trophy slideshow-left slideshow-right chevron-right chevron-light chevron-light play play-outline external-arrow pointer hodinkee-shop hodinkee-shop share-arrow share show-more-arrow watch101-hotspot instagram nav dropdown-arrow full-article-view read-more-arrow close close email facebook h image-centric-view newletter-icon pinterest search-light search thumbnail-view twitter view-image checkmark triangle-down chevron-right-circle chevron-right-circle-white lock shop live events conversation watch plus plus-circle camera comments download x heart comment default-watch-avatar overflow check-circle right-white right-black comment-bubble instagram speech-bubble shopping-bag

In-Depth ロレックス “ノンデイト”のサブマリーナーを例に、長きにわたり変化を遂げた価値と価格について検証する

我々は今、現代における価格史の10年を過ごした。詳しく掘り下げていこう。

ADVERTISEMENT

1967年にロレックスを買おうと意気込んで時計店に入ったとしよう。あなたが気に入っているのは、黒いベゼルを備えたダイバーズウォッチで、日付の入っていないシンプルな黒い文字盤、そしてスティール製ブレスレットでカジュアルに仕上げたものだろう。レザーストラップだと50年代っぽい。それは“サブマリーナー”と呼ばれる腕時計で、あなたは値段を尋ねる。すると“225ドル(当時の相場で約8万1000円)”と販売員からいわれる。決して小さな金額ではないが、銀行口座がパンクするほどでもない。だからそれを買うと決断する。この日、あなたがそれを必ずしも知っているとは限らないが、ツーラインダイヤルを備えたRef.5513 サブマリーナーを手に店から出てきたとする。この時計は長く使えるだけでなく、手首で頼れる相棒として、また正当な評価が得られる投資対象として役立つことだろう。

 時計がこの10年ほどのあいだに、魅惑的なコレクションの対象から投機の対象へと変化し、独自の通貨となったことはご存じのとおりだろう。2010年代のほとんどのあいだ、SSロレックスは文字どおり株式市場よりもいいリターンを得ることができたのだ。しかし、1960年代にはそのような計算はなかった。実際、初期のサブマリーナーのようなオリジナルのSS製スポーツモデルが投機の可能性に達するまでには、40年以上の時間を要した。

Rolex

ロレックス サブマリーナー Ref.5513。

 初期の80年代には、基本的にヴィンテージウォッチ(この場合はヴィンテージロレックス)のみが価値を表していた。2014年に現金化できるように、60年代や70年代でデイトナを全店で買わなかったことを後悔させるような商品だった。もちろん未来はだれにもわからないのだから過去のことを今さら悔やんでもしょうがないのだが、知っていたらきっとみんなタイムマシンに乗っていたことだろう。

 興味深いのは、この40年ほどのあいだにヴィンテージ、モダン両方のサブマリーナーの価値が、新品と中古の両方でどのように上昇したかである。たとえば225ドルのモデルを比較対象とした場合、新しいロレックス サブマリーナーの価格は約2000ドル(インフレ調整済み、日本円で約27万9000円)になるはずだ。しかしそうではない。実際にはそれより7000ドル(日本円で約97万6000円)ほど高い値段で販売している。しかしそこにたどり着く前に、長年にわたって価格がどのように変化してきたかを確認していこう。

Rolex

 1967年の時点でもこの225ドルという数字は、我々が思う高級時計とするものではなかった。それはロレックスのサブマリーナーが、実は高級時計ではなかったからだ。ダイビングや水泳用のツールウォッチであり、文字どおり世界中のさまざまな軍事組織に支給された時計である。軍の関係者であればかなりの割引が受けられる時計であり、その実力を見極めるためのものだった。

ADVERTISEMENT

 1967年当時は機械式時計しかなかったことも忘れてはならない。デジタルやクォーツといった大規模なものはない時代だ。そのため機械式時計は比較的低価格で販売され、それを機に工業が盛んになっていった。そして、セイコーのようなブランドが電池式で精度が高く、しかも安価な時計を市場に送り出したことでスイスの時計産業を衰退させたクォーツ革命が起きたことは誰もが知っていることだ。

Rolex

 それからほとぼりがさめたあと、機械式時計は時代遅れのものから特別なものへと変貌を遂げていく。電池交換することなく、いつまでも永遠に使える機械式時計という贅沢なもの、つまりラグジュアリーウォッチにはそれなりの料金を支払うべきなのだという風に。

 サブマリーナーの価格が1000ドル(当時の相場で約23万円)台まで跳ね上がったのは1980年代半ばのことだ。90年初頭にはその倍の2000ドル(当時の相場で約29万円)にまで上昇し、その後2000年代の終わりにアルミニウムベゼル、スタンプクラスプ(シリアルナンバーが刻印されたもの)を施したサブマリーナーがさらに2倍以上の値段となり、時代が終わりを告げた。これにはデザインの変化も関係している。従来のペイントマーカー付きのマットダイヤルは、光沢のある文字盤とホワイトゴールドで囲われたアプライドマーカーへと置き換えられた。サブマリーナーは10年のうちに実質4倍の価格になり、その後に続く10年でさらに2倍の価格になった。しかしこれはRef.5513、14060の話であり、今ではヴィンテージやネオヴィンテージと呼ばれている時計である。

