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November 28, 2020
November 28, 2020
A Week On The Wrist IWC ポルトギーゼ クロノグラフを1週間レビュー(動画解説付き)
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A Week On The Wrist IWC ポルトギーゼ クロノグラフを1週間レビュー(動画解説付き)

“変わらずにいる”という強い意志。

ハリウッド映画黄金期の個性派を代表する主演俳優にロバート・ミッチャムがいる。彼の演技は型通りではなかった。むしろ、観客が彼の映画を見るために、なけなしのお金を払ってチケットを購入したのは、ミッチャムが彼自身を演じることを期待してのことだった。彼は、「6年間同じスーツを着て、同じセリフを言っただけさ。会社のお偉方は映画のタイトルと主演女優を取っ替え引っ替えしただけだよ」と語ったことが残されている。何とも自意識過剰な語りっぷりである。しかし、継続のために何か(ミッチャムの場合は“誰か”)を変える必要はないという考え方には、核心を突いたものがある。タイトルや主演女優は、映画にとって非常に重要な要素であるが、スターがそれなりのものをもっていれば、そう、その波に乗ればいいのだ。

 時計の世界では、この考えを象徴するような例は数少ないが存在する。ロレックスのサブマリーナー、オメガのスピードマスター、あるいはオーデマ ピゲのロイヤル オークを想像してみて欲しい。これらの時計は、いわば映画スターのような存在だ。IWCのポルトギーゼ・クロノグラフは、同社の中では上述した各ブランドのスター的存在に比肩しうる時計だ。それは現代のIWCコレクションの基礎となる時計であり、アイコニックな時計が全て1960年代と70年代に生産されたものだとは限らないという考えを如実に表している。IWCのポルトギーゼ・クロノグラフはロバート・ミッチャムのような時計である。そのスタイリング、アイデンティティのセンスは、時代の変化に合わせて多少の軌道修正が加わることがあっても、その本質は普遍的だ。そこが人々から高い評価を得る所以なのだ。

 実は2020年4月に公開したハンズオン記事に続き、今回で2回目の取材体験となる。私の意見はあまり変わっていないのだが、この時計を腕に着けて1週間を過ごしたことで、その意見というか考え方が、より深く自分の中で確信に変化したように感じている。この時計を身に着けていた1週間、私は普段通りに過ごしたのだが、時計がどれくらいの精度で推移するのか、(精度維持を)妨害する要素があったとしたら、どの程度それに耐えられるのかを確認するために、あえてそうした。私が言う日常というのは、朝コーヒーを淹れることや、活動的なものでも、せいぜいギターを座って弾くといった無害な事柄だ。この時計のお手並みを拝見する気満々であったが、1つ断っておくと、とりわけこの異常なコロナ禍にあって、私は過酷なライフスタイルを送っているわけでもない。したがって、もし読者がこの時計をスカイダイビングやサーキットでどのように活躍するかについての話を期待しているのであれば、それはお門違いというものだ。


ミッドセンチュリーを彷彿とさせるヘリテージデザイン

IWCのポルトギーゼ・ラトラパンテ Ref. 3712。

 20世紀半ば(ミッドセンチュリー)には、多くの "革新 "がもたらされ、それは当然デザインにも波及した。今日生産されている多くのもの、特に時計の多くは、そのルーツをこの時代に創造されたデザインに遡ることができる。一方で、IWCは、現在のラインナップのほとんどを世紀末(1990年代後半)のデザインにまで遡ることができる数少ないブランドの1つである。マークシリーズは、パイロットウォッチのラインナップの中核となるドッペルクロノグラフを含めて、この時期に復活したことで知られる。そして1995年、IWCはポルトギーゼ・クロノグラフの原型となるデザインの時計を発表した。それがポルトギーゼ・ラトラパンテ Ref.3712であり、このスプリットセコンド式クロノグラフには、リチャード・ハブリングが開発したラトラパンテムーブメントが搭載されていた(このムーブメントは後に製造中止に)。時計自体も2016年に復活するまで製造中止となった。しかし、その製造中止期間中にも、IWCのラインナップの中でポルトギーゼ クロノグラフを待望する声は高まっていたのである。

