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Three On Three ユリス・ナルダンの入門機、マリーン、ダイバー、ブラストを徹底比較

海との深いつながりを持つユリス・ナルダンのエントリークラスの3本を比較してみよう。

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スリー・オン・スリーは、ひとつのテーマの下に3本の時計を比較レビューするシリーズです。

ユリス・ナルダンは、1846年に創業し昨年2021年に創業175周年を迎えた老舗ブランドだ。創業当初から複雑機構を搭載した懐中時計で高い評価を得て、航海用の高精度なマリンクロノメーターでその名を世界に知らしめた。機械式時計が復興する1980年代以降は、天文時計をはじめとする大胆で斬新な機構やシリコンなどの最先端素材を取り入れた開発を行っており、まさに伝統と革新という言葉がふさわしい。

 今回は、そんなユリス・ナルダンのエントリークラスの3モデルにフォーカスを当てて、HODINKEE Japanの3人のエディターが比較紹介する。


マリーン トルピユール
By Kyosuke Sato
ファースト・インプレッション

 やはりマリンクロノメーター抜きにユリス・ナルダンは語れない。創業当初からマリンクロノメーターの製造を手掛け、その分野ではほぼ市場を独占するほどだったと言い、ブランドのトレードマークには錨を採用している。マリンクロノメーターにインスピレーションを得たモデルが登場したのは1996年。創業150周年で登場したマリーン クロノメーター 1846が最初だ。以来、フラッグシップとしてデザインを受け継ぐモデルが生産されているが、マリーン トルピユールが登場したのは2017年から。

 恥ずかしながら、この時計を実際に触ったのは今回が初めてだった。もちろん、この時計のことは知識としては知っていたが、ケースサイズが42mmあり、筆者の好みから外れていたため、これまで興味を抱くことはなかったのだ。では、初めて触れてみてどうだったのか。……ひと目惚れしてしまった。デザインや外装の作り、ムーブメントなど、魅力的なところはいくつもあるが、いちばん心を動かされたのが太陽の下で光を受けたダイヤルの美しさだった。光を受けたダイヤルは、下地に施されたサンレイ装飾が絶妙に輝きを放って爽やかな雰囲気を漂わせ、屋内で見たときの上品な印象とはまた違っていた。外に積極的に連れ出して楽しみたい時計。それが、この時計に対するファースト・インプレッションだ。

デザイン、外装について

 前述の通り、この時計は自社で製造していた船舶用マリンクロノメーターをデザインの源泉としている。スペード針、ローマ数字インデックスとシェマンドフェール(レイルウェイ)のセコンドトラックはもちろん、ダイヤル中央に「ULYSSE NARDIN」、「LE LOCLE SUISSE」の文字をあしらうレイアウトも見事に取り入れている。12時位置にパワーリザーブインジケーター、6時位置に大きなスモールセコンドを持つが、このサイズバランスも同様だ。そしてベゼルに刻まれたコインエッジも、かつての船舶用マリンクロノメーターに見られた意匠である。腕時計用にアレンジされている部分といえば、薄いフランジ(見返し)だろうか。船舶用のものはフランジが太く、深いが、この時計ではできるだけ浅く、薄くすることでダイヤルスペースを大きく見せている。これはダイヤルの存在を際立たせるとともに、視認性を高めるということにもひと役買っている。

 注目したい点はサイドビューだ。ベゼルはミドルケースからはみ出すようにひと回り大きく、そしてミドルケースと繋がるラグが短く、鋭角に設計されている。42mmと少し大きめなサイズに加えて、ダイヤルスペースを出来る限り広く取ったデザインのため、見た目は数値以上に大きく感じられるが、このようにミドルケースを工夫することでつけごこちを高める工夫がなされている。こうした配慮は、高級時計らしく巧みだと思う。

