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Entry Level チューダー ブラックベイ 36 時を経てもずっと持ち続けられる1本

老若男女を問わず、あらゆる人にふさわしい入門時計かもしれない。

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『エントリーレベル』企画では、高級時計メーカーのなかで最も手ごろなモデルを紹介する。そうはいっても手ごろではないものもあるが、どんなブランドでも入門機というものがあるのだ。

時計選びというのは、なかなか難しい。どんなブランドがいいか、どんなデザインがいいか、どんな機能が欲しいか、サイズは大きめがいいのか、小さめがいいのか、そして予算はどのくらいか……。決めるべきことが山ほどある。こうしていろいろと悩む時間も時計を選ぶ楽しみのひとつだが、悩みに悩んで選んだ時計であったとしても、ずっと愛用し続けられる人というのはそう多くない。それは時計が好きになればなるほど、その傾向が強くなる。これしかないと選んだ時計であっても、いつかしかその熱は失われ、次の時計へと心が移っていく。……こうして立派なコレクターが誕生するわけだ。
 今回注目したチューダーのスタンダードなブラックベイは、チューダーのなかでも入門機としておすすめの時計である。だが同時に、たとえあなたがコレクターに成長しても愛用し続けられる魅力を持った時計だと思っている。

 ブラックベイはチューダーのなかでも特にコレクションが充実している。39mm、デイトなしのブラックベイ フィフティ-エイト、ブロンズケースを採用した43mmのブラックベイ ブロンズ、フラッグシップとなる41mmモデルでは、ノンデイトのブラックベイ、デイト付きのブラックベイ デイト、GMT機能を備えたブラックベイ GMT、そしてクロノグラフモデルのブラックベイ クロノと選択肢も豊富だ。さらに、1960年代後半の特殊なプロトタイプをベースに開発されたベゼルロック機能を備えた42mmのブラックベイ P01もある。これらはすべて、頭にMT(MANUFACTURE TUDORの略)の文字が付いた、約70時間パワーリザーブを備えるCOSC(スイス公認クロノメーター検定協会)認定のマニュファクチュールキャリバーを搭載している。そして、これらとは異なり、COSCクロノメーター認定を受けていない、約38時間パワーリザーブを持つETAベースのムーブメントを搭載しているのが、41mm、36mm、32mmの3サイズで展開するスタンダードなブラックベイだ。

 ブラックベイ以外にも、飽和潜水に対応した500m防水のペラゴス、1970年代のチューダー クロノグラフへのオマージュを込めたヘリテージ クロノなど、魅力的なコレクションが脇を固める。驚くべきことに、その多くが30万円台から50万円の価格帯で手にすることができる。そもそもチューダー自体、価格を超える価値の提供に重点を置く、高級時計のエントリーブランドとして極めて優秀な存在なのだ。プライスだけを考慮すれば、ほかにもETAをベースとしたムーブメントを搭載するクラシックなデザインの1926、一体型ブレスレットを備えるチューダー ロイヤル、そして滑らかなケースラインが印象的なグラマー(デイト、デイト+デイはETAベースだが、ダブルデイトはマニュファクチュールキャリバーを搭載しており、価格は最低でも税込38万2800円から)など、30万円以下の価格で充実した選択肢を提供するコレクションもある。そんななかでも、なぜスタンダードなブラックベイをおすすめするのか? いくつかの視点から説明しよう。

サイズ

左からブラックベイ 41(41mm)、ブラックベイ 36(36mm)、ブラックベイ 32(32mm)。並べてみるとサイズ感の違いが一目瞭然だ。

 スタンダードなブラックベイには41mm、36mm、32mmのみっつのサイズがある。明確に区別されているわけではないし、サイズ的に問題なければ32mmのブラックベイ 32を男性がつけてもまったく問題はない。ただし、上のサイズ比較からもわかるかと思うが、かなり小ぶりだ。基本的には女性向けと考えたほうがいいだろう。悩ましいのは41mmと36mmである。やはりブラックベイ 41は、そこそこ大きい。つけてみると、手元でその存在をしっかりと主張しているのがよくわかる。対してブラックベイ 36は目立ち過ぎず控えめ過ぎない程よいサイズ感だ。41mmのサイズ感はブラックベイのほかのラインナップでも堪能できるが、36mmはこのスタンダードなブラックベイにしかない。

ブラックベイ 41をつけた様子。大き過ぎるわけではないが、しっかりと存在感を主張し、力強い印象を受ける。

ブラックベイ 36をつけた様子。ブラックベイ 41と比べると明らかにコンパクトなサイズで、どこか品のある印象だ。

スペック

 マニュファクチュールキャリバーを搭載したブラックベイコレクションは、すべて200m防水を確保している。ブラックベイ GMTとブラックベイ クロノを除いて逆回転防止機能付きベゼルを備えており、ダイバーズウォッチとしての性能を備えている。一方、スタンダードなブラックベイは固定式のスティール製スムースベゼル(ポリッシュ仕上げ)だ。ダイバーズウォッチではないが、スクリューバックとねじ込み式リューズを備えたケースは150m防水となかなか堅牢な作りを持つ。またリューズにはブラックのアルマイト加工が施されたリューズチューブが装備されていて、しっかりねじ込まれた状態と開放状態との違いが見た目にわかりやすい。リューズの締め忘れは、時計の扱いに慣れている人でもやりがち。時計の水入りトラブルの原因ともなりうるヒューマンエラーに気付きやすい作りは、長く使うことを考えるとありがたいポイントだろう。

