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Photos by Mark Kauzlarich
先日の夜、ロンドンにて、タグ・ホイヤーはWatches & Wondersの新作であるタグ・ホイヤー カレラの発表に続き、ブランドアンバサダーであるライアン・ゴズリング(Ryan Gosling)氏を起用したブランドキャンペーンを実施した。満員の観客を前に、タグはゴズリング氏が主演の5分間のショートフィルムを上映し、映像には元SNL(サタデー・ナイト・ライブ)キャストのヴァネッサ・ベイヤー(Vanessa Bayer)氏、『ブレット・トレイン』や『ジョン・ウィック』でおなじみの映画監督デヴィッド・リーチ(David Leitch)氏も登場した。率直に言って、この映像は広告としては新鮮で、クリエイティブなアプローチだと思う。ゴズリング氏が映画の撮影現場で、カメラが止まったあともカレラを返そうとしないというメタ的な要素が含まれている。筋書きを書き出すかわりに、1度自分でその映像を見てもらいたい。
このイベントとビデオは、タグ・ホイヤーが最近リリースしたモデルのなかでも特に話題を集めた時計のひとつである、“グラスボックス”カレラを紹介したものだ。これはブランドで最も人気のラインであり、レースの伝統と結びついた同コレクションの美観を刷新したものである。
Watches & Wondersでこの時計の紹介レビューを書き上げたが、その記事で実際に扱うことができたのはブルーモデルのみだった。この作品は完全にモダンなデザインでありながら、わずかにヴィンテージのテイストが感じられるためとても気に入っている。ただし一生懸命探せば見つかるものでもある。
しかしブラックモデルは非常に魅力的なバリエーションで、機会があればすぐにパレクスポの展示会場で探した作品だった。それ以来、同業者の友人や同世代の人らが手首につけているのを見かけるようになった。ブルーとブラック、どちらがより好きというわけではないのだが、少なくとも後者については十分に堪能したため、自身の感想や考えを述べようと思う。
まずはサイズから。ブルーエディション同様39mmサイズかつ、ラグからラグまでは46mmと、非常にコンパクトな仕様となっており、まるで37mmの時計を身につけているかのような感覚になる。ここがこの時計をうまく機能させているポイントだと思う。過去10年ほどのあいだに、タグ・ホイヤーは(まあ業界のほとんどすべてのブランドといっても過言ではない)、大振りで厚みのあるほうへと偏っていった。だがこの新しいカレラは正しい方向へとシフトし、ブランドの初挑戦となるこのサイズは完璧に成功したと感じる。遠くから見ると、特にブラック文字盤のエディションについてはヴィンテージウォッチと見間違うかもしれないほどだ。パンチング加工されたレーシングストラップもその効果を発揮するだろう。
そしてブラック文字盤とブルー文字盤を区別する視覚的な違いについても話そう。まずコントラストだが、ブラックの文字盤表面に対して、サブダイヤルがシルバートーンになる逆パンダの効果がある点。このコントラストによって、この2本の新モデルの大きな違いである日付の配置につながってくる。この高いコントラストを維持するべく、タグは日付を6時位置(ブルーのバージョンにはそこにある)から12時位置へと移動させている。クロノグラフ秒針が計測をしていないとき絶対に日付が見れないため、この配置は奇妙に思えるのだが、実はこの選択には前例がある。ホイヤーはこの日付の配置をヴィンテージのダート12(Dato 12)、Ref.13ZNで採用しているのだ。
これはデザイン上の遊びというわけではなく、ほぼデザイン上の欠陥であると考えられているため、改めて取り入れること自体おかしなことなのだが、ここで再来している。強いて言うとすれば、見る角度によってはほぼノーデイトとして読めるという感じだろうか。それ以外は実はちょっと読むのが面倒だ。でも基本的にこのモデルに対する唯一の不満であり、それはとても小さい不満である。
厚みから装着感に至るまで、ほとんどすべての面においてこの新しいカレラは機能的に完璧である。自動巻きCal.TH20-00のローターのデザインを変更することでムーブメントと時計全体に高級感を与えていて、しかも80万8500円(税込)と価格設定も大変魅力的だ。
結局自分は、最終的にブルー文字盤を選ぶかもしれないが、パティーナ風のレトロな雰囲気に引かれた多くのマニアがこの1本を手にするビジョンが見えてくる。タグ・ホイヤーが過去にオマージュを捧げたのは今回が初めてではないが、一般的には文字どおり再解釈程度にとどめている。ロンドンでのイベントに先駆けてブランドCEOのフレデリック・アルノー(Frederic Arnault)氏と話をする機会があったのだが、彼はこれらのリリースについてとても興味深いことを語ってくれた。「私たちは(これらの時計が)ヴィンテージの復刻盤というポテンシャルに限界を感じていました」。続けて、「“どうやれば現代の時計に沿うように、モダナイズし続けられるだろう?”という思考になったのです」
このモデルはまさにそれを表現しているのだ。文字盤でタグ・ホイヤーと名乗るさまはまるで誇らしげに見えてくる。そして過去に敬意を払いながらコレクションを再び盛り上げているようにも感じている。タキメータースケールが持つ優美な曲線が新鮮に感じられる一方、数字自体のプリントでオールドスクール的な古めかしさも存在している。これらはこの新しいコレクションが示すバランスの一例に過ぎない。
同モデルはカレラシリーズ全体が今後成長するための新しいプラットフォームのファーストモデルである。そして個人的には、これは素晴らしいスタートを切ったと思うのだ。
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