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Hands-On ブレゲ クラシック トゥールビヨン エクストラフラット オートマティック 5367

青色の旋風。

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トゥールビヨンにとって今は興味深い時代である。アブラアン-ルイ・ブレゲ(Abraham-Louis Breguet)によって発明されたトゥールビヨンは、機械式時計のルネサンス期が1990年代末に本格的に到来して以来、高級時計づくりの傾向を総じて反映するようになった。そして最もマキシマリスト、また最もミニマリストな時計づくりの一部において実現する手段となった。
 私たちはあらゆる状況を目にしてきた。世界一薄い時計を作る熾烈な競争(現在はブルガリが記録保持者。そもそもブルガリが挑戦したことも、あの薄さを実現できたことも意外だったが)から、ジャガー・ルクルトが極端に時計学を追求して製作した、眼を見張るようなジャイロトゥールビヨン(最近はウェストミンスターチャイムと永久カレンダーの二刀流が台頭)にいたるまで、それからもちろん、ムッシュ・グルーベルとムッシュ・フォルセイの作るほとんどの時計などである。

 だがいつの時代も、ブレゲのトゥールビヨンは特別な意味を持つだろう。ブレゲほど、この制御装置と深い関わりを持つ企業はない。トゥールビヨンは、時計愛好家なら誰もが知るように、元々は歩度を安定させることを目的としていた(ブレゲの特許では、油をより均等に分配することもできるとしている。当時は、動物性や植物性の油脂や油が潤滑剤の主流だったため、これはブレゲの生涯の課題だった)。トゥールビヨンは今では、時計学的設計において耳にするようになって久しく、また歩度の安定に貢献する可能性のある(あるいは、ない。議論は継続中だ)メカニズムとされている。また古典的に最も魅力的な時計のいくつかは、今もなお、トゥールビヨンの発明者の名前がその社名に刻まれた、このメーカーから登場している。

 ブレゲ クラシック トゥールビヨン エクストラ-フラット オートマティック 5367は、ブレゲが2013年に最初に発表した極薄の自動巻きトゥールビヨンの最新バージョンだ。当時は厚さ7㎜を誇る、世界一薄い自動巻きトゥールビヨンだった。のちに世界一の座は奪われたものの、今もなお、それ自体が非常に美しく興味深いものである。発売以来、いくつかの異なるバージョンが世に送り出され、例えば非常に洗練されたプラチナモデル(オリジナル版のケースはローズゴールド)や、私のお気に入りのひとつ、エクストラフラット スケルトン 5395がある。ムーブメントのペリフェラル ワインディング システム(もちろん、薄さの秘訣でもある)を最大限に活かした時計だ。

2019年のブレゲ クラシック トゥールビヨン エクストラ-フラット スケルトン 5395。

 おそらく5367は、昔ながらの美しさが最も表現されたトゥールビヨン エクストラ-フラットの1バージョンといえる。このエクストラ-フラットのトゥールビヨン ムーブメントとエナメルダイヤルの組み合わせは、初めてではない。5367BRは非常に魅力的な時計で、ホワイトエナメル文字盤と18KRGケースで威厳を感じさせるが、オリジナルの5377と同じくやや古風な感じがする。
 5377のエンジンターンド文字盤は、ブレゲ自身の作品に特徴的な、様々なエンジンターンド ギヨシェ模様で装飾されていた。エンジンターンドの興味深い特徴のひとつは、長針と分針の軸がわずかに中心からずれているという、いくぶん繊細な側面を引き立てている点だ。それによって、トゥールビヨンケージの開口部を水平に分割する、大胆かつ印象的な受け板が配され、トゥールビヨン用に大きなスペースが確保されている。

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 このようなデザイン要素はもちろん、他のバージョンでも採用され続けているが、エナメル文字盤モデル(あるいはエクストラフラット スケルトン)では、エンジンターンド文字盤のそれほどは目立たない。また、エナメル文字盤のモデルは、他のバージョンにあるパワーリザーブ表示は排除されている。

 ブルーのエナメル文字盤と、PTケースとホワイト色のマーカーの組み合わせが、他のバージョンにはないモダンな魅力を5367に与えている。見事な紳士用時計であることは間違いないし、誤解しないで欲しいのだが、書斎での葉巻とポートワインに合う雰囲気かというと、他のバージョンほどではないと私は思う(ちなみに私は、このようなステータスを切望するタイプの人間だ)。

