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VINTAGE WATCHES ヴィンテージウォッチ愛好家におすすめしたい、5冊の新刊

古い時計に関する新しい書物だ。

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時計にまつわる Webサイトも素晴らしいが、時計愛好家やコレクターにとって、書籍は今でもなくてはならない情報源である。デジタル化が進んだ現在でもコレクターや研究者たちが手間を惜しまずに参照すべきレベルの資料となるような美しい印刷本を出版し、時にはそれ自体がコレクションに値するような本を出していることは、私のささやかなマニア心をほっと温めてくれる。

 ここ数カ月のあいだに、特集を組んでみんなの読書リストに加えたいと思うようなヴィンテージウォッチに焦点を当てた新しい本をいくつか手に入れた。そのうちの2、3冊は必読書ともいえるもので、『Moonwatch Only』や『Patek Philippe Steel Watches』、あるいは私のお気に入りのオークションカタログ(1989年の『The Art of Patek Philippe』や1996年の『The Magical Art of Cartier』)などに並ぶものである。

『The Dial』ヘルムート・クロット博士(Dr. Helmut Crott)著
the dial english helmut crott

 ヴィンテージウォッチコレクターにとって、『The Dial: The Face of The Wristwatch In The 20th Century』は本棚に欠かせない1冊だ。医学博士から時計コレクターに転身し、ついには腕時計専門の最初のオークショナーのひとりにもなったヘルムート・クロット博士が執筆している。彼の数十年にわたる経験は、392ページに及ぶ参考資料と美しい画像で構成された『The Dial』の執筆に結実した。時計の新作に関する発表は一旦置いておいて、2021年にフランス語で発表された『The Dial』の英語版リリースは、私にとって2023年におけるもっともエキサイティングな発表のひとつだった。

the dial helmut crott

 『The Dial』は全3章で構成されている。第1章では、おそらく20世紀のほとんどにおいてもっとも重要かつ成功したダイヤルメーカーであり、1932年にスターン一族がパテック・フィリップを買収するほどの功績を挙げたスターン・フレール(Stern Frères)社の物語が語られる。第2章は、ダイヤルを作るために必要なさまざまな工程を包括的に解説。ギヨシェ彫り、ラッカー仕上げ、インデックスの貼り付けなどがどのように行われるのか疑問に思ったことがある人は、この章で学ぶことができる。最後の章では20世紀に作られた特にコレクターの多い時計のダイヤルについて詳しく解説している。例を挙げるなら、ロレックスのデイトナ、パテックのカラトラバ、オーデマ ピゲのカレンダーなど……、すべてがここに載っている。

 この本を手にするのが楽しみで、出費はまったく気にならなかった。HODINKEE Shopに直行し、自腹を切って購入したのだ(従業員割引が役に立ったことは認める)。

 『The Dial』全体を通して、技術、工程、ダイヤルの鮮明な画像が600枚以上掲載されている。ハードカバーの本も素敵だが、これはコーヒーテーブルブックよりずっといい。

The Dial』をHODINKEE Shopで探す(400ドル、日本円で約6万円)。

『パテック フィリップ・ミュージアムの宝物(原題:Treasures From The Patek Philippe Museum)』ピーター・フリース博士(Dr. Peter Friess)著
treasures from the patek philippe museum friess

 パテック フィリップ・ミュージアムに行くことができず、パテック フィリップ・ミュージアムの全カタログに700ドル(日本円で約10万4000円)も払いたくないという人には、この新しい略式版が手堅い選択肢となるだろう。パテック フィリップが所蔵する225点の時計が、それぞれ100ページずつに及ぶ豊富な図版とともにスリップケースに収められている。第1巻ではミュージアムのアンティークコレクションを取り上げ、パテック フィリップ以外の歴史的に重要な時計や腕時計を紹介している。第2巻ではパテック フィリップが所有する現代までのタイムピースについて特集している。

treasures from the patek philippe museum friess book

 ベンが10年前にパテック フィリップ・ミュージアムを訪れた際にも説明したように、このミュージアムは世界でもっとも見応えのある時計コレクションであり、パテックの自社製品だけにとどまらない(たとえば、Collectabilityによるフリース博士へのインタビューを読めば、ミュージアム所蔵のエナメルコレクションの重要性を理解できるだろう)。第1巻ではホイヘンス(Huygens)、ベルトゥー(Berthoud)、ブレゲ(Breguet)をはじめとする数々のタイムピースを取り上げており、年代を超えた計時の旅にあなたを連れ出してくれる。第2巻では、約200年にわたるパテックの歴史のなかでもっとも重要な複雑機構とデザインについて紹介している。たった50スイスフラン(日本円で約8150円)で、この2冊の冊子を超えるものを探すのは難しい。唯一の問題は、本物を見に出かけたくなってしまうことだ。

