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Hands-On グランドセイコー Kodo “薄明”コンセプトモデルを実機レビュー

グランドセイコー史上初となる機械式複雑時計は、今回新たなコンセプトのもとにさらに20本が追加製造された。

Photos by Mark Kauzlarich

グランドセイコーは2年前に、おそらく多くの人がとっくの昔にブランドが達成しているものだと思っていたであろうこと、すなわち初の機械式コンプリケーションウォッチの発表に踏み切った。グランドセイコーは、機械式時計製造における卓越性、最高級の仕上げ、スプリングドライブムーブメントが象徴する創造性、そして独創的なデザインを持ちながら、2022年まで創業から62年ものあいだ機械式のコンプリケーションモデル(GMTを除く)を製造していなかったのだ。しかし彼らは、Kodoをもって見事に成し遂げてみせた。

The Grand Seiko Kodo "Daybreak"

 グランドセイコーの初代コンプリケーションモデルことRef.SLGT003は、コンスタントフォース機構を備えたトゥールビヨンという、まさにコンセプトカーのような時計であった。日本語で心拍を意味する“鼓動(Kodo)”と名付けられたこの時計は、グランドセイコーのすべてを凝縮していた。また、このモデルはGPHGでクロノメトリー賞を受賞している。光と影を巧みに表現した針やインデックスに加え、高度に磨き上げられた表面とダークな色調で仕上げられたオリジナルKodoの開発秘話についてはジョン・ビューズが取材している。4400万円(税込)、20本限定のこの時計は、懐の温かい大口顧客だけに許された時計であった。しかしこの時計は、ブランドのコレクションに単にコンプリケーションモデルが加わったという以上のものを意味していた。そしていま再び、より明るく、しかしそれに勝るとも劣らない大胆なフォルムで我々の前に姿を現した。

The Grand Seiko Kodo "Daybreak"

 新しいグランドセイコーのKodo "薄明” Ref.SLGT005は、前作のスタイルを継承している。同じくコンスタントフォース(定力装置)機構が付いたトゥールビヨンムーブメントを搭載したこの時計は、少し明るい配色になったとはいえ、実に見慣れた外観をしている。前回のKodoと同様にインナーケースとベゼルはプラチナ950製で、外側のケースサイドとベゼルはブリリアントハードチタン製だ。しかし今回は、“薄明”のテーマを際立たせるシルバートーン仕上げが施されている。

 グランドセイコーの担当者によると、前作のKodo発表時はすぐにオーデマ ピゲやリシャール・ミルといったブランドのVIPたちからの問い合わせが殺到したというが、その理由も納得できる。4400万円(税込)という価格であるために、顧客は単に希少性だけでなく、それ以上のものを求めるケースが少なくないだろう。グランドセイコーのコレクションにはこれまでKodoのようなモデルはなかったが、オーデマ ピゲやリシャール・ミル(あるいはランゲのようなブランド)が得意とする奥深さ、複雑さ、オープンワークというテーマが息づいている。ランゲのダトグラフを眺めていると、そのムーブメントに吸い込まれてしまいそうになる。オーデマ ピゲやリシャール・ミルのオープンワークを目にしたとき、視覚的な複雑さが高級感を醸し出し、ブランドが誇る技術的な側面を際立たせているように感じられる。“薄明”のテーマに便乗すると、Kodoはグランドセイコーの新時代の幕開けであり、私たちがグランドセイコーに望む長きにわたるブランドの方向性を示すものである。

The Grand Seiko Kodo "Daybreak"

 私は前作のKodoを直接見ることはできなかったが、今回の“薄明”は前作とほとんど違いがないにもかかわらず、その第2弾として私を驚嘆させた。さながらWatches&Wonders 2022における巡礼地のひとつであるかのように、前作のKodoについては絶対に見るべき作品であるとダニーが紹介記事のなかで述べている。その衝撃は、決して第1弾に劣るものではなかった。Watches&Wondersでの(セイコーの)最後の回にジェームズとベンと一緒に参加したのだが、ふたりともKodoを見るのが目的だったらしい。私が手早く写真を撮ったあとで輪になって時計を受け渡し、おのおのが時間をかけて鑑賞しながら、グランドセイコーの新時代の息吹に感嘆していた。さらに写真を撮るためにもう1度時計を返してもらったのだが、自分が繰り返し同じ部位に目を奪われていることに気づいた。複雑なビジュアルと革新的な機構を備えたこの時計は、正面から見るとシンプルですっきりとしたデザインにまとめられている。時を告げる針、パワーリザーブインジケーター、トゥールビヨンなどあなたの視線は瞬間的に次々とこれらの要素を巡り、そしてそれを繰り返すのだ。

 裏面を見て、私はさらに感動した。表側からはムーブメントが完全に宙に浮いているように見えるが、裏側を見てみると、メインプレートに相当量の細工が残されていることがわかる。より劇的な効果を得るためにどのパーツを取り外すべきかを、グランドセイコーがいかに慎重に決定したかが分かる。前面のスケルトン化されたブリッジは、クレドール 叡智IIなどに見られるような技巧的な仕上げの巧みさを示している。一方で裏面からは、並列して作動する二重香箱など、グランドセイコーの64年にわたる時計技術の革新が感じられる。

