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November 25, 2020
November 25, 2020
Hands-On セイコー ダイバーズウォッチ55周年記念3モデルを実機レビュー

Hands-On セイコー ダイバーズウォッチ55周年記念3モデルを実機レビュー

セイコーダイバーズの55周年を祝って万歳!

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限定モデルでよく困るのは、選ばれた少数の人々にのみ意味を成す、なにか非常に難解なものを祝っている場合だ。セイコー プロスペックス ダイバーズ 55周年記念トリロジーは、その類の限定モデルではない。これはダイバーズウォッチの半世紀以上にわたる革新を祝うものだ。腕時計を趣味にしている我々の中には、セイコーのダイバーズウォッチを通して自分の道を見つけた者が多いが、それは偶然ではない。庶民的ながら革新的、実直な時計づくりという点でセイコーの右に出るものはなく、特にそれらを具現しているのがダイバーズウォッチの数々だといえる。今回の限定版3部作の発売を、セイコーにおいてダイバーズウォッチがいかにアイコン化してきたかという長い(そして現在も続く)物語の腕時計史講座として捉えてみよう。セイコーと、海、探検、テクニカルイノベーションとの歴史的な関わりを振り返る短期集中コースだ。 

 もちろん、これらは定番モデルではなく、そのような仕様や価格設定でもない。セイコーは、自社のダイバーズウォッチ55周年を機に、予定された生産のルールに捕われないものづくりに取り組んでいる。同社のダイバーズは、昔から丈夫で手に入りやすいという特徴があるが、この3部作の元となったのは、まさにその通りの時計たちだった。しかし、今回のトリロジーにおいて、セイコーは次のような疑問をもって時計製造を見直したように見受けられる。もし、これらのモデルがスペックを最大限に引き出すことができたとしたら、それはどのようなものになるだろうか? 我々はその結果を見ているのだ。

 これら3モデルには、アップグレードしたムーブメントと新たなケース素材といったテクニカルな特徴が詰め込まれているが、それは身に着ける方法を変えるものではない。一方で、腕時計を堪能する方法を変えるものでもない。 

 3部作を構成する3つのモデルは、SBEX009、SBEX011、SBDX035だ。別の言い方をすれば、1965年発表の62MAS/6217、1968年発表の6159-7001、そして1975年発表のプロフェッショナルダイバー600m、それぞれを現代に再現したものだ。これらは3部作として同時に発表されたが、実際の発売時期はずらしている。 

 通常のハンズオン記事であれば、1本の腕時計の着け心地がどうであるかを詳しく語ることになるし、そうするつもりではあるが、今回は通常のやり方とは異なる。セイコーは3部作を全て一挙に我々に投げかけたからだ。これは、それらを同時に見て、3つのモデルにあるテーマや一貫した要素を分析する機会となる。腕時計が周囲と何の関わりももたずに発売されることはめったにない。まだコレクターが市場を動かしてはいなかった頃、腕時計は基本的に特定の環境や必要性によって求められる機能の需要に応えて発売されるものであった。62MASならそれは南極でのミッションであったし、より一般的なところでは、スキューバダイビングの普及であった。

 さて、もちろん腕時計はコレクターたちのノスタルジックな憧れに応えるものだ。55周年記念の3部作はまさにコレクターたちに向けたもので、各モデルの製造数は1100本限定。では、そのノスタルジーはそもそも何に由来するのだろう。なぜこの3モデルには祝うべき価値があるのだろうか? 

