trophy slideshow-left slideshow-right chevron-right chevron-light chevron-light play play-outline external-arrow pointer hodinkee-shop hodinkee-shop share-arrow share show-more-arrow watch101-hotspot instagram nav dropdown-arrow full-article-view read-more-arrow close close email facebook h image-centric-view newletter-icon pinterest search-light search thumbnail-view twitter view-image checkmark triangle-down chevron-right-circle chevron-right-circle-white lock shop live events conversation watch plus plus-circle camera comments download x heart comment default-watch-avatar overflow check-circle right-white right-black comment-bubble instagram speech-bubble shopping-bag

Hands-On 新しいバルチック エルメティック ツアラーが、遅れつつも今年最高のリーズナブルウォッチのひとつに加わる

バルチックの最新モデルが、新コレクションのスタートを華々しく飾る。

ADVERTISEMENT

今年、バルチックがパーペチュアルカレンダーを発表するとは思いもしなかった。確かに、Only Watchならではのユニークピースだった。しかしそれでもこのフレンチブランドは、創業から6年のあいだに、最高のヴィンテージデザインテイストを持つ手頃な価格の時計を求める人々に愛される時計ブランドのひとつにまで成長した。なのにパーペチュアルカレンダー? 次のイメージは? これはバルチックが市場を拡大させ、その基盤を置き去りにしてしまうきっかけなのだろうか?

 そんなことはない。バルチックは今でもエントリーレベルの価格帯で時計を打ち出している。同ブランドの新作、エルメティック ツアラーはその証拠である。

Baltic Hermétique Tourer

 ブランドがヴィンテージウォッチからヒントを得ようとするとき、急速に規模が縮小したり成功しなくなったりする危険性がある。そして一部のブランドは“複製”を作ることに傾きすぎてしまう。これはクォーツ危機で消滅したブランドおよび、ヴィンテージブランドが現代的なスペースで何をするのか推定するための、現代的なデザイン言語や系譜を持っていないブランドには有効かもしれない。しかし、当時の人々が実際に好きで、また今でも好きかもしれない、無名の参考文献がなくなるリスクもある。

Baltic Hermétique Tourer

 ほかのブランドは伝統を持たないなか、評判のよくない再現モデルを作っている。価格が原因の場合もあれば、“創造的所有権”に関するコミュニティの議論が原因の場合もある。しかし、新しいブランドを立ち上げ、“適切な”量のヴィンテージインスピレーションを与えて、時計愛好家を満足させるのは難しい。それでもバルチックはその難事を成し遂げていると思う。

 バルチックは10月5日に新しいエルメティックコレクションと、それに属するツアラーモデルを発表した。ツアラーとは、探究心をもとにしたデイリーユースデザインというツールウォッチ(ある意味ではフィールドウォッチかもしれない)に対するブランドの見解である。それにしてもこの新モデルに採用された3・6・9・12の文字盤レイアウトを見て、“これはロレックス エクスプローラーへのオマージュだ”と思わなかったのは、ちょっと不思議だ。その理由のひとつは、ほかにも多くの機能が盛り込まれていて、エクスプローラーやその他の機能と十分に差別化されているからだ。

Baltic Hermétic Tourer

 ケースのデザイン自体も注目に値するが、ディテールを掘り下げる前に、大まかな特徴を整理しておこう。ツアラーは厚さ10.8mm(ダブルドーム型サファイアを除くと8.3mmなので、装着するとより薄く感じる)、そして古典的な37mm径のステンレススティールケースを備える。ラグからラグまでは46mm、ラグ幅は20mmで、文字盤カラーとマッチするフルオロカーボン製のトロピックラバーストラップや、(少しだけ割高になるが)ライスブレスやフラットリンクブレスレットのオプションに加えて、NATOストラップのモンスターになることは間違いない。また、約150mの防水性を備えており、ほとんどの人が(どんなシーンでも)使用できるだろう。

 ツアラーには4色のダイヤルカラーが用意されている。写真上だと、私の大好きなグリーンかトロピカルブラウンの文字盤が勝つような気がした。だが実際手に取ってみると、それほど単純な結末ではなかった。

Baltic Hermétique Tourer

 文字盤はすべてマット仕上げで、スーパールミノバを塗ったアプライドインデックスを配している(グリーンとブラウンはオフホワイト、ベージュとブルーはより純粋なホワイトだ)。写真で見るとブラウンダイヤルは赤みがかったブラウンからブラックへとフェードアウトするグラデーション効果があるように見えた。でも実際に見てみると、その効果がないことがわかる。その代わり、ダイヤルの内側には金属製のリングがあり、それが夜光を施した5分刻みのマーカーを二分し、周囲の環境から少し色を拾っているようだ。

 外側には分単位を示すための黒いチャプターリングに印刷されたレイルウェイがあり、このクラシカルなルックスに役立つ。驚くことに明るいベージュダイヤルのコントラストがよりはっきりしていて、私のいちばんのお気に入りになった。

Baltic Hermétique Tourer

 グリーンダイヤルはこのなかで2番目に好きかもしれない(ブラウンやブルーを否定するものではない)。自身のコレクションのなかにはトロピカルダイヤルがあるのだが、ブルーはほかのものと比べると定番モデルのように感じられる(だからきっと売れると思う)。しかしベージュの文字盤はより珍しく、魅力的に感じられる。

