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In-Depth オーデマ ピゲ ロイヤル オーク シングルトーン&バイメタルモデルのストーリー

モノトーンの新しいツートン。


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※本記事は2018年8月に執筆された本国版の翻訳です。

2018年のSIHHで、新たにポリッシュベゼルを採用したオーデマ ピゲ ロイヤル オーク “ジャンボ” エクストラシン Ref.15202が発表された。お馴染みのロイヤル オーク ジャンボ(個人的には本当に大好き)と同じクラシックなモデルで、一見すると古びた普通のステンレススティールの時計に見えるかもしれないが、決してそうではない。このモデルはチタンとプラチナによる、モノトーンスタイルのバイメタルウォッチなのだ。 

 この限定版モデルは賛否両論をもたらした。好きな人もいれば、嫌いな人ももちろんいた。「プラチナはチタンと違って傷が付くよ!」と言う人もいれば、「他のモデルと比べてベゼルの輝きが好き!」という人もいた(これは、わたしが言ったことだ)。否定派はともかく、考えるきっかけになった。「オーデマ ピゲのロイヤル オークには他にどんなシングルトーンのバイメタルモデルがあるんだろう?」
 結論から言うと、かなりの数が存在する。そして、それはオーデマ ピゲが様々な金属を使って実験するという理念にかなったものだ - 1972年の初代ロイヤル オークは、スティールウォッチを作るために変わったアプローチを取ったものだった。そして、他社には想像できない珍しい素材を使っていることで有名だ。2年前に発売されて今でも手に入れられない、フルセラミックの永久カレンダーを覚えているだろうか? それも一例だ。

プラチナ&チタン製のオーデマ ピゲ ロイヤル オーク “ジャンボ” エクストラシン Ref.15202。

 今回は、ワントーンスタイルでありながら、複数の金属を使用したロイヤル オークがどのくらいの種類作られているのかを探ってみたい。変わった発想だが、ロイヤル オークは発表された当時は変わった時計だったので、なんとなく納得できるでしょう? 


スティール&タンタル

スティール&タンタル製のロイヤル オーク チャンピオンシップ Ref.56175TT(1990年)は、オーデマ ピゲ初のモノトーンスタイルのバイメタルモデルだった。 

 シングルトーンでバイメタルスタイルをもつ最初期のオーデマ ピゲ ロイヤルオークは、1990年に発表された Ref.56175TTだ。このロイヤル オークは“ジャンボ”ではなかった。直径33mmで、全てクォーツ製Cal.2612ムーブメントを搭載していた。2000本の限定生産で、外装はステンレススティールとタンタルで作られていた。タンタルは耐久性に優れたブルーグレーの金属で、F.P.ジュルヌのクロノメーター・ブルーやロイヤル オークの他のモデルでも使われている。いわゆる“ロイヤルオーク チャンピオンシップ”と呼ばれるモデルは、プロゴルファーのニック・ファルドが全米マスターズと全英オープンで優勝したときに登場した。 

ニック・ファルド選手とRef.561675TT。

 また、タンタルで作られた別のロイヤルオークといえば、レオ(リオネル)・メッシ ロイヤル オーク クロノグラフ Ref.26325TSを思い浮かべるかもしれない。2012年に発売されたこのモデルは、ピンクゴールド(400本)、プラチナ(100本)、スティール(500本)の3種類の金属を採用している。3つとも全てタンタル製のベゼルを採用しているが、今回は、スティール&タンタルモデルに焦点を当てる。レオ・メッシは大ヒットし、特にSS&タンタルモデルが人気を集めたが、その理由は一目瞭然だ。見た目が素晴らしく、面白いことに、ロイヤル オークの中でも、初めてタペストリーダイヤルを備えていないモデルの1つだった。さらに、サテン仕上げのプラチナケースにタンタルベゼルとリンクを採用していた。 

ロイヤル オーク“レオ・メッシ” Ref.26325TS(2012年)。 

 もう1つのモノトーンでタンタル&スティール製のバイメタルモデルは、1990年代に15本しか製造されなかったRef.25829TP ロイヤル オーク パーペチュアルカレンダーだ。ご想像の通り、この時計の写真を見つけるのはかなり厄介なことだったが、このモデルはスティール&プラチナなど他のモノトーンでバイメタルのバリエーションで生産された、より一般的なモデルもあった。 

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スティール&プラチナ

 オーデマ ピゲがこれまでに7種のモデルを生産していることが物語るように、モノトーンかつバイメタルの組み合わせで最も一般的なものはスティール&プラチナだ。そして、この組み合わせで最も多く生産されているのが、オーデマ ピゲの定番モデルであるロイヤル オーク パーペチュアルカレンダーである。パーペチュアルカレンダーはオーデマ ピゲで最もよく知られているコンプリケーションモデル(1955年に初めてパーペチュアルカレンダーウォッチを生産し、ロイヤル オーク初のパーペチュアルカレンダーは1983年に生産された)で、クォーツ革命の後、1990年代にCal.2120/2800、Cal.2120/2801、そしてCal.2120/2802へと改良された。 

スティール&プラチナ製のロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー オープンワーク Ref.25636SP(1993年製)。 

 SS&プラチナ製のロイヤル オークは、1993年にRef.25636SPとして初登場し、わずか50本の限定シリーズとして生産された。これは1990年代に同社の定番だったスケルトンダイヤルを採用したもので、その珍しさは一目瞭然だろう。これと似たようなモデルに、1993年に25本生産されたRef.25686SP(写真はない)、それに次いで、1996年に25本生産されたRef.25820SP(上の写真)がある。 