 SS製ブレスレットの表面はオールサテン仕上げ、そしてセーフティキャッチ付きのフォールディングクラスプ仕様だ。ブレスレットのコマ調整はネジ式を採用する。特別珍しくもないが、手ごろな価格の時計では、ブレスレットのクオリティに難があるものが少なくない。だが、スタンダードなブラックベイはその価格の割に剛性感の高い、しっかりとした作りのものを採用している。ネジ式の方が圧倒的に調整がしやすいし、ピン留め方式のものなどと比べると堅牢性も高い。このブレスレットのクオリティは時計を選ぶ上でとても重要なポイントで、時計の高級感にダイレクトに影響する。そういう意味では間違いなく高級時計にふさわしい作りだと言えるし、ブレスレット仕様がイチオシだ。

 ちなみにブレスレット以外にレザーストラップ、ファブリックストラップの選択肢もあるが、そちらも抜かりはない。レザーストラップでもセーフティキャッチ付きのフォールディングクラスプが採用されているし、ファブリックストラップはフランスのサン・テティエンヌ地方の工房で、150年以上続くメーカーが生み出す伝統的なジャカード織りの技術を用いたものを使用。一日に数mほどしか織れないという織り機で細い糸を大量に使用して織り込む手間のかかるもので、しなやかだが丈夫だ。ブレスレット以外を選択しても高い満足感を得られるだろう。

デザイン

ダイヤルはラッカー特有のグロッシーな質感。

 ほかのモデルと同様、スタンダードなブラックベイもデザインは1950年代に製造されていたダイバーズウォッチからインスピレーションを得ている。リューズは“ビッグクラウン”とも呼ばれる1958年に登場したモデル、Ref.7924から着想を得たスタイルだ。また“スノーフレーク”の名で知られる先端部にスクエアが付いた特徴的な針は、1970年代にフランス海軍で使用されていたモデルから取り入れられたもの。時計のスペックはコレクションのなかでも極めてベーシックなものだが、チューダーの、そしてブラックベイの魅力がしっかりとデザインとして盛り込まれているのだ。チューダー の時計にはブラックベイのほかにも手ごろな価格のコレクションはある。だが、チューダーらしさ、チューダーならではの魅力が特に色濃く反映されているモデルはスタンダードなブラックベイをおいて、ほかにないと思う。

 そして、これが最大のおすすめしたいポイントかもしれない。この時計は使い勝手がいいのだ。前述した通り、デザインはヒストリカルなダイバーズウォッチがベースになっていて、カジュアルな服装に合わせやすい。そうした用途がメインなら41mmもいいと思う。だが、ジャケットを着るようなシーンにつけることも想定するなら、小ぶりな36mmがいい。41mmだと時計の主張がやや強いが、36mmなら時計だけが悪目立ちすることもなく、オールマイティーにつけられる。

 そして付け加えると、スタンダードなブラックベイは生産終了となってしまったヘリテージ レンジャー(Ref.79910)に代わる存在だと筆者は思っている。ヘリテージ レンジャーは2014年に登場したモデルだが、2018年にチューダーが日本上陸する際には市場導入が見送られ、その後、ひっそりと姿を消してしまった。この時計もブラックベイと同じように過去の名作、1967年のチューダー オイスター プリンス レンジャー Ref.7995/0がデザインソースだった。ブラックのダイヤルに矢じりのような形の針と3・6・9・12のアラビア数字とバーインデックスを組み合わせたデザインで、オリジナルの特徴をほぼ忠実に受け継いでいた。

 いくつか気になるところはあるものの、ヘリテージ レンジャーは、長年チューダーのなかでも入門機としておすすめの時計だと筆者は思っていたのだ。派手な装飾を避け、時計にとって最も重要な時刻表示機能と堅牢性を追求する。ロレックスで言うところのエクスプローラーに近いコンセプトを持ちながら、値ごろな価格(2014年発売当時の定価は2950ドル、当時の為替レートで約31万円)で提供する。それがヘリテージ レンジャーの魅力だった。

 ヘリテージ レンジャーのデザイン自体は好みだったが、サイズは41mmあり、ベゼルの幅が細いことも相まってブラックダイヤルのスペースが目立ち、オリジナルが持っていたバランスとは異なるものになっていた。「もうひと回り小さければよかったのに……」、「マットダイヤルじゃなくて艶のあるダイヤルだったらよかったのに……」と、思ったことは1度だけではなかった。スタンダードなブラックベイはヘリテージ レンジャーとはコレクションが違うし、ダイヤルデザインもやや異なる。だが、筆者がヘリテージ レンジャーに感じていた不満を解消し、品のいい艶のあるダイヤルを備え、ほどよいサイズ感を持った理想形。それがブラックベイ 36なのだ。36mmのSSブレスレット仕様で34万7600円、レザーストラップかファブリックストラップなら31万1300円(ともに税込)と、価格も失われてしまったヘリテージ レンジャーとほぼ同じの手ごろな価格を実現している。筆者にとって、この時計はまさに理想的なエントリーモデルだ。この記事を読み、気になった方は、ぜひともブラックベイ 36に触れてみて欲しい。おそらく筆者だけでなく、チューダーのエントリーモデルを求める人においても、一生添い遂げられる時計になってくれると思う。

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時計の詳細は、チューダー公式サイトまで。