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In-Depth ロレックス 6062 トリプルカレンダームーンフェイズがヴィンテージロレックスイチのスターであり続ける理由

この秋のオークションに、私の大好きなロレックスリファレンスが5本出品されたため、深く掘り下げるのに絶好の機会となった。

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ロレックス 6062 トリプルカレンダームーンフェイズは、スポーティとエレガンスを究極的に表現している。ベースラインで宙に浮くロジャー・フェデラー(Roger Federer)か、アダム・スコット(Adam Scott)のバックスイングのようだ。8171と並んで、唯一ムーンフェイズを搭載したヴィンテージロレックスであり、防水オイスターケースに複雑な自動巻きムーブメントが入れられた唯一の例でもある。これまでに作られたロレックスのなかで最も美しい時計であり、実際、私が“美しい”という言葉を使いたいと思った、数少ないロレックスの時計のひとつだ。ロレックスは1950年に、堅牢なテクニカルウォッチメイキングとシンプルで美しいデザインを組み合わせた、スポーツエレガンスという形を完成させた。

 金色のサブマリーナーやオイスターポール・ニューマンがもっと話題に上るかもしれないが、6062とその控えめな36mmのオイスターケースは、今でもロレックス史上最も収集価値のある腕時計のひとつとしてこっそりと残っている。数百例も世に出ていないため、今後もそれが変わることはないだろう。

rolex 6062 auction in 2023

ふたつのジュネーブ・オークションに出品された2本の6062。クリスティーズではピンクゴールド製の“ステッリーネ”が、フィリップスではステンレススティールの個体が出品された。

 このオークションシーズン中、おかしなことが起こった。10月から11月にかけて、5本の6062が出品されるのだ。ということは、オークションに出品されるそれぞれの例を見る前に、私のお気に入りのヴィンテージロレックスのリファレンスを深く掘り下げ、その不朽のコレクション性を理解するのに最適なタイミングだということだ。

 この記事のために、私は2000年以降に販売された6062の100以上の例をデータとして蓄積した。そのデータはこちらから閲覧可能だ。これは絶えず更新される資料であり、各リンクをクリックすると、サービスダイヤルの種類、オークションの結果、そして最も重要なこととして、6062がいかに美しいかを知ることができる。


まずロレックス 6062とは?
rolex 6062 moonphase in steel
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 1950年のバーゼルフェアで発表され、1953年まで生産されたロレックス 6062は、36mmのオイスターケースに入ったトリプルカレンダームーンフェイズである。ロレックスがデイトジャストを発表し、複雑機構を試み始めた直後の50年代初頭に誕生した、堅牢かつエレガンスな、奇妙で美しい組み合わせである。まもなくサブマリーナー、エクスプローラー、GMTマスターなどのシンプルでスポーティな腕時計に注力するようになる。8171と6062のあと、ロレックスは1956年に豪奢なデイデイトを導入し、これがハイエンドのカレンダーモデルとなった。2017年にチェリーニ ムーンフェイズが投入されるまで、ロレックスのムーンフェイズを再び目にすることはなかった。

 スターン・フレール(Stern Frères)社が製作した6062のダイヤルは、外側の日付トラックと曜日・月のウィンドウを備え、トリプルカレンダーの情報を明確に伝える。コンディションがいいものは、曜日・月のウィンドウにまだ鋭い傾斜が残っている。これらのエッジは、ダイヤルが再仕上げされると失われる可能性があるのだ。以下では、6062の6つのダイヤルタイプについて詳しく見ていく。なおムーンフェイズは、パテック フィリップのカレンダーモデルで見られるようなブルーエナメルのシャンルベ仕上げで、モナ・リザのような微笑みを浮かべたムーンマンが描かれている。

rolex 6062 moonphase

6062、ブルーエナメルのシャンルベ・ムーンフェイズ。

 6062のオイスターケースはイエローゴールド、ピンクゴールド、ステンレススティール製があり、イエローが最も一般的だった。私が調査した100本以上のサンプルのうち、約3分の2はYG製で、残りの生産はPGとSSで均等にわけられている。生産量の見積もりはまちまちだが、オークションに出品された6062はわずか数百本である。この時計の代表的な存在である、トルテラ&サンズ(Tortella & Sons)社の調査結果を引用したカタログ(例えばこちらこちら)では、YG製が300~600本、PG製が180本と推定されている。高く見積もっても、Ref.6062の全金属の合計生産量は1000本を下回ることになる。