 スケルトンダイヤルを採用したロイヤル オークには3つの代表的なモデル、Ref.14794(スケルトン化された時刻表示のみの腕時計)、Ref.25729(パーペチュアルカレンダーとムーンフェイズを搭載したスケルトン懐中時計)、そしてRef.25829があった。Ref.25829(および、その懐中時計版)は、当時市場で最も薄かった自動巻きパーペチュアルカレンダームーブメントであるCal.2120/2802を搭載していた。さらに、1997年には25829SPがスティール&プラチナ製で登場したが、25本しか生産されなかった(下の写真参照)。 

SS&プラチナ製のロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー オープンワーク Ref.25820SP(1996年製)。

 その後、2002年にはオーデマ ピゲがオープンワークダイヤル(ダイヤモンドも採用!)を搭載したRef.25930SP QPを、数を限定せずに生産した。これに続いて、Ref.25983SP(2002年)、Ref.26103SP(2005年)の2つのクロノグラフモデルがドバイで発表された。これらは前者が25本、後者が50本生産された。ここで紹介したモデルは、いずれもSS製で、プラチナ製のセンターリンク付きスティールブレスレットを搭載した39mmケースと、プラチナ製ベゼルを採用している。これは、2018年初めに発売されたプラチナ&チタンバージョンとほぼ違いはない。この組み合わせでは、ロイヤル オークの定番である手作業によるサテン仕上げがさらに輝きを加えている。

SS&プラチナ製のロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー Ref.25829SP(1997年製)は、25本しか生産されていない(画像:サザビーズ提供)。 

SS&プラチナ製のロイヤル オーク パーペチュアルカレンダー オープンワーク Ref.25930SP(2002年製)。 


SS&ホワイトゴールド

左から順に、ブルーダイヤルのRef.66319SC、ホワイトダイヤルのRef.66319SC、グリーンダイヤルのRef.66319SC、Ref.66344SC、そしてRef.6646SC。 

 大した数ではないが、女性にぴったりなモノトーンのバイメタルウォッチもある。この時計はホワイトゴールド&SSの組み合わせで、24.5mmのケースにCal.2610(クォーツ)ムーブメントを搭載している。左端のRef.66319SCは、Ref.56175TTに続いて1990年に登場したもので、限定生産ではなかった。これに続いたのが1992年のRef.66344SCとRef.6646SCである(これも限定ではなく生産された)。  


スティール&チタン

SS&チタン製のロイヤル オーク シティ オブ セイルズ ビー ハッピー Ref.25926IS(1999年製)。  

 そして、SS&チタンモデルに焦点を当てるが、これはわたしの考えでは最も可能性に満ちた組み合わせだと思う。なぜそう思うのか? どちらの金属もホワイトメタルの中で最もスポーティな金属だと思うからだ。その好例が、いずれも1999年に発売されたRef.2586601ISとRef.25926ISであり、Cal.2385(さらに39mmケースも)を搭載している。前者は300本限定、後者は25本限定で生産された。これらのモデルは、SS&チタン製ロイヤル オークの3分の2を占めているだけでなく、2003年の国際ヨットレース、アメリカズカップで優勝したスイスのアリンギチームをサポートするオーデマ ピゲが製造した、シティ オブ セイルズの幅広い製品ラインの出発点でもある。しかし、このモデルは、オークランドでの勝利が期待されていたが、残念ながら勝利には至らなかったビー ハッピーチームに敬意を表して制作されたものである。 

SS&チタン製のロイヤル オーク グランド コンプリケーション Ref.26065IS(2009年製)。

 最後に、2005年に製造されたロイヤル オーク グランド コンプリケーション Ref.26065ISを紹介したい。このモデルはCal.2885(2001年発表の、ジュール オーデマ グランド コンプリケーションにも搭載された)を搭載しており、スプリットセコンドクロノグラフ、ミニッツリピーター、パーペチュアルカレンダー、曜日、月、週、ムーンフェイズ、閏年がダイヤル上に表示されている。最初のモデルはホワイトゴールド製であったが、数年後(正確には2009年)、同社はSS&チタン製のモデルを発表した。まさに素晴らしいものだ。この問題作の生産数に関して言うと、“限定されていない”というのは、“生産数は秘密だ”という意味合いもあるような気がする。 

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最後に

今では手に入らないチタン&プラチナ製のRef.15202。  

 おそらく読者は“モノトーンなのに2種類の金属を使う意味なんてあるのか、オーデマ ピゲよ?”と疑問に思っているだろう。わたしもそうだ。そこで、オーデマ ピゲの歴史に詳しい(そして極めてカッコいい時計愛好家でもある)マイケル・フリードマン氏に尋ねてみると、「ロイヤル オークは、1種類の金属であっても、常に“マルチトーン”のような時計で、これは様々な仕上げ技術によって実現されている。 色彩が似ている2つの素材を使うことで、技術の繊細さがより一層見えてくるのだ」と彼は言っている。 まさにその通りだ。    

 数多くの金属を見ていると、重さや仕上げ、手触りの微妙な違いに気づき始める。ときには、時計がホワイトゴールドかプラチナかということが、単純に肌で感じた金属の温度で分かることもある(これが理由でわたしはホワイトゴールドを好み、個人的にプラチナは冷たすぎると思っている)。1つの時計に2つの金属を組み合わせる場合にも同じことが言える。控えめなホワイトメタルの時計に深みと面白みを与えてくれるのだ。言うまでもなく、ステンレスのように見えてもそうではない時計を身に着けるのも面白いと思わないだろうか? いずれにせよ、オーデマ
ピゲは何か新しいものを築こうとしているようだけど、最新のチタン&プラチナ製のRef.15202が何本残っているかを調べに行ったところ、すぐに「全て売約済です」と言われてしまった。  

Ref.15202を貸してくれたエリック・クー氏とオーデマ ピゲの皆さんに感謝します。