『パテック フィリップ・ミュージアムの宝物』は、パテック フィリップから直接購入できるほか、一部の小売店でも購入可能(50スイスフラン、日本円で約8150円)。

ジャガー ルクルト『コレクタブルズ(原題:The Collectibles)』
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 今年、ジャガー ルクルトは同社のもっとも重要なヴィンテージウォッチを発掘、改修、販売するプログラムであるコレクタブルズ(The Collectibles)を開始した。その後、ブランドはヴィンテージウォッチのカプセルコレクションを2度発表した。本件については、こちらこちらで紹介している。

jaeger-lecoultre geophysic

 これらの時計とともに、JLCは同名の本も出版した。この本は1925年から1974年までのメーカーの黄金期をカバーし、そのなかでも特に重要な17のタイムピースを記録している。この書籍には、製造番号やキャリバー情報など、コレクターが購入する時計を理解するうえで重要な参考資料や、各モデルの歴史的背景が記載されている。それらを追うなかで、レベルソ、ジオフィジック、フューチャーマティックなどについての知識を深めることもできるだろう。また、本書は美しい図版が557ページにわたって掲載されたハードカバーの大作でもある。

『コレクタブルズ』はミスターポーターを通じてオンラインで購入可能(265ドル、日本円で約4万円)。

『Vintage Military Wristwatches』ザフ・バシャ(Zaf Basha)著
vintage military wristwatches zaf basha

 このリストのほかの本とは異なり、『Vintage Military Watches』はコレクターによるコレクターのための参考書である。600ページにわたり、300点近いミリタリーウォッチが、ダイヤル、ケース、ムーブメントの詳細な写真とともに紹介されている。また、製造番号や生産期間、ダイヤルとキャリバーの詳細情報も記載されている。本格的なヴィンテージのミリタリーウォッチのディーラーやコレクターにとって、本著はこれらの時計とそのコレクター性を理解するために必要不可欠な情報であり、資料である。また、『Vintage Military Wristwatches』の後半にはさまざまな国やその支部の軍規格に関する資料が掲載されている。このような一次資料を入手することは、現在では極めて困難である。資料やスキャンの一部には、読者が目にしているものを解説する詳細なキャプションがあればいいのにと思う箇所もところどころあるが、こうした資料はコレクターにとってそれだけでも貴重なものだ。

『Vintage Military Wristwatches』はバシャのサイト、Classic Watchで販売されている(199ドル、日本円で約3万円)。

『The Cartier Tank Watch』フランコ・コローニ(Franco Cologni)著
cartier tank watch franco cologni

 『The Cartier Tank Watch』の新著は私が期待していたような参考書レベルの資料にはほど遠いが、それでも豊富な画像とともにタンクの概要を説明している。コローニは1998年に『カルティエ 伝説の時計 タンク(原題:Cartier The Tank Watch)』を出版しており、本書はその最新版になる。同著にはカルティエが所蔵するタイムピースや、歴史的なアーカイブの画像が多数掲載されている。ご期待の通り、イヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)、ダイアナ妃(Princess Diana)、モハメド・アリ(Mohammad Ali)、ゲイリー・クーパー(Gary Cooper)など、多くの著名人がタンクを着用している写真も収められている。それらのなかには見たことのある写真もあれば、見たことのない写真もある。

franco cologni cartier tank watch 2023

 カルティエがこのような形でアーカイブにアクセスできるようにしたことから、ブランド側がこの本の内容に関与していることは明らかだ。時にフランコ・コローニのタンクはカルティエ タンクのマーケティング活動のように感じられることもあるが、広告だとしてもモデルの歴史的背景を紹介するような内容であるため、気にする必要はないだろう。とはいえ新型のタンク フランセーズが裏表紙を飾り、巻末にはそのマーケティングキャンペーンが10ページにわたって取り上げられている。私はタンク フランセーズが嫌いなわけではないし、カルティエにとって非常に重要な商業モデルであることに変わりはない。しかし、この点は特に強引な印象を与える。とはいえ、この本の残りの部分を考えれば小さな対価だ。200ページを超えるページのほとんどは、タンクに関する興味深い歴史や事実で埋め尽くされている。もっと詳しく知りたいと思う部分もあったが、それにもまして勉強になった。

フランコ・コローニによる『The Cartier Tank Watch』は、各種小売店で販売されている(85ドル、日本円で約1万2700円)。