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Hands-On ポルシェ GT4 RSに乗り、タグ・ホイヤー クロノスプリントを試す

さらにポルシェのスペシャルプログラムと、タグ・ホイヤーがお届けする新車の発表も必見だ。

もしあなたが、ポルシェ718 ケイマンGT4 RSに乗って私がホット・ラップ(F1ドライバーが運転するその隣に乗ることができる体験)した、素晴らしい写真を見るためにこの記事をクリックしたのなら、申し訳ないがそれは存在しない。では、新しいタグ・ホイヤー カレラ クロノスプリント × ポルシェについて話そう。これはポルシェ911とホイヤー カレラ、両方の誕生60周年を記念して作られた、奇妙だが非常に興味深い時計である。また、これだけでは飽き足らないという人のために、ポルシェ愛好家向けの情報(それと新車発表)もあると先に伝えておこう。

Hot Lap lineup at Rennsport

 ポルシェのコレクターとファンが3~5年に1度集まる大規模なイベント、レンシュポルト・リユニオン7に幸運にも参加した私に“ホット・ラップ”の要請があった。ほかの何人かは憧れの新型911 GT3 RSで周回を重ねたが、私はパイロットのティモ・ベルンハルト氏(元ポルシェのワークスドライバー)の隣、GT4の助手席に座るのがちょうどよかった。今年の上半期に開催されたミッレ ミリアで、ロマン・デュマ氏(私たちのホット・ラップグループで別のマシンを操っていた)が4日間も我慢を強いられたのだから、彼にあと2周も我慢してもらいたくないと冗談を言った。ベルンハルト氏は貧乏くじを引いたに違いない、と私は言った。今回ベルンハルト氏と一緒に走ったことで、2010年のル・マンを制したアウディ・スポーツ・ノースアメリカ・チームの3分の2と一緒に走ったことに気づいたのは、後になってからだった。彼は笑いながらアクセルを踏んだ。スマートフォンはほとんど手から離れず、撮影したビデオのほとんどは、控えめに言ってもお粗末なものだった。

Porsche 911 prototype #7

ポルシェ911のプロトタイプ #7。現存する911のなかで、2番目に古い。

Chronosprint

 というわけで私が知っていること、つまり時計に集中しよう。私は新米の“クルマガイ”だが、ディープなクルママニアとウォッチマニアには少なからず似たところがある。すべてのクルマ(あるいは時計)のスペックや仕組みを知っていたり、念入りに調べても、それらは私の手では届かない。また系統や歴史、伝承を理解する上で重要な数字やリファレンスもあるが、特に初心者にとっては混乱しがちだ。ただひとつ知っていることは、初代ポルシェ911が初めてサーキットに登場したとき、0~100km/hを9.1秒で走ったということだ。

Chronosprint Gif

 GT4は加速が少し早く(合計3.9秒)、包み込んでくれるような豪華なバケットシートでもかなりハードな加速力を発揮する。タグ・ホイヤーはこのオリジナルの9.1秒の加速からインスピレーションを得て、新しいカレラ クロノスプリント × ポルシェを開発した。右上にあるクロノグラフプッシャーを押すと、クロノグラフ秒針が文字盤の3分の1を9.1秒で駆け抜けて突然加速する。クルマの加速は直線的なものではない。それと同様に、クロノスプリントのクロノグラフ秒針も、最初の加速が終わると徐々に速度が遅くなる。そして55秒の経過に近づくにつれ、60秒になる前に完全に停止し、再びスピードアップするようにさえ見える。

Chronosprint

 タグ・ホイヤーのファンには39mmサイズの“グラスボックス”カレラが今年の市場を席巻しているが(これにはアップデートされたスキッパーも含まれている)、新しいクロノスプリントはこれらよりさらにい42mm径×14.9mm厚となっている。それは“グラスボックス”という名前の由来にもなった大きなボックス型風防も含まれており、フランジ周辺のインデックスをほぼどの角度から見ても、ひと目で読み取ることができる。これはタキメーターが付いた時計のほうが便利かもしれないが、ここではクロノグラフの奇妙な加速に合わせて調整された、専用の経過時間スケールがある。大きなサイズは、そのドーム型フランジの読みやすさに役立っているようだ。そのため、一般的にはヴィンテージに沿った(小振りな)サイズが好まれるが、42mm径でも議論の余地があると言えるだろう。

