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Hands-On ブローバの新しいルナ パイロット メテオライトエディションは、この時計の重要性を思い出させてくれる

NASAと月面ミッションはスピードマスターがすべてではなく、この新しい限定モデルはそれを大々的に祝している。


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Photos by Kasia Milton

ジョン・フォード(John Ford)の晩年の作品であり、間違いなく彼の最高傑作のひとつである『リバティ・バランスを射った男(原題:The Man Who Shot Liberty Valance)』には有名なセリフがある。またそれは、「もっと大きな船が必要だ(これは生易しいもんじゃない)」(映画『ジョーズ』)、「もう1回やってくれ、サム(=あれを弾いて、サム )」(映画『カサブランカ』)、「ルーク、私がお前の父親だ(=違う、オビ=ワンがお前の父親を殺した)」(映画『スター・ウォーズ』)、「つくれば彼らはやって来る(=つくれば彼がやって来る)」(映画『フィールド・オブ・ドリームス』)と並び、間違って引用される映画のセリフである(今、私はそれぞれ意図して引用を間違えている)。

 1962年作のその映画の最後に出てくるセリフは、“伝説が事実となったときには、それを広めよ(When the legend becomes fact, print the legend)”というものだ。これは時計の世界にも無限に応用できるため、私はよくこのことを考えている。ロレックス エクスプローラーとエベレスト登頂はその一例だ。神話や伝説は、それを確かな事実として投げかけられるほど、私たちを虜にする力を持っている。しかしときには幻想的な物語の性質、つまり実話がより強力な物語の影に隠れて、その隙間をすり抜けていくことがある。それがブローバと月の物語だ。

Bulova Moon

 10年近く前、我らがベン・クライマーは当時としてはユニークなオークションを取材した。これにはアメリカ人宇宙飛行士のデイブ・スコット(Dave Scott)が所有していた、ブローバのクロノグラフ Ref.88510/0が、オークションに出品される予定だったのだ。しかし、この時計には特別な出自があった。伝説によると、アポロ15号のミッション中、スコットのスピードマスター(NASAが支給した時計)の風防が破損し、ほかに船に持ち込んでいた自分のブローバを身につけるしかなかったという。実はNASAの宇宙飛行士が個人の時計を持参するのはごく普通のことで、それゆえアポロ13号のミッション中、ジャック・スワイガート(Jack Swigert)は自分のGMTマスターを持ち込んでいた。

 スコットがブローバを身につけた本当の理由が何であれ、それは事実であり、2015年のオークションがそれを裏付けている。ブローバとNASAが支給したベルクロストラップはすべて登録、機内で使用されたことが記録されており、またスコットが宇宙服にブローバを着用している証拠写真もある。スコットのブローバは、2015年に160万ドル(当時の相場で約1億9370万円)で落札された。支給されたスピードマスターはすべてアメリカ政府の所有物であるため、このオークションではじめて一般の人が、月面で着用された時計を入手した瞬間だった。

Bulova

オリジナルのデイブ・スコットのブローバ クロノグラフ、Ref.88510/01。

 これは滅多に語られることのない特別なストーリーであり、それはアメリカの時計製造史と宇宙旅行史を結び付けたルナ パイロットウォッチ(当初は45mm径のクォーツクロノグラフだったが、のちに43.5mm径へとダウンサイズされた)という、まさにこの時計への現代的なオマージュの創造に、ブローバが直接影響を与えたのだ。

 以上のことから、私は現代のルナ パイロットウォッチが、この業界における真の遺産を持つ、縁の下の力持ち的存在であると信じている。スタンダードなLP(ルナ パイロット)は、ブローバの深い歴史と月のミッション、特にアポロ15号との真の結びつきを理解する上で、最高の価値を提案するひとつである。そしてブローバはこのストーリーを忘れてしまったわけではない。ブランドはこの物語を祝う方法を熟知しており(ルナ パイロットの通常生産だけでなく)、それが今日のメイントピックに繋がってくる。

 先月、ブローバはルナ パイロット メテオライトダイヤルの限定版(合計5000本)を通じて、LPファミリーに新作を追加した。そしてその名前こそ、この作品について知る必要のあるすべてを物語っている。今見ているのは、ブランドのアーカイブスシリーズに加わったものである。同シリーズはアーカイブからデザインインスピレーションを得た時計を集結させたものだ。通常のLPはステンレススティール製であり、その点この限定版はケース素材が異なる。

Bulova

 メテオライトモデルはグレード5チタン製で、サンドブラスト仕上げを施して質感を高めている。ただ私の考えでは、それは一見控えめな工夫でありながら、宇宙とのつながりを強調しているように思える。サンドブラスト仕上げで見られる斑点は、銀河系に無数の星があることをいくぶん示している(想像力を働かせて)。皆さん、お付き合いを。私は時計愛好家として今感情的になっている。

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 43.5mmというサイズは、現代風にアレンジしたように見えるかもしれない。つまるところ、我々はスピードマスターの42mmというサイズを、当時としては大型な時計だと考えているが、この43.5mmはオリジナルのRef.88510/01と同じサイズのため、ルナ パイロットもそれに忠実に則っているだけだ。オリジナルモデルは機械式クロノグラフムーブメント、おそらくバルジューの1種を搭載していたが、メテオライトエディションを含む現代のアーカイブシリーズは、高精度のクォーツCal.NP20を搭載している。

