今年5月、ハミルトンがゲームソフト『ファークライ6』のためにカスタムウォッチを製作したというニュースが流れた。当時、我々が知っていたのは、この時計がゲームに登場し、ゲームの最初のミッションをクリアしたゲーマーには、この特別な時計が提供されるということだけだった。しかし、この時計をピクセルではない現実世界で見ることができるのか、そしてそれがいつ頃になるのかについては不明だった。この4ヵ月のあいだに、我々はNFT（Non-Fungible Token＝非代替性トークン、つまり唯一無二の証明を得た、コピーできないデジタルデータ）のようなコンセプトに慣れてきた。非代替性の時計は、代替性のある時計と同じくらい好ましいものなのかもしれない。
伝統を重んじる人たちのために、ハミルトンは現実に存在する時計を作り、我々の現実の手首にも装着できるようにしたのだ（マトリックスの世界に住んでいると信じている人以外になるが）。
ハミルトン カーキ フィールド チタニウム オート ファークライ6 限定モデルが発売される。超軽量で耐久性に優れた素材がカーキに使用されたのは今回が初めてではないが、このモデルには『ファークラ6』とのコラボレーションに関連して、いくつかのユニークなデザインが施された。
この時計のニュースが報じられたとき、ゲームのスクリーンショットは1枚しかなかった。そこには時計のようなものが写っていたが、鮮明ではなかったのだ。言うまでもなく時計の実機を見る前に相応の確信があったが、正直なところ、スクリーンからそのまま持ってきたような時計を見る前に、ゲームの静止画で時計を見るのは不思議な感じがした。本題からそれるが、この時計を身につけているあいだ、自分がビデオゲームのなかにいるような感覚になった。
最初の印象は、とにかく大きいということ。カーキ フィールド チタニウムのコレクション全体のサイズが42mmであることは知っていたが、それよりもずっと大きく感じたのだ。それには3つの理由があると思う。1つめは、文字盤の幅が広いことだ。基本的にベゼルが無いも同然で、ベゼルらしきものは極端に傾斜していて、存在しないような印象を受ける。数字のインデックスはかなり大きく、不釣り合いではないが、すべてが大きく感じられるほどの大きさだ。そして、ラグ。NATOスタイルのレザーストラップを手首に装着すると、時計が両サイドに張り出しているように見える。このモデルにブラウンのヌバックレザーストラップと交換用ツールが付属しているのは注目に値する。それを使うとまた違った印象になるかもしれない。
大きさの問題をクリアすれば、このデザインには実に多くの魅力がある。ひとつは、ケースサイドに刻印されていた "Titanium "をなくしたことだ。これは多くの愛好家にとって、説明過多のデザインであると感じられていた。この新しいクリーンなケースは、紛れもなくチタン製だ。ダークな色調が第一の特徴であり、軽量であることが第二の特徴だ。
『ファークライ6』で戦うための時計として、チタンの美しさがダークでタフなキャラクターを演出している。実際、我々が目にしたゲームの画像はすべて、まるで『地獄の黙示録』のシーンに出てくるナパーム弾の煙のような、砂色がかったオレンジの色調だった。その色合いはそのまま、大きく描かれた数字にも反映されている。この美学は、フェイクパティーナというよりも、単純な色の選択だと思う。
ビニール（樹脂製プラスチック）の文字盤は、ほぼセクターダイヤルのようなレイアウトになっているが、色で分けられてはおらずテクスチャーで分けられている。外側の秒表示トラックと内側の24時間表示はフラットで落ち着いたブラックの背景で、アワーリングははっきりとしたブラックのミラーサンレイ仕上げになっている。
視認性の高さという点で、ハミルトンはいつも通り素晴らしい仕事をしている。このモデルは時間を知る以外の複雑な機能を持たないフィールドウォッチだが、時間（12時間と24時間）、分、秒を視覚的に美しく、機能的に表示している。文字盤のテキストも最小限に抑えられており、ロゴのないハミルトンのワードマークと「Khaki」「Automatic」の文字だけで構成されている。
赤い秒針が文字盤上で目に飛び込んでくるのは、ビデオゲームの演出で最初に気づいたことのひとつだ。しかし、そこにはイースターエッグが隠されている。「Swiss」と「Made」の文字の間には「6」という数字が入っている。よく見ると、上下に2つのスリットが入っているのがわかる。文字盤上の他の数字はこのようになっていないが、これは「Far Cry」の第6作めということを強調していて、この数字のゲーム上のロゴ字体と合わせているためだ。
通常のカーキ フィールド チタニウムと同様に、このモデルも80時間のパワーリザーブを備えた自動巻きCal.H-10を見せるシースルーケースバックを備えている。ハミルトンの印が入った大きなリューズは、そのムーブメントの巻き上げを容易にし、満足のいくものにしている。また、ストラップとツールに加え、レザーポーチもセットになった、環境に配慮したパッケージとなっている。このモデルは（ゲームのストーリーの鍵となる年にちなんで）1983本の限定生産となる。
私はゲーマーではなく、時計愛好家だ。だからこのコラボレーションの半分だけを真剣に評価しよう。しかし、映画『インターステラー』や『テネット』の腕時計のときのように、ハミルトンがゲーム作品のためのユニークな時計を作っているのは非常にクールだと思う。私はまだ新しいプレイステーションを買いに走るつもりはないが、もしハミルトンがこれを続けるなら、そうするかもしれない。ゲームは始まったよ、ハミルトン。
ハミルトン カーキ フィールド チタニウム オート ファークライ6 限定モデル：ケースはSS製、100m防水、42mm×11.45mm、シースルーケースバック。ブラックダイヤルにアラビア数字とスーパールミノバ。ムーブメントは手巻きのハミルトンH-10（ETA C07.611ベース）、80時間パワーリザーブ、ニヴァクロン製ヒゲゼンマイ。1983本の限定生産。価格：14万8500円（税込）。
Photos, Kasia Milton
HODINKEEはハミルトンウォッチの正規販売店です。HODINKEEのコレクションはこちらからご覧いただけます。
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