ADVERTISEMENT
※本記事は2017年2月に執筆された本国版の翻訳です 。
“カルティエ ウォッチがひと味違う理由は、実はシェイプとデザインに秘密があるからなのです”。この一文が、カルティエの公式アーカイブから我々が覗くことを許された、アイコニックなタンクの最もクレイジーなバリエーションを含む25本の作品を要約している。これらは1847年の創業以来、このフランス発のメゾンを特徴付けてきた、クラシックなデザインにひねりを加えながら凛としたエレガントな雰囲気を保つユニークな能力を持つカルティエが、2世紀近くにわたり、いかに絶え間なく自己改革を繰り返してきたかを示す傑出したラインナップである。しかし、カルティエが時計業界の根底を覆した領域は美的センスにとどまらない。デプロワイヤントバックルの発明がどこから来たのか、また、このような独創的なケースのために特別に開発された数え切れないほどの画期的なムーブメントも忘れてはならない。
もちろん冒頭の動画もご覧いただきたいが、本記事では我々が手に取る機会を得た素晴らしい時計のいくつかを詳しく紹介しよう。
プラチナ製の角形懐中時計
一見シンプルな懐中時計に見えるが、エドモンド・イェーガー氏が1910年に出願した特許出願第421746号(前年、彼はカルティエの代理人としてフォールディングバックルの原理を保護すべく、フランスの特許第409891号を取得している)のとおり、技術的に高度な作品であることが判明している。このスクエアケースは、風防がベゼルをとおして8本のネジでケース側に固定されている。興味深いことに、丸みを帯びた四隅は、基本的な幾何学的形状に遊び心を添えており、後の腕時計型のタンクに見られるいくつかの形質を予言しているかのようだ。プラチナ製ケースに、プラチナ製のチェーンが付属しているのも、このモデルの魅力である。
1910年代のモデルにインスピレーションを得た、1980年代のサントス
サントスはカルティエ初の男性用腕時計である。冒険好きなパイロット、アルベルト・サントス=デュモンが、飛行機の操縦桿から手を離さずに時刻を確認したいという個人的なリクエストから生まれた時計だ(それが1904年の出来事であることを考えると、この奇妙な機械は“空飛ぶマシーン”と言ったほうが正確かもしれない)。その後、サントスは1911年に市販され、1980年代にもほぼ同じモデルが復刻されたことで、優れたデザインの普遍性が証明されている。
初代タンク ノルマル
タンク ノルマルは、その名から想像されるものに過ぎない。1917年にジョン・ジョセフ・パーシング将軍のためにデザインされ、1919年に量産された“最初の”タンクだ(全部で9本あり、すべてほぼ即座に売約された)。この名称は1922年以降、より丸みを帯びたエッジを備えたタンク ルイ カルティエと区別するために採用されたものである。どちらのタンクモデルも、長方形のなかに正方形のダイヤルを配した、カルティエのスタイル文法に則ったものである。このモデルは初期に製造されたものであるが(エングレービングは1938年のもの)、タンク ノルマルも1973年にリニューアルされている。
ベニュワール アロンジェ
カルティエ ベニュワールは1957年に発表されたモデルだが、そのラインはルイ・カルティエが20世紀初頭のカルティエの最高の顧客であったロシアのパブロフナ大公妃に贈った時計に強くインスピレーションを受けている。この時計の名は、フランス語の“ベニョワール(baignoire)”、つまりバスタブの形状に由来する(正式にそう呼ばれるようになったのは1973年のことで、ベニュワール アロンジェはレギュラーモデルのオーバーサイズバージョンである)。その劇的に細長い数字は、カルティエの典型的なタイポグラフィを踏襲しつつ、オーバルタイプであろうとも、ダイヤルのバランスをエレガントにする新たな手法を提案している。
クラッシュ
カルティエ クラッシュは、1931年にサルバドール・ダリが描いた“記憶の固執(Persistence of Memory)”をほうふつとさせるものの、その由来はまったく別のところにある(あるいは、それもまた作り話かもしれないが)。その左右非対称のケースは、自動車事故による炎上で着用したまま溶けてしまったベニュワール アロンジェに由来すると言われている。その時計は修理のためにカルティエ ロンドンに持ち込まれ、この時計のインスピレーションとなったという。または、単に1967年にクラッシュがジャガー・ルクルトのキャリバーを搭載して初めて登場したのが、活気あふれる60年代のロンドンの気風の産物だっただけなのかもしれない。いずれにせよ、この時計はほかにはない真のアイコンとなった。
“ペブル”シェイプのラウンドケース
カルティエ ロンドンが1960年代に製作したモデルをもう1本。クラシカルなラウンドシェイプのケースと、菱形のダイヤルに幾何学的な遊び心を加えたことが特徴だ。しかし、ペイントされたローマ数字やカボションサファイアをセットしたリューズなど、カルティエらしさは失われていない。また、小石のようなフォルムは、腕につけたときの美しさを際立たせ、エレガントなフォルムを追求するあまり、機能性が置き去りにされることがなかったことも特筆に値する。総生産数はわずか6本と推定される、極めて希少なリファレンスである。
タンク サントレ
1921年に発表された “タンク サントレ”は、オリジナルの “タンク”の長方形をさらに細長くしたモデルだ(サントレ“Cintrée”とはフランス語 で“スリムダウンした”、“引き締まった”という意)。カーブを描くケースは手首の湾曲にも沿い、薄型のケース形状はこの上なくエレガントである。映画『華麗なる賭け(原題:The Thomas Crown Affair)』でスティーブ・マックイーンが着用していたことで有名なこの時計は、ほかにも映画スターの手首に頻繁に登場する時計だ。しかし、その薄さゆえに防水性に難があり、1989年に厚みをつけて防水性を確保したタンク アメリカン登場のきっかけとなった。
ブレスレット仕様のサントス
1978年に発表されたサントスの特徴であるブレスレットのスクリューを見れば、これが今回挙げたなかで最も新しいモデルであることがわかる(ただしオリジナルのサントスも、カルティエ愛好家のあいだでCPCPとも呼ばれるプリヴェ カルティエ パリとして生産は続けられた)。“新生”サントスは、ケースとブレスレットの構造において、露出したネジが主な役割を果たしていることからもわかるように、先代のツールウォッチ路線を維持している。ステンレススティール製ケースは、それまでカルティエが一貫して使用してきた貴金属とは根本的に異なるものであったが、ゴールドのベゼルとブレスレットのスクリューモチーフが華やかさを添えている。“マスト ドゥ カルティエ”シリーズのより手頃な価格帯のモデルとともに、これらの作品は70年代から80年代にかけて、カルティエは若年層の顧客を取り込むことに成功した。
ニューヨークにある、全面改装されたカルティエ マンションのPhoto Report記事や、カルティエ ニューヨークの長い歴史についての詳細な取材記事もお見逃しなく。
詳しくはカルティエ公式ウェブサイトをご覧ください。
話題の記事
Introducing クレドールから、50周年記念 マスターピースコレクション 叡智Ⅱ 限定モデルが登場
チューダー、マイアミGPのビザ・キャッシュアップRBのカラーリングに合わせた特別な“カメレオン”ブラックベイを製作
Magazine Feature フレデリック・ピゲが導いたエクストラフラットという美学