ADVERTISEMENT

 ほかにも、ポリッシュ仕上げのSSでできた“注射針”のような針に、スーパールミノバとマッチした素晴らしいディテールもある。夜光インデックスに話を戻すと、このような手頃な価格の腕時計としては細部にまでこだわったような、3次元的アプローチが気に入っている。また、この夜光塗料は紫外線を浴びるとすぐに“充電”されるようだ。太陽の下で少し時間を過ごすと、たとえ影のなかを歩いたとしても、夜光が明るく輝いているのがわかる。もちろん、夜光は本来の機能を果たすと期待されているが、夜光の品質と強度は使用方法によって大きく異なってくる。“スーパールミノバ”という言葉は必ずしも毎回同じ効果を保証するものではない。

Baltic Hermétique Tourer
Baltic Hermétique

 価格について言うと、すべて税抜きで、トロピックストラップが550ユーロ(日本円で約8万7000円)、ライスブレスとフラットリンクブレスレットがそれぞれ615ユーロ(日本円で約9万7000円)である。私はブレスレット派だが、もしこのツアラーを持っていたらカラーを揃えたトロピックストラップにつけたいと思う。いずれにせよ、今年発売されたなかで最も手頃な価格のオプションのひとつのように思える。

 ツアラーにはコストを抑えるのに役立つ、Miyota製Cal.9039を使用する。バルチックはそれが“堅牢性と信頼性”のための正しい選択だったと確信している。また、このムーブメントには約42時間のパワーリザーブを備えており、日常使いとしては十分だ。最も精度に優れたキャリバーとは言えないかもしれないが、ブランドが価格を維持しようとするときにはしばしば採用されるムーブメントである。率直に言ってこれは公平なトレードオフだ。

Baltic Hermétique Tourer
Baltic Hermétique Tourer

 新しいエルメティック ツアラーのが持つ、あるクールな部分をじっくりと説明しよう。それは今年最もさりげなくヴィンテージテイストを取り入れた箇所だ。写真を見てお気づきだろうが、リューズガードがない代わりに(あるいはリューズガードがなくとも)、リューズはケースと一体化している。しかし、どこからともなく出てきた巧妙なデザインではない。その歴史はもっと古い。

Baltic Hermétique Tourer
Baltic Hermétique Tourer
Baltic Hermétique Tourer

 このディテールは、1950年代のミドー マルチフォート パワーウィンドウォッチで使用されたフランソワ・ボーゲル(François Borgel)製ケースをほうふつとさせる。少し前にショップでも紹介したが、二次市場ではまだ比較的手頃な価格で流通している。IWCのハーメットもあったが、こちらもすべてのバリエーションがかなり手頃だ。しかし、BOSS HUNTINGのニック・ケニオン(Nick Kenyon)氏によれば、エルメティックという名前もボーゲルに敬意を表しているようだ。

Mido Multifort Powerwind
Borgel Patent

 ボーゲルは防水時計にこだわっていた。モバードからパテックに至るまで、彼が手掛けたスクリューバックケースは、すべての時計のなかで最も注目を集めるヴィンテージケースのひとつである。しかしそれよりもずっと前に、ボーゲルは3ピースケースを使った懐中時計を“防水”仕様にした特許を取得している(本当の防水時計というものは存在しないことはわかっているが)。特許には“エルメティック ドゥ 3ピース(Hermétiques de 3 pièces)”と明記されていた。ケニオン氏は、バルチックがその特許から名前を取ったというのは陰謀論だと主張した。真実でないことはあまりにも明白だと思うので、私はそれを信じることにした。これは私が今年見たなかで最も手頃な腕時計のひとつだと信じているのと同じように。

Baltic Hermétique Tourer
Baltic Hermétique Tourer

 発売はパリ時間の10月10日、午後4時だ。各色最初の200本にはシリアルナンバーが付けられるが、在庫数は200本で制限されないため、この記事を読むのが少し悪れてもあまり気にしないように。

バルチック エルメティック ツアラー。316Lステンレススティール製リューズ一体型ケース、37mm径、10.8mm厚、ラグ幅20mm、ラグからラグまで46mm。150m防水。グリーン、ブルー、ベージュ、ブラウンのマット仕上げダイヤル、スーパールミノバ®C3 X1(グリーンとブラウン)、またはBGW9(ブルーとベージュ)。自動巻きCal.Miyota 9039搭載、時・分・センターセコンド、ストップセコンド、約42時間パワーリザーブ。ソリッドバック。無反射コーティングを施したダブルドーム型サファイアクリスタル。フルオロカーボンラバー(FKM)製のトロピックストラップ、またはSS製ライスブレスレット、またはSS製フラットリンクブレスレット。価格はストラップタイプが550ユーロ(日本円で約8万7000円)、ライスブレスとフラットリンクブレスレットがそれぞれ615ユーロ(日本円で約9万7000円)

Shop This Story

バルチック エルメティック ツアラーの詳細については、バルチックの公式ウェブサイトをご覧ください。