trophy slideshow-left slideshow-right chevron-right chevron-light chevron-light play play-outline external-arrow pointer hodinkee-shop hodinkee-shop share-arrow share show-more-arrow watch101-hotspot instagram nav dropdown-arrow full-article-view read-more-arrow close close email facebook h image-centric-view newletter-icon pinterest search-light search thumbnail-view twitter view-image checkmark triangle-down chevron-right-circle chevron-right-circle-white lock shop live events conversation watch plus plus-circle camera comments download x heart comment default-watch-avatar overflow check-circle right-white right-black comment-bubble instagram speech-bubble shopping-bag

The Value Proposition ベスト・オブ・ザ・ビースト。シチズン プロマスター “エコジラ”300m

ゴッサムが必要としているダイバーズウォッチではないが、ゴッサムによく似合うダイバーズウォッチではある。


Photos by Tiffany Wade

本稿は2022年6月に執筆された本国版の翻訳です。

ADVERTISEMENT

私は昔から、ちょっと風変わりな魅力のある時計に深い愛着を抱いている。そのうちのいくつかは、よほど古参の熱心な人々を除けば、HODINKEEの読者であっても聞いたこともないような時計であるに違いない。ランダムにふたつ挙げるならば、アイクポッドのシースラッグ、そしてオーデマ ピゲのワンハンドウォッチ“フィロソフィ”(オフショアが持つブルータリズムの雰囲気とは対局に位置する時計だ)などがそうだ。

 そのリストの上位に位置し、非常に洗練された希少な機械式時計(例えばこれなどもそうだ)と肩を並べるのが、エコジラとして広く知られている海洋深海の巨人だ。しかし、おそらくこの時計を探すにあたっては、シチズン プロマスター プロフェッショナル300mダイバーの呼び方のほうがわかりやすいだろう。

Citizen Eco-Zilla 300M Professional Diver

 ウォルター・ミティ(Walter Mitty 、ジェームズ・サーバーによる短編小説の主人公)がダイビングライセンス(またはパイロットライセンス)の取得を夢見ているのと同様に、私もプロダイバーではないばかりか、アマチュアダイバーですらない。しかし現在のダイバーズウォッチやパイロットウォッチの主な役割は、ダイバーやパイロットに実用的な支援を提供することではなく、むしろダイバーでもパイロットでもない人々に同様の気分を味わわせることにある。ゆえにプロマスター プロフェッショナルダイバーは、これまでに作られた最高のダイバーズウォッチのひとつであると私は主張したい。

 それでは(それが私の仕事ゆえ)スペックを見てみよう。はたして小型の時計なのだろうか、あるいはシードゥエラーのように日常使いに適した時計なのだろうか(はっきり言って、そんな時計はそう多くない)。いやいや、とんでもない。直径48mmに厚さ18.6mmというこのモデルは、昔ながらのビッグダイバーズウォッチだ。実際、IWCのビッグ・パイロット・ウォッチよりも大きい(私は“ビッグ”が時計かパイロットのどちらかを修飾するように読み取れるという事実にいつも胸を躍らせているし、IWCのブティックにある「この時計を買うには、これぐらいの体格が必要です!」という掲示を思い浮かべたりする)。ダイバーズウォッチ規格ISO 6425の条項に照らして判断するならば、この時計は実態としても事実としてもダイバーズウォッチであると言える。

Citizen Eco-Zilla 300M Professional Diver on wrist

 視認性という点では、プロマスター ダイブ 300mはどの価格帯のダイバーズウォッチにも引けを取らない。夜光をケチるのは経済的であるとは言えないし、それは日本のメーカーが常々理解していることでもある。4桁(または5桁、あるいは6桁)の値札を付けた鼻持ちならないスイス製品を買うつもりはないかもしれないが、チャレンジャー海淵の底で『白鯨(原題:Moby Dick)』のファインプリント版を読めるほど明るく照らす、その金額に見合うだけの何かが欲しいとは思っているだろう。

 この時計はひとつの点を除いて、ローズゴールドのブルガリ オクト フィニッシモとまったく共通点がない。ブルガリのオクト フィニッシモを実際に手首に巻いたのは、ごく最近のことだった。ブルガリの場合、実物を手にした印象は、予想していたのとはおよそ正反対のものだった。評価することはあっても好きになるとは限らないし、ましてやどうしようもなく恋に落ちるなんてことはないだろうと思っていた。一方でプロマスター ダイブのケースにおいては、例えばあなたがマーベルのMCUファンで、その(無限に続くようにも見える)シリーズのなかでもとりわけ素晴らしい作品を鑑賞したときに得られるのと同じような経験をすることができた。音量を11に上げるだけで、期待しているとおりの充足感が得られるのだ。