ムーブメントについて

 このあとに続くダイバー クロノメーター 44mmもそうだが、この時計は自社製のCal.UN-118を搭載している。このキャリバーは本当に語りどころが多い。2007年に開発に着手し、莫大な投資と時間をかけて2012年に完成した自慢のムーブメントだ。人工ダイヤモンドでコーティングしたシリコン(シリシウム)、特許を取得したダイヤモンシルをアンクル、ガンギ車に採用しており、衝撃に強く、磁気を帯びないといった特徴を持つ。加えてテンプ受けを両持ちのダブルブリッジ式とするなど、より耐久性を高める工夫が盛り込まれている。驚いたのが、COSC(スイス公認クロノメーター検定協会)のクロノメーター認定を受けているだけではなく、6日間に及ぶ独自検査“ユリス・ナルダン クロノメーター&パフォーマンス(ULYSSE NARDIN CHRONOMETER & PERFOMANCE)”を設けて、完成品に対して実施(自社内で)し、それをパスしている点だ。そして、このムーブメントは日付表示がリューズによる進み戻しで前後に調整が可能ということも忘れてはならない。例えば、針を午前0時をまたいで逆回しすると、日付表示も逆戻しできるのだ。

 機能的であるだけでなく装飾性も高い。自動巻きローターにトレードマークの錨モチーフを持つほか、ブランドロゴのブルーのメダリオンがデザインされている。また、自動巻き機構には爪レバー式を採用しており、高効率での巻き上げも期待できる。今回はテーマをブランドのエントリークラスとのことだったが、ムーブメントを見る限りはエントリークラスのレベルを遥かに超えていると言っていい。

実際につけてみて

 最初にもお伝えした通り、マリーン トルピユール 42mmはひと目惚れしてしまうくらい出来がよかった。大きなダイヤルは薄いフランジの影響もあって光をしっかりと取り込み、屋外・屋内問わず時間がとても読み取りやすい。加えて、6時位置の大きなスモールセコンドにかかるように日付表示の小窓が設けられていて左右対象のデザインも好印象だ。そして、12時位置のパワーリザーブインジケーターだ。もともと船舶用マリンクロノメーターにも付いていたもので、機能の搭載には正当性があり、デザインアイコンとなっているところはとても好ましい。また、浅いフランジに合わせて風防とダイヤルとのあいだのスペースはかなり狭いのだが、先端を曲げ、クリアランスを詰めて針をセッティングしている。こうした丁寧な仕事ぶりは、いかにもハイブランドらしいものだと思う。

 正直なところ、苦言を呈するようなところはあまりないのだが、強いて挙げれば2点ほど。ひとつはブレスレット。両サイドにプッシュボタンが付いたフォールディングバックルは薄く、つけていて邪魔にならないし、コマ調整はネジ留め仕様という点も申し分ない。だが、ユリス・ナルダンらしさを感じさせるような特徴はなく、無個性な印象だ。また、日常でガシガシ使いたい時計だけに、ブレスレットの微調整機能があるといいと感じられた。そしてふたつめは針だ。分針と秒針がインデックスにわずかにリーチしない長さなのだ。元来のマリンクロノメーターは正確に読み取れるように針がインデックスにきっちりリーチする長さになっている。個人的な好みのレベルの話ではあるが、針自体の長さを伸ばさなくてもデザインで対応できるところなので、少し気になった。とはいえ、それ以外はほとんど申し分ない。これだけ魅力的な時計がエントリークラスだと言うのだから、ユリス・ナルダンというブランドは本当に底が深い。

 マリーン トルピユールの詳細は、ユリス・ナルダン公式サイトへ。


ダイバー クロノメーター
By Yu Sekiguchi
ファースト・インプレッション

ユリス・ナルダンと言えば海のイメージだ。特に本命はかつてのマリンクロノメーターを思わせるマリーンであり、このダイバーは後発モデルということもあり僕のなかでは影が薄かった。今回44mmモデルをインプレッションすることになったが、正直自分には大きすぎるだろうと思っており、42mmのバリエーションの方が好みだと感じていた。ただ、まずお伝えしたいのがスペック上の数値は当てにならないということ。今回見比べた3本すべてに言えることだが、ユリス・ナルダンは表記しているサイズから連想するイメージよりもずっと装着感がよかった。

 特にこのダイバーは、短く切られて角度のついたラグ形状、自社製Cal.UN-118の重心バランスのよさ、風防と文字盤、針とのクリアランスなど細部にわたって詰められた設計などのすべての要素がつけた感触に寄与している印象だ。100万円クラスのダイバーズウォッチは高級機然とした出来のよい時計が多くなるが、ナルダンのそれは単なるツールウォッチではなく、洗練されたスポーツウォッチという個性が強くなる。