セイコー ダイバーズウォッチの始まり

  1965年にセイコーは、同社初のダイバーズウォッチとなる62MASをリリースした。ハック機能のない6217ムーブメント、クイックセットのデイト、 そして驚くべきことに150mという防水性能を備えていた。特にブランパンのフィフティ ファゾムスやロレックスのサブマリーナーのような、1950年代にヨーロッパで登場した初期のダイバーズウォッチ開発に必ずしも影響されたというわけではなかった。時計製造のための原動力は、“The Grand Seiko Guy(グランドセイコーガイ)”によって発見された文書によると、1967年に開始される日本の南極調査遠征中に、同地の過酷な条件で働いているであろう研究者のニーズを満たすためであった。セイコーは、1968年11月に発行された営業レポートの中で、JAREの鳥居鉄也研究員が第8次南極観測隊(1967-68年)から帰国し、セイコーが提供した62MASが南極で良好な性能を発揮したことを国内の販売店に報告した。一方、神奈川県では、セイコー初の300mダイバーである6215を、第9次南極観測隊の隊長に潜水してもらい、その性能を確認した後、南極での使用を想定した4機種を発表していた。6215はモノブロックケースと300m防水を誇り、1967年6月に発売。62MASからわずか2年という短期間で、セイコーは防水性能を2倍に高めた。

The Grand Seiko Guy

1965年の62MAS。セイコー初のダイバーズウォッチである。 

 1965年に日本製ダイバーズウォッチが発売された頃、日本はアジアの経済大国として台頭していた。第二次世界大戦後の懸命な復興努力が日本を繁栄に導いたのだ。技術革新の巨大な波が自動車産業、造船業、製鉄業、電子機器製造業に押し寄せ、時計業界も恩恵を受けた。この時代の時計を語るのであれば、セイコーとシチズンだ。セイコーは間違いなく、垂直統合の経済的利点を享受する日本の大企業を意味する“財閥”だった。アメリカや西洋諸国のほとんどにおいてヨーロッパのダイバーズウォッチのほうがセイコーよりも先に発売されたにも関わらず、振り返ってみれば62MASは、技術的に欧州のダイバーズウォッチ最大の競合製品となった。ジョー・トンプソン(Joe Thompson)が記事にしているように、セイコーがアメリカに進出したのは1967年、東京の服部時計店がニューヨークにセイコータイムを設立したのがきっかけである。 

  62MASは、あらゆるレベルで幅広く成功することになるダイバーズウォッチの基礎となった。それまでも手の届きやすいモデルはあったが、セイコーは1968年に早くも6159-7001という “スーパーウォッチ”を作った。ハイビートのムーブメントと一体構造のモノブロックケースケースを採用し、プロダイバーたちのために特別に開発されたものだった。ねじ込み式リューズにより、従来の2倍となる300m防水を実現。3年という短期間で防水性能を2倍に伸ばし、その時代の本格的なダイバーのほぼ全てのニーズに応える時計を開発したのだ。1960年代から1970年代の日本は優れたエンジニアリング、特にセイコーの技術がフルに発揮された時代だった。

「ツナ缶」の性能を宣伝する1975年の店内用広告。

 1970年代初頭、ダイビング技術が時計設計を凌ぐ速度で進化し、問題が表出。内部にヘリウムがたまって風防が外れてしまうという問題が発生したのだ。あるプロダイバーがセイコーに次のような手紙を書いた。

 「私は潜水鐘を使って水深350mで作業するダイバーです。このような水深まで潜る場合、潜る前に短時間で35気圧まで加圧することがあります。しかし潜水後は減圧室を使って徐々に減圧していかなければなりません。海底は非常に過酷な作業環境なため、セイコーの現在の300m仕様のダイバーズウォッチは使えないのです……」

 セイコーは、このひとりのダイバーのニーズに応えるため、挑戦を受け入れた。 

 セイコーは6159-7010を導入することで、この非常に特殊な問題に対処。この時計の開発には20件の特許と型破りなアプローチが必要だった。他の同時代のモデルのようにヘリウム排出バルブを搭載するのではなく、そもそも時計の中にヘリウムを一切入れないようにしたのだ。それは特別に設計されたガスケットと気密性機構によって成し遂げた。再び防水性は2倍になり、“ツナ缶”と呼ばれるようになったこのモデルは、600m防水を実現した。

