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The Value Proposition カシオ AE1200WH-1A 1タイムゾーンあたり1ドル未満のワールドタイマー

とても楽しく、とても安い。

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※本記事は2018年8月に執筆されたUS版の翻訳です。

腕時計を語るときに話題にしないわけにはいかないものの1つに、この世界に参入するのにかかるコストがある。我々の多くは、こういった腕時計のたいていのものを実際に買えるようになるずっと前に、これらに興味をもつようになる。腕時計の熱に取りつかれたとき、私はたまたま大学院生だった。妻との間に初めての子を授かったばかりで生活が非常に厳しかったが、そんな私にも、パソコン1台とインターネットへアクセスできる環境だけはあり、それはつまり、望ましくも手の届かない法外な値段の腕時計たちの世界全体に、すぐさま簡単にアクセスできることを意味した。私は当初、精密な計時の歴史と物理学に対する興味から出発したのだが、そこから現代腕時計への憧れが芽生え始めるのに長くはかからなかった。人にとっての初めての“良い”腕時計が何であったかの考察は、興味深いものだ。なぜなら、“良い”と“高価”には間違いなく、互いに直接的な関連はないからだ。そして、ここ十年来のヴィンテージ品と現行品の常軌を逸した価格高騰が、その事実を曖昧にしてしまいがちだが、だからといって望みの素晴らしい時計がないということにはならない。それらの中には文字通り、ソファとクッションの隙間から見つけ出したような小銭で買えてしまうようなものもあるのだ。 

 1986年に入手したカシオのG-SHOCKを、私はとても気に入っていたことを覚えている。ストラップがとれて、外側の樹脂製ケースはずいぶん前になくなってしまったが、いまだにそれを持っている。そして、こういった腕時計の美しい点は、たとえ人生を進むにつれて幸運に恵まれ、財布の中身が少し豊かになり、もっと高価なものや、一般的に上等といわれる腕時計を買えるようになったとしても、その最初の買い物を決して後悔しないところだ。初期に入手したカシオのG-SHOCKとの体験は、私にとって忘れてしまいたいものであるどころか、G-SHOCKという特定機種への、そしてカシオの時計全般に対しての、生涯の愛を私に植え付けてくれたのだ。それは、乾燥豆ひと袋を買うにもつつましい懐具合を検討しなければならかった時期の私に、時計に関するこの上なく楽しい時間を与えてくれたものだからだ。 

 カシオの作ったもう1つの実に素晴らしい腕時計が、これだ:AE1200WH-1A ワールドタイマーである。何年もとりとめもなく称賛してきただけだったが、先日の夜、ゆらゆらしたメランコリーな気分と、慎重に少しずつ飲んでいたロシアン スタンダード ウォッカに煽られて、購入を決めた。 

 この腕時計がいつ発売されたのか正確には分からないが、テクノロジーは間違いなくG-SHOCKと同時期のものだ。10年もつリチウム電池、液晶ディスプレイ、信頼性あるクォーツムーブメントという組み合わせを備え、世界31のタイムゾーンの時刻を表示できる。デザインは、1991年に発売して現在も生産中の、カシオ F-91Wを受け継いでいるか、少なくとも関連はあるように見える。どちらもクラシックなコレクションのものだ。そして、カウントダウンタイマー、ストップウォッチ、5本のデイリーアラーム、必要に応じて点くバックライト、常にホームタイムを表示するアナログ液晶ディスプレイを備え、驚くことに、秒までちゃんと表示する。 

 この時計の実に興味深い機能は、世界地図表示だ。メインのデジタル時刻表示の真上にあり、現在表示しているローカルタイムゾーンがブラックで示される。旅先でも現地のタイムゾーンが実に簡単に選べる。モードボタンでワールドタイムモードに移行し(多くのデジタルウォッチとは違い、AE120OWH-1Aの操作は非常に直感的で、4つのコントロールボタンを巡る基本的な感覚さえつかめば、取扱説明書を失くしても困ることはない)、あとはサーチというボタンを使ってタイムゾーンを選べば良いのだ。

 この機能は、もし興味があれば、タイムゾーンがどのようになっているかという面白い事実をいくつか観察することもできる。例えば、中国は全て単一タイムゾーン(協定世界時プラス8時間)となっている事実などだ。

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 真に優れたツールウォッチが全てそうであるように(例えば、クラシックなマークシリーズのIWC パイロット・ウォッチなど)、AE1200WH-1Aは、いわゆるデザインといえるようなものが施されていないことをその全てが示しているが、しかし、マークシリーズのように、デザインと機能におけるその実用主義が、単にシンプルな機能というものを超えた独自の美学にまで到達している。これは、時計づくりの最も率直で気取らない形だ。そこには、かつてならはるかに高価な時計のものであった、お約束的デザインの合図のようなものが、手頃な価格帯にまで苦痛なほど頻繁に見られるようになってきた現代の時計づくりの多くにある、独り善がりな勿体ぶりはどこにもない。プラスチック製ケースとミネラルガラスの風防は、じっくり見ると、やや控えめながら不思議とエレガントでその形状が驚くほど豊かだと分かる。AE1200WH-1Aは、G-SHOCKのような肩幅のがっちりしたタフガイの趣はないが、レトロな技術が訴えかけてくる別の種類の魅力があり、それは、最初はあまり分からないが、長く着けていると次第にはっきりと感じられ、楽しくなってくる類のものだ。

 AE1200WH-1のような腕時計は、ポール・ニューマンのデイトナ全てを合わせたよりも、世界にもっと多くの本当の喜びをもたらし得るのではないかと私は思っている。これは私にとって、郷愁を誘う買い物だった。スマートウォッチの登場により、我々は今や時計づくりの歴史の中で、自動制御された液晶と電池の腕時計を、かつて私がシンクロノーム社の電気機械式振り子時計の精密なレギュレーターに抱いていた、正確ながら時代遅れの計時技術に対するのと同じ、畏敬の念で見ることができる地点にまで到達したのだ。 

 私はこの腕時計を着けると、この種の技術が実用的で機能的な計時技術を表す間違いなく最後の言葉であった時代の、鮮明な記憶を思い出さずにはいられない。“トロピカルダイヤル”や“ゴーストベゼル”というような言葉が登場して世界を悩ますずっと前のことだ。さらに、中年期危機(中年期特有の心理的危機、また中高年が陥る鬱病や不安障害のこと)の買い物が進む中で(これを買うのに死への恐怖に苛まれる必要はないが、HODINKEEの年下の同僚たちの何人かは、私の買ったものを見て同じものを買った)、これはスポーツカーよりずっと安い。幸せな気分になることができ、後ろめたくもなく、驚くほど美しく、そして24.95ドル(約2600円)という感動的な価値提案がされているのだ。

詳細はカシオ公式サイトへ。ご自分へのご褒美にぜひ。