trophy slideshow-left slideshow-right chevron-right chevron-light chevron-light play play-outline external-arrow pointer hodinkee-shop hodinkee-shop share-arrow share show-more-arrow watch101-hotspot instagram nav dropdown-arrow full-article-view read-more-arrow close close email facebook h image-centric-view newletter-icon pinterest search-light search thumbnail-view twitter view-image checkmark triangle-down chevron-right-circle chevron-right-circle-white lock shop live events conversation watch plus plus-circle camera comments download x heart comment default-watch-avatar overflow check-circle right-white right-black comment-bubble instagram speech-bubble shopping-bag

Staff Picks 編集部が選ぶベスト・コンプリケーションウォッチ 2023

クロノグラフ、ワールドタイマー、ムーンフェイズ、グランドコンプリ、そして(なぜか)それ以上の機能も。2023年は複雑な年だった。

ADVERTISEMENT

ホリデーシーズンも間近に迫り、今年も終わりに近づいてきた。時計愛好家にとっては、2023年を振り返ってその年のお気に入りの時計を思い返すときが来たということだ。

 今週初め、僕たちはそれぞれお気に入りの低予算時計(バジェットウォッチ)スポーツウォッチドレスウォッチを取り上げたが、今回はひとつランクを上げて、2023年で最もお気に入りのコンプリケーションウォッチを選んだ。RDのマイクドロップからパテックのグランドコンプリに至るまで、非常に複雑でエキサイティングな腕時計をまとめてみた。


オーデマ ピゲ CODE 11.59 バイ オーデマ ピゲ ウルトラ コンプリケーション ユニヴェルセル RD#4(マーク・カウズラリッチ)

 2023年は素晴らしいコンプリケーションウォッチがたくさん登場した。それらの背後に隠された多くの創意工夫が大好きで、最もシンプルな複雑機構の車輪を再発明するのは、現時点では本当に大変なことだ。しかし最も純粋な意味でのコンプリケーションについて話をするのであれば、今年のオーデマ ピゲにはすべてが後塵を拝していると思う。ル・ブラッシュに本社を構える同ブランドは、“複雑時計の谷”として知られた場所のちょうど中心に位置しており、ブランドはそろそろそのタイトルを故郷に持ち帰るときが来たようである。

AP RD#4

 RD#4のような時計は、数年に1度(実際には8年から10年に1度だと思うが)登場し、すべてを覆すことはないかもしれないが、ほかのすべてが評価されるほどの新たな高水準を打ち立てる。デザイン、オープンワーク文字盤という選択、COE 11.59のケースについてはどうであれ、この時計づくりを否定することはできない。パーペチュアルカレンダー、ミニッツリピーター、ソヌリ、スプリットセコンドクロノグラフ、セミグレゴリオ暦、正確な天文月など、パーツの組み合わせや統合からこの時計を身につけて楽しむことを可能にする完璧な機能まで、技術的に驚嘆すべき点がたくさんある。だからこそ、この時計は今年のGPHGで最優秀賞を受賞したのだ。

 直径42mm、厚さ15.5mmという比較的控えめなケースに23ものコンプリケーションを搭載しているだけでなく、この時計はジュウ渓谷の歴史とブランドそのものへ、敬意を表している。過去124年間ものブランドの“心臓部”が(文字どおりオーデマ ピゲミュージアムの中央に展示されている、19コンプリケーションを搭載した懐中時計)ユニヴェルセル(L'Universelle)であったとすれば、ブランドの未来はおそらくRD#4 ユニヴェルセルにかかっている。また時代が進み、製造がインハウス化したことで、ジュウ渓谷はもはやブランド間で等しく複雑時計の谷でないことを証明している。オーデマ ピゲは多くの点において複雑機構のメゾンであり、この時計はオーデマ ピゲがしばしば非難される“ひとつの芸当しかできないブランド”以上の存在であることを証明しているのだ。

マーク・カウズラリッチ、エディター兼フォトグラファー


IWC ビッグ・パイロット・ウォッチ・ホワイトセラミック・パーペチュアル・カレンダー・トップガン(ダニー・ミルトン)

 2023年お気に入りのコンプリケーションウォッチの選び方を考えたとき、私は何を選ぶべきかという概念を捨て、自分が真に直感的に反応した時計にこだわるようにした。そして私が選んだのは、新しい複雑さやデザインではなく、ある種新しいカラーバリエーションかもしれないが、それでもこれに固執した。それがIWC ホワイトセラミック・ビッグ・パイロット・パーペチュアル・カレンダーである。ここ数年、私と同僚はモハーヴェ・デザート QP(パーペチュアルカレンダー)ビッグ・パイロットのイテレーション(反復)に夢中だ。

