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Hands-On ティソ PR516 クロノグラフ メカニカルは30万円以下で手に入る最高のクロノグラフだ

伝統を受け継ぐ手巻きモデル。

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Photos by Anthony Traina

ティソはここ数年、PRXからシデラルまで、ヘリテージにインスパイアされた手頃な価格の時計を発表している。そして今回のPR516 クロノグラフ メカニカルでも同様のこと実施した。60年代のオリジナルモデルよりも大振りながら、ヴィンテージクロノグラフを忠実にアップデートしており、こちらは30万円以下で購入できる。

tissot pr 516 mechanical chronograph

 ティソは60年代にPRコレクションを発表した。PRコレクションはミッドセンチュリー期のマーケティング用語で、“より頑丈”を意味する。1968年には、PRコレクションに最初のクロノグラフを追加し、この新しいPR516はそれを参考にしている。その数年前に発売されたデイトナやカレラのように、PRをレースに適したモデルにすることが狙いだった。オリジナルのPRクロノグラフは、ミッドセンチュリー期の純然たるクロノグラフが持つシンプルさと、70年代のファンキーなデザインのあいだにうまく収まっている。ケースはずっしりと分厚いが、サイズは36mmと小振りで、鮮やかな色もいくつか配されているが、完全なディスコスタイルではない。

tissot pr chronograph 1968 original

1968年製のオリジナルPRクロノグラフ。Image: courtesy of Tissot

 PR516 クロノグラフ メカニカルはこの外観を一新し、ケースサイズを41mm、厚さを13.7mm(ラグからラグまで49mm)へと変更した。その厚さの約1.5mmはボックス型のサファイア風防によるものだ。直径とラグからラグまでの長さは均整のとれた時計になっているが、ケースは厚みがあり、特にミドルケースは平坦で曲線がない。手首につけてみると、チューダーのブラックベイ クロノをほうふつとさせるが、ほんの少しサイズが小さい。特に手巻きムーブメントであることを考慮すると、PR516があと数ミリ薄くなっていれば、ほかの競合製品とは一線を画していたと思う。

 ただ実際に使ってみると、PR516は非常によくできている。41mm(もし5年前に登場していたら、これは42mm...あるいは44mmだったかもしれない)、ノンデイトで、目を引くほどの存在感を放つルックスを持ち、そして伝統にインスパイアされたデザインだ。

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 写真を見てわかるように、PR516は上から見ると均整が取れているが、横から見ると厚みが目立つ。しかし、分厚いクロノグラフはティソ特有の問題ではない。2倍、3倍、あるいは4倍以上の価格のブランドの製品を見てみると、同じような大きさのものをよく見かける。

 PR516のサファイア製シースルーバックのなかには、Cal.A05.291が収められている。これはバルジュー7753をベースにしたクロノグラフムーブメントであり、そこから基本的な自動巻き機構を取り除いて、2万8800振動/時、約68時間パワーリザーブを発揮する手巻きクロノグラフとして動作させた。なお価格帯では当然といえば当然だが、ムーブメントはインダストリアルな仕上がりをしている。

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私の16cmの手首に着用。

 ティソは文字盤とベゼルの仕上げにこだわった。マットブラックの文字盤には、オレンジ色のクロノグラフ秒針と、30分積算計インダイヤルに淡いブルーとレッドというポップなアクセントを施している。またインダイヤルには、コントラストを際立たせるためにシルバーの同心円リングを採用。針とインデックスはスーパールミノバでコーティングし、ベゼルのスケール部分にもちょっとした遊び心を加えている。

 この文字盤について唯一の批判は12時位置のサインだ。これはPRXコレクションについて言及したことと似ている。(1)ティソ以外には何の意味もないため“1853”を廃止して欲しく、(2)このようなヘリテージにインスパイアされたモデルには、古いスタイルのフォントやPRクロノのような時計で見られるブロックTのロゴも見てみたい、ということだ。文字盤にはすでに遊び心のあるヴィンテージの雰囲気を漂わせているが、それに合わせたロゴ加工があれば最高にいい。

tissot pr 516 mechanical chronograph
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 ケースはサテン仕上げのほか、傾斜したポリッシュ仕上げの面取りが施されている。ブレスレットのフィット感と仕上げも、27万3900円(税込)の時計としては見事なものだ。ブレスレットも同様に、エッジはポリッシュ仕上げで、フォールディングクラスプに向かって20mmから18mmへとテーパーがつけられ、3段階のマイクロアジャスト機構が備わっている(使用には工具が必要)。ブレスレットはクイックリリース式のため、工具なしで取り外してストラップの交換ができる。この価格で工具不要のマイクロアジャスト調整ができるブランドがほかにもあると考えると、もう少しクラスプがアップグレードされていてもよかったと思うが、ブレスレットの頑丈さと快適さには感動した。

 スペックシートから、この時計が私の16cmの手首に合うとは思っていなかった。しかし、ラグからラグまでが49mmのため、比較的コンパクトにつけられ、手首からはみ出すこともない。数日間着用したが、まさに日常使いできるクロノグラフであった。厚みはあるがまったく邪魔にならないし、どこかチャンキーな雰囲気は、スペックアップされているとはいえ、ファンキーな70年代への扉を開くきっかけとなったオリジナルのPRクロノにどこか忠実な感じがする。

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手巻きのクロノグラフムーブメント。

 価格は27万3900円で、30万円以下の機械式クロノグラフという真の競争相手はあまりいないだろう。ハミルトンのイントラマティック クロノグラフ H ブレスレットは32万3400円、ティソ PRX オートマティック クロノグラフは28万7100円、昨年セイコーが新たにリリースしたスピードタイマー メカニカルクロノグラフは35万2000円(すべて税込)だ。また、ファーラン・マリの新しい機械式クロノグラフは2750スイスフラン(日本円で約46万9000円)である。

 しかし、伝統にインスパイアされた機械式クロノグラフが欲しいなら、ティソ PR516は独自の道を確立している。前述したように、その意図も手首に巻いたときの感触も、ブラックベイ クロノを想起させる。でも正直、PR516のほうがおもしろいと感じるのだ。はっきり言って両者は競合しないが(PR516は3分の1の価格だ)、これはティソがヘリテージウォッチでどれだけ進歩したかを物語っている。同じような時計を3倍の値段で買うことに疑問を感じてしまう。

tissot pr 516 mechanical chronograph wrist shot

 もちろん、完璧ではない。30万円以下の時計がそうであるように(あるいはどんな価格でもそうかもしれないが)、妥協は必要だ。いずれにしてもPR516は新たに市場に加わった手堅い製品である。機械式クロノグラフのPRXではなく、愛好家と一般の消費者層の両方を魅了する時計ではないだろうが、それで十分だ。同じ場所に雷が落ちることはないが、最近のティソはコンスタントに成功を収めており、なんだかうれしい気持ちになる。

ティソ PR516 クロノグラフ メカニカル。直径41mm、厚さ13.7mm、ラグからラグまで49mm。100m防水。フォールディングクラスプ付きステンレススティールブレスレット。手巻きCal.A05.291搭載、時・分・秒表示、クロノグラフ。約68時間パワーリザーブ、2万8800振動/時。27万3900円(税込)

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