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 重要なのは、ブローバは大手シチズンウォッチグループの傘下にあり、Cal.NP20がブローバ専用のムーブメントであることだ。時計のコングロマリットについてとやかく言う前に、最後まで聞いて欲しい。オメガ スピードマスターはスウォッチグループに属しているため、スウォッチグループが提供する無数のリソース(特に大規模なムーブメント製造)の恩恵を受けているのと同様に、ブローバもまたクォーツを搭載した精密な時計製造に関して、シチズンのノウハウの恩恵を受けている。

 NP20は、水晶振動子を搭載し、26万2000Hzの周波数で時を刻む。これは通常のクォーツの8倍の精度で、その結果、月差±5秒という精度を実現している。正直に言うと、歴史的なオマージュ作品であり、根本的に正確なツールウォッチであるということを表現していると考えると、この時計は非常に過小評価されていると思う。

 オメガの象徴的な存在であるスピードマスター X-33と比べると、現代に沿ってアップデートする際、クォーツが簡単な決断であったことは一目瞭然である。したがって、ブローバがシチズンの強みを生かし、クォーツムーブメントを搭載したルナ パイロットを復活させたのは当然の成り行きだろう。

 しかしムーブメントとケースのサイズは、ルナ パイロットコレクション全体に共通する特徴を表している。今回の新作が特別なのは、前述したケース素材の変更に加えて、メテオライトダイヤルが採用されていることだ。

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 限定モデルのメテオライトダイヤルから想像できるように、ここにあるのは、メテオライトの質感を表現するため製作工程上、5000本すべてが唯一無二のモデルである。そのためこの限定シリーズの生産本数がかなり多いにもかかわらず、同じ表情はふたつとしてないと確信が持てる。それはいいことだが、メテオライトの表現についてはどうだろうか。

 約20万円の時計にしてはかなりクールだ。これは7桁の時計でも満足できる文字盤である。そしてブローバがサンドブラスト加工のチタン、メテオライトダイヤル、限定生産をパッケージにして、なおかつ真の価値提案と考えられるものを提供したことに、驚きを隠せない。

 さて、この時計の美的な特徴について見ていこう。スリーレジスターのディスプレイと、個々のインダイヤルに用いられた同心円状のブラックパターンは、通常のブラックLPから引き継いだディテールである。針とインデックスにも同じことが言えるが、メテオライトエディションでは、金属製の枠がメテオライトダイヤル表面のグレーカラーに溶け込んで、インデックスと針が真っ白に浮き上がっているように見える。詩的で大げさな表現をするつもりはないが、まるで無重力環境下のもと文字盤が浮かんでいるかのようだ。ただ心配は無用だ。文字盤が浮かんでそのまま消えることはない。

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 おそらく最も劇的な変化は(メテオライトの文字盤を除けば)、タキメータースケールの新たな試みだろう。オリジナルLPのタキメーターには、光沢のあるブラックテクスチャーにホワイトのプリントが施されていた。しかし新作では、質感によってコントラストを加えた、実にカッコいいものが手に入る。タキメータースケールは同じ色調の表現で、ダークグレーの背景から文字が浮き上がっているようだ。内側のベゼル全体は、月面を思わせる非常に細かなパターンで仕上げられていて、ケースの質感との対比も見事である。

 最後に、(通常モデルと)同じサインが入ったリューズとブローバのクロノグラフプッシャーである。しかし時計を裏返して、NATOスタイルの実用的なレザーストラップを外すと、実に魅力的な裏蓋のエングレービングが現れる。月面にいるスコットのイラストと、アポロ15号をほうふつとさせるテキスト、時計に付与されたシリアルナンバーが施されており、またサンドブラスト仕上げの質感がそれらを一層際立たせている。

Bulova

 ブローバ ルナ パイロットの43.5mmというサイズ感は、その仕様に忠実である。妻のカシアが撮影した写真を見ればわかるように、決して小さな時計ではない。しかし、私は少数派かもしれないが、正統なツールウォッチはある程度大きくあっても問題ないと思っている。そしてルナ パイロットこそ、その正統なツールウォッチなのだ。

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 結局のところ、ルナ パイロットのメテオライトエディションは、私を宇宙を舞台にした時計に関する興味深い世界へと連れ戻した。歴史を予感させ、イマジネーションを刺激する時計である。デイブ・スコットの話を初めて聞いた方には、月のミッションの歴史と、ブローバが果たした素晴らしい役割について深く掘り下げていただきたい。

 これは伝説が事実となる状況のひとつであり、それを広めるのははるかに簡単なことである。ブローバ ルナ パイロット クロノグラフ メテオライトエディションは現在発売中で、先ほどもお伝えしたとおり5000本限定、ストラップはNATOスタイルのレザーストラップで、価格は19万8000円(税込)だ(編注:日本での販売は2024年4月25日を予定している)。

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