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A Week On The Wrist ヴァシュロン・コンスタンタン ヒストリーク 222を1週間レビュー

1970年代の名作が、今よみがえる。

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[編集部注:この記事は、ジャック・フォースター氏が長年にわたりHODINKEEに寄稿した1000本以上の記事の締めくくりとなります。ジャックの今後の活躍を私たちと祈りましょう]

ヴァシュロン・コンスタンタンが今年のWatches & Wondersで発表したヒストリーク 222は、必ずしもサプライズではなかったが、45年の時を経て、このデザインが鮮やかによみがえったことは、非常に喜ばしいことだった。222は、1972年のオーデマ ピゲの画期的なロイヤル オークに始まり、1976年のパテック フィリップのノーチラスに続く、ブレスレット一体型ラグジュアリースポーツウォッチの第一世代に連なるモデルである。

Vacheron 222

 なぜこれらのカテゴリーが革命的と見なされたのか、疑問が湧くことがある。結局のところ、これらの時計が初めて一体型ブレスレット(スティール製、または貴金属製)を採用したわけではないからだ。ロイヤル オーク、ノーチラス、222がそれ以前のブレスレット一体型時計と異なる点は、ステンレススティールを高級素材として扱い、通常は貴金属にしかできない複雑な仕上げと研磨を施したことにあるのだ。

 これら3モデルは、いずれも貴金属製でも製造されたが、スティール製ケースとスティール製ブレスレットを採用したことで、それまでの高級時計製造とは一線を画すデザインに仕上がったのである(同時に、採用されたデザインは、それまでの高級時計製造には見られないものだった)。

 これら3モデルは、高級金属素材としてスティールを使用するトレンドの申し子と考えられている(パテックのノーチラスの広告には“世界で最も高価な時計のひとつはスティール製です”と書かれていた)。ヴァシュロンが 222の復刻版をスティールではなく、イエローゴールド(YG)で発表したことは、その文脈において興味深いことだ。

ラグジュアリースポーツウォッチと222

これらの時計のデザインは、ハイブランドによるハイエンドの高級時計によく見られるラウンドケースやレクタンギュラーケースとは対照的に、洗練を意図しながらも、従来のドレスウォッチのような保守的で控えめな印象はなく、カジュアルなものである。ロイヤル オークは発売当時、ゴールドモデルよりも高価な3300スイスフランで、ロレックスのサブマリーナーの10倍の価格で販売された。

Vacheron 222 on a wrist

 3つのモデルには、もうひとつ共通点があった。それらはすべて、偉大で古典的な超薄型ムーブメントのひとつ、ジャガー・ルクルト製Cal.920を採用していた:それぞれヴァシュロン Cal.1120、オーデマ ピゲ Cal.2121、パテック フィリップ Cal.28-255と命名された。ヴァシュロン、パテック、APは高級時計の三位一体(無神論者であればビッグスリーと呼ぶといい)と呼ばれることもあり、この3社が同一のムーブメントを採用したことは、ムーブメントの品質の高さと、表向きは別々の独立したブランドのあいだに深く絡み合った関係の両方の証といえるだろう。

 今日、伝統的なビッグスリーの分類が正当なものであるかどうかについて、真っ当な議論が交わされている。その呼び名は、年々歴史の遺物となり、適切な分類ではなくなっているようだが、当時はほとんど議論の余地はなかっただろう。

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ヨルグ・イゼックと222の誕生秘話

ロイヤル オークとノーチラスは共にジェラルド・ジェンタ(彼はノーチラスが1972年のバーゼルでデビューする前にオーデマ ピゲとの関係を解消している)がデザインを手がけた。ヒストリーク 222は1953年にドイツ民主共和国(東ドイツ)で生まれ、1961年にベルリンの壁が完成する直前の1960年に両親と共にジュネーブに移住したヨルグ・イゼックによるものだ。

