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Photos by Mark Kauzlarich
2017年以来、カルティエはカルティエプリヴェ コレクションの一環とし て、クラシカルなシェイプの時計をコンスタントに復刻してきた。そして今年、そのなかでももっとも古くからあるモデルのひとつが登場した。それが、カルティエ プリヴェ「トーチュ」だ。オリジナルは1912年に発表されているが、ネオヴィンテージ時代においてはモノプッシャークロノグラフウォッチとしてもよく知られていた。2024年の「トーチュ」コレクションでは、このふたつの時代の要素を取り入れ、2針とクロノグラフの両方を用意した。どちらも、カルティエファンを満足させるものとなるに違いない。
カルティエが「トーチュ」を発表したのは1912年(フランス語で“亀”の意)で、「サントス デュモン」(1904年)を除くカルティエのあらゆるモデルよりも古い歴史を持つ。1920年代にはモノプッシャーやシングルボタンクロノグラフなどの複雑機構が搭載されるようになり、カルティエの独創的なスタイルと機械的な革新性が融合した最初の例となった。カルティエ初のクロノグラフ、「トーチュ」モノプッシャー クロノグラフは、カルティエとエドモンド・ジャガー(ジャガー・ルクルト)の合弁会社であるヨーロピアン・ウォッチ&クロック社のキャリバーを搭載した可憐なモデルだった。このような初期のクロノグラフは非常に珍しく、これまでに15本ほどしか世に出ていない。
2024年、カルティエはこの伝説的なモデルを限定コレクションとして復活させた。クロノグラフと2針モデルはどちらも、プラチナとイエローゴールドでそれぞれシリアルナンバー入りの200本限定モデルとなっている。ダイヤモンドをセットした50本限定のプラチナバージョンもあるが、これは展示ケース越しにしか見ることができなかった。
「トーチュ」モノプッシャー(フランス語でmonopoussoir/モノプソワール)クロノグラフの復活は最高にエキサイティングなニュースだ。イエローゴールドまたはプラチナのケースは43.7mm×34.8mm、厚さ10.2mmで、CPCP モノプッシャーとほぼ同じサイズである。とはいえ、ケースは若干手直しされているようで、見栄えはよくなっているように思う。ラグをよりつまむような形状になり、ポリッシュ仕上げのケースの形が若干整ったからだと推測している。
どちらの文字盤もローマ数字で構成され、大きなインダイヤルで区切られている。プラチナバージョンのインデックスは隆起してロジウムメッキが施されており、イエローゴールドバージョンのものは黒くプリントされている。針はいずれもブルーのブレゲ針だ。
文字盤のデザインはどちらもよくできている。カルティエはのちのCPCPのものより、1920年代の極めて珍しい「トーチュ」モノプッシャーにインスピレーションを得ているようだ。そのデザインは、ネオヴィンテージ期のCPCPクロノグラフに比べ、よりクリーンでバランスの取れたものとなっている。どちらのケース金属でもブレゲスタイルのブルー針が取り付けられており、オパーリン文字盤と美しいコントラストを描いている。私の目には、イエローゴールドの文字盤のほうが、プラチナ単色にはないコントラストをローマ数字で表現することでうまくまとまっているように見える。カルティエは昨年の「タンク ノルマル」でも同様のモノトーンのデザインを取り入れている。そして奇しくも、プラチナよりもイエローゴールドのプリヴェのほうが2年連続で私の好みに合致した。
このモノプッシャーウォッチのシースルーバックからは、ブリッジにコート・ド・ジュネーブ装飾を施したコラムホイールクロノグラフ搭載の新ムーブメント、自社製キャリバー1928MCが見える。振動数は2万8800振動/時(4Hz)で、パワーリザーブは44時間。この手巻きムーブメントは、時計師ヴィアネイ・ハルター(Vianney Halter)とドゥ・ベトゥーンのドゥニ・フラジョレ(Denis Flageolet)、そしてF.P.ジュルヌ(F.P. Journe)の3社のジョイントベンチャーであるTHAエボーシュ社が製作した1998年製のキャリバーと比べ、明らかに手直しが施されている。
特に注目すべきは、キャリバーの形状が「トーチュ」の曲線にマッチしたものとなったことだ。また、曲線的なジュネーブ・ストライプや面取りされたブリッジなど、5万ドル超のクロノグラフにふさわしい仕上げも施されている。
プラチナ製モノプッシャーの価格は897万6000円で、イエローゴールド製は778万8000円(ともに税込予価)。「トーチュ」に忠実なアップデートが施された、完成度の高いモデルとなっている。この時計に競争相手がいるのは確かだし、もっと革新的なクロノグラフもあるだろう。だが、カルティエほど美と技術を融合させることに長けたブランドはほかにない。
2針表示の「トーチュ」
一方、カルティエは「トーチュ」コレクションを補完するために、プラチナとイエローゴールドの2針モデルも同時に発表した。サイズはどちらも41.4mm×32.9mmで、昨年の「タンク ノルマル」より明らかに大きい。私はもう少し小さいほうが好みだが、カルティエとのミーティングでは、(私を含め)数人の異なるサイズの手首にちょうどよく似合っていたことは認めざるを得ない。
モノプッシャー クロノグラフ同様、両モデルともオフホワイトのオパーリン文字盤を備えている。繰り返しになるが、私はイエローゴールドバージョンに見られる黒いインデックスのほうが好きだ。しかし、これらの写真が示すように、角度によっては浮き出たインデックスがさらなるコントラストをもたらす。
CPCPの2針「トーチュ」とは異なり、これらはフラットな文字盤を持ち、ギヨシェは施されていない。ギヨシェは伝統的な技法(ロレックスの1908を参照)への継続的な取り組みを示すだけでなく、大きな文字盤を埋めるのにも貢献したはずだ。とはいえ、文字盤はCPCPのものと比べるとすっきりしており、レイルウェイトラックが文字盤の外側に押し出されている1970年代の「トーチュ」を彷彿とさせる。
どちらもカルティエがブルーのブレゲ針をケースカラーに合わせずにブレゲスタイルのブルー針を残してくれればよかった。しかし、よりシンプルなエペ針に交換せず、この針のスタイルを維持してくれたことは喜ばしい。両カラーとも、プラチナまたはゴールドのバックルが付いたアリゲーターストラップを装着。Cal.430MCはピアジェの手巻きキャリバーをベースにしたもので、振動数は2万1600振動/時(3Hz)、パワーリザーブは38時間だ。
YG、プラチナのどちらの「トーチュ」も、モダンなカルティエ プリヴェのラインナップをさらに充実させる、素晴らしいドレスウォッチである。
総合的に見て、今年の「トーチュ」コレクションは、カルティエのもっとも古いウォッチシェイプのひとつを見事にアップデートしている。1920年代、70年代、90年代と、「トーチュ」におけるあらゆる時代の要素を取り入れ、現代的でありながら歴史に根ざした作品に仕上げた。2017年以来、毎年このようなプリヴェのリリースを期待するようになったが、モノプッシャー クロノグラフの復活は、カルティエがいかにコレクターを驚かせ、喜ばせ続けているかを示す最高の例である。
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