に入れるチャンスが読者諸君に訪れたというわけだ。
このモバードはメリーランド州ヘルソープに拠点を置くeBayの出品者が、即決価格350ドル(日本円で約5万5000円)で出品している。詳細はこちらから確認してほしい(編注:すでに売却済み)。
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