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Hands-On オメガ スピードマスター スカイウォーカー X-33

機能を追求した結果、生まれた形状を見てみよう。

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オメガ スピードマスター X-33は、ある一つの質問への答えである。宇宙飛行士やパイロットの職業上必要な機能を搭載した理想的な腕時計を、白紙の状態から制作するとしたらどのような時計を作るだろうか? これらの専門分野で要求されるすべての特殊な計時機能だ。本質的ではない装飾は避け、条件として、非常に視認性が高く、操縦室の環境下での操作性に優れ、極めて正確かつ信頼性の高い時計にしたいと思うだろう。すべて冷血なまでに合理性を求めるのであれば、その時計は、何よりもまず、クォーツムーブメントで駆動するものでなくてはならない。そしておそらく、特殊な計時機能のデジタル表示とアナログ時刻表示を組み合わせたデザインに決めるだろう(これは両方の最善の利点をもたらす。複数の機能が利用でき、基本的な時刻表示が確実に見やすいものとなる)。また、軽くて着け心地がよく、長時間にわたって装着しやすいものを望むだろう―― 必要なときには腕にあり、使わない時には装着していることが気にならない時計だ。

オメガ X-33 スカイウォーカーは、オメガの最新技術の飛行装備機器の最新版だ。

 パイロットや宇宙飛行士の両者からのフィードバックに基づき、設計の改良過程に長い期間を費やした後に、オメガ X-33とぴったり同じような時計を思いつくことはないかもしれないが、恐らくよく似た時計にたどり着くだろう。

 X-33 スカイウォーカーは、驚くほど昔に先行した時計の最新版である。オメガの最初のアナログ-デジタル式腕時計の一つは、今やほとんど忘れ去られているシーマスター マルチファンクションで、初代X-33同様、多機能液晶ディスプレイを備えており、時刻はアナログ表示だった。この時計は、1986年にお披露目され「8つの顔と魔法のリューズを持つ腕時計」として宣伝された。
 さらにこれもX-33と同様だが、チタニウム製だった(見た目にかなりクールなツートンのチタニウム仕様、スティール仕様も存在する)。これはオメガにとっては、比較的に短期間の試みだったように思われるが、初代X-33はこれが土台となって登場し、12年後の1998年にデビューを果たした。その機能には、時刻と日付(プログラム済みのパーペチュアルカレンダー)表示、アラーム、アラーム付きミッションタイム、アラーム付きUTC、そしてクロノグラフがあった。  

 X-33の開発では、試作品を宇宙飛行士やパイロットにわたし、時計の捜査に関するフィードバックを製品モデルに反映させるという方法も採用していた。検査実施者の中には、アメリカ海軍所属のアクロバット飛行体ブルーエンジェルスの隊員や、スイス人宇宙飛行士のクロード・ニコリエ(Claude Nicolie)などがいた。(ある検査実施者は、X-33装着時に不意の不時着を生き延び、その時計もうまく持ちこたえた) 
 オリジナル版は、腕時計には不釣り合いなほどの極めて大音量のアラームを備えていたが(最新版も然り)、これは騒がしいスペースシャトルの操縦室でも鮮明に聞こえるように特別に設計されたものである。音量は、掃除機と同レベルの80デシベルだ。X-33は元々は、スペースシャトルでの使用に向けたNASAの認定を受けており、リリースイベントは、1998年にNASAのジョンソン宇宙センターで行われた。イベントでは、ミール宇宙ステーションで2人のロシア人宇宙飛行士が無重力状態で初代X-33を使いこなしている様子がライブ映像で流された。現行モデルはNASAの認定を受けていないが、欧州宇宙機関(ESA)の有人宇宙飛行向けの認定を受けており、現在、国際宇宙ステーション(ISS)に携行されている。