 これら節目となる3つのダイバーズウォッチが元となり、この夏にリリースされる55周年記念3部作ができ上がったのだ。

SBEX009

  SBEX009を完全に理解するには、セイコーが62MASをSBDX019の形で再リリースした2017年まで立ち戻る必要がある。これを再設計したのはセイコーのデザインを長く担当してきた小杉修弘氏。その復刻の裏にあるテーマは、美的な意味でオリジナルにできるだけ近づけるというもので、成功を収めた。この腕時計は、クラシックの復刻版としては傑作と見なされている。何が素晴らしいのかというと、盛岡の雫石時計工房でグランドセイコーのムーブメントと共に製造される8L35を搭載した点だ。これは特別なことで、デパートのセールで売られているようなセイコーの腕時計には使われないムーブメントだ(念のために言っておくと、6R15のようなムーブメントも素晴らしいし、それを使っている時計も然りだ)。 

 ビジュアル的に、SBEX009では文字盤が大きくアップデートされている。深みのあるブルーに僅かなサンレイ仕上げが入っている。少し傾けると蝶ネクタイのような光沢が現れるという光の捉え方をする。厚みのある縁取りがルミノバのインデックスを包み込むように形成し、非常に読み取りやすいはっきりとしたマーカーになっている。62MASは多くのセイコーダイバーズが従うことになるデザイン言語の基礎を築いたが、それは1965年と同じように今日でも全く同じように機能している。この時計の面白いところは、判読性という意味において時計はそれほど進化していないと気付かせてくれる点だ。1965年のデザインは、最近発売されたものと比べても遜色がない。同じフォントが使われ、リューズにはサインも入っている。 

 当然のことながら、このモデルはヴィンテージウォッチの趣きも醸している。39.9㎜というサイズは、多くのユーザーたちが支持するようになってきたスイートスポットの領域に入る。ケースはセイコーが特許をもつ“エバーブリリアントスチール”を採用しているが、SBEX009には艶消し仕上げが施してあり、輝きは控えめだ。しかし、それは真正面から見た場合の話。ケース側面はザラツ研磨で仕上げてある(“ザラツ”と“ザイバツ”を混同しないように。後者は上でも述べたように、セイコーも該当する日本の縦統合型大企業のことだ)。このケースの仕上げは、62MASよりも飛躍的に改善されている。これは明らかなことだと思うが、しかし同時に本機は、セイコーが1965年に現代の製造技術を手にしていたなら間違いなく作っていたであろう腕時計だと感じる。文字盤に合わせたブルーのトロピカルラバーストラップが付属するが、私の知る限り、これはセイコーの他のモデルでは見られないものだ。

 搭載されているムーブメントはセイコーのCal.8L55。ここが最も劇的な改良部分だ。SBEX009を、2018年モデルのSBDX019からさらに魅力あるものにしているのは、アップグレードされたムーブメントである。旧型のCal.8L35は2万8800振動/時であったのに対し、Cal.8L55は3万6000振動/時で動作する。使われる石は11個追加され、パワーリザーブは55時間に引き上げられた。 

 55周年記念はさておき、SBEX009は、セイコーが長年培ってきた数々の技術の進歩を活かした62MASの究極の表現として、結果的に合理的結末としてたどり着いたもののように見える。 

 そして、1965年の62MASの発売からわずか3年で、セイコーは特徴的なケースデザインをもち現代に見られるダイバーズウォッチをはるかに上回る腕時計を1968年に作り上げた。

SBEX011

 モノブロックケースというだけで実に着け心地が変わる。SBEX011はケースの裏蓋によってできる、刻み目や隆起がないために腕にぴったりとフィットするのだ。ここでもまたセイコーは、1968年のオリジナルをSBEX007という形で完璧にオマージュした復刻版を既に作っている(2018年)。これはヒット作となり、セカンダリーマーケットでも入手が困難だ。 

 新たなSBEX011は、ケースの形状と全体の美観については同じだが、SBEX007ほどオリジナルを忠実に踏襲しているわけではない。同じディープブルーの文字盤だが、ゴールドのアクセントがなくなり、文字やインデックスの縁取りは文字盤と同系のグレーやシルバーになった。これにより、時計にモダンな雰囲気を与えている。モノブロックケースの両面には縁に向けて角度が付けられ、どちらの面にもザラツ研磨が施してある。ケースの側面が光を反射する一方で、ケース前面は艶消し仕上げのままである様子には、ある種不思議な感覚がある。また時計の装着感も特徴的だ。モノブロックケースのおかげで、44.8mmというサイズが小さく感じられるのだ。厚みも15.7㎜あるが、裏がフラットになっていることで実に着けやすい。

