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Culture Of Time ブレット・デネンの新曲「Paul Newman Daytona Rolex」を聴く

シンガーソングライターである彼が、時計についての深い考察を交えながら、この曲が生まれた背景を語ってくれた。

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最近、「Ain't No Reason」や「Make You Crazy」などで知られるシンガーソングライターのブレット・デネン(Brett Dennen)がニューアルバム「See The World」をリリースしたが、我々はそこに収録されているシングル「Paul Newman Daytona Rolex」に注目した。先日、彼はこの曲と時計への思いについて我々に話してくれた。今回は彼がダニー・ミルトンに語った時計にまつわるストーリーを紹介する。

僕は北カリフォルニアのセントラルバレー出身で、そこは本当にカリフォルニアらしいと思っています。とても農業が盛んで、皆さんが食べているアーモンドもここで作られています。酪農も同様で、牛もたくさん飼われています。僕はずっとカリフォルニアにいますが、そのなかでもいろいろな所に住みました。

 大まかに言うと、僕は昔から時計をなんとなく好きだったのですが、収集しているわけではありません。持っているのは2つだけ。1つは祖父からもらった1940年代のハミルトンで、身につけることはありませんが、感傷的な理由で愛しています。祖父は大学を卒業したときにこれを贈られました。ゴールドで、とてもかっこいいストレッチブレスレットがついています。いつかつけようと思っていますが、修理が必要です。とても美しいものですね。

写真のハミルトンは、デネンの祖父から贈られたもの。

 もう一つは僕のフィールドウォッチで、ベルトゥッチと呼ばれるものです。200m防水でサーフィンにも最適です。シンプルな時計です。

デネンのフィールド(日常)ウォッチは、シカゴを拠点とするブランド、ベルトゥッチ。

 そして、僕は昔からロレックスの時計が大好きでした。父が持っていて、僕に譲ってくれるなんてことがあったら、かっこいいなといつも思っていました。それが僕の目標で、いつかロレックスを手に入れるつもりです。お金を出して手に入れたいほど気に入った1本に出会えれば、それはいつか息子に引き継がれ、僕の夢をかなえることになるでしょう。

 昔、ドバイで買った偽物のロレックスがあります。ある女性がミーナバザールという場所を教えてくれたので、ぜひ行ってみたいと思っていました。彼女は、「そこに行って買い物するなら値切って。そうやって偽物を買うのよ」と教えてくれました。僕が選んだのは“サブマリーナー”とうたっていたモデル。ずっとつけていたのですが、ある日突然、動かなくなってしまいました。

永遠にクールなポール・ニューマン。レースカーに乗って、腕には“ポール・ニューマン”。Photo: Getty

新曲「Paul Newman Daytona Rolex」は、旅先で深夜にBBCの番組『アンティーク・ロードショー(Antiques Roadshow)』を見ていたときにインスピレーションを受けた曲です。

 そのとき登場した男性のエピソードです。彼は70年代にパイロットをしていた人で、ハンサムでかっこいいシャツを着ていました。彼が言うには、当時のパイロットは皆、ロレックスのデイトナを買っていて、彼もこの時計を数百ドルで手に入れたそうです。エピソードを見直せばはっきりしますが、その男性はダイヤルについて、ダイヤルのおかげで、飛行中に地上での速度などを把握することができたと言っていたような気がします。彼はこの時計に300ドル以上は払っていなかったようです。

2016年に放送された『アンティーク・ロードショー』に登場したイエローゴールドロレックス デイトナ。

 そして、その時計は番組で10万ドル(約1100万円)の価値があると発表されました。驚異的でした。そこで鑑定士が「これはポール・ニューマンモデルです」と言い、私は「えっ?」と驚きました。ポール・ニューマンは私の長年の憧れです。スタイル、クールさ、慈善活動など、すべてにおいて。だから、あの番組を見た時、まるでジャーナリストか何かのような気分になりました - これは曲になるかも? これについて歌を作るにはどうすればいいだろう?

ニューマン(と彼のデイトナ)と、チキータのTシャツを着て父親を引き立てる息子のスコット。Photo: Getty

 そこからのめり込んで色々調べました。ポール・ニューマンの時計、彼のデイトナ・ロレックス、彼がどの有名な映画で身につけたか、あるいはル・マンで2位になったときに身につけていたか、など。そのうち、彼がロレックスから与えられた1本を娘のボーイフレンドにあげたという記事を見つけました。そして、その時計が数年前に1700万ドルで落札されていたんです。「ああ、これは曲のアイデアになるな、何度も浮かんでくるな」と思いました。

ポール・ニューマン デイトナ、BUNDストラップ付き。

 3年前くらいから曲作りを始めましたが、僕は「いったい時計についての歌をどうやって書くんだ?」と思っていました。そして、僕が今もずっと好きなポール・サイモンの“Kodachrome(コダクローム)”という曲を聴いたんです。この曲を聴いているうちに「なるほど」と思いました。

“コダクローム”を歌っている時のポール・サイモン、口ひげを蓄えている。Photo: Getty

 彼はコーラス部分でそれについて触れていますが、この曲は全体にそのことについて歌っているわけではありません。じゃあ、何についての曲を作るのか? 僕は、「感傷的な理由で時計を愛していて、その時計はプライスレスなものだけど、感傷的なものに値段をつけることはできない 」というストーリーを語るべきだと思いました。

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 ただ、ここまでしか思い浮かびませんでした。僕はまだ時計についての歌を書いているのか? どうすれば面白い曲になるのか? それから長い間この曲を寝かせていたのですが、ふと思いついたのです。もし、この曲にもう1つの詩を書くとしたら、それは時計のことでもポール・ニューマンのことでもないはずだと。

 それはただ価値について、つまり何に価値があるのかということだと思ったのです。僕が何よりも欲しいものは、値段のつけられないもの。飢えている人に食べ物を与えること、世界平和、環境の回復、ダムをやめて水源を守ること、自然の生息地や野生動物を取り戻すこと - そういったことでした。

 そして、僕は「これだ。これで曲は完成だ」と思ったのです。それを一緒に仕事をしている仲間と共有しました。みんなが「このロレックスの曲はどう? ちょっと変わっていて斬新だね」と言っていました。

 そして僕は「変わっているから好きなんだ 」と言いました。馬鹿げているわけではない。真面目なんです。僕は時計が好きで、ポール・ニューマンが好きで、何が感傷的で何が価値があるかという考えが好きなんです。

ポール・ニューマンのデイトナモデルの話を聞いたときから、いつか手に入れる時計だと思っていました。初めて本物のロレックスを買うなら、それは僕がいつも身につける時計になると思うから。

 ロレックスのことを歌った曲を作ったので、自分もロレックスを持ちたいと思っています。手に入れようと思います。でもどうすればいいのか? どうやって選べばいい? 珍しいヴィンテージものを探すか、それとも新品のサブマリーナーを買うか。そんなことを考えるのが日常になりました。僕の人生はどう変わったか? それが一番の醍醐味だと思います。そんなところに惹かれるんですよね。

 このインタビューは、わかりやすく編集されています。ブレット・デネンのニューアルバム「See the World」が発売されました。以下で試聴できます。

Lead image courtesy, Brett Dennen