省エネモードでは、針は0時を指すが、その間もすべての計時機能は滞ることなく内部で作動している。

 シーマスター マルチファンクション同様に、初代X-33は、文字盤を中心に放射状に文字を並べてデジタル機能を表示し、バックライト付きの液晶ディスプレイを持っていた。また、高度な光沢仕上げの60分目盛りの回転式ベゼルも備えていた。それからスカイウォーカーまでの間には、使用者のフィードバックに基づくいくつもの仕様変更が加えられた。
 現行版では、反射の少ない艶消し仕上げが採用され、どの部品についても極端なポリッシュ仕上げは避けている。ベゼルは今や艶消し仕上げのブラックセラミックである。ときに読み取りづらい放射状の表示の代わりに、現行版ではすべてのデジタル表示の情報をきちんと横並びに配置しており、ムーブメントはキャリバー5619に更新され、精度の高い温度補正型クォーツムーブメントとなっている(クォーツ時計のやっかいな歩度のばらつきの唯一にして最大の原因は、環境の温度変化であるため、高度に精密なクォーツムーブメントには何らかの温度補正機能が同時に搭載されている)。

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 バッテリー寿命を最適化するために、低電力モードも備えている――液晶ディスプレイが消え、針は12時を指す。このモードでも、すべての計時機能が止まることはない。このモードへの切り替えは簡単で、ただリューズを引くだけだ(リューズは、特に手袋での操作がしやすいように滑り止めになるローレット加工が施されている)。近年では、 X-33 レガッタタイマー など、いくつかのバージョンが製造されている。

幅広い計時機能により、X-33は極めて汎用性が高い。

 初めての腕時計操作は不安なものだが、これは私にとっても大変な驚きなのだが、実際にやってみると多少なりともしっかりと身につくものだ(説明書は常に身近に置いておきたいが)。リューズで操作する場合は、引く、押す、二段階押す、押したままにする、の種類がある。左上のプッシャーは、「お気に入り機能」ボタン(例えば、お気に入りの途中経過時間2へのすばやいアクセスなど)、左下のプッシャーはバックライト点灯、アラームオフ、さまざまなプログラミングモードの開始・終了に使用できる。
 クロノグラフモードでは、右側の2つのボタンは直感的に機能する—— 上のボタンはスタート/ストップ、下のボタンはスプリットタイムまたはゼロにリセット。プログラミングモードでは、選択した数字について、上のボタンは上昇、下のボタンは減少。どのボタンまたはリューズが何の操作をするためのものかをひとたび体に覚えさせれば、実は非常に使いやすい時計なのだ(私の考える限り、2時間はかからない。あれこれ設定するのにあちこちかなり気まぐれに触ってみて体で覚えた)。

クロノグラフモードでは、機械式クロノグラフと全く同じように、右側のボタンはスタート、ストップ、そしてリセットだ。

 たとえ全く地上から離れないにしても有益な機能はふんだんにあり、その他にいくつか、おそらく飛行や宇宙飛行に特化した機能が若干含まれている。この時計は、セカンドタイムゾーンに加え、現地時間の表示もでき、個別にUTC機能もある。三種類のアラームが設定でき、クロノグラフやカウントダウンタイマーだけでなく、プログラム済みのパーペチュアルカレンダーも備えている。カウトダウンタイマーはかなり興味深い。指定された間隔でカントダウンすることができるだけでなく、カウントダウン終了時からの打ち上げ後経過時間も表示が可能だ。

打ち上げ後経過時間は、X-33の機能の中でも最も宇宙飛行に特化した計時機能だ。

 最も宇宙飛行を重視した機能は、打ち上げ後経過時間(MET)と途中経過時間機能(PET)だ。METは、有人宇宙飛行に関するもので、打ち上げの後経過時間である—— 多くのミッションの重要なイベントのスケジュールがこれを基に組まれるため、この数字の記録は極めて重要なのだ。
 ISSは例外である—— 常設ステーションであるため、UTCを使用している(変更になる場合もあるが。シャトルの乗組員が搭乗した際に楽にスムーズにイベント適応できるよう、時計はMETにリセットされた)。PETによって、ある特定のイベントに向けてMET内でカウントダウンすることが可能となる—— 例えば、火星に向かっている途中で、 MET 35/21:28:32(35日、21時間、28分、32秒)に厳格に予定された汚水排出のイベントがあるとすれば、そのミッションのタイミングがきたときに通知するために、PETタイマーを設定することができる。PETタイマーは三種類まで設定することができる。また、参照時間は必ずしもMETでなくて良い。UTC、あるいは、二つのタイムゾーンのいずれも設定することができる。

