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Introducing ブレゲ クラシック ダブルトゥールビヨン 5345 "ケ・ド・ロルロージュ"

僕たちにはいつも、パリの想い出がある。

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時計愛好家の世界的な進化の中で、おそらく誰もが現時点で思い出しても驚かないだろうが、ブレゲは、スイス生まれだ。しかし、彼は仕事人生のほとんどをフランス、とりわけ彼の工房があった時計河岸(Quai de l'Horloge; 現在のシテ島ロルロージュ河岸) 39番地で過ごした(恐怖政治を避けスイスに一時的に戻った空白期間を除いて)。時計工房の建物は、パリの中心部にあるというだけでなく、セーヌ川の真ん中にある自然島でもあり、少なくともユリウス・カエサル時代から占領下にあり、メロヴィング朝から宮殿があった場所でもある。

 時計河岸(Quai de l'Horloge)の名は、Horloge(フランス語で時計の意味)や壁時計―オルロージュ通りがパレ通りと交差するコンシェルジュリーの角にある―に由来する。その壁時計は、1371年当時のままの形で設置されており(パリで最初に作られた最も古い公共の時計)、隣接するコンシェルジュリーの建物にちなんで名付けられた。この建物は、かつては牢獄として機能するなど、いくつかの目的を果たしてきた。しかし、もともとは6世紀から14世紀にかけてフランスの王が住んでいたシテ宮殿の一部だった。

 もし、あなたが歴史とロマンスの感傷的な話を受け入れるのならば、パリに行ってコンシェルジュリーの時計からオルロージュ通りに沿って39番まで歩き、かつてアブラアン-ルイ・ブレゲが立っていた通りに立ち、かつてのブレゲ社の本拠地を眺めるのは、なかなかの体験になるだろう(もちろん現在のブレゲは、スイスのヴァレ・ド・ジューに本社を置いているが、全てが始まった地に戻ってみるのはとても感動的だ)。

 パリには、同じような体験ができる場所が数えきれないほどあるだろう。街中の石畳には、百の物語が語り継がれているような場所はほとんどないが、特にブレゲファンにとっても、また時計の歴史を学ぶ学生にとっても、ロルロージュ河岸は、今でもユニークで特別な場所である。

 そしてまた、2006年に初めて複雑機構として発表され、それ以来ブレゲトゥールビヨンの主力モデルとなっている「クラシック ダブル トゥールビヨン」最新作のインスピレーションの源でもあるのだ。

 ブレゲ ダブル トゥールビヨンは、2つのトゥールビヨンケージがムーブメントプレートに取り付けられた珍しいオービタル・トゥールビヨンである。プレート全体が12時間に一度ケースの中で回転し、上部のトゥールビヨンブリッジはその半分の長さに沿ってブルーに塗られており、時針として機能。ムーブメントプレート上には2つの主ゼンマイ香箱があり、他のモデルでは隠されているが、このモデルでは精巧に仕上げられたブレゲの"B"で覆われている。各トゥールビヨンには、それぞれ独立した動力系の輪列があり、2つの輪列は左右対称に配置されている。2つのトゥールビヨンからの出力は、ディファレンシャルギアによって平均化され、1つの平均速度を生成。

 本モデルは、ブレゲの作品の多くを特徴づける国際的な優美さとエレガンスを最高の状態で維持しながらも、会話に火をつけ、称賛を集めることを目的とした、重厚で堂々としたステートメントピースであることは間違いない。ブレゲ自身、文字盤のデザインとムーブメントのレイアウトの両方に細心の注意と抑制を払ったことで知られているが、彼の美意識はケースだけに留まらず、時計のあらゆる部分にまで及んでいる。彼の最も有名な時計であるNo.160は、マリーアントワネットのために制作されたグランド・コンプリケーションなのだが(納品されることはなかった)、高級時計製造においてこれまでに見たことのないような率直なショーピースだ。

