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Introducing ゼニス エル・プリメロ プロトタイプに敬意を表したクロノマスター オリジナル トリプルカレンダー(編集部撮り下ろし)

55年前の希少なエル・プリメロ プロトタイプに敬意を表した、まったく新しいコンプリートカレンダーキャリバー。

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我々が知っていること

これこそ、私が支持できるリリースだ。これは新しいコンプリートカレンダーキャリバーを搭載したゼニス クロノマスター オリジナル トリプルカレンダーである。その外観から、すでに私はこの時計に心を奪われている。バランスの取れたデザイン、38mmのサイズ、そしてトリプルカレンダー ムーンフェイズ クロノグラフ。たぶん3年前であれば、新しいリリースに関して、この3つのことを言及するとは思ってもみなかっただろう。

 しかし、それは物語の始まりに過ぎない。クロノマスター オリジナル トリプルカレンダーは実のところ、1970年に発表された希少なエル・プリメロへのオマージュで、そのコンセプトの証明としてわずか25本しか製造されなかった。ゼニスは、その遺産を現代のラインナップに組み込むという素晴らしい仕事をし、これはそのなかでも特に優れた作品のひとつといえる。

カラーオプションは3色。ホワイト、スレートグレー(オリジナルのプロトタイプへのオマージュ)、そしてブティック限定のグリーンだ。

 ゼニスによれば、このケースは単にヴィンテージからインスパイアされているというだけではなく、1969年に発表されたオリジナルのA386の設計図とプロポーションを忠実に再現したものだという。クロノマスター オリジナル トリプルカレンダーのステンレススティール製ケースのサイズは38mm(ラグからラグまでは46mm)、厚さは13mmだ。文字盤カラーは、ホワイトにブラックのインダイヤル、スレートグレーにホワイトのインダイヤル、そしてブティック限定のグリーンエディションの3種類がラインナップされている。

zenith chronomaster original triple calendar chronograph
zenith chronomaster original triple calendar chronograph white dial
zenith chronomaster original triple calendar chronograph thickness

 さて、この時計について語る前に、この時計のインスピレーションの源となった1本について触れたいと思う。というのも、この時計は私をバネ棒のように締まりなくさせる類のものだからだ。1969年にオリジナルのエル・プリメロ A386は、トリプルカレンダー、ムーンフェイズ、クロノグラフを搭載するように設計された。ゼニスはこのアイデアをテストするため、25本のプロトタイプを製作したが、そのあいだにコアとなるクロノグラフの人気が急上昇。初の自動巻きクロノグラフのひとつとして人気が高まり市場に投入されると、カレンダー付きエル・プリメロの計画は頓挫したのだ。やがて70年代に、より宇宙時代的なものとして再検討されるまで放置されるに至ったのである。

 これらエル・プリメロのプロトタイプはこれまでに数本しか公開されておらず、1本は2012年に約4万ドル(当時の相場で約300万円)で販売され、もう1本は2015年に約7万5000ドル(当時の相場で約940万円)で販売された。ゼニスはのちに、このプロトタイプを2012年に入手したことを明らかにした。それから12年後、新バージョンで再登場させたゼニスに対して、私はこう言わざるを得ない。よくやってくれた!

zenith el primero calendar prototype

新しいクロノマスター オリジナル トリプルカレンダーは、1970年に製作された25本のエル・プリメロ プロトタイプをベースにしている。この計画は頓挫し、商業生産には至らなかった。のちにゼニスは、右のモデルを2012年に入手したことを明らかにしている。Images: Courtesy of Phillips and Christie's

vintage zenith el primero calendar

 新しいスレートグレーモデルはオリジナルのプロトタイプをそのまま甦らせたもので、ほかのふたつはモダンなテイストを提供している。しかし、これらは忠実な復刻版ではない。クロノマスター オリジナル トリプルカレンダーはディナーの際にジャケットを羽織るようなデザインで、針とインデックスにはローズゴールドメッキが施され、よりドレスアップした印象を加えている。

 ゼニスの新しいエル・プリメロ Cal.3610は、既存のエル・プリメロ クロノグラフキャリバーにカレンダーモジュールを追加したものだ。3万6000振動/時(5Hz)で駆動する同じベースムーブメントを用い、クロノグラフ針が10秒ごとに文字盤全体を回転する。そう、遊んでいて決して飽きることはなかった。

zenith chronomaster original triple calendar moonphase chronograph

オリジナルのプロトタイプからインスピレーションを得たスレートグレー文字盤。

zenith chronomaster original triple calendar moonphase chronograph

そしてモダンなグリーンの文字盤。

 ホワイト文字盤とグレー文字盤は一般に販売され、グリーン文字盤はゼニスの実店舗およびオンラインブティックでのみ購入できるブティック限定エディションだ。いずれもカーフスキン製レザーストラップ、またはSS製ブレスレットを用意。希望小売価格はブレスレットモデルが183万7000円、ストラップモデルが176万円(ともに税込)だ。