Vacheron 222 on a wrist

 金細工師の息子であるイゼック氏は、ジェンタほど有名ではないが、その職業人生を時計の世界で過ごした。最初はロレックスで4年間働き、その後、ドゥ・ベトゥーン(DE BETHUNE)、カルティエ、エベル、タグ・ホイヤー、ティファニーなど、多くのブランドでデザイナーとして働き、1977年にはヴァシュロン・コンスタンタンで222をデザインしている。万年筆の愛好家であれば、イゼック氏がデザインし、自身の名を冠して販売した万年筆を目にしたことがあるのではないだろうか。イゼック氏は1999年に自身の名を冠した時計メーカーを設立したが、2006年にはその会社を離れ、新会社、HD3 コンプリケーションズを設立し、現在も彼の作品を見ることができる。

当時:初代222の登場とそれ以前

初代222が限定生産であったことが、1972年、1976年のデビュー以来、今日まで生産され続けたロイヤル オークやノーチラスほどコレクターの関心を集めなかった大きな要因であろう。通説では、ヴァシュロンはスティール製の222を約500本、ゴールド製を150本、コンビモデルに至っては100本未満だけ生産したされているが、A Collected Manの創設者であるサイラス・ウォルトン氏は次のように書いている。

「一般に、222は8年間の製造期間中に500本しか作られなかったとされているが、工場の記録によると、1300本以上のレディースモデル、約1000本のミッドサイズモデル、約700本の“ジャンボ”があり、なかでもWG製の後者が最も希少であったとされている。また、シルバーや、さらに希少なホワイトダイヤルのモデルも何本かあった」。

 ケースとブレスレットの一般的なシルエットはロイヤル オークに似ているものの、波形ベゼルとブレスレットの六角形のセンターリンク(1998年にロレックスが買収した有名なブレスレットメーカー、ゲイ・フレアー社製)は、222に独自のデザインアイデンティティをもたらしている(実際、222にはベゼルを象ったマネークリップが同梱されていたほど、このベゼルはデザインの特徴となっている)。

Vacheron 222 in steel

私が2013年に最もよくつけた時計」に掲載された1977年製のヴァシュロン・コンスタンタン 222(ステンレススティール製)。

 ちなみに222は、ヴァシュロンが初めて手がけたブレスレット一体型のステンレススティール製スポーツウォッチではない。ロイヤル オークよりもノーチラスを彷彿とさせる長方形のケースで、1975年に発表されたヴァシュロン製クロノメーター・ロイヤル Ref.2215は、222よりもあまり知られていないモデルだ。ムーブメントはJLC社製Cal.906をベースにしたヴァシュロンによる Cal.1096で、クロノメーター・ロイヤルの名の通り、クロノメーター認定を受け、仕上げ、計時、ケーシングはヴァシュロンで行われた興味深い時計だ。

 ヴィンテージ222への関心はここ数年で急上昇し、昨年5月に同僚であるローガン・ベイカーが指摘したように、ヴィンテージ222の価格はわずか数年の間に、モデルによっては100万円台前半から1000万円台前半へと、桁外れに値上がりしているのである。今にして思えば、5年前にヴィンテージ222をコレクションに加えることは、最も賢い選択だったようだ。そして、このヴィンテージモデルへの関心が、今年の222の復刻を刺激した一因であることは間違いないだろう。

現在:2022年のヒストリーク 222

222は、デザイン、ディテール、仕上げにおいて、スティールを貴金属に昇華させたことで知られる時計ジャンルのひとつであり、ヴァシュロンがこのモデルをYGで再登場させたことは興味深い。しかし、YGモデルを発表することで、ヴァシュロンは自社を、そして私たちを、その後に続くであろうスティール製モデルの発表を期待させることになった。ヴァシュロン・コンスタンタンがヒストリーク 222のステンレススティール版を見送った理由を私はよく知らないが、YGのモデルが呼び水となった今、ステンレススティールのモデル、さらにはコンビモデルが登場すれば、よりインパクトのあるものになることに間違いないだろう。

Vacheron 222
Open caseback of Vacheron 222
Close up of bracelet on Vacheron 222

 新型ヒストリーク 222はヴィンテージモデルと見紛うばかりだが、微妙な違いがある。新型のデイト表示はダイヤル中央寄りにあり(つまり、初代のようにミニッツトラックに食い込んでいない)、またブレスレットにフォールディングクラスプを採用しており、初代のそれよりもかなり工作精度と安全性が高まっているように感じられた。しかし、新生ヒストリーク 222の最大の違いを見るには、本体を裏返してみる必要がある。