 手に取ったり手首に着けたりしたときの感触はというと、まさにブレゲの極薄トゥールビヨンに期待するとおりのものだ。非常に洗練されているという第一印象(さらに感動が追いかけてくる)を与えてくれる。このブルーは、エナメル文字盤の良さが最も伝わる、爽やかさと深みを感じさせてくれる。食べられるんじゃないかと思うくらいだ。文字盤は光の当たり具合で、ほとんど黒い青黒色から孔雀の羽の虹色まで、幅広い色合いを見せてくれる。

 もちろんムーブメントも、このレベルの時計となると他の要素と同じくらい存在が大きく、Cal.581は、伝統的な時計づくりの仕上げや装飾と、かなり現代的な技術の両方を象徴する。ムーブメントは厚さ3㎜(直径16リーニュ)と非常に薄く、前述のとおり、それを実現できたのもペリフェラルローターの採用による部分が大きい(一般的にまだ比較的珍しいものだ。ブルガリがオクト フィニッシモ トゥールビヨン オートマティックで、カール F. ブヘラが ヘリテージ トゥールビヨン ダブル ペリフェラルで採用)。ディスプレイの裏から見てもペリフェラル ローターは見つけづらい。ムーブメントの端にあり、自動巻き輪列の他の部分と噛み合う歯車が内側についたリング上にある。背面のトゥールビヨンの受け板には「Brevet Du 7 Messidor AN 9」と刻まれており、これはブレゲの特許取得日である1801年6月26日に言及したものだが、比較的短期間で廃止されたいわゆる共和暦で示されている。共和暦は、暦法を近代化する目的でフランス革命期に導入された(そして、グレゴリウス13世がユリウス暦に対抗して以来、暦法の改革を目指した他のほとんどの試みと同じ運命を辿った)。

 主ゼンマイの香箱が80時間の駆動時間を実現し、キャリッジはチタン製だ。どちらかというと簡素な感じのする文字盤側とは違い、ムーブメントの見た目はかなりあからさまに装飾的である。ヒゲゼンマイと脱進機はどちらもシリコン製で、テンプはトゥールビヨンとしては比較的高振動な4Hz(2万8800振動/時)だ。実際の振動部の大部分はプラチナ製。

 よく見ると、ケージの旋回軸右上に、透かし細工が施された極薄のシリコン製ガンギ車がある。単体では極めて軽量なのだろう。衝撃面でのシリコンの採用とガンギ車の透かし細工は、輪列からテンプへの動力の移行効率を上げることが目的だ。ムーブメントの厚みを抑えるもう一つの特徴として、トゥールビヨンのケージが、チタン製ケージ自体の端にある車と噛み合うことで駆動していることがある。通常は、トゥールビヨンのムーブメントには三番目の車があり、それがケージ下の小歯車経由でケージを駆動させる。他の部品が同じであれば、ムーブメントは当然、この5367でのアプローチよりも厚くなってしまう。

 この時計にはハイテクな技術ソリューションが詰まっているが、ブレゲのトゥールビヨンに期待する魅力も全て兼ね備えている。様々な世界記録が達成され大々的に取り上げられている一方で、腕時計は、結局のところ美的また知的な領域でも満足がいかなくては成功を収めることができない。目立たないながらも劣らず印象的な5367が、その証拠といえるだろう。

ブレゲ  クラシック トゥールビヨン エクストラ-フラット オートマティック 5367:PTケース、フルーテッド ケースバンド、両面サファイアクリスタル;41mm x 7.45mm;30m防水。ラグは溶接加工、ストラップはネジで固定。文字盤「グラン・フー・ブルー」エナメル;チャプターリングにはブレゲ数字を採用。ムーブメント、自動巻きCal. 581、16リーニュ 厚さ3mm、パワーリザーブ80時間;シリコン製のパレッツ、ヒゲゼンマイ、およびガンギ車、振動は4 Hz(2万8800振動/時)、33石;トゥールビヨン(1回転/分)、チタン製キャリッジ。アリゲーターストラップ、プラチナ製トリプルフォールディング クラスプ付き。1752万円(税抜);ブレゲ ブティック限定。詳細についてはブレゲ公式サイトへ。