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Photos by Mark Kauzlarich
ジュネーブでのオークションシーズン前、誰もが抱いていたと思われる大きな疑問のひとつは、ロレックス ミルガウスに本当に100万ドルの価値があるのかということだった。というのも、フィリップスオークションにブラックハニカム文字盤を備えた珍しいミルガウス 6541が出品されていたのだ。それはたしかにとても素敵なものだったが、フィリップスがつけた見積もり額に匹敵するほどの“とんでもない額のロレックス”という記録を打ち立てることができるのだろうか?
最終的にこのミルガウスは、224万スイスフラン(日本円で約3億4305万円)で落札。2013年に記録したミルガウスの最高値である31万7000スイスフラン(当時の相場で約3340万円)という結果を大きく伸ばす結果となった。ミルガウスの記録はこの週末に達成された、いくつかのロレックスの高額落札記録のうちのひとつに過ぎない。例えばサザビーズでは、金無垢の6241、“ジョン・プレイヤー・スペシャル”が223万スイスフラン(日本円で約