デザイン、外装について

 本機はマリーンなどと共通のキャリバーを搭載するため、12時位置のパワーリザーブ表示と6時位置のスモールセコンドというユリス・ナルダン全体のデザイン言語が採用されている。このダイバー特有の意匠として、ややコンケーブした回転ベゼルがある。0、15、30、45の目盛りを備えダイバースケールとしての実用性を備える一方で、それらはアプライドされておりインサートされたラバー部分とのコントラストが際立つ。規則正しい同心円状の模様が施されたこのインサートが、ラバーとは思いもよらない。また、このベゼルにはポピュラーなコインエッジ状の刻みではなく、独自の大きな指掛かりが配されている。実用性は申し分なく、さらにポリッシュとサテンで仕上げ分けられているためサイドビューの美しさにも寄与している。

 インデックスは一般的なバータイプだが、太く短くデザインされていて、文字盤全体の余白を生み出している。それでいて、ダイバーズウォッチに求められる規格である「暗所で25cmの距離から時刻が読み取れること」という機能性も十分に果たす。さらに、この44mm特有のディテールとして、ケースに別体で埋め込まれたリューズガードの存在もある。この時計は見れば見るほどディテールに手が込んでいるのだ。

ムーブメントについて

 先にも書いたが、本機が搭載するのは同社の旗艦キャリバーであるUN-118だ。ユリス・ナルダンの代名詞とも言えるシリシウム製の脱進機を搭載した名機で、トゥールビヨンなどの機構をさらに追加することのできるベースキャリバーとしての設計もなされている。特筆すべきはそのメンテナンス性で、ムーブメントの箇所によって役割が分けられており問題のある箇所の洗い出しがしやすく、ダイレクトにそこにアクセス可能なつくりとなっているのだ。まさに、自社製ムーブメントの面目躍如といったところで、長い年月のあいだ使うほどにクオリティの高さを実感するムーブメントとなっている。フリースプラング方式も採用して高級機としての素養を十分備えており、正直、このムーブメントをマイナス評価する要因はほとんどない。

実際につけてみて

 ファーストインプレッションでも述べたが、予想に反して装着性がよく、サイズ表記のイメージからするととても薄型で腕なじみがよいことに驚かされるのがこの時計だ。これで300m防水だというのだから、本当に文句のつけようがない。当初の印象がさほどよくなかっただけに、そのイメージとのギャップにすっかり魅了されてしまった。ダイバーズウォッチとしての完成度は、間違いなく業界最高峰である。

 ただし、いくつか考慮すべき点はある。ユリス・ナルダンにおいてのアイコンはマリンクロノメーターだろうし、となればファースト・チョイスはマリーンになるだろう。革新性という意味ではブラストほどの斬新さはなく、本機はあくまで古典的ダイバーズとしての範疇を出ない。ダイバーズウォッチは言わずもがな、時計のジャンルにおいて「死のグループ」と言っていい激戦区であり、ユリス・ナルダンのダイバーズは他のスター・ウォッチとの競争にさらされることにもなる。ただ、間違いないのは、今このダイバー クロノメーターを選べば必ず「マイ・チョイス」となること。まだまだよさに気づいている人が多くない今のタイミングで、この時計を選び抜ける人はかなり先見の明があるだろう。大丈夫、何十年でも愛せる質の高さは保証する。

 ダイバー クロノメーターの詳細は、ユリス・ナルダン公式サイトへ。


ブラスト デュアルタイム
By Masaharu Wada
ファースト・インプレッション

これまでにもいくつかの記事や場面で公言してきましたが、僕はふたつ以上の国の時刻を表示できる時計が大好きです。アメリカにいる同僚とのミーティングを設定したり、スイスの新作発表の情報解禁時間を確認するときなど日常で活用することが多く、とても実用的な機能だからです。そのため、今回のスリー・オン・スリーのために目の前にこの3本が並べられたとき、真っ先にこのブラスト デュアルタイムを手に取りました。