主ゼンマイの香箱のアッパーブリッジとして機能する "B "のベベルを手で研磨。

 実際に見たり、手に取ったりする機会はまだ無いが(生産量が少ないことを考えると、そうできる可能性も低いだろう)、ケースはプラチナ製で、サイズは46mm x 16.80mm(ドーム型のボックスサファイア風防を含む)。アカデミー賞の夜、ヴァニティ・フェアのアフターパーティーに現れたアカデミー賞受賞者のような喜びに満ちた主張で、腕元でその存在感をアピールしてくれることだろう。

 この時計の文字盤側には、とてつもない量の細工が施されているのだが、裏返してみると、思いもよらぬご馳走が待っている。通常、この種の時計のケースバックは、文字盤側の奇跡的な小宇宙のような体験に比べれば、ムーブメントプレートが大きく広がっていて、少し退屈に感じるかもしれない。しかし、ダブルトゥールビヨン 5345 "ケ・ド・ロルロージュ"では、非常に魅力的で、衝撃的とまでは言わないまでもサプライズがあなたを待っている。

 ケースバック(金無垢製)は、19世紀の夜明けを思わせる情景が刻まれている―彫金されているのは、ブレゲの当時のロルロージュ河岸39番の建物が再現されたもの。この彫金は、レンガの質感、機光学的に正しい形で空に浮かぶかすかな霧に至るまで非常に細密に描かれている。ブレゲによると、いくつもの開口部から見える歯車の金色は、夕暮れ時のろうそくの光を表現するためのものだそう。じっくり見ると下の窓の1つにも小さな歯車が見える。

またこのエングレービングがムーブメント全体が回転するもののベースプレートは回転しないことがお分かりいただけるだろう。つまり、目に見える歯車は、ムーブメントの残りの部分と一緒に回転しないものだ。よくよく考えてみると、これは巻き上げと時刻設定とが一体化している部分である。窓の一つにもブレゲの小さなオートマトンの姿を見る機会を逃したのではないかと感じるが、彫金はそれがなくても同じように美しく、おそらくもっと格式高く感じられるだろう。

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 価格は税抜7060万円(限定モデルではないが、限定生産であったとしても驚きはない)で、明らかにストーリーを好み経済的にも手に入れることができる熱心な時計愛好家のための時計だが、典型的なショーピースというわけではないと私は考える。

 確かに印象的な時計であり、様々なレベルで印象を与える事を目的とした時計ではあるが、リシャール・ミルのような普遍的な豊かさの象徴ではないし、ティファニーダブルネームのパテック5711のようなインサイダーアクセス(と裕福さ)の象徴でもない。

 その代わりに、私が思うに、ブレゲは(コストの問題はさておき)生粋のブレゲ愛好家であるだけでなく、他のブランドにはない美しさと革新的な時計製造の歴史、そしてユニークで注目すべき遺産であるブレゲの名が表すものを真に愛している人のためのものなのだ。

腕時計に50万円以上の予算があれば、喜んでシャンパンを入れてくれるブティックはいくらでもある。私が思うにこうしたモデルを購入する人は恐らく、Instagram上で誰かの口をポカーンと開けさせるよりも(もちろん、こうした好みがあることを誇示したいとはいえ)自分の好みを喜ばせることに興味をもっているようだ。

ブレゲ クラシック ダブルトゥールビヨン 5345 "ケ・ド・ロルロージュ": プラチナ製ケース、コインエッジとボックスサファイア風防をもち直径46mm x 厚さ16.8mm。ムーブメント: ブレゲCal.588N、12時間軌道周期のダブル トゥールビヨン、81石、2.5Hzで駆動。平均化されたディファレンシャル、ブレゲ・オーバーコイル(ブレゲひげゼンマイ)、ブレゲ「B」が施されたブリッジをもつ2つの主ゼンマイ香箱。6姿勢調整済み。7060万円(税抜)詳細はブレゲ公式サイトへ。