Citizen Eco-Zilla 300M Professional Diver dial closeup

 一般的な美的感覚からすると、戦車の砲塔、あるいは戦艦の砲塔と言うべき時計だろう。チタンやセラミックを使って手首の上での重さを軽減した大型のダイバーズウォッチは数あれど、あえてその無骨な重量感を強調した時計を挙げるなら、この時計がぴったりだ。ほかの時計と同じように装着するのではなく、トニー・スターク(Tony Stark)がナノテクノロジーを駆使してAIで返事をし始める前の初代マーク1 アイアンマンスーツに身を包むように手首に巻くのだ。装着感のバランスをとっているのは、同じように重いストラップと、危険だが美しい海底の世界における大胆不敵な探検を予感させる巨大なバックルおよび遊環だ。机の表面の傷を気にする人物ならば、この時計をつけてデスクにダイブするようなことはないと思う。

Citizen Eco-Zilla 300M Professional Diver caseback
Citizen Eco-Zilla 300M Professional Diver case
Citizen Eco-Zilla 300M Professional Diver buckle
eco zilla

Lume shot by author

 この時計は実用性という点において、真摯な姿勢をアピールすることを意識しているようだ。リューズは左側にあるが必ずしもそうである必要はなく、最後までねじ込むことでケース本体からそれほど突き出ていないリューズガードとほぼ同じ高さに収まる。また、最初にベゼルを回そうとしたとき、ちょっとおかしな出来事があった。ケース側面にあたかもベゼルの一部のように見えるローレット加工があるのだが、実はそうではなかったのだ。

 実際のベゼルはケース外周の数mm内側にあり、非常に深い半円形の切り欠きが入っているため、側面からつかむことこそできないもののかなり回しやすくなっている。偶発的にベゼルが動いてしまうようなことはない。ローレット加工は回転ベゼルを押さえる外側のリングに施されており、(多少力を入れて時計回りに回すことで)このリングを緩めれば、逆回転防止ベゼルそのものにアクセスできる。

ADVERTISEMENT

 どんな時計にも言えることだが、ジェームズ・ステイシーが好んで口にするように、実際に“腕につけて(on wrist)”みないと(彼は定冠詞に何か恨みでもあるのだろうか)見逃しがちな小さなディテールがある。そのひとつがベゼルで、10分単位を示すアラビア数字が幅の広い部分と狭い部分で交互に配置されている。“10”は幅が狭く、“20”は幅が広いといった具合だ。

 ちなみに、この時計にすぐさまNATOストラップや非純正ストラップを取り付けることはないだろう。ストラップがケースの凹部に入る部分は多くの一般的な時計よりも厚く、両端はケースバックにねじ込まれた4本の大きなネジで固定され、ストラップの各先端はスティール製のバックルと遊環を通されている。これほど空母(時計本体)にしっかりと固定されているストラップもないだろう(この記事を書いてから、どうしてもNATOストラップで使いたいのであれば、凹部にねじ込んで使える非純正品のスティール製アダプタが手に入ることを時計愛好家のコミュニティで知った。しかし、これでは時計が手首からさらに離れてしまう。それでも、根っからの改造好きである私としては1度試してみようかと思っている)。

Citizen Eco-Zilla 300M Professional Diver

そして裏蓋には、自分がつけている時計がダイバーズウォッチかどうかわからなくなったときのために、標準的な潜水服用のヘルメットが非常に美しく刻まれている。

 これはデスクに座って身につけるダイバーズではないと言ったが、実は、視覚的にもデザイン的にも強い主張があるため、ファッションにおいてハイ/ロー(あるいはテクニカル/シック)という相反する二項対立がうまくいく可能性が高いのだ。スタイルにおいてコントラストはすべてであり、この時計と何を組み合わせるかによって非常におもしろい対極的な魅力を発揮するかもしれない。モノグラムの入ったローファー、シャルベのシャツ、ルビナッチのブレザーで完璧だとまでは断言しないが、そうでないとも言い切れない。この点で、私はプロプロフを少し思い出した。これもまたとんでもなくテクニカルな時計で、想定される環境に対して過剰なまでのスペックが施されており、人目を引く非常に特異なデザインをしている。次のピッティでは、誰かがこの時計に挑戦してくれるかもしれない。

 要するに、超テクニカルで肩幅の広いオールドスクールなダイバーズウォッチを探している人にとって、あるいは何にも似ていないデザインウォッチを探している人にとって、あるいはその両方を探している人にとって、完璧な時計なのだ。暑くてじめじめした長い夏をビーストモードな気分で過ごしたいなら、この時計がおすすめだ。シチズンがどうやってこの時計を作り、この値段(現在は595ドル、日本円で約8万8650円)で売ることができているのか、私には見当もつかない。しかしこれは端的に言って、非常にイカした価値提案となっている。

Shop This Story

プロマスター エコ・ドライブ プロフェッショナル300mダイバーの詳細については、CitizenWatch.comをご覧ください。