 ブラスト デュアルタイムに対する僕のファースト・インプレッションは、「かなりユニークなダイヤルレイアウトだな」でした。ほかのブランドのデュアルタイムを思い浮かべてみると、多くがセンターと6時位置などに言ってみればふたつの時計を表示するような方式が採用されていることに気づきます。ですが、ブラスト デュアルタイムの場合は、時針と第2時間帯を9時位置の丸い窓で表示する方式。少し操作してみて、すぐにこれが直感的で秀逸な機構であるということに気がつきました。

デザイン、外装について

 モデル名のとおり本作は、2020年に誕生したばかりのブラストコレクション(旧エグゼクティブコレクション)に内包されるモデルです。直径42mm × 厚さ10.05mmのステンレススティール製ケースは、ブラスト アワーストライカーブラスト ムーンストラックのような鋭角的なラグを備えたものではなく、ブラスト スケルトン Xに共通する3本ラグを備えた個性的なデザインが採用されています。

 ダイヤルは、中央3分の1をしめるレクタングルと「X」のデザイン要素が取り入れられ、12時、3時、6時、9時位置にローマ数字のインデックスが配されています。2時位置に視認性の高いラージデイト、6時位置にスモールセコンド、そして9時位置の丸い窓に24時間表示のホームタイムを表示します。

 放射状にサテン仕上げが施されたネイビーブルーは、スポーティな印象を与え、光の当たり方によって深いダークブルーや明るいパープルのように見えたりと表情豊かです。ラインナップにはブラックもありますが、海との強いつながりを持つユリス・ナルダンなのでもし選ぶならこのブルーダイヤルにすると思います。

ムーブメントについて

 ケースを裏返すとトランスパレントバック越しに内部に搭載されたETA 2892-A2ベースのCal. UN-24を確認できます。モジュール式のデュアルタイム機構は、物理学者で天文学者であり天才的な時計師として知られるルートヴィヒ・エクスリン博士が1994年に開発したもの。登場して以来、約30年ものあいだ作り続けられています。

 時針の操作は、ケース9時側にあるプッシュボタンで行います。10時位置の「+」ボタンと8時位置の「-」ボタンで進めたり戻したりを簡単に行うことができるのですが、この操作の禁止時間帯は無く、さらにデイトも連動して動くため使いやすさはパーフェクト。頻繁に旅をする人や、僕のように複数の国の時間を素早く確認したい人にとっても非常に便利な仕様です。パワーリザーブは、約42時間とやや物足りなさを感じますが、旅先などで1本を使うのであれば気になることはないですし、むしろこの高いユーザービリティの魅力が上回ると思います。

実際につけてみて

 第2時間帯を表示する時計は、GMT針やインナーベゼルを使うもの、各国の都市が記されたワールドタイムなどいくつかありますが、使い方の学習と慣れに少し時間がかかったり、12時間までの時差にしか対応していなかったり、視認性に難アリだったりするものも少なくありません。

 ユリス・ナルダンのデュアルタイムは、表示も操作性もシンプルかつ簡単。僕がこれまで使ってきたなかでも最も使い勝手がよいGMTウォッチのひとつと言えます。ただひとつ難点を挙げるとしたら、時分針が9時位置の窓の上に被るときは確認しづらいということ。それ以外は本当に非の打ち所がない秀逸な機構だと思います。

 直径42mmという数字を見たときは、僕の手首には合わないかもしれないと思いましたが、実際につけてみるといい意味で期待を裏切られました。下に角度のついたラグが装着したときに数値の印象よりも小さく感じさせ、シームレスなストラップが視覚的なサイズも少し小さく見せてくれました。ケースの厚みも10.05mmで、シャツの袖にも収まるサイズ感。レザーストラップだけでなくラバーストラップもあり、スーツスタイルからカジュアルなスタイルまで幅広く活躍してくれると思います。

 この魅力的なデュアルタイムは、特許取得済みのため、もし手に入れたいと思ったら選択肢はユリス・ナルダン一択。まず手にとって実際に操作してみて欲しい一本です。

 ブラスト デュアルタイムの詳細は、ユリス・ナルダン公式サイトへ。


真っ向勝負

 さらに詳細を知りたい方は、ユリス・ナルダン公式サイトへ。

Photographs by Keita Takahashi, Special Thanks to Yasuda Shipyard and AZIMUT Japan