The Grand Seiko Kodo "Daybreak"

 見た目の美しさだけでなく、グランドセイコーがもっとも称賛されるべきはこの点である。基本的にはゼンマイが巻き戻されるとリザーブが枯渇するにつれてトルクが減少し、振動子への動力供給と振幅は低下し、その結果として時計の振動は速くなる。グランドセイコーは、この問題をコンスタントフォースで解決している。コンスタントフォースとは、トゥールビヨン脱進機に直接エネルギーを伝えるために、そのトルクを均等にする緩衝作用を持つ機構である。

 コンスタントフォースとトゥールビヨンを組み合わせた時計としてはF.P.ジュルヌのトゥールビヨン・スヴランが有名であり、これ自体はそれほど目新しいことではないように聞こえるかもしれない。ジョージ・ダニエルズをはじめこのコンセプトを採用したモデルはほかにもあるが、ジュルヌの偉業がどれほど名を馳せているかはともかく、このふたつの組み合わせがどれほど希有なものであるかは言うまでもない。裏側と表側の両面から見えるようにトゥールビヨンは入れ子構造になっており、トゥールビヨン用のケージとコンスタントフォース用のケージを備えている。その両方が、吊り下げられた大きな上部構造のなかに収められている。

The Grand Seiko Kodo "Daybreak"

 トゥールビヨンが1秒間に8回前進する一方でコンスタントフォースのケージはエネルギーを蓄積し、1秒間に1回動作して振動を伝え、同時にデッドビート・インジケーターの役割も果たしている。ご覧のように、コンスタントフォースのケージアームにはパープルのジュエルがあしらわれている(ムーブメントのほかのジュエルはブルーサファイアで、“薄明”というコンセプトを踏襲したユニークな選択である)。また、ムーブメントの裏側には“Sixteenth Note Feel”というエングレービングが施されているのがお分かりいただけるだろう。これは、ムーブメントの2万8800振動/時の振動数と、Cal.9ST1がメトロノームを彷彿とさせる一定のリズムで同期するパルスを備えていることに由来する。たいていのコンスタントフォースは完璧に同期しているわけではない。これは、ブランドの功績を讃えるちょっとしたおまけみたいなものだ。

The Grand Seiko Kodo "Daybreak"

 Kodoはグランドセイコーが誇る最高峰のケース仕上げのすべてを備えている。ザラツ研磨による鏡面仕上げの部分もあればサテン仕上げの部分もあり、光と影のドラマを生み出している。ブリリアントハードチタンはもはやKodoだけのものではなくなってしまった(今年グランドセイコーからリリースされた私のお気に入りのひとつ、ハイビートの手巻きドレスウォッチにもこの素晴らしい素材が使用されている)が、今回この素材が使用されたことで、グランドセイコーが過去に持ち得なかった技巧的で未来的なデザインが強調されている。白漆を何層にも塗り重ねたホワイトのレザーストラップとの組み合わせにより、グランドセイコーらしい洗練されたパッケージに仕上がった。

The Grand Seiko Kodo "Daybreak"
The Grand Seiko Kodo "Daybreak"
The Grand Seiko Kodo "Daybreak"

 ディテールに話を戻すと、この時計は正面側8時位置にパワーリザーブインジケーターを備えている。フロントとリアに施した面取りと高級仕上げは、アトリエ銀座のチームによるものだ。また、文字盤側のデザインが完全にオープンな割には、驚くほど視認性が高い。そう、サイズは直径43.8mm×厚さ12.9mmとかなり大きいが、ケースのほぼ端から端まで届くムーブメントとディスプレイを備えた時計の視覚的なインパクトにマッチしている。チタンを使用しているため、手首に装着してもそれほどかさばる感じもない(また10気圧防水を備えているため、必ずしも防水性と複雑さの二者択一を迫られることはない)。しかし視覚的なインパクトは絶大で、これほど複雑な時計がこれ以上小型になる(あるいは小さく見せられる)とは誰も思わないだろう。

The Grand Seiko Kodo "Daybreak"
The Grand Seiko Kodo "Daybreak"

 前作のKodoと同様に新しい“薄明”は20本限定となっており、2024年12月以降順次納品を予定している。しかしながら、グランドセイコーのチームは今作を10年にわたる研究開発期間を讃えるものとして、総生産本数はわずか40本にとどまると教えてくれた。グランドセイコーはドレスウォッチ、GMT、クロノグラフなどの分野で、ジャパニーズモダンデザインとクラシックなスタイルを融合させたヒット作を世に送り出してきた。しかし、“Kodo”ほどその実力を存分に発揮したモデルはない。グランドセイコーから近い将来、このダイナミックで未来的なスタイルの続編が発表されることを期待している。

The Grand Seiko Kodo "Daybreak"

グランドセイコー Kodo コンスタントフォース・トゥールビヨン Ref.SLGT005の詳細については、こちらの紹介記事か、グランドセイコーのウェブサイトをご覧ください。

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HODINKEE Shopはグランドセイコーの正規販売店です。Kodo コンスタントフォース・トゥールビヨンの詳細については、グランドセイコーのWebサイトをご覧ください。