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6062、“バオ・ダイ”。2017年に、500万ドル(当時の相場で約5億6080万円)という記録的な価格で落札された際、詳しく紹介した

 これまでにオークションで落札された最も高価なロレックスは、Ref.6062である。それは黒い文字盤とダイヤモンドインデックスを特徴とする、“バオ・ダイ”モデルであり、これは1954年にベトナム皇帝がジュネーブに滞在しているなか、王室御用達のショッピングでこれを購入したことに由来する。2002年に初めてこの(トップ)タイトルを獲得し、37万スイスフラン(当時の相場で約2980万円)で落札されたが、2017年に再びこのタイトルを獲得し、506万スイスフラン(当時の相場で約5億7645万円)で販売された(なおポール・ニューマン“のポール・ニューマン・デイトナ”が、その数カ月後にこのタイトルを回収した)。


ロレックス 6062の異なる種類の文字盤
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6062の6つのダイヤルタイプ。Image: Courtesy of Monaco Legend

 6062には6種類のオリジナルダイヤルがあり、それはインデックスで容易に識別できる。イタリア語で“小さな星”を意味するステッリーネというスターダイヤルは2世代ある。ひとつは星の中に夜光が入ったもので(ダイヤルサプライヤーであるスターン社はダイヤルタイプ755と表記している)、もうひとつは星の外側に夜光のドットがあるものだ(ダイヤルタイプ453)。一般的なステッリーネのほかに、ダガー、エクスプローラー(3および9のアラビア数字)、ピラミッド(または“エジプシャン”)、トライアングルのダイヤルタイプがある。

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ステッリーネダイヤルのタイプ1(755)とタイプ2(453)。前者は星のなかに、後者はその周囲に配置された夜光に注目。Images: Christie's and Phillips

 希少なブラックダイヤルを除き、6062にはツートンカラーのシルバーダイヤルが採用されている。文字盤中央にはマットなグレイン仕上げが施され、木目のような質感を与える一方、周辺の日付トラックは滑らかに見える。これらの文字盤は、経年変化とパティーヌによってツートンの性質が協調されているため、50年代に誕生したときは、もっと均一だったのかもしれない。例えば、保存状態のいい6062 “ダークスター”の文字盤では、ふたつの色調を見分けるのは難しい。

rolex 6062 dial

6062のツートーン文字盤で、中央はマットなグレイン仕上げ。

 これは、6062にサービスダイヤルがあるのか、あるいはリファインされたのか(多くはリファインされている)を見分けるひとつの方法である。それがワントーンとして表示される場合は、完全なオリジナルではない可能性が高い。そういえば私たちは過去に、夜光の加工を施した6062ダイヤルを取り上げたことがあるが、超大型の夜光のドットのおかげで識別は簡単だった(思い起こせば、このPGのステッリーネは数年後に再び市場に出回り、見た目も大きく変わって高値で取引されていた)。

具体的な構成よりも、コンディションが重要です。現実には、完璧なコンディションのものがあれば、それはまた別のものなのです。

– レミ・ギルマン(REMI GUILLEMIN)、クリスティーズ・ヨーロッパ時計部門長

 おそらく、サービスダイヤルを見分けるのに最適な判断材料は、6時位置のサインだ。一般的なルールとして、SS製の6062には“Swiss Made”のサインが必須で、金無垢の6062には“Swiss”のみのサインだけでいいが、エクスプローラーダイヤルがある金無垢の6062には、“Swiss Made”と刻印されたものもある。サービスダイヤルには“T Swiss T”とサインされることがあるが、これは6062が製造中止になったずっとあとの60年代に移行した発光素材、トリチウムがダイヤルに使われていることを示している。

rolex 6062 service dials

6062のサービス、またはリファインされた文字盤の3つの例。いくつか分かることがある。 いずれもツートン仕上げが失われていること、6時位置に誤ったサイン(T Swiss T、none、“Swiss Made”)があること(金無垢エクスプローラー以外の6062では“Swiss”のみであるべき)、日付の印字が全体的に雑でぞんざいであること。また、各ムーンフェイズを囲むセコンドトラックは、オリジナルの文字盤に見られるものとはすべて異なっている。6062以外のヴィンテージロレックスであっても、リファインされた文字盤を見分けるにはこれらの点に注意する必要がある。

