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Hands-On ユリス・ナルダン フリーク S ノマドで伝統技術と象徴的デザインが融合

複雑な時計が誕生して23年になるが、だからといってユリス・ナルダンに新しい仕掛けがないわけではない。

昨年、GPHGはユリス・ナルダンのフリークに“アイコニックウォッチ賞”を授与したが、過去23年間にわたりブランドとその中心的な時計の発展を追ってきた者にとっては驚きではなかった。現代のウォッチメイキングは、多くの点でフリーク以前と以後のふたつの世界に分けられると言っても過言ではない。デザインからシリシウム(シリコン)の使用に至るまで、時計の世界における時計の概念をリセットしたのだ。さて、フリーク後23年(AF、フリーク以後のAfter Freakの略だ)となる今年、ユリス・ナルダンはアヴァンギャルドな時計の原型のひとつであるフリーク S ノマドを、新旧の架け橋となるような(文字どおり)“中心”に据えた。

UN Freak S Nomad

 ユリス・ナルダンの関係者がこの発言に気を悪くすることはないだろうが(実際に、アメリカのユリス・ナルダンCEOであるフランソワ=グザヴィエ・ホティエ氏にも同じことを言ったばかりだ)、フリークの核心にあるのは、見かけによらずシンプルなコンセプトだ。針を動かすムーブメントを設計するのではなく、ムーブメント自体とともに動く針を作ればどうかという考え方だ。フリーク Sのデザインは非常に明快であり、視覚的には非常に複雑(そして正直なところラインナップのなかで最も読み取りにくいフリークのひとつ)だが、見た目には一目瞭然だ。フリークには技術的にダイヤルがないので、言葉で説明するのは少し複雑だが、とにかくやってみよう。

 フリーク Sを駆動するCal.UN-251は、ふたつのテンプが中央のキャリッジに取り付けられており、これが1時間に1回転する(分針として機能し、長い夜光インジケーターが開口されたプラットフォームにある)と同時に、残りの歯車列の基盤としても機能する。これには1万8000振動/時で動作するふたつのガンギ車と、ディファレンシャルでバランスをとる機構が含まれている。これらすべてがギヨシェ模様のアワーディスクの上に浮かんでいる。

UN Freak S Nomad

 ミニッツインジケーターの反対側にはギアピニオン(上図)があり、(非ダイヤル/ダイヤル)ディスプレイの外側にあるギアディスクに接続。この減速ギアはギヨシェディスクの夜光アワーインジケーターをキャリッジが1回転するごとに12分の1回転させる。これにより、外側のトラックにある大きくて太い夜光インジケーターが時間表示として機能することになる。下図の場合、時刻は7時24分(誤差数秒)を示しているのが分かる。

UN Freak S Nomad

 その性質上、フリーク Sはキャリッジの回転によってトゥールビヨンのように変化する。回転するキャリッジ“ケージ”のなかに振動子があるため、伝統的なトゥールビヨンではないものの、宇宙船のようなデザインの外側にふたつのテンプがぶら下がっているため技術的にはトゥールビヨンと言える。トゥールビヨンというアイデアは、1801年のアブラアン-ルイ・ブレゲまでさかのぼる、長い歴史を持つ伝統的なコンプリケーションのひとつだ。したがって、UN(ユリス・ナルダン)がアバンギャルドと伝統を組み合わせ、サンドカラーのアワーディスクを用いる選択は、これまでの歴史に敬意を表す素晴らしい方法であると言える。

UN Freak S Nomad
UN Freak S Nomad

 時計が伝統的になりすぎないように、ブランドはUNの標準となっているシリコン部品にこだわっている。シリコン製のテンプは20度傾斜し、脱進機には高精度と耐久性を向上させるために最先端のDIAMonSIL(シリコン上の単結晶ダイヤモンド)で処理されている。写真を見ると、ケースには金の粒が散りばめられているように見えるが、実際にはカーボンファイバーの側面であり、それが時計のラグとしても機能しているだけだ。ケースの残りの部分と6時位置にあるフリップアップロッカーは、アンスラサイトPVDでコーティングされたチタン製である。このロッカーは指1本で持ち上げることができ、ベゼル全体が回転して時刻を合わせる。

UN Freak S Nomad
UN Freak S Nomad
UN Freak S Nomad
UN Freak S Nomad

 ワクワクするような演出のほとんどは時計の上部に浮かんでいるように見える一方で、ギヨシェデザインの下にはムーブメントを動かす巨大な香箱があり、脱進機がふたつあるにもかかわらず約72時間のパワーリザーブを実現している。このムーブメントは、裏蓋の端を反時計回りに回して手動で巻くことが出来るほか、ブランドが特許を取得した“グラインダー”システムを使って自動的に巻き上げることもできる。

UN Freak S Nomad

 しかし、直径45mm、厚さ16.65mmという信じられないほど大きなケースが、手首にどうフィットするのかを考えてみよう。まあ、率直に言って、そのサイズにしては十分フィットする。チタンとカーボンファイバーを使っているので軽量だが、手首が7インチ未満の人(下の写真に写る私の手首は7.25インチ、約18.4cmだ)は、ラグが大きくはみ出してしまうだろう。とはいえフリークが大好きな人なら、その点は気にならないかもしれない。これはおそらく、これまでで最高のフリークであると言える。

UN Freak S Nomad

 前述したように、フリーク Sは市場に出回っているフリークのなかで最も読み取りやすいモデルではないかもしれない。例えばフリーク ワン OPSのような時計は、分針がより分かりやすいデザイン(テンプが1つで直線的なレイアウト)で、時刻が一目瞭然の配色になっている。これらは(ほかの1000万円以上の時計がそうであるように)フリークシリーズのデザインやコンセプトに慣れるための“補助輪”だ。脳をそのコンセプトとデザインに順応させるものであり、それ自体も素晴らしい時計ではあるが、フリークの究極形ではない。フリーク Sはフリーク Sであり、より職人的なクラフツマンシップを備えているのだ。

UN Freak S Nomad

ユリス・ナルダン フリーク S ノマド。Ref.2513-500LE-4A-GUI。ケース径45mm×厚さ16.65mm、チタン製ケースおよびロッカー、アンスラサイトPVDでコーティングされたチタン製ベゼル、カーボンファイバー製サイドプレート。アンスラサイトPVDコーティングのチタン製シースルーバック(サファイア製)、30m防水。ダイヤモンド形のギヨシェ模様が施されたサンドカラーのCVDアワーディスク。マニュファクチュール自動巻きムーブメントのCal.UN-251搭載、1万8000振動/時で動作するふたつの振動子、約72時間パワーリザーブ。ストラップはアリゲーターまたは“バリスティック”ラバーストラップから選択可能。価格は14万8300ドル(日本円で約2319万7000円、なお日本での価格は要問い合わせ)。世界限定99本