 この復刻版にはCal.2455が採用されている。このムーブメントは、ヴァシュロンが2007年に初めて発表した自社製自動巻きムーブメントだ。15年選手のこのキャリバーはヴァシュロンムーブの定番であり、直径26.20mm、40時間パワーリザーブ、そしてジュネーブ・シール(近年では絶滅危惧種)と、非常に魅力的な特徴を備えている。

 ジュネーブ・シールは、ムーブメントがジュネーブで製造されたものでなければならないと規定されているのはもちろん、品質上の規定もある。例えば、ワイヤースプリングの使用は禁止されており、ネジの頭と縁は面取りと研磨が施されていなければならない。ヴァシュロン・コンスタンタンはCal.2455の品質にも手を抜かないようで、40時間というパワーリザーブ時間は現代の時計には物足りないと感じる人もいるかもしれないが、ヒストリーク 222にはまったく問題ないようだ(現行のオーヴァーシーズでは60時間のパワーリザーブを持つCal.5100を採用している)。

A Week On The Wrist

A Week On The Wristは基本的に体験型の時計レビューであるため、ムーブメントにこだわるのは奇妙に思えるかもしれないが、何を動力源とし、ムーブメントについて何を知っているかによって、その時計全体に対する印象は必然的に変わってくるものだ。初代222は、発売当時も現在も世界最薄を誇るフルローター自動巻きムーブメント、Cal.1120を搭載している。これは非常に洗練されたエレガントなキャリバーで、スイス時計産業の品質とデザインにおける創意工夫の高さを象徴している。

 現在、このムーブメントを使用しているのはヴァシュロンのみであり、複雑時計のベースキャリバーとしてのみ使用されているようだが、私はこのムーブメントを復刻モデルであるヒストリーク 222で見たかった。とはいえ、Cal.2455は、あらゆる面で実用性が担保されている(Cal.1120よりも堅牢で、メンテナンスも容易、そして瞬間日送り機構付きデイト表示が搭載されたことで、オーナーにとってより使いやすいものとなっている)。

Vacheron 222

 ムーブメントに関する難癖はともかく、この新しいヒストリーク 222は身につけるのが本当に楽しいモデルだ。ケースとブレスレットが一体化したように見えるだけでなく、装着感も抜群なのだ。ブレスレットは非常にしなやかであると同時に、信じられないほど頑丈に作られているように感じられる。そして、222がしばらく生産されていなかったという事実が、実は有利に働いている。

 明らかに近縁種のライバルたちであるロイヤル オークやノーチラスを身につけるということは、多くの文化的重荷が腕にのし掛かるわけでもあり、これらの時計の認知度や社会的シグナルとしての価値は、今日では桁外れに高い(そのような時計を身につけた日には思慮分別を失って、高速道路で消防車のような真っ赤なフェラーリを追い抜ける気がすることだろう)。222は確かにヴァシュロンのアイコンであり、時計愛好家の間ではひと目でそれとわかる存在だ。時計のソーシャルメディアが発達した今、レーダーをかいくぐることを望む時計愛好家には悪あがきであると言えるが、それでも少なくとも少しは内輪ウケで済む腕時計であることには変わりない。

 もちろん、物足りない部分がないとはいえない。例えば、ヒストリーク 222にブレスレットに調整機能がないが、これは見落としというより、意図的なデザイン上の決定だ。50m防水は、このクラスのこのタイプの時計としては十分すぎるほどで、名目上はスポーツウォッチだが、スペックを売りにしているわけではないことは明らかだ。

 私はこの時計をノーチラスやロイヤル オークにはない、ノスタルジーに訴える特別な時計だと思っている。おそらく、1970年代から定期的にアップデートされ、発売以来ずっと現代の時計界を彩ってきたノーチラスやロイヤル オークには、より現代的な感覚があるのだろう。そして、彼らの魅力は確かにその歴史に依拠しているものの、それ自体はノスタルジーに訴えるものではない。