IWCのポルトギーゼ・クロノグラフ・ラトラパンテ ブティック限定(カナダ、2017年)。

 1998年には、アラビア数字のアプライドインデックス、スイングピニオン、ほぼベゼルレスといって良いほど大口径の41mmケース、そしてレザーストラップを備えたポルトギーゼ・クロノグラフが発表された。この発表から22年の歳月を経ても、そのパッケージはほとんど変わっていない。実際、審美面で、この時計は頑固なまでに一貫したモデルであり続けている。IWCが長年ポルトギーゼ・クロノグラフを変更しなかったように、積極的に何かを変更しないというのは、実際のところ根気の良さが必要なのだ。この傾向を共有する唯一の存在は、オメガのスピードマスター プロフェッショナルだが、その普遍性の背後には、実務的な理由がある。すなわち、そのNASA公式認定に設けられた前例主義的な規制である。しかし、IWCのポルトギーゼ・クロノグラフは宇宙に同伴する時計ではなく、その外観を維持するための制約は一切ない。この時計はよく出来ている、IWCはそれを理解しているからこそ、22年間、何も変えなかったのだ。 

ソリッドバックケースを採用した先代のポルトギーゼ・クロノグラフ。

 製造開始から21年間、この時計にはバルジュー社のETA7750ムーブメントが搭載されていた。ある時点以降、ムーブメント供給はセリタに切り替えられた。これらのムーブメントは自社製キャリバーではなかったため、ソリッドバックケースの内側に隠されていた。それにも関わらず、IWCは、エボーシュムーブメントに対して、精度と性能の両面で徹底的に調整を施すことで知られている。ポルトギーゼ・クロノグラフの発表以来、この時計はポルトギーゼのラインナップの中で最も人気のあるモデルとなり、アイコニックな存在となっている。


何も変えずに変わる方法

 2020年1月、IWCはアップデートされたポルトギーゼ・クロノグラフを発表した。その写真を見たとき、私は正直言って驚いた。文字通り、少なくとも最初の印象は何も変わっていなかったからだ。これは私が知っていたのと同じ時計だったが、ダイヤルの下にこそ大きな変化があったのだ。それが、自社製キャリバー69355の導入である。コラムホイール、垂直クラッチ式の、このクロノグラフムーブメントは、IWCがムーブメントの多くを自社生産するというブランドの近年の意向に沿ったものだ。この変更は、先ほどのハリウッドの例え話における映画の新しいタイトルだとしよう。新しいムーブメントは、先代との間を差別化する存在だが、全体的なデザイン(変更なし)こそがスター俳優だ。ロバート・ミッチャムと同様、ある点を除けば、この時計もその姿を忠実に再現している。つまり、主演女優だ。それは、すなわちサファイア製のトランスパレントケースバックである。20年間、このモデルがソリッドバックケースを採用していたのに対し、このモデルは全面的にムーブメントを露出したデザインになっている。新しいムーブメントを搭載していればこそ、見せるのは当然のことだろう。

 前述したように、アップデートされたムーブメントのリリースにより、時計にはほとんど変化がなかったものの、これがIWCの実に巧妙なところだ。私がこの時計が欲しかったとしたら、デザインの刷新と新ムーブメントの採用を同時に受け入れるのは難しかっただろう。だが、現実には私が望んだとおりとなった。他に適切な言葉が見つからないが、デザインを犠牲にすることなく技術面が改善された、とでも言おうか。

 この時計のハンズオン記事に私が取りかかったとき、なぜIWCは新ムーブメントを導入して時計のケース径を41mmから縮小しなかったのかと疑問に思った読者からコメントをいただいた。私は実際、このことについて同僚の1人と話をすることになった(名前は伏せよう)。彼らは、少なくともIWCの世界では、ポルトギーゼ・クロノグラフは、本質的にロレックスのサブマリーナー的な立ち位置であることを私に例えてみせた。ほんのわずかな変更でも、この時計を愛する人々に大きな動揺を与えてしまうのだ。念のため、その応酬はロレックスが41mmに拡大したサブマリーナーを発表する前にやり取りされたことを断っておこう。

 新しいCal.69355は、多くの人が古典的なムーブメントのサイズだと考えるため、多種多様な時計に搭載することができるものだ。ムーブメントサイズが技術的にはケースの直径を縮小する余地をIWCに与えているにも関わらず、時計のサイズ変更は、長年親しまれてきたデザインを根底から覆し、混乱を招くことになる。また、ムーブメントに関する別のコメントでは、トランスパレントケースバックは歓迎すべきものの、手段が目的化したと感じているという意見もあった。まるでIWCがチェックボックスを埋めるような仕事をしたようだ、と。この点については、どんな時計にも言えるのとだろう。高い水準にあっては、特にムーブメントの仕上げのレベルにどのような感想を抱くかに関して、非常に主観的なものになる。しかし、どの基準に照らしても、この時計のムーブメントは悪くないと言わざるを得ず、少なくとも私がこの時計を眺める限り、その美しさを楽しむことができた。