 いずれにせよ、この時計は私の手首に大きすぎるとは感じなかった。“フィーリング "の一部は視覚的な偏りであることが多く、この時計は私にも、レンシュポルト(・リユニオン)に試着させたほかの数人の手首にも、それほど大きくは見えなかった。これは新世代の風防がより歪みのないものになっているという事実も、それを後押しするかもしれない。スティール製モデルには、はっきりとしたシルバー文字盤もあり、視認性を高めている。インダイヤルの針やタコメーターのレッドラインを連想させる、マーカーのポップなカラーが目を引き、ずっと見ていても飽きないデザインに仕上がっている。いちばん残念な点は、ダイヤルの6時位置に日付窓があることだ。ダイヤルの清潔さを崩すだけでなく、日付を入れることでこのインダイヤルだけ3時や9時位置のように凹ませることができない。

Chronosprint
Chronosprint
Chronosprint

 このムーブメントは実に興味深い部分だ。自動巻きCal.TH20-08は時・分・秒、そして日付表示を備える。しかし、タグ・ホイヤーはどのようにしてこのクロノグラフをこのような奇妙な方法で作動させることが出来たのだろうか? 私の直感としてはスネイルカムだと思った。設計上、クロノグラフの機能が奇妙な動きをするとき、ほとんどの場合スネイルカムが採用されている。そして案の定、これにもスネイル型の歯車がふたつあり、中央の針の減速運動を生み出していた。

Chronosprint

 当初このデザインに確信が持てなかった。その理由はムーブメントの斬新さと、その斬新さに見合うだけのコストに、税込で115万5000円もかかるからだ。正確なタイミングを計るのに便利というわけではないが、それが重要なわけではない。パトリック・デンプシー氏との会話は、私にクロノスプリントを、少なくともその背後にある考えを理解する一助となった。そう、あのパトリック・デンプシー氏だ。タグ・ホイヤーとポルシェのアンバサダーを兼ねている、著名なレーシングカードライバーであり、さらにレーシングチームのオーナーでもある彼をご存じだろうか? まあ、テレビ番組や映画にも出ているからストーリーテラーでもあるんだろう。そしてそれがこの時計を理解する鍵となった。

Patrick Dempsey

 「これはストーリー性のある時計なんです」とデンプシー氏。「タグ・ホイヤーとポルシェの両社にとって、重要なのはストーリーです。物語に夢中になり、その世界に入り込むとそこに没頭したくなる。その意味で、この時計はタグ・ホイヤーにとって非常に重要なモデルだと思います。ポルシェとのつながりだけでなく、新しいムーブメントを生み出すことも意味しているしね」

 「彼らはストーリー性のある時計を介したツールを作っただけでなく、それを市場に投入したという事実は、革新的でありながら伝統を失っていません。そしてそれはポルシェと、新型の911によく似ています」

Chronosprint

 911のようなクルマも機械式時計も実用的ではないが、だからといって多くの人がそのどちらかに夢中になるわけではない。フィーリング、感情、メカニズム、そしてそう、ストーリーが重要なのだ。レンシュポルトには上のプロトタイプの911のような魅力的なストーリーを持つクルマがたくさんあったので、ポルシェファンがストーリー性のある時計に夢中になることは想像に難くない。しかし、なかには興味深いストーリーを背景に持つ新車も発表された。