我々の考え
zenith chronomaster original triple calendar moonphase chronograph

ここ数年、私はゼニスがリリースする時計に感銘を受けてきたが、この時計もそのリストに加えてもいい。私が10年ほど前に時計に注目し始めたとき、正直に言うとゼニスにはあまり注目していなかった。それもすっかり変わってしまった。昨年のブラック文字盤の“クールな”エル・プリメロから、チタン製のデファイ リバイバル シャドウThree On Three記事でチューダーとグランドセイコーに真っ向勝負を挑んだ時計だ)まで、ゼニスは多くのブランドが目指すヘリテージと現代的ウォッチメイキングのあいだのスイートスポットを見つけることに成功している。これらの時計はすべてゼニスのヴィンテージウォッチとの明確なつながりがあるが、ヘリテージを誇張することはない。

zenith chronomaster original triple calendar moonphase chronograph dial
zenith chronomaster original triple calendar moonphase chronograph dial

 これらの時計は完璧ではない。私はまだゼニスからよりよいブレスレットの登場を望んでいるが、それについては前回のエル・プリメロのレビューで取り上げたので、済んだ問題について論議するつもりはない。もうひとつ小さな要望を挙げるなら、オリジナルのプロトタイプには10時と2時位置にスターインデックスがあったことに気付いているだろうか? それを新しいクロノマスター オリジナル トリプルカレンダーにも組み込んで欲しかった。

 ところで、ゼニスは以前にもこのようなことを行なっている。2014年に、ゼニスはエル・プリメロ トリプルカレンダー リミテッドエディション(エル・プリメロ 410)を発表した。しかしそれは42mmで、魂が欠けていたようだった。我々は皆この10年で長い道のりを歩んできたが、ゼニスの製品にはそれが如実に表れている。

zenith chronomaster original triple calendar moonphase chronograph dial

 スタンダードなエル・プリメロ クロノグラフは価格(ブレスレットで約150万円)面で厳しい競争に直面しているが、トリプルカレンダーとムーンフェイズを搭載してしまえば、直接の競争相手を考えるのは難しい。最も直接的なライバルは、ブライトリングのプレミエ B25 ダトラ42で、こちらは176万円(税込)だが、42mm×15.3mmというパッケージをの素晴らしい時計である。ミッドセンチュリーの美学がイームズチェアと共通するとしても、このふたつがまったく同じ手首を求めて競っているとは言い難い。

 今月初め、LVMHは2017年からゼニスのCEOを務めてきたジュリアン・トルナーレ氏が退任し、タグ・ホイヤーの同職に就くと発表した。このような製品は、彼がブランドを前進させながら、いかに伝統を現代のカタログに取り入れたかを物語っている。私は彼がさらに重要な歴史を持つブランドであるタグ・ホイヤーでも同じことをしてくれることを願っている。

 一方のゼニスは、この調子のままで。


基本情報

ブランド: ゼニス(Zenith)
モデル名: クロノマスター オリジナル トリプルカレンダー(Chronomaster Original Triple Calendar)
型番: 03.3400.3610

直径: 38mm(ラグからラグまでは46mm)
厚さ:  13mm
ケース素材: SS
文字盤: ホワイトにブラックのインダイヤル、スレートグレーにホワイトのインダイヤル、グリーンにエディションホワイトのインダイヤル
インデックス: ローズゴールド(メッキ)の針とインデックス
夜光: スーパールミノバ SLNC1
防水性能: 50m
ストラップ/ブレスレット: SS製ブレスレット、またはカーフスキンストラップ

zenith chronomaster original triple calendar
zenith chronomaster original triple calendar

ムーブメント情報

キャリバー: ゼニス エル・プリメロ 3610
機能: トリプルカレンダー(曜日、日付、月表示)、ムーンフェイズ表示、10分の1秒計測クロノグラフ(10秒ごとに文字盤を1周)
直径: 30mm
パワーリザーブ: 60時間
巻き上げ方式: 自動巻き
石数: 35
振動数: 3万6000振動/時(5Hz)
追加情報: コラムホイール式エル・プリメロ クロノグラフ


価格 & 発売時期

価格: 183万7000円(ブレスレット)、176万円(レザーストラップ)。ともに税込
販売状況: グリーン文字盤は、ゼニス直営ブティックおよびオンラインブティックでのみ購入可能

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ゼニスはLVMHグループの一員です。LVMH Luxury VenturesはHodinkeeの少数投資家ですが、HODINKEEは完全な編集上の独立性を保っています。