 これに続いて、私はハンズオン記事でムーブメントの正当性についてのコメントも目にした。そのコメントは、ムーブメントが別のIWCのクロノグラフムーブメント、言い換えれば、ETAムーブメントをベースにしているという事実に言及していた。この点について、私は“ポン乗せ”という言葉のもつ定義をはっきりさせておかねばならないと思う。この時計は、IWCの研究開発の成果である独自のクラッチ機構と肉抜きされた脱進機構を備えている。新しいCal.69355は、おそらく従来通りの調速機構を持っているが、自社生産であろうとなかろうと調速機構はいずれにしても外注されるものだ。さらに、幾多もの時計メーカーは時計を製造する限り、相互依存してきたのだ。スイスの時計製造業が水平分業的な産業構造である以上、現実には完全自社製ムーブメントなどというものは存在しないのだ。


オン・ザ・リスト

 デザインとサイズが既に定番となった時計において、着用者から時計に順応することは、ある程度あるものの、逆もまた然りである。ほとんどのオーナーはこの時計が欲しくて購入し、何を身に着けるべきかを理解しているだろう。そうでない人のために、2つの点で痒い所に手が届く時計だと言っておこう。つまり、スポーツクロノグラフとしての顔に加え、“ドレッシー”かつ堂々としたクロノグラフとしての顔だ。この時計の全体的な雰囲気には、ある種の控えめなエレガンスと自信がうかがえ、それは装いの面で幅広い汎用性を提供している。

 ケースサイズは前述の通り41mmだが、この数字だけでは全てを語りきれない。この時計は事実上、全くベゼルが存在しない。私が着用したモデルはシルバーダイヤルであったことを考えると、ダイヤルカラー(ホワイトダイヤルに近い)が、時計が実際よりもはるかに大きいかのような錯覚を与えるので、41mm径よりも大きく感じる。このサイズはともかくとして、私は腕に巻いたときに少し大きく感じるだろうと予想していた。しかし、手首の側面からラグが垂れ下がる問題もなく、ケースは浮くこともなく快適に装着できた。時計の全体的な厚みは約13.1mmで、やや厚く見えるが、時計を身に着けているときには殆ど感知できないほどだ。私はこの時計を厚みのある時計だとは一瞬も感じることはなかった。 

 約22年前からそうであったように、この時計はレザーストラップ仕様である(最近のアップデートでは、そこにも変化が見られた)。私が着用する機会を得たバージョンは、ダイヤル上のブルーのアクセントにマッチした同色のアリゲーターレザーストラップが装着される。ストラップ自体は、私がこの時計に抱く不満の1つである両開き式ディプロワイヤントバックルが付属する。私にとって時計は身体の一部であり、意識する必要のない存在なのだ。逆に、時計を外したり、眺めたり、リューズを回したり、1日の様々な時間帯に大きな楽しみを得ている。時計は愛着の対象であり、私はかなりの愛を時計に注いでいる。しかし、クラスプは自然に開閉できるべきだ。車輪を再発明する必要がないのと同じように。このクラスプは、両開き式ディプロワイヤントであるため、時計を身に着け、または外すために2段階の開閉が要求される。片方のクラスプが開くと、もう片方も同様に開放する必要があることが、わかりにくかった(私はこの機構を理解しようとしてロダンの彫刻のように5分程固まってしまった)。クラスプ機能でまごついたのはさておき、クラスプは閉じたときに手首にしっかりと固定され、装着感に優れていることは付け加えておこう。

 これ以上何かいうことができるのは、長年変化に抗ってきたダイヤルのデザインについてだろうか? いや、そうではない。しかし、実際に何かを身に着ける体験は間違いなく新たな視点をもたらす。ダイヤルはシルバーで、高い質感のグラデーションとそれに伴う放射状の模様がインダイヤルに施されている。この時計のデザインの特徴は、ダイヤルを飾るアラビア数字のアプライドインデックスだ。アラビア数字の書体は、古典時代を想起させる。このクラシックな意匠とは対照的に、文ダイヤルの右端と左端に施された書体が特徴的だ。そこに記されたモチーフは、様々な意味でミッドセンチュリーデザインに近いものがある。しかし、その両要素の折衷は、紛れもなくIWC独自のものである。