 一方、222は最近になって、高額なコレクターズアイテムとして熱狂的に支持されるようになったので、新型はより時代の流れにより沿ったものとなっているように感じられる(まさにジュネーブの高級ブティックと現代をつなぐ時空を超えたワームホールのような存在だ)。同時に、ヴィンテージウォッチを所有し、それを愛用しながらも、信頼できる防水性、メンテナンス性、精度、堅牢性を備えた現代モデルを手に入れたいと願っている人にとって、このヒストリーク 222は非常に魅力的な時計となることだろう。

Vacheron 222 on wrist

 ヒストリーク 222のような時計には、あまり競争相手がいない。もちろん、ヴァシュロン同士ではオーヴァーシーズもあるが、これらは222の直系であり、さらに言えばRef.2215の直系でもある。222の後継は、その前身と同様に興味深い(222の系譜は、その後の333、フィディアス、そして1996年に発表された初代から3世代にわたる全オーヴァーシーズを含め、まさに興味深いものだ。少なくとも、ヴァシュロン・コンスタンタン自身が認めたわけではないが、ある通説がある。2021年11月、ヴァシュロンのスタイル・アンド・ヘリテージディレクター 、クリスチャン・セルモニ氏は、『Watchtime』に寄稿したマーク・ベルナルドのインタビューに次のように語っている。

ヴァシュロン・コンスタンタンでは、スポーツとエレガンスの両方を表現する新しい方法を見つけることが重要であり、トリプル・ツー(222)はその有望株です。ふたつの時計の共通点は、トノーケースとフラットテーブルベゼルと呼ばれるものですが、ブレスレットとその取り付け方はまったく異なります。私たちはオーヴァーシーズを222の進化版とは考えていないのです。

– クリスチャン・セルモニ氏 ヴァシュロン・コンスタンタン スタイル・アンド・ヘリテージディレクター

  222の後継モデル、特に333、フィディアス、初代オーヴァーシーズのデザインを見渡すと、これは的を射ているように思える。3モデルに共通する卵形のケースフォルムは、222のデザイン言語とはほとんど無関係のように思える。333は222から六角形のブレスレットを継承しているが、ただそれだけだ。皮肉なことに、少なくとも私には、オーヴァーシーズ第3世代が222と最も関係が深いように見える。それは、あたかもメイフラワー号がプリマス・ロックに上陸した17世紀以来、祖先に赤毛の者がいなかった現代の家族に、赤毛の子供が生まれたようなものだ。

Vacheron 222 on wrist

 ヒストリーク 222に対抗しうるもうひとつの時計は、A.ランゲ&ゾーネ オデュッセウスだろう。また、よほど現行モデルのブレスレット一体型スポーツウォッチのコレクションを構築しているのでなければ、ヒストリーク 222とオーヴァーシーズとを比較検討することはないだろう。どちらも魅力的な時計であり、現代的な時計コレクターにとって重要な位置を占めている。しかし、個々の価値の提案としてみると、それぞれのメーカーのコレクションで提供されるデザインや位置づけは、まったく異なるものだ(例えばオーヴァーシーズは、ヴァシュロンの歴史における時代の1ページを堂々と振り返っているし、オデュッセウスは少なくとも歴史と決別しているからだ)。

 ヒストリーク 222は、象徴的なヴィンテージウォッチの復刻にこだわる純粋主義者であれば、まさに望むところすべてを叶えてくれるモデルだ。初代モデルとの違いはほとんどなく、オリジナルの魅力をすべて備えている。実際のヴィンテージウォッチから得られる、生きてきた人生(とはいえ、他人の人生だが)との直接的につながる感覚はない。デザインは時代を感じさせながらも古さは感じさせず、ソーシャルメディアが飽和状態にある今日の愛好家の世界では達成しがたいカジュアルさと、そう、嬉しいほど控えめな腕の存在感さえ実現している。私は画像で見てまず気に入り、次にジュネーブで実際に見て気に入った。そして、「A Week On The Wrist」の取材でともに過ごし、さらに好きになったのだ。

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