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Introducing ジャガー・ルクルト レベルソ・トリビュート・ミニッツリピーター 2面ダイヤルが奏でる音色

不朽のクラシックデザインと伝統的複雑機構の邂逅

高級時計メーカーでは、ムーブメントの一部または全部を自社製造することが必要不可欠であるという考えが今日、一般的な前提となっているものの、実際には最近確立されたということを忘れがちだ。長い歴史を持つ高級時計メーカーの多くは、外部から供給されたムーブメントを採用してきたが(しかも、最も称賛されているモデルに)、ジャガー・ルクルトは一貫して自社製ムーブメントを採用することを伝統とする会社である。同社は何十年もの間、他社にエボーシュや完成品ムーブメントを供給してきた(現在までに1200種以上のムーブメントを供給してきた)が、初めてムーブメントを製作したのは、同社の記録文書によると19世紀半ばに遡り、1994年には初のレベルソ・ミニッツリピーターを製作している。

新作レベルソ・トリビュート・ミニッツリピーター

 ジャガー・ルクルトは、2021年9月21日から10月5日まで、ニューヨークで“サウンドメーカー展”を開催する。これは、最も重要なミニッツリピーターの数々と、同社の1世紀以上にわたる同機構を紹介するものだ。このイベントの目玉として、レベルソの新モデル、レベルソ・トリビュート・ミニッツリピーターを披露する。このモデルは世界限定10本、価格は25万ユーロ(参考価格、約3586万円)となる。

レベルソ・レペティション・ミニッツ・ア・リドー、2011年

 レベルソには、チャイム機能の複雑機構が何度か搭載されてきたが、その中でも最も興味深いのがレベルソ・レペティション・ミニッツ・ア・リドーである。“リドー”とはカーテンを意味するフランス語で、このレベルソには、ケースの横方向に開閉する金属製のカーテンがあり、これがチャイムを作動させるスライドの役割を果たしている。新作レベルソ・トリビュート・ミニッツリピーターは、リドーと同じムーブメント、Cal.944を採用している。どちらもダイヤルがスケルトン化されており、リピーター機構を眺めることができる。とはいえ、レベルソ・トリビュート・ミニッツリピーターは、若干趣を変えている。

レベルソ・トリビュート・ミニッツリピーターの第2ダイヤルから。丸穴車、香箱、駆動輪列、テンプが見える。

 レベルソ・レペティション・ミニッツ・ア・リドーは、リバーシブルケースを反転させてリピーター機構を見えるようにしたもので、リューズは左側、左上に遠心式レギュレーター、左下にハンマーが見える。新作のレベルソ・トリビュート・ミニッツリピーターでは、リピーターが従来どおりスライドで作動する。また、リピーター機構が見えるリューズは右側に、作動スライドは左側に配置され、時計を左腕に装着した際に親指で押し込みやすくなるよう改善が加えられた。

リピーター機能を搭載するCal.944。右上は“トレビュシェット(仏語で「投石器」を意味する)”と呼ばれる2つのハンマー、右下はハンマーストライクの速度を制御する音を出さない遠心式レギュレーター。

 このムーブメントの注目すべき特徴は、ジャガー・ルクルトが特許を取得したトレビュシェットハンマーだ。トレビュシェットとは、中世の攻城用兵器を意味し、要塞の石垣に巨大な弾丸を投げつけるために設計されたカタパルト(投石器)の一種である。このハンマーにはS字型のスプリングが内蔵されており、ゴングへのエネルギーを効率的に供給することが可能だ。また、同時にハンマーが勢いよく打ち込まれ、ゴングとの接触時間が長すぎて音が小さくならないよう工夫されている。

 ミニッツリピーターは、永久カレンダーよりもダイナミック、クロノグラフよりも高度で、要求に応じてすぐに動き出す、動作を眺めるには最も魅力的な複雑機構の一つだが、かつては実際の機構を見ることはできなかった。ミニッツリピーターは、針を動かす歯車の位置から文字通り時間を読み取ることができるため、時間、15分数、分数を何回鳴らせるかを“知る”ことが可能だ。歯車は通常、ダイヤル下に隠されており、そこにはレバーや歯のついたラックなど非常に複雑なシステムが配置されている。通常、リピーターがシースルーバックを備えている場合、目にすることができるのは、ムーブメントの地板にあるハンマーと遠心式レギュレーターのみだ。

 レベルソ・レペティション・ミニッツ・ア・リドー、そして今回のレベルソ・トリビュート・ミニッツリピーターでは、ケースの同じ面にすべてが配置されている。つまり、リピーター機構全体の作動状況に加え、長方形のゴングを打つハンマーも眺めることが可能だ。レベルソ・トリビュート・ミニッツリピーターが先代に比べて優れている点は、チャイムが鳴るとカーテンが閉まってしまうことがなくなったことだ。ケースを反転させて風防を隠すことで、割れたときの飛散を防ぐレベルソ本来の目的に加え、リドー・コンプリケーションは非常に遊び心に溢れるものではあった。

 私はレベルソ・レペティション・ミニッツ・ア・リドーのプロトタイプしか聴く機会がなかったが、このプロトタイプではチャイムが鳴っている間はカーテンが閉じていた(製品版では変更されている)。レベルソ・トリビュート・ミニッツリピーターのチャイムは、豊かで聴きやすく、素晴らしい透明感があるのだ。

(動画では、まず片方のゴングで時間を告げ、次に両方のゴングで15分経過を告げ、最後に片方のより高い音のゴングで15分から経過した分数を告げている。ビデオの中では、時間を打つ音が若干カットされていることに留意。)

 ジャガー・ルクルトは一般的に、複雑な時計を非常にスリムに仕上げることに長けている(時計製造の歴史上、最もフラットなムーブメントを製造してきた会社としては当然のことではあるが)。ホワイトゴールド製のレベルソ・レペティション・ミニッツ・ア・リドーのケースサイズは55mm×35mm×12mm、ピンクゴールド製のトリビュートは51.1mm×31mm×11.41mmだ。ケースサイズにそれほど大きな差がないのは、ミニッツ・ア・リドーのカーテンによる厚みが如何に薄いかを物語っている。

ジャガー・ルクルトが特許を取得したトレビュシェットハンマー(右上)。

 現代のリピーター技術では、チタンやサファイアクリスタルに直接チャイムを取り付けた時計など、さまざまな選択肢が展開されているが、PG製ケースのリピーターは、視覚的にも音質的にも(少なくとも伝統的には)非常に魅力的だと考えられる。

 私にとってリピーターとは、ハイコンプリケーションのなかでも最もロマンティックな存在だ。永久カレンダーやラトラパンテクロノグラフとは異なり(トゥールビヨンも同様だが、後者は技術的には複雑機構ではなく調速装置だ)、工業化が進まなかったのは、その複雑さのためでもあるが、優れた音質と心地良いテンポを得るためには、非常に熟練した職人の手仕事が必要不可欠であるという事実が立ちはだかるためでもある。レベルソ・トリビュート・ミニッツリピーターは、レベルソのアール・デコ調のエレガンスと相まって、美しい歌姫のような印象的な声を奏でるのだ。

レベルソ・トリビュート・ミニッツ・リピーター:ケース、ピンクゴールド、サイズ:51.1mm×31mm×11.41mm。30m防水。ムーブメント、ジャガー・ルクルト製Cal.944、手巻き、35時間パワーリザーブ、ミニッツリピーター、2つのダイヤルに時・分表示。ブラウンのアリゲーターストラップ。世界限定10本、価格:25万ユーロ(参考価格、約3586万円)。

Photos, Tiffany Wade; Video, Shahed Kadesh