 特にこのモデルでは、ブルーを基調としたアクセントによって、コントラストを際立たせる手法を踏襲した。ダイヤルの周囲には、数字と一緒に分を表す青い円形のマーキングが施されている。時針と分針のリーフハンドセットを含む針もブルーで彩られている。シルバー地にブルーが果たす役割は、ストラップと合わさることで、デザインの全体的な統一感に貢献している。

 実際に目にした傾斜したチャプターリングの配置は印象的であった。内側の目盛り(ベゼルにプリントされていない)は、ダイヤルの表面積を小さくしてしまい、時計の重要な機能である視認性を低下させてしまうことがよくある。ここでは、傾斜をつけた構成によって、スペースを確保しながら、過密さを感じさせないよう配慮されている。ダイヤルには十分な余裕があるのだ。

 余裕といえば、12と6のアラビア数字に注目してみよう。クロノグラフにカットされたアラビア数字、つまりダイヤルのテキストは何も新しいものではない。実際には、それは幾年にもわたり、時計製造、時計のデザインで行われているものだ(ほぼ全ての懐中時計で見られる意匠だ)。しかし、ここでは、アラビア数字がスパッとスライスされている(数字とインダイヤルの間の段差に注目)というよりも、不明瞭なっているように感じた。一方で、アプライドされたアラビア数字にインダイヤルの軌道を重ねるのは難しいだろうということを考えると、致し方ないのだろう。

 私自身は必ずしもクロノグラフ“オタク”というわけではないが、クロノグラフを身に着けるたびに、そのメカニズムとの対話を楽しむことができる。このモデルも例外ではなく、プッシャーの感触はキビキビとしていて満足感が高い。日付無しクロノグラフの優れた点は、時計初心者であっても、ほとんど学習する必要がなく、機能を直感的に操作できることだ。冒頭で述べたように、私の生活は特にエキサイティングなものでも、過激なものでもないが、それでも日常のありふれた営みの中で、このクロノグラフを使う方法を見つけることができた。ムーブメントについて、少なくとも実用面のコメントを1つ挙げるとすれば、少し音が大きいということだろうか。ローターが手首の動きに合わせて回転する音は、低価格帯の時計の特徴だと私は思い込んでいたが、本作で聞かされるとは完全に予想外だった。

 率直に言って、この時計は身に着けたとき、とても親しみを覚えた。刷り込まれたストーリー性がない分、自分なりのストーリーを紡ぐことができるのだ。そのおかげで、レースドライバーや宇宙飛行士など、クロノグラフにもっと精通する専門家でなくとも、身に着ける気軽さを感じることができたのだ。妻と子犬との散歩、音楽を聴くとき、お気に入りの映画を観るときなど、様々なシーンでこの時計を身に着けていた。スポーツとドレスが混在するこの時計の外観は、特定の服装に合わせる必要はなかった。どのような服装をしていても、場違いではなかったのだ。

 全体的に見て、大きいサイズにもかかわらず、IWCのポルトギーゼ クロノグラフは、特にレザーストラップの装着感に非常に優れる時計だ。実際、他のモデル(ゴールドのアクセントなど)が少し保守的な印象を与える中、このシルバーとブルーのバリエーションは、ラインナップの中で最も汎用性の高いモデルだと思う。この時計を身に着けると、このデザインがなぜこのような深遠な方法で時計界に浸透し、長い歴史を歩んできたのかをすぐに理解することができるだろう。


競合モデル

 新しい自社製キャリバー69355をポルトギーゼ クロノグラフに搭載することで、IWCはこの時計を新しいカテゴリーに完全に移行させた。さらに、この変更によってブランドは価格を大幅に上昇させることはなく、価格は79万5000円(税抜)である。自社製クロノグラフが非常に希少な時期がかつてあった。しかし、日々移ろいゆく中でそれも変わった。現在では、約4000~1万ドルの範囲内で、スタイル、ヘリテージ、自社製ムーブメント採用の時計が混在しており、ポルトギーゼ クロノグラフと同じカテゴリーで競い合っている。以下に、私は代表的な競合候補をご紹介したいと思う。

IWC パイロット・ウォッチ・クロノグラフ ・スピットファイア

 そう、まずは身内との競合だ。昨年、IWCはポルトギーゼ クロノグラフへのムーブメント変更に先立ち、自社製ムーブメントであるキャリバー69830を搭載したパイロット・ウォッチ・クロノグラフ ・スピットファイアを発表した。このモデルは、よりスポーティで、ヴィンテージ感を忠実に再現しているが、ツールウォッチとしての機能を求める方には、間違いなくオススメのモデルだ。この時計は、同じ直径41mmでケースが少し厚くなっているが、70万円(税抜)で、自社製の垂直クラッチ式クロノグラフが手に入るのだ。