 ピラミッドダイヤルは6種類のなかでは最も希少で、最後のケースシリアル(911,xxxと、942,xxxで始まる)でしか見られなかった。2種類のステッリーネダイヤルが最も一般的なようで、調査対象となった6062のほぼ半数で見られた。エクスプローラーダイヤルは通常、SS製の例に見られるが、いくつかはゴールドケースに入っているものもある(そのなかにPGの個体も3本ある)。

rolex 6062 stelline dark star

6062、“ダークスター”のステッリーネダイヤルは、一部の専門家のあいだでは最も保存状態がいいと言われている。

 タイプ1 ステッリーネ(755)は、タイプ2 ステッリーネ(453)よりも一般的なようだ。ダイヤルタイプ755はすべてのケース種類で見つかるが、ダイヤルタイプ453は最初の2種類(シリアル690,xxxと788,xxx)でしか見られない。

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10月21日、モナコ・レジェンドで26万6500ユーロ(日本円で約4207万5000円)にて落札されたピラミッド、別名“エジプシャン”ダイヤルの6062。

 最も希少な6062はブラックダイヤルで、私は7本を記録した。これらのブラックダイヤルのうち、3つは、バオ・ダイのようなダイヤモンドインデックスを備えていた。この記録的な6062は、ダイヤモンドインデックスが奇数ではなく偶数になっていることで、ほかとは一線を画している。ツートンカラーのシルバーダイヤルとは異なり、ブラックラッカーで統一され、ムーンフェイズもブラックで統一されている。

rolex 6062 black dial

6062の希少なブラックダイヤルに、それぞれダイヤモンドとステッリーネインデックスを配したもの(ステッリーネのブルームーンフェイズはサービスで交換されたと思われる)。このダイヤモンドモデルは、2004年に46万9700スイスフラン(当時の相場で約4090万円)で落札されている(!)。Both images: Antiquorum


6062のオイスターケース

 カレンダーの複雑さと防水オイスターケースの組み合わせが、6062を美しくも相反するモデルにしている。8171はスナップバックケースが大きいが、6062はデイトジャスト、エクスプローラー、デイデイトのケースに似ている。ロレックスが革新的な新しいオイスターケースのなかにカレンダー(“パーペチュアル”自動巻きシステムと対の組み合わせ)を搭載しようとしていたことには驚かされる。

 1953年はロレックスにとってターニングポイントの年だ。6062(および8171)の生産を終了し、サブマリーナーやエクスプローラーといった、今日のブランドを位置づける真のスポーツウォッチを発表した年でもある。もちろん、私たちがこのブランドを愛する理由はたくさんあるが、1950年代のロレックスには、複雑機構とオイスターケースの組み合わせという、まだ解明されていない魅力がある。

rolex brevet crown

年式によっては、6062はツインロックリューズで発見できる。

rolex super oyster crown

あるいは“スーパーオイスター”のリューズで。

 SS製の6062ケースは、ロレックスの長年のSS製オイスターケースのサプライヤーであるスピルマン(Spillman)社によって製造された。金無垢ケースは、1998年にロレックスが買収した有名なブレスレットメーカー、ゲイ・フレアー(Gay Frères)のケース製造部門であるジェネックス(Genex)によって製造されたもので、これは裏蓋のなかにあるメーカーマーク12から識別できる。あるオークションカタログで、ツートンカラーの6062ケースが製造される可能性を示唆する記事を読んだことがあるが、これはまだ噂にすぎない。

 6062のシリアルナンバーは明確に種類分けされており、ヴィンテージロレックスの時計がどのようにより一般的に生産されたかを示している。6062のシリアル範囲は、690,xxx、788,xxx、911,xxx、916,xxx、942,xxxである。1950年のバーゼルフェアで6062が正式に発表される2年前の1948年に、奇妙なプロトタイプも作られている。

 さらに6062には2種類のリューズがある。最も一般的なのはスーパーオイスターであり、ツインロックリューズを持つものもある。


6062のトリプルカレンダーキャリバー
rolex 6062 triple calendar caliber 655

 Ref.6062の内部には、このモデルのために開発されたロレックスの自動巻きCal.655があり、スーパーバランス9.75とも呼ばれている(これは9¾リーニュのキャリバーにちなんでいる)。ベースムーブメントには、17個または18個の石(税金が高くなるため、米国市場の例でよく見られるのは17)があり、カレンダーモジュールが追加されている。