 巨大なケースサイズとダイヤル面積のおかげで、多数の複雑機構が互いに調和した本作。モハーヴェ・デザートが持っていたタンカラーは、QPの美しさに独特のスポーティさを与えた。しかし、今年になってホワイトセラミックモデルが登場し、そのクリーンで大胆な、コントラストを前面に押し出したルックスは私の心を打ち抜いた。この時計を見ていると、古い処方箋のままコンタクトレンズを長く使用したあと、新しいコンタクトレンズを装着したような気分になる。まるでまた見えるかのようになった感覚だ。ブラックの文字盤に映えるホワイトの文字が、ホワイトのケースによってさらに際立ち、ハイコントラストを生み出していて、それがとても気に入っている。まあ結局のところ、私はビッグ・パイロットをどのような形であれ引き立てることはないが(サイズは36~40mm径がいいのだ)、優れた時計を見たときにそのよさがわからないわけではない。

ダニー・ミルトン、編集長


ウブロ MP-15 タカシムラカミ トゥールビヨン サファイア(マライカ・クロフォード)

 ウブロはその確固たる自信と信念から私が尊敬するブランドだ。日本人アーティストの村上 隆氏とのパートナーシップは、この業界では数少ない、私が心から熱望しているコラボレーションのひとつ。超イケてると思いながら本気で派手なやり方をしている気がする。村上氏との時計自体は法外な値段がついているが(これは税込で4367万円する)、あくまでもこれはミニオブジェなのだ。

murakami

 ルイ・ヴィトンのクリエイティブ・ディレクターであったマーク・ジェイコブス(Marc Jacobs)氏から、LVのミクスト・メディアプリント(愛すべきマルチカラーの村上スピーディも含む)の制作を依頼されて以来、村上氏はラグジュアリーコラボレーションの予言者であり、ファッションの時流に大きな影響を与えてきた。

 このMP-15は先月発売された。フルスケルトンで花の形をしており、厳密には文字盤はなく、スマイルフェイスの中に鎮座するフライングトゥールビヨンが収まっている。また小さな針がそこから突き出ていて、目を細めるとインデックスが見えるようになっている。これで時間を確認することはほとんど意味がないことは、誰もが理解していると思う。この時計はサファイアクリスタルでできており、ブランド初のセンターフライングトゥールビヨンを搭載している。コンセプチュアルで、複雑で、完璧に村上氏の作品だ。

マライカ・クロフォード、スタイルエディター


パテック フィリップ 5316/50P グランド・コンプリケーション(ベン・クライマー)

 パテック 5316は2017年頃からコレクションに加わっているが、ほとんどの人の欲しいものリストに入ることはなかった。というのも可能性の範疇から大きく外れているからである。同時に、誰もが知っていて話題になるハローピースもある。ただし、私は5208こそが、コミュニティにとって本当に重要な地位を占めていたと主張したい。私も含めてね。そのあとパテックは、5316(レトログラード表示の永久カレンダー、トゥールビヨン、リピーター) にサファイア、スモーククリスタル、ナイロンスタイルのストラップを取り入れるという誰も予想していなかったことをした。ああなんてこった、これは欲しい!

patek watch

 この時計は伝統的な意味で、真のパテック グランド・コンプリケーションなので、私のダサい側面は満たされたように感じるが、でもこの時計はプラチナ製で文字盤はスモーク、ストラップはゆったりとつけられる! しかも見た目はシックだ。ティエリー・スターン(Thierry Stern)版パテック フィリップが、ブランドの歴史的信条を維持しつつ、現代のコレクターが何を求めているかに本当に注意を払っていることが、またひとつ証明されたことになる。価格は85万ドル(日本円で約1億2050万円)前後だが、現代のコンプリケーションとしては完璧かもしれない。ランゲのルーメンシリーズからアイデアを盗んだと言う人もいるかもしれないが、私はそれでいいとも思っている。なぜなら、業界は何世代にもわたってPPからアイデアを“借りて”いて、それに誰も文句を言わなかったからである。

ベン・クライマー、創業者


ルイ・ヴィトン LVRR-01(リッチ・フォードン)

 これは私が選んだもうひとつの“どうして?”な時計だ。人づてにこの時計のアイデアを初めて聞いたとき、“チェックリストに入る複雑時計”のように感じた。世界最高の(オーケー、少なくとも最高のひとつに入る)独立時計メーカー、世界最大の(オーケー、少なくとも最大のひとつに入る)ラグジュアリーブランドがタッグを組み、トゥールビヨンを備えた両面クロノグラフソヌリと、半透明なグラン・フー・エナメルのふたつの文字盤をつくり上げたのだ。すべてを備えていることが必ずしも素晴らしいとは限らない。結果はコンセプチュアルになりすぎるかもしれない。ただこれを見ると新しいハマー EVが思い浮かぶ。カニ歩きできる1000馬力の大型SUV? 確かにそうだが、なぜだ?