 SBEX011には、SBDX019からSBEX009へ進化したのと同じアップグレードが施されている。具体的には、Cal.8L55と“エバーブリリアントスチール”ケースだ。このスティールにはややシルバーがかった光沢があり、ほとんどのダイバーウォッチに標準的に使われている316Lに比べて1.7倍の耐食性があるとセイコーは言う。SBEX011に関していえば、突出しているのはケースだ。デザインは間違いないわけで、元々プロが使うために設計された時計であるならば、そこにエバーブリリアントスチールを使うのは理に適っている。
 そして印象的なのは、この2020年モデルはプロ仕様として格付けされているのだ。懐疑的な方のために言っておくと、ケース裏に「FOR SATURATION DIVING (飽和潜水用)」とエングレービングが施してある。ツールウォッチ的な美観に見合うだけの仕様を備えたというわけだ。

 しかしツールウォッチ的美観ということで言えば、「ツナ缶」モデル以上にツールウォッチ的様相を具現した腕時計は過去のセイコーにはない。 

SBDX035
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 “グランドファーザー ツナ”と呼ばれる6159-7010は、1975年に非常に特殊な問題を解決するために開発された。これまで、均整の取れた節度あるルックスだと称賛されることはめったになかった。というか、全く真逆だった。デザイン説明の結果は時として、「機能的」から「美的」までの領域の中央に落ち着くこともあれば、どちらか一方に傾くこともある。しかし「ツナ缶」の場合は常に「機能的」の領域に偏っていた。6159-7010の開発責任者であった田中太郎氏がセイコーのために書いた記述の中で、彼はこの時計の外観が非常に重要だったと述べている。 

 “我々は様々なデザイン要素、最も人目を引くケースの外観、回転ベゼル、リューズ、ストラップの質感、形状、質感、色といった要素のバランス、そしてそれらが一体になった時の総合的な時計の操作性、装着感や着け心地の良さ、そして存在感や発散する雰囲気やオーラなど、何度も試作を重ね、洗練されたデザインに仕上げていきました”

 そして、SBDX035は、その独特なその美意識から多くの人々の間でカルト的な支持を得ているが、シリーズの他のモデルと同様、このモデルも“ツナ缶”の究極の姿を表現している。スペックは最大限に上げてはあるが、ムーブメントは例外で、Cal.8L55の代わりに8L35を採用している。Cal.8L35は、グランドセイコーのCal.9S55に近いスペックを備えている。 

 ベゼルにはエバーブリリアントスチールを、それ以外の部分にはオリジナル同様にブラックチタンを使用している。チタンは様々な点でスティールよりも優れているため、オリジナルで元々SSが標準だった部分だけをエバーブリリアントスチールにアップグレードした。

 “ツナ缶”の大きさは他の腕時計とは異なる。着けやすいのはもちろんのことながら、どこかへ紛失してしまうことがない。その軽量さから存在感は幾分薄れるが、これはダイビングに行く日まで引き出しの中にしまっておくような腕時計だ。もちろん、「ツナ缶」を普段使いの時計として着ける人もいるが、この時計をセレモニーのように着けるという考え方もまた素晴らしい。SBDX035を装着するのは、特別な食事のために最上の食器を準備するようなものなのだ。

特別なトリロジー

 このトリロジーに関して言い残したことはないように思う。新素材、先進的なムーブメント、そして多くの人々から愛される文字盤色がこの3部作をこの上なく魅力あるものにしている。これらの腕時計はセイコーが提供できる範囲で最高レベルに達している。ひとつだけ変更したい部分があるとすれば、それは1100本と言わず、もっと多く製造して欲しいという点のみだ。 

 価格は次の通り。SBEX009は65万円、SBEX011は70万円、SBDX035は45万円(全て税抜)。現在それぞれ2020年6月、7月、8月というように時期をずらしてリリースされる。各モデル1100本限定で、限られた正規ディーラーおよびセイコーブティックで販売。55周年記念トリロジーの詳細はコチラをクリック。