ADVERTISEMENT
ビッグニュース到来!! ジュネーブで開催された『Only Watch 2019』の開催前から大きな話題を呼んでいたパテック フィリップ グランドマスター・チャイム Ref.6300A。この非常に珍しいステンレスケースのパテックがオークションにおける最高価格を更新すると巷を騒がせていたが、それがまさに現実のものとなったのだ! おさらいすると、本機は文字盤が二つあるリーバーシブルタイプで、20ものコンプリケーションを備えたもの。
これが、3100万スイスフラン(約34億円)で落札され、正式に世界で最も高価な腕時計となった。
今回の落札価格が高額になること自体は全く驚くことではない。歴史的に見れば、パテック フィリップの時計は、これまでも『Only Watch』では高額で落札されてきたし、ここ数年に限れば数ある時計の中でもパテックが常に最高価格を記録していた。2017年には、「One off」の5208T(チタンケース、グランドコンプリケーション)が620万スイスフラン(約6億9000万円)で落札され、その2年前には、SSのRef. 5016Aが730万スイスフラン(約8億円)を付け、当時の腕時計の世界最高落札価格をマークした。(それ以降も記録は2回更新されており、一度めが2016年でSSのRef. 1518、そして二度めは、2017年に落札されたポール・ニューマンのポール・ニューマン デイトナ)
それ以前にも、2013年にはTiケースのRef. 5004Tがおよそ400万スイスフラン(約4億6000万円)、2011年にはSSのRef.3939Aがおよそ200万スイスフラン(2億2000万円)を付けていた。そう、つまり、パテックにとっては当然のことなのだ。
数分前までは、『世界最高価格』という称号は他のパテック フィリップの(懐中)時計、ヘンリー・グレイブス・ジュニア スーパーコンプリケーションが保持していた。それは、2014年ジュネーブのサザビーズで落札され、2400万ドル(約24億円)の値を付けた。これらの二つの時計は、全く異なる時計でありながら、面白いことにたくさんの共通点を持つ。
これまでの"腕"時計の最高価格は、前述の通りポール・ニューマンが所持していたポール・ニューマン デイトナで2017年に記録した1700万ドル(約20億円)。というわけで、今回の価格がいかにとんでもない価格であるかは誰の目にも明らかだと思う。
ここ数年の間、いくつも記録が更新されては破られるということを繰り返してきたが、今回の記録については、あきらかに「王の中の王」といえるものだ。これまで最高価格という称号を長い間保持してきた時計は1920年製の懐中時計だったわけだが、同じパテック フィリップとはいえ、大変珍しいコンプリケーション機構を持つ近代的な時計にその地位を譲ることになったことは大変興味深い。近代的な時計が最高価格を更新するのは、記憶にある限り初めてのことだと思う。
しかしながら、最高価格の腕時計という記録の話になると、少し意味合いが違ってくる。上記の通り、これまでの記録は色々な珍しいパテックが、数少ないヴィンテージもののパテックや出所、由来の珍しいヴィンテージもののロレックスに取って代わられるという図式だった。つまり、近代的な時計が最高価格の称号を得るのは全く違った意味を持つのだ。
この時計が、これまで世界最高価格を保持していた。
今回の時計は、意見が真二つに分かれるものだ。もう少し詳しくこの時計のことを知りたい方は、なぜこのような高額で落札され、パテック フィリップのどのコレクションにいかなる背景があって加わるのかなどについて、先日の私の実地レポートをご覧いただきたい。
オークション会場の印象
今回の入札は、2000万スイスフラン(約22億4680万円)ぐらいまでは多くの入札者が競合していたが、徐々に適正な値上げ幅レベルに落ち着きながらも、価格はどんどん上がり続けた。ドラムロールのビートもだんだんとゆっくりに。あきらかに観衆の多くは信じられない気持ちでいっぱいだったが、入札者は全く意に介さず応札を続け、オークショナーはいずれの入札者も下りないだろうと考えている。オークション会場では、応札のコールが上がる度に入札額はどんどん上がり、会場のムードもみんなの期待を打ち砕くようなハラハラとドキドキを繰り返し、オークショナーは、入札戦争の炎にどんどん油を注いでいた。
入札額が上がるにつれて、人々の投資熱もどんどん熱くなっていくのが分かる。会場内は、通常、部屋中に響いているはずのしゃべり声が抑まり、静寂を保っていた。価格が2800万スイスフラン(約31億4500万円)になって、初めて歓喜の声とおめでとうの拍手が入札会場に起こり、入札額がこれまでの時計の世界最高価格を更新するだろうという事実に、祝福ムードが生まれた。
以前、私はこの時計を腕に着ける機会があったが、その時は何の高揚感も感じなかった。― まあ、どうでもいいことである。このパテック フィリップが世界記録を更新したときに、会場にはその何倍もの高揚感が満ちあふれていたのだから。
「Only Watch 2019」のすべての入札結果を知りたい方はこちらをご覧あれ。
話題の記事
Photo Report 最高のオメガ スピードマスターが、その夜一堂に会した
Hands-On ジャガー・ルクルト ポラリス・クロノグラフを実機レビュー
HODINKEEマガジン ジャパン エディション Vol.7の発売を記念したスペシャルイベントを開催