 各ムーブメントはクロノメーター認定を受けており、文字盤の12時または6時位置にそれが表示されているようだ。


ロレックス6062のコレクション性

多くの場合、コレクション性、希少性、美しさは一致している。(パテックの)ピンクオンピンクの1518は信じられないほど美しく、また信じられないほど希少であるため、4つのSSの例に次いで最もコレクターの多い、1518のバリエーションだ。

 これは6062には当てはまらない。第1に、コレクターは特定のダイヤルやケースのバリエーションよりもコンディションを優先する。“コンディションは新たな希少価値である”というのは最近よく言われる格言であり、6062ほど当てはまるものはない。これらの時計は何世代にもわたって売買され、収集され、手が加えられてきた。ケースが磨かれていたり、リフィニッシュされていたり、サービスダイヤルがあったり、ほかの方法で台無しになっているケースも多い。文書化可能なオリジナリティと来歴を持つものは、ますますまれになっている“市場に出たばかりの”例は、最もエキサイティングな6062であり続けている。

In-Depth: ロレックス ステンレス製のヴィンテージRef.6062

2017年、エクスプローラーダイヤルを備えた別のSS製6062がオークションに出品された。カーラ・バレットはこのオークションで、捉えどころのない6062のSSモデルについて、深く掘り下げている

 ジュネーブ・クリスティーズ時計部門の責任者、レミ・ギルマン(Remi Guillemin)氏は「具体的な構成よりも、コンディションが重要です」と話す。クリスティーズに在籍しているあいだ、彼は重要な6062をいくつも見てきた。例えば、ダークスター(“鳥肌が立ちました”と彼は言った)を販売し、今年11月には以前ベスーンのコレクションだったピンク ステッリーネ 6062を販売する予定である。

 「普通のSS製よりも、ミントコンディションのYG製6062のほうがいいです」とギルマン氏は付け加えた。

 SSとPGの例は、YGよりもかなり少ない(私の調査ではほぼ同数であった)。どちらも数百万ドルのオークション結果を達成しているが、SSの例は一般に、このレベルでは現実的な問題が重要であるかのように、その着用性の高さから本物の聖杯と見なされている。メガコレクターのジェイソン・シンガー(Jason Singer)氏とジョン・ゴールドバーガー氏(パート2)によるTalking Watches記事で、私たちはその2ペアを見てきた。ゴールドバーガー氏の例は2017年に出品され、580万香港ドル(当時の相場で約8350万円)で落札された。素晴らしい状態のエクスプローラーダイヤルは、今年11月にフィリップスで発表されたSS製モデルを比較するにふさわしい。

rolex 6062 stainless steel

ジェイソン・シンガー氏とのTalking Watchesより、ロレックス 6062。

 一方、ステッリーネダイヤルはより一般的であるが、コレクターの想像力を刺激し続けている。ギャラクシー以外にもロレックスは文字盤に星を入れなかったが、その結果、魅力的でロマンチックな文字盤が、なぜか頑丈な防水ケースに収まっている。これほど紛らわしく魅力的な時計はほかにない。だからこそ、最高のステッリーネ 6062が最大の成果を上げているのだ。


6062の最上位モデルとそのオークション結果

 ここから、今日の記事の定量的な部分に移る。6062は状態が非常に重要であり、70年前の時計だと大きく変化する可能性があるため、オークションの結果もまちまちだ。ちょうど昨年、リダイヤルされたものが5万3340英ポンド(日本円で約970万円)と、201万6000香港ドル(日本円で約3860万円)で落札された一方で、オリジナルの文字盤は100万ドル(日本円で約1億4980万円)の高値がついている(この2本の例はよく見られるサービスダイヤルだ。間違った“Swiss Made”、ずさんで雑な日付トラック、ツートンのテクスチャーが失われている点に注意だ)。

 バオ・ダイの500万ドル(当時の相場で約5億6080万円)という結果以外に、オークションに登場した6062のなかで、最も成果の大きかったものをいくつか紹介する。


最もセクシーな1本、“ブラックスター” 6062
rolex 6062 "dark star" moonphase

2018年に157万ドル(当時の相場で約1億7340万円)で落札された、6062 “ダークスター”

 このYG製Ref.6062は、ケースに独特のパティーヌがあることから、“ブラックスター”の愛称で親しまれている。最初にオークションに登場したのは2011年で、それは54万2500ドル(当時の相場で約4330万円)で落札された。ブラックスターは2018年に再び売りに出され、それは157万2500ドル(当時の相場で約1億7365万円)で落札。もともとのオーナーによると、靴下のなかに入れて何年も忘れていたことから、“ザ・ソックス”とも呼ばれている。2011年に初めて登場したときにはオリジナルのロレックスストラップまで付いていた。