Rolex

ロレックス サブマリーナー Ref.14060。

 そして2012年、初となるノンデイトのセラミック製サブマリーナー Ref.114060が発売された。これはサブマリーナーデイトにセラミック処理を施してから2年後のことである。ただしノンデイトはオリジナル、つまり正統のサブマリーナーだ。Ref.5513や14060とは異なりヴィンテージサブは2行または4行の選択肢があったのに対し、この時計は4行構成のみだった。それまで4000ドルから5000ドル(当時の相場で約31万9000円~39万9000円)の価格だった時計が、突然7100ドル(当時の相場で約56万6000円)へ跳ね上がったのだ。

 80年代に見られた、ツールウォッチからラグジュアリーへと移行する際、同様にラグジュアリーとは何かという意味もレベルアップしたのである。この場合、塗装されたアルミニウムではなくプラチナを充填したセラミック製ベゼルを意味し、そしてそれはほかに類を見ない調整システムを備えた、オール削り出しのクラスプが付いた頑丈な構造のブレスレットのことも指していた。これがブランドを代表する、腕時計の新しい基盤となったのだ。

Rolex

ロレックス サブマリーナー Ref.114060。

 2012年から2020年にかけて日付のないサブマリーナーの小売価格は、インフレに対応するために実質的に値上げされ800ドル(日本円で約11万円)上昇した。その後COVID-19のパンデミックが起こり、ブランドは値上げを中止した。まぁそんな感じだ。

ADVERTISEMENT

 というのも、ロレックスがサブマリーナーをアップデートして、より大きなケースと幅広なラグを与えるも最終的にはさらに洗練されたデザインへと昇華した41mmの新作、Ref.124060をリリースしたのは2020年のこと。その時計の価格は当時85万4700円(税込)で、そしてこの価格は2020年、2021年まで維持していた。

Rolex

41mmのロレックス サブマリーナー Ref.124060。

 2022年2月、ロレックスは値上げゲームに復帰した。現在もそうだが、いまだにインフレが激しく、それに対応するための調整が必要だったのだ。その結果約10%上昇し、当時99万円(税込)を記録。2年も経たないうちに、サブマリーナーは8年かけて行った値上げを上回る高騰を見せたのだ。そして現在、新品は108万4600円(税込)で購入が可能だ。ありがたいことに少しずつだが元通りになってきている。

 ロレックスの約10%という値上げは突出しているように見えるが、長期的に見ると、2013年から今日までノンデイトのサブマリーナーの価格はほぼ完全にインフレ率と一致している。これは1975年から1986年までの、ロレックスの価格設定についていえることではない。

Rolex

 ただし2012年から現在に至るまでのあいだで注目すべきは、これらの新しい時計と並んで中古市場がどのように推移したかである。中古のロレックス “ノンデイト”サブマリーナーの出品リストを振り返ると、2013年は現代の時計収集と購入において極めて重要な年であることが明らかになっている。中古の時計が中古でなくなり、新品の時計よりも価値が急上昇したのである。

 ソーシャルメディアでの注目が高まり、HODINKEEのようなメディアコンテンツが急増・発信されるようになったことで、時計は機械式という複雑なものから、より主流なものへと変化を遂げた。投資可能な時計に相当するのは、もはやヴィンテージのSS製ロレックスだけではなかったのだ。現代のコレクションも同様に注目を集めるようになっていった。

Rolex

 このころになると時計の需要が急増して小売店での購入が非常に難しくなり、価格差が生じるようになる。そしてサブマリーナー Ref.114060の中古品が2013年には1万2000ドル(当時の相場で約98万2000円)に、また2015年から2021年のあいだには1万6000ドル(当時の相場で約175万6000円)以上という、約4000ドルものプレミアム値の差がつくかもしれない(なお新型の場合は1万5000ドル/日本円で約164万6000円)ということだ。

ADVERTISEMENT

 この1年ほど経済的な要因で価格が少しずつ下がっているのは確かだ。また友人から聞いた話によると、この数カ月のあいだに、ここ数年来にないほど多くの商品が店頭に並ぶようになったと聞いている。だからといって現在、サブマリーナーの124060を小売店で購入するのはそれほど簡単ではないが、価格が1万3500ドル(日本円で約188万1000円)程度(10年前の推移と同様の4000ドルのプレミアム値)まで下がった理由の説明にはなっている。

Rolex

 さらに、ロレックスが昨年始めた認定中古時計(CPOプログラム)というのもある。現在、新しいRef.124060はCPOプログラムの対象となるほど十分に古いものではないが、Ref.114060は約1万4000~1万5000ドル(日本円で約195万1000円~209万3000円)前後で販売されている。これは現行モデルの小売価格より5400ドル(日本円で約75万2000円)高く、2020年の114060の小売価格より6600ドル(日本円で約92万円)高いということになる。

 CPOプログラム価格と比較したサブマリーナーのオープンマーケットでの価値や、同様に小売価格で見られるサブマリーナーの一定の上昇を観察することは実に興味深い。流通市場での価格が再び高騰しない限り、両者が中間付近に位置するのは確かなようだ。

Rolex

 1967年当時の225ドルのロレックス サブマリーナー Ref.5513に話を戻すと、現在市場に出回っているものは2万ドル(日本円で約278万5000円)以上の価格で推移しており、インフレを考慮すると実質1000%価値が上昇していることになる。現代のサブマリーナーの価値を完全に理解するには40年の歳月が必要になるかもしれないが、最近の歴史はそれが安全なものであり続けていることを示している。

Shop This Story

HODINKEE Shopでは、ロレックス サブマリーナーの中古時計を多数取り扱っています。