 実はデンプシー氏がレンシュポルトに参加していたもうひとつの理由は、タグ・ホイヤーとポルシェとの新たなパートナーシップのためだった。何年ものあいだ、彼は両ブランドのブランドアンバサダーを務めており、タグ・ホイヤーではポルシェより少し長く務めている。2015年のモータースポーツシーズンには、スポーツカー世界耐久選手権(世界的に有名なル・マン 24時間レースを含む)に911 RSRで参戦している。一方、デンプシー氏は拘束時間から耐久レースへの参加を控えているが、それでも出場できる方法を探し続けている。ミッレ ミリアはバサースト1000と同様、彼のバケツリスト(死ぬ前に達成しておきたいリスト)に載っているが、彼は少し“年老いてしまった”かもしれないと感じているようだ。しかし10月中旬、デンプシー氏は718 ケイマンGT4 RSをベースにした特別なスペシャルリクエスト(Sonderwunsch、ソンダーバーシュ)プログラムのプロジェクトカーに乗り込み、今年のカレラ・パナメリカーナの最初の2区間をドライブする予定だ。

Porsche Carrera Panamericana
Porsche Carrera Panamericana
Porsche Carrera Panamericana
Porsche Carrera Panamericana with Patrick Dempsey

 初心者のために説明すると、スペシャルリクエストプログラムとは、ポルシェによるワンオフカスタムカーとトータルリフレッシュサービスのことである。スペシャルリクエストプログラムはほかのカスタマイズプロジェクトでは物足りない人のために、クルマをまったく別のレベルへと引き上げてくれるのだ。タグ・ホイヤーとポルシェのコラボレーションによるこのクルマは、ナンバー154(2台目のクルマ、ナンバー152はレースで披露され、チャリティーオークションにかけられる)がつけられ、70年前にカレラ・パナメリカーナに出場したポルシェ550 クーペをほうふつとさせるデザインに仕上がっている。パワートレインに変更はなく、現行世代の911 GT3のエンジンを流用した4.0リッターのフラット6を搭載。つまり、7速デュアルクラッチオートマチックによる後輪駆動で、最大493馬力を発揮する。もちろん、カスタムメイドのインテリアをはじめ、随所にタグ・ホイヤーのテイストが盛り込まれており、車体全体はル・マンシルバーのメタリックで塗装されている。

Porsche Carrera Panamericana
Patrick Dempsey
Porsche Carrera Panamericana

 また、オリジナルのホイヤー ラリーマスターから着想を得たダッシュボードタイマーを搭載し(タグ・ホイヤーのテイストが随所に見られる) 、ムーブメントもまったく同じものにリファインしている。かつてのラリーマスターと同様、レビュートーメン社(Revue Thommen)のツインバレル式ムーブメント、Cal.63によって約8日間パワーリザーブを確保した“マスタータイム”を実現。もうひとつのディスプレイはモンテカルロ式クロノグラフを載せている。これは中央のア・シルド社(A.Schild)製のCal.1666を搭載したジャンピングアワーレコーダーで秒・分を記録し、さらにデュボア・デプラ社(Dupois-Depraz)が製造したジャンピングアワーコンプリケーションを搭載している。

Porsche Carrera Panamericana TAG

 レンシュポルト・リユニオン7でカレラ クロノスプリントを頻繁に作動させたが、ほとんどの人がこの時計に対する私の最初の反応を分かち合ったと思う。特に自動車愛好家のあいだでは、タキメーターベゼルがないクロノグラフに何の意味があるのだろうか? と。多くの人がこの時計は壊れていると思っていたし、あるときは私も壊れていると思った。しかしこの週末はよく、クロノグラフを回しっぱなしにして少し待ち、その動きを見るようにすすめていた。1度も“すごいね”と言われなかったことはないと思う。真のクルマ好きは、それがクルマであろうと時計であろうと、いい話には夢中になるものなのだ。

Chronosprint
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詳細はタグ・ホイヤーをご覧ください。HODINKEE Shopはタグ・ホイヤーの正規販売店です。コレクションについてはこちらをご覧ください。またクロノスプリントの詳細はこちらをご覧ください。

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