LVRR-01

 LVRR-01はその逆で、複雑かつブランドウォッチに求められるものをすべて手に入れることができ、その名を冠さなくとも商品として成立する優れた時計である。唯一の問題は、前面よりも背面にあるダイヤルのほうが好きなことだ。とはいえ私のことを悪く思わないで欲しい。すぐに“これを逆さまにつけてもいいのか?”という問題にぶつかることはないだろう。

リッチ・フォードン、VIPアドバイザー


ペテルマン・ベダ ラトラパンテ クロノグラフ(トニー・トライナ)

 ゲール・ペテルマン(Gaël Petermann)氏とフロリアン・ベダ(Florian Bédat)氏は、スイスで最もエキサイティングな若手時計職人である。2023年には、彼らの2本目となる“ラトラパンテ クロノグラフ”、Ref.2941を発表。10本限定で、価格は24万3000スイスフラン(日本円で約3730万円)だったがすぐに完売した。このレベルの時計づくりは希有で馬鹿げているが、複雑な時計に対してはそれが見たいと思うこともある。これは時計製造のハイパー・カー層なのだ。そしてペテルマン・ベダのスプリットセコンドは、技術的にも素晴らしいものだが、彼らはまた美しくて着用可能なものをつくりあげ、最高の仕上げを施した。

petermann bedat

 ペテルマン・ベダのムーブメントの仕上げはとてもユニークだ。ブラックポリッシュ仕上げとマット仕上げを組み合わせ、ムーブメントには彼らの特徴であるシャープな“モリ”をあしらっている。クロノグラフムーブメントは技術的にも優れており、コラムホイールと水平クラッチ、巨大なテンプ、ブレゲ巻き上げヒゲゼンマイとスワンネック緩急針を備えているのだ。ペテルマン・ベダは古い懐中時計から特別なインスピレーションを得ていて、時計製造の歴史を理解している。

 この2人組は、現代のスプリットセコンドクロノグラフのなかでも最高の装着感を誇るケースでこれらすべてを実現した。わずか38mm径、13.7mm厚で、カーブしたラグは手首にぴったりとフィットし、ヴィンテージパテックのケースを想起させる(マニアがヴィシェ社製ケースについて語るのを耳にしたら、これがその意味である)。

 これによりペテルマン・ベダは、オーデマ ピゲやドゥ・ベトゥーンなどのエントリーを抑えて、今年のGPHG賞の最優秀クロノグラフ賞を受賞した。至極当然のことである。それくらい素晴らしい時計なのだ。

トニー・トライナ、エディター


ミン 37.05 ムーンフェイズ シリーズ2(エリン・ウィルボーン)

 今年の夏に、ミンはムーンフェイズと日付表示を用いたコンプリケーションウォッチ第2弾を発表した。この37.05 ムーンフェイズ シリーズ2は、創業以来たった6年間で培った独自のデザイン言語を継承。38mmというサイズも前作と同じである。私が思うシリーズ2の斬新なディテールは、ムーンフェイズの複雑機構と巧妙に連携する、星の開口部である。ムーンフェイズの位置の移動に合わせて、星が消えては、また現れるのだ。

ming watch

 光る星の絞りは万人向けではなく、嫌悪感を抱く人も一部いるだろう。ただ私にとっては、このちょっとした奇抜さが大いに役立っており、このスター装飾が施されたモデルは、流線型で大胆なミニマリズムだった前モデルよりも自身の個人的な好みにマッチした。真面目でないことを非常に重要視している。でも、それは私だけの話!

エリン・ウィルボーン、コピーライター


ヴティライネン TMZ CSW(ジェームズ・ステイシー)

 RD#4が2023年のコンプリケーションウォッチに選ばれるのは自然なことだろうが、マークが先に選んだんだし、ほかに選択肢がないわけでもない。そう、オリジナルの仕様ではわずか10本しかつくられておらず、僕が最初に購入した家よりも価格が高かったことは知っている。しかし、ヴティライネン TMZ CSW(これはクッション シェイプ ワールドタイムの略だ)は、僕が真に特別なコンプリケーションウォッチに求める多くの条件を満たしている。以前からヴティライネンのGMTが好きで、GMRのような素晴らしいモデルが好きだったのだが、このCSWは伝統的な(ときには古臭いとも言える)ワールドタイムを複雑にして、それを驚くほどモダンで洗練されたケースに収めている。

world time watch

 39mm径、ステンレススティール製のこの時計は、後に今年のGPHGでメンズコンプリケーションウォッチ賞を受賞することになるが、審査員には何のメモもない。僕はカリ(Kari)氏と彼のチームが、ワールドタイムの複雑さとブランドの伝統的な文字盤の仕上げの両方を、このような現代的な時計に組み込んだ方法をとても気に入っている。中にはワールドタイム機能を設定するためのプッシュイン式リューズがあり、手巻きムーブメントで約60時間パワーリザーブ、13.5mm径のフリースプリングテンプ、ふたつのダイレクトインパルスエスケープメントを備えた、Cal.216 TMZを搭載している。同ムーブメントについて、詳しくはMonochromeにいる友人のブライス(Brice)氏が書いている。数年前のオーヴァーシーズ・エベレスト デュアルタイムLEのように、この時計は当分のあいだ、僕の心に残るだろう。

ジェームズ・ステイシー、リードエディター