ケースの厚みは15.1mmあるが、チタン構造のため、装着しやすい。

アラーム音が効果的に伝わるように、裏蓋には大きな音抜け穴がある。

 直径45mmで、かなり大きな腕時計だが、全体がチタン構造であるため、非常に軽い着け心地だ――コンコルド デリリューム程ではないが、充分軽く、意識していないときは着けていることが特に気になることはない。当然、意図された操作環境にあっては、全く重さを感じないわけだが、より大きな腕時計は、さらに自由落下の際には、X-33を超えて特別に惰性が加わり、着け心地が重くなるかもしれない。私がそれを知る機会があるとすれば、読者の皆さん全員がそれを真っ先に知ることになるだろう。

暗闇での時刻表示を可能にするスーパールミノバ。

 弱光の下での視認性も優れている。バックライトは比較的にぼんやりしている(少なくとも私がこれまで目にした他の液晶バックライトのいくつかと比較すると)が、私はこれが、バッテリー寿命最適化のための、設計上の意図的な選択ではないかと思っている。多様な機能を読み取るだけなら充分すぎるが、特に暗闇に慣らされた眼だったらなおのこと充分である。
 動かなくなった宇宙船の真っ暗な通路の迷路を、有名な火星のピラミッドの下の異次元間から現れた火星の怪物に追いかけられても、二度目の重要な汚水排出の実行時刻を確認することができるだろう。

ケースの割には数字が大きいが、装着時にも軽量かつ快適だ。

 機械式のムーンウォッチにはX-33にない機能が一つある―機能的には、つまり、過酷な温度変化が液晶表示とクォーツ発振器を混乱させる場合に、長時間の宇宙船外活動を計時するものだ。感情を込めて言えば、他にも機械式のムーンウォッチとX-33には、他方にない機能が相互に多くある。X-33は、既にあるように、現代の道具としての腕時計の精神を純粋に表現したものとしてふさわしく、より低価格な多機能クォーツ式アナログ-デジタル時計(分かりやすい例を挙げると、カシオのG-SHOCKの大量生産がこの定義に該当する)が他にあるのは事実だが、X-33が提供する機能の組み合わせは、宇宙空間に特化した計時機能、最適化した電力管理、あの極めて大音量のアラームと、わずか三つを挙げても、現代の道具としての腕時計の状況においては他に類を見ない製品であることもまた事実だ。また、実際に、パイロットや宇宙飛行士が携行した長年にわたるれっきとした飛行の歴史もあり、一般の時計愛好家の視点で見ると非常にニッチな製品だが、本来の目的も誠実に叶える製品に違いない。これに尽きるだろう。

基本情報

ブランド:オメガ(Omega)
モデル名:スピードマスター スカイウォーカー X-33(Speedmaster X-33 'Skywalker')
型番:318.90.45.79.01.001
直径:45mm
厚さ:15.1mm
ケース素材:グレード2 チタン
防水性能:30m
ストラップ/ブレスレット:チタンのブレスレット
補足情報:サファイアクリスタル風防、およびアラーム用の音抜け穴付きチタンの裏蓋、双方向回転セラミックベゼル

ムーブメント情報

キャリバー:オメガ  キャリバー 5619
機構:温度補正型クォーツ・キャリバー MET、PET、UTC機能付き、クロノグラフ、カレンダー、時刻と日付、三種類のアラーム、省エネモード選択可能
追加情報: 電池寿命は24ヵ月

価格

価格:59万円(税抜)

詳細についてはオメガ公式サイトへ。