オメガ スピードマスター “シルバー スヌーピー アワード” 50周年記念モデル

 私はいつもスピードマスターをこのリストに載せようと思っていたが、このモデルがリリースされたのはラッキーだった。それも競合モデルに相応しいブルーの自社製クロノグラフムーブメントまで搭載しているとは。直径42mmのこのモデルはポルトギーゼよりも大きく、手巻きだ。しかし、それを比較に持ち出してはならない。ムーブメントはMETAS認定のCal.3861で、業界トップレベルの精度を誇るからだ。確かに、この時計は103万円(税抜)と価格帯からは少し頭抜けているが、それにしても... スヌーピーが月を飛び回るだと!?

ゼニス クロノマスター エル・プリメロ

 クラシックなクロノグラフのデザインを語るのであれば、ゼニスのエル・プリメロは外せない。もちろん、その歴史は1960年代にまで遡る。この時計には、有名な自社製ムーブメント、エル・プリメロ、赤と青のシグネチャーデザイン、そしてクロノグラフ秒針にはゼニスのアイコンである星が描かれる。この時計は38mmとポルトギーゼに比べると小さめだが、クラシックなサイズの時計を手に入れることができ、価格は84万円(税抜)。妥当な価格帯のど真ん中を突く設定だ。

タグ・ホイヤー カレラ 160周年 シルバーダイヤル リミテッドエディション

 カレラ160周年限定モデルは、オマージュモデルのようなもので、ポルトギーゼ クロノグラフのようなモダンなデザインではないが、限定モデルに関わらず汎用性の高い装着性とスタイリングを提供する。もちろん、フェイクパティーナとカーレースにインスパイアされたヘリテージデザインだが、同時にシルバーダイヤルを採用する。ケース径39mmのカレラ 160周年限定モデルは、ちょうど良いサイズ感で、自社製キャリバー02を搭載する。限定モデルゆえに、この時計は永遠に入手できるわけではないが、69万5000円(税抜)という価格は、間違いなくポルトギーゼ クロノグラフの強力な競合となる時計である。


最後に

 つまり、古いものは新しいものに生まれ変わるのだ。私はIWCのポルトギーゼ クロノグラフと長い時間共に過ごす機会を得て感謝している。なぜなら、デザインの力と、ある種のアイコン的ステータスをもつものの背後にある説明不能な事について、いくつか学ぶことができたからだ。ポルトギーゼ クロノグラフは、間違いなくIWCの中で象徴的な存在だ。15~20年前にこの時計を購入した日のことを思い出し、今でもこの時計を身に着けている人は多いだろう。典型的なスポーツウォッチとの差別化を担う時計であり、最初の本格的な時計として購入した人も多いだろう。21世紀になって注目を浴びるようになったクラシックはそう多くはない。だからこそ、この時計は称賛されるべきなのだ。

 我らがロバート・ミッチャムは、彼が口にしていた数々の下品な話の中で、「僕は駆け出しのころから何も変わっちゃいないんだ。下着以外はね」と語った。IWCのポルトギーゼ クロノグラフは、まさにこの感情を体現しているのではないだろうか。この時計は20年以上もの間、その姿勢を貫き通してきた。下着? まあ、それはムーブメントと同じだと思って、先に進もう。

 要するに、伝統的なブランドから、正確で汎用性の高い時計を探している方は、IWCがこのモデルで実現したことを高く評価することだろう。IWCは往年のデザインを踏襲しているが、実際の時計は良くなっていると体感でき、それは意味のあることだ。しかも、それらを80万円未満の価格帯に据え置いた。一般に、私はブレスレットに装着したスティール製のスポーツウォッチを好むが、この時計にはその隙間を埋める何かがある。この時計は何にでも対応するのだ。…水泳を除いて(この時計は3気圧防水なので水泳は避けること)。有名な童話『ゴルディロックスと3匹のクマ』の主人公が探し求める“ちょうどいい”魅力を、どのような環境にあっても提供してくれるだろう。望むとあれば、タイトルを変更したり、新しい主演女優を起用したり、新しい下着を購入したりすることもできる。しかし、IWC ポルトギーゼ クロノグラフは、どのような状況でも変える必要はないのだ。 

IWCポルトギーゼ クロノグラフの詳細については、IWCのオンラインサイトをご覧ください。

写真:ケイシャ・ミルトン