Watching Movies クメイル・ナンジアニ、映画『エターナルズ』でロイヤル オークを着用し、指からレーザーを放つ

　それにもかかわらず、ケビン・ファイギ（Kevin Feige）とマーベル・スタジオは、『ノマドランド（Nomadland）』（2020）の監督クロエ・ジャオ（Chloé Zhao）を次の大型作品のメガホンを取るために起用したが、それは封切りとともに完全にやられてしまった。この映画の興行成績をパンデミックのせいにすることはできても、評価をそのせいにすることはできない。この映画は酷評された。

　しかし、この映画についてどう思うかは別として、かなり豪華なキャストが出演していることは確かだ。主演のひとり、クメイル・ナンジアニ（Kumail Nanjiani）は、指鉄砲を振り回す宇宙人のキンゴ役を演じたボリウッドスターで、莫大な出演料を得たことで有名だ。ナンジアニは時計好きでも有名だが、この映画で身につけている時計にも遠慮はなかった。このような映画にはふさわしいと思えない時計だが。

　先週、HODINKEEをチェックしていた方なら、我々のコンテンツがロイヤル オーク一色であったことにお気づきかもしれない。APは、そのアイコニックなモデルの50周年を祝って、100種類にも及ぶデザインバリエーションを発表した。スタンダードなタイム＆デイトからクロノ グラフまで、そしてトゥールビヨンやダイヤモンドをあしらったモデルも登場した。

　なるほど、確かにそうだが、それがマーベルの映画とどう関係があるのだろうか？　まあ、ふたつを合わせて考えてみよう。まず『エターナルズ』にはロイヤル オークが登場し、キンゴが着用すること。この高級時計とのつながりに気づいたのは、私が初めてではない。この業界で私の友人であるTime+Tideのザック・ブラス（Zach Blass）氏に賞賛を贈らなければならない。しかし、私は『大統領の陰謀（原題：All the President's Men）』のごとくジャーナリズムに徹し、この時計についての裏話と、なぜこれが思いがけずこの映画に登場することになったのかを少し掘り下げてみた。

　しかし、その前に時計そのものを検証してみよう。これはAPの自動巻き ロイヤル オーク クロノグラフだが、一般的なものとは一線を画している。ケースからブレスレットまで時計全体が氷のようにつや消しの18Kホワイトゴールドで作られ、深い紫色のグランド・タペストリーダイヤルを備えている。この時計は、わずか200本の限定モデルとして2019年に発売された。時計界の秘密を語るとき、APに関するこの問題は非常に深く難解だ。

　言うまでもなく、フランソワ・ベナミアス（François Bennahmias）氏が経営するメゾンから、このマーベルとのつながりが出てきたことは衝撃的なことではない。2021年3月に発売された、ブラックパンサーの小さな彫刻をダイヤルにあしらった、紫色のAP ロイヤル オークコンセプトを覚えている人もいるかもしれない。あの時計は、我々の多くがエターナルズを知る前に発表、リリース、販売され、オークションに出品されたのだ。

　たった200本しかない2019年のリミテッドエディションが、なぜ2021年のマーベル映画に登場したのか？　このピースは購入不可能なはずでは？　その通りなのだが、タイミングはとても簡単に説明することができる。過去2年間のほとんどの映画と同様に、この映画も新型コロナウイルスのパンデミックによる遅延があった。2019年7月から2020年2月のあいだに最も重要な撮影があったため、これは世界が停止する直前に入ってきたのだ。ロックダウンによって妨げられたシーンの再撮影が必要だったことから、ディズニーは2021年に独占的な劇場公開を確保できるまで、この映画の公開を控えたのだ。

　撮影が開始された2019年7月は、まさにAPが映画に登場するロイヤル オーク フロステッドゴールド クロノグラフを発売した月であり、重要な意味を持つ。そして、ここからが掘り下げどころだ。ナンジアニは、宇宙のスーパーヒーローから世代を経てボリウッドスターになったというこのキャラクターについて衣装部門と話を交わし、キンゴはいい時計を持っていると思う、と言ったそうだ。そして、フロステッドゴールドの外観を持つこの特別なAPのロイヤル オーク クロノグラフの存在をスタッフに知らせたのだ。衣装部門の担当者がAPに連絡し、そして映画の歴史の一部となった。

　この映画のすばらしいところは、映画のなかのいくつかのシーンで、ナンジアニの手首の時計を本当に見ることができることだ。彼が腕時計をしていないのは、スーパーヒーローの衣装を着ているときか、腕時計が存在しなかった古代史のフラッシュバックのときだけなのだ。キンゴの衣装は紫が主体なので、この時計は彼のキャラクターの衣装の一般的なカラーパレットとすばらしい組み合わせになっている。キンゴは圧倒的に派手な、名声を求めるエターナルなので、彼の時計の趣味に対するナンジアニの評価には同意できる。パープルのダイヤルにつや消しゴールドのAPクロノほど華やかなものはない。

　本作は、数千年にわたってエターナルズを追ったストーリーだ。『ブルース・ブラザーズ（The Blues Brothers）』（1980）のように、ある時点でバンドは解散し、映画の前半の大部分は、エルウッドが言うようにバンドを再結成する過程である。そして彼らは実際、再結成する。ほのぼのするシーンとして、チーム全員が食卓を囲んで食事をするところがある。キンゴは共用の皿を持ち、自分の分の食事を取り分けている。テーブルを広角で撮影しているが、彼が料理を皿に盛ると[00:53:12]、フロステッドゴールド クロノグラフがカメラに向けて輝き、41mmの時計の全貌が一瞬だが映し出される。

　その後、チームは恐ろしいディヴィアンツ（悪の生物）との最初の戦いに臨む。夕暮れの森で、ディヴィアンツがエターナルに対して猛攻を開始する。エターナルは力を使っているにもかかわらず、私服のままだ。キンゴは腕時計をし、同じく紫のボンバージャケットを羽織っている。そして、いよいよ能力を使って攻撃するときが来た。手から放つ宇宙線を集め始める。彼が力を蓄えるにつれ [01:16:50]、カメラは彼の手首をミディアム・クローズアップでとらえる。夕暮れにもかかわらず、腕時計がはっきりと映し出され、ダイヤルカラーも確認することができる。このスーパーヒーロー映画におけるヒーローショットであることは間違いないだろう。

『エターナルズ』（出演：クメイル・ナンジアニ、サルマ・ハエック、アンジェリーナ・ジョリー、ジェンマ・チャン、リチャード・マッデン、ブライアン・タイリー・ヘンリー、キット・ハリントン）は、クロエ・ジャオが監督、ジェームズ・L・エディが小道具を担当。Disney +でストリーミング、iTunesやAmazonでレンタルが可能。

Lead illustration, Andy Gottschalk