 クリスティーズのレミ・ギルマン氏は、これまで見たなかで最高の6062と評し、エドモンド・サラン(Edmond Saran)氏のようなコレクターもそれに同意している。このケースはダース・ベイダーが誇りに思うようなパティーヌを形成しているが、シャープかつオリジナリティあふれるラインを保っている。文字盤も手付かずで、まさにお手本どおりだ。


最も希少な1本、ピンクゴールド エクスプローラー ダイヤルの6062
pink gold rolex 6062 moonphase

PG製エクスプローラー(ダイヤルの)6062が最後にオークションに登場したのは2022年のことで、210万6000ユーロ(日本円で約3億3340万円)で落札された。

 単に希少性で測ると、エクスプローラー文字盤が付いたPG製6062が、究極の6062である。市場で知られているのは3本のみで、販売するたびに大きな話題となる(2本はオークションに登場し、3本目はゴールドバーガー氏著の 『100 Superlative Rolex Watches』に収録されている)。

 この個体は過去10年間のうち2回落札されており、その2回とも大きな成果を上げている。最後にこのPG製6062が出品されたのは、2022年4月のモナコ・レジェンドオークションのことで(結果は210万6000ユーロ、日本円で約3億3340万円)、そのときディーラーのダヴィデ・パルメジャーニ(Davide Parmegiani)氏が、現存するピンクエクスプローラー 6062の中で“最高”と称してカタログに書き残している。これと同じ6062が最初に出品されたのは2015年で、フィリップス・ジュネーブオークションにて100万1000スイスフラン(当時の相場で約1億2600万円)で落札されて話題となった。


最も有名な1本、ベスーンコレクションより ピンク ステッリーネ 6062
rolex 6062 stelline

以前はゴードン・ベスーン(Gordon Bethune)のコレクションであったステッリーネ 6062が、今年11月のクリスティーズ・ジュネーブオークションに出品される。オークションに出品されるのは、2012年以来3度目となる。

 最後に、90年代にコンチネンタル航空のCEOを務めた著名な時計コレクター、ゴードン・ベスーンがかつて所有していたピンク ステッリーネ 6062を紹介。この6062は、2012年に初めてオークションにかけられ(59万500ドル、当時の相場で約4710万円で落札)、2018年に再び出品されたものだ(190万スイスフラン、当時の相場で約2億1460万円で落札)。

 ベスーンの6062は、11月にクリスティーズ・ジュネーブで開催されるオークションに再び出品される。過去5年間、この時計はモハメド・ザマン(Mohammed Zaman)氏が有していたが、彼は自身のコレクションを大規模なシングルオーナーセールで売却する予定だ(こちらで取り上げている)。クリスティーズのギルマン氏は、ダークスターの次に保存状態のいい6062だと語っている。

 ベスーンの6062は、過去数年間に高額で販売されたあと再び出品される、数多くの時計のひとつである。市場が減速しているため、2018年の実績を上回るのは難しいかもしれないが、特別な時計であることには間違いない。

 例えば星やダイヤモンドのついたブラックダイヤルなど、より多くの6062に最上級の言葉を贈ることもできるが、ベスーンの6062 からこの秋のオークションに出品されるモデルについての議論が始まるため、ほかの4本もまずは見てみよう。


この秋、5本の6062がオークションに出品される

 ベスーンのピンク ステッリーネを含む、5つのRef.6062がこの秋のオークションに出品される。過去25年間のオークションを調査すると、2006年のモンダニコレクションの販売以来、1シーズンで最も多く出品されていることがわかった。さらにそれぞれの例は、本物のダイヤルを特徴とする異なる6062バリエーションであった。この記事の公開日時点ではふたつの例が落札されている。セール順に、5つのロットのリンクを掲載しよう。


サザビーズ・香港のイエロー ステッリーネ 6062 “ニシキ・スター”

 6062の大騒ぎは、10月初めのサザビーズ・香港にて406万4000香港ドル(日本円で約7785万円)で販売された、このイエロー ステッリーネ 6062から始まった。サザビーズによると、この時計は1955年にビジネスパートナーから譲り受けた元の所有者の家族から直接譲り受けたものだという。オリジナルオーナーがこの時計を着用している写真も提供されている。

 ただおもしろいストーリーが好きなだけかもしれないが、“ニシキ・スター” はオークションに出品されている6062のなかでいちばんのお気に入りだ。前述したように、現在では市場に出たばかりの6062を見つけるのはますます難しくなっている。この時計を実際に装着しているオリジナルオーナーの写真と一緒に登場させるのは、信じられないほどエキサイティングなことだ。

 オークションに出品された時計が(往々にして)あまりにもよすぎると思われることもあるが、ニシキ・スターにその雰囲気はない。明らかにケースが瘦せていて、文字盤には均一なパティーヌまであり、ジュビリーブレスレットはジャラジャラとついている。完璧な例には程遠いが、それが私が好きな理由のひとつなのだ。


モナコ・レジェンドのイエロー 6062 “エジプシャンダイヤル”

 続いて10月21日にモナコ・レジェンドで販売された、YG製の6062、ピラミッドダイヤルモデルだ。文字盤にはエイジングにより黒ずんでいる夜光ドット、擦れ、パティーヌがみられる。しかしケースはシャープさを保っており、ラグの裏にはホールマークまである。20万ユーロから40万ユーロ(日本円で約3170万~6335万円)と見積もられていたが、比較的控えめな26万6500ユーロ(日本円で約4220万円)で落札された。私が集めたデータベースを見ると、ここ数年でこれほどの値段で販売されたリファイン・サービスダイヤルがいくつかある。それらに比べれば、この例は素晴らしくお買い得だった。また、ステッリーネダイヤルの美しさはコレクターに高く評価されているが、これらのピラミッドダイヤルはシルバーのツートンカラーのバリエーションのなかで、最も希少であることを忘れてはならない。


フィリップス・ジュネーブのSS 6062 “エクスプローラー”

 フィリップスはニックネームをつけるのが大好きで、彼らはこのSS製エクスプローラー 6062を“ニュー・スタンダード”と名付けている。この時計は市場に出たばかりで、5月に記録を更新したミルガウス 6541のように、どこからともなく現れた。時計のすべてが正しいだけでなく、新品同様にも見える。エクスプローラーダイヤルには経年変化は見られず、オイスターケースもポリッシュされていないようだ。

 あのミルガウスのように、この6062が同リファレンスの記録を塗り替えても不思議ではない(バオ・ダイは別として)。そして例のミルガウスのように(そして5月のオークションでロレックスが落札した2本の時計のように)、フィリップスのロット12にハンマーが下ろされるとき、ロレックス自身が札を上げていてもなんら不思議ではない。

補足: フィリップスは6062について自身の記事で、ロレックス 6062よりもパテック 1518と2499のほうが多くオークションに出されていると述べている。パテックは1518を281本、2499を349本生産しているので、この事実が、6062がいかに希少であるかを物語っている。


フィリップス・香港のイエロー ステッリーネ 6062

 最後にフィリップス・香港では、イエロー ステッリーネ(タイプ1)6062がセールに出される。このイエロー ステッリーネは、2016年のフィリップス・香港にて510万香港ドル(当時の相場で約7145万円)で落札されたのが最後である。当時の写真と今年の画像を比較すると、この7年間でかなり変色したようだ。このモデルが2016年に落札されたとき、フィリップスはこれは市場に出たばかりで、ジュビリーブレスレットさえもこの時計のオリジナルだと述べていた。

 今回、フィリップスは70万5000~141万ドル(日本円で約1億560万~2億1115万円)と見積もっている。これは10月にサザビーズで販売された“ニシキ・スター”(日本円で約7785万円)と、同等のコンディションの個体を提供しているようだ。このふたつのイエロー ステッリーネを並べて見ると、特にダイヤルの保存状態がよく、より高い見積もりをつけた理由がわかる。


ビッグ・スター 6062の次なる展開
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 2002年と2017年の2度、バオ・ダイモデルはオークションで落札されたロレックスのなかで最も高価なものとなった。少なくとも8本の6062がオークションで100万ドルの大台を超えており、この秋のオークションにやってくる残りの3本も、記録的なSSの例に導かれてまもなくその仲間入りを果たすかもしれない。

 60年代と70年代のスポーツウォッチは、今日のコレクションの話題の多くを占めているかもしれないが、6062のスポーティさとエレガントさの完璧な組み合わせは、何世代ものコレクターに変わらぬ魅力を与えている。ここ数年の時計収集の成長に伴い、新しいカテゴリーの時計がコレクターズアイテムとして注目されるようになった。しかし、この成長とともに6062のようなクラシックさを忘れないでいて欲しい。


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