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数日間睡眠不足のまま見本市に臨んだ。一般的な感想は、今年は少し静かな年だという考えに集約されているようだ。それも無理はない。というのも今年の新作は去年と違い、セレブレーションダイヤルのロレックス、チューダーの小型ダイバーズ、ランゲのまったく新しいクロノグラフなど、派手さや華やかさが欠けているからである。僕の見解は、今年は繊細で、より製品に磨きがかかっているというものだ。それを理解するためには、チューダーが待望のブラックベイ 58 GMTをリリースしたあとの、中程度の盛り上がりを見れば十分である。これはブランドのトラベルウォッチの理念に対する小型のアプローチであり、2018年3月のバーゼルワールドで初代ブラックベイ GMTが発表されて以来、多くの人が求めていた時計だ。
それからわずか6年後(まあ長かった)のいま、状況は大きく変わり、39mmとやや小さめの58シリーズは、ブラックベイのラインナップのなかでもコアなマニア向け製品となった。フルサイズのブラックベイ GMTと同様に、ブラックベイ 58も2018年のバーゼルワールドで発表されている。チューダーは今週、このふたつのアイデアを組み合わせたモデルを発表し、これが今後チューダーのGMTラインナップの基盤を形成すると僕は信じている。
新しいムーブメント、ブラックとレッドのカラーリング、そして標準的なブラックベイ 58とほぼ同じプロポーションを持ち、これはブランドにとって注目すべきリリースだと言えるだろう。58から、人間工学に基づいたブラックベイ GMTが出てほしいと望んでいた多くの人々を知っている。新型58 GMTとしばらく過ごしたが、僕は2018年に58をレビューしたベン(・クライマー)の感想に同調したくなった。“これは我々が必要としなかったチューダーであるが、完璧に近い”。
さて、スペックを整理しよう。ブラックベイ 58 GMTは単一スペックで提供されるが、フルスティール製ブレスレットまたはフィット感の高いラバーストラップから選べる。ありがたいことに、どちらのマウントにも非常に便利なチューダー独自の“T-fit”クイックアジャストクラスプが採用されている(ペラゴス39のブレスレットにもこれがつけられているが、ブレスレットを使用する際の快適さには欠かせないものだと確信している)。
ケース径は39mm、厚さは12.8mm、ラグからラグまでが47.8mmだ。厚さが約0.1mm厚くなったことを除けば、サイズは標準的なブラックベイ 39とほぼ同じである。既存のブラックベイ GMTのサイズが41mm径×14.6mm厚×50mm長であること、そしてブラックベイ プロもまたデュアルタイムゾーンモデルで39mm径×14.6mm厚あることを、忘れてはならない。チューダーによりスリムなGMTを求めていたのであれば、彼らはその要望に応えているのである。
ラグ幅は20mm、風防はサファイア製、防水性は200mで、リューズはねじ込み式だ。この記事を簡潔にするならば、58 GMTはブラックベイ 58と同様に装着できるとまとめられる。非常にいいサイズで、装着感もよく、突出したプロポーションを使用することなく十分な重厚感と頑丈さを持っている。同様に、もしあなたがロレックスの5桁スポーツモデル、例えばGMTマスターII Ref.16710を愛用しているなら、58 GMTの手首の存在感は違和感がないはずだ。
ムーブメントも、以前から定評のあるGMTキャリバー、MT5652を単にダウンサイジングさせたわけではない。代わりに、ブラックベイ 58 GMTは新開発のMT5450-Uを搭載している。サイズは30.3mm径×6.14mm厚、振動数2万8800振動/時のムーブメントで、非磁性のシリコン製ヒゲゼンマイを使用し、最大パワーリザーブは約65時間だ。5450-Uは現代に誕生した自社製ムーブメントであるため、METAS認定のクロノメーター(加えてCOSC認定も)を取得している 。興味のある人のために説明すると、名前の“U”はこのムーブメントの反磁気特性を表している(“U”は馬蹄形の典型的な磁石の形を表している)。
BB GMTが確立されたように、BB 58 GMTはフライヤースタイルのGMTであり、ローカルジャンピングアワーと、回転する24時間ベゼル、それらと連動可能な24時間針を備えている。新しいBB 58 GMTであろうとなかろうと、GMTを最大限に活用する方法を知りたいなら、僕が書いた24時間ベゼルの最適な使い方についての簡単な入門書を確認して欲しい。旅行の場合は、タイムゾーンを簡単にジャンプできる画期的な解決策であり、それと同時にホームタイムの時間を確認しつつ、ローカルタイムが真夜中を超えると日付もそれに応じて変更される。
スペックはさておき、結局肝心なのは実機を体験することである。僕自身(特にGMTに関してはチューダーのファン)にとっては、これはそれ自体が素晴らしい時計であり、チューダーにとっての将来がどうなるかの素晴らしいヒントでもある。
前者については、ラバーで61万3800円、ブレスレットで64万3500円(ともに税込)のフライヤーGMTであり、標準的なブラックベイ 58と同じように装着できる。日常使いとしてのスポーツウォッチの機能性、プロポーション、そして人間工学的考慮から見れば、BB 58 GMTは非常に優れていると思う。それにもかかわらず、カラーウェイの実行から、文字盤とブレスレットに使用されたギルト効果のアクセントだけでなく、ブラックとバーガンディのベゼルインサートによっても、時計ファンの多くが二分されているように思う。
チューダーは根気強く待つゲームだ。
この話題については以前から何度も触れてきた。最初にブラックベイのいくつかのバージョンが登場し、その後さらに多くのバリエーションが発表された。次にブラックベイ GMTとブラックベイ 58のローンチバージョンが出てきて、さらにその後バリエーションが増えた。途中でペラゴスも導入された。その後、ユーザーはLHD、FXD、39、そしてカーボンをまとったアリンギモデルが登場したのを見た。以上のことから、もしレッド/ブラックのカラーリングやギルトアクセントに満足していないなら、待つべきなのだ。今後このフォーマットのさらなるバージョン、そしてもしかするとこのムーブメントのさらなる応用が見られるだろうと、僕は信じている。
はっきり言って、コークカラー自体はまったく気にならないし、ギルトもこのカラーウェイによく似合っていると思う。とはいえ、僕は現代の時計に施されるギルトアクセントが好きではないので、それが原因でオリジナルのブラックベイ 58に対する興味が薄れていた。しかしその後、ネイビーブルー、シルバー925、金無垢が追加されたのだ。ペラゴス 39が発売されなければ、ほぼ間違いなく58のネイビーか925を手に入れていたと思う(どちらも素敵だから)。僕の言いたいことは理解してもらえたと思う。ギルトやコークが好みでない人は待つべきだ。あるいは嘆願書を出して欲しい。僕もサインしよう。
もっと大局的に、細部にこだわらない視点から見ると、これはブラックベイシリーズの素晴らしい追加オプションであり、58にとっても大きな1歩だと思う。楽しい時計だが、無用の推測の領域で言えば、ネイビーカラーのバージョンも見てみたいし、さらに個人的には同ムーブメントをペラゴス 39に搭載してほしいとも思っている。それが実現すれば、きっと素晴らしいものになること請け合いだ。
静かな年? 不調の年? ただの退屈な年? この意見に完全に同意しないわけではないが、チューダーがブラックベイ 58 GMTを投入したことは本当に注目すべきことだと思うし、このモデルは今後もGMTの素晴らしい製品が登場するという、明確なシグナルであると感じている…少なくとも僕はそう願っている。見込みが間違っている可能性もあるが、ブラックベイ 58 GMTの登場は予見していなかったし、それが最善だったのかもしれない。
詳しくはチューダー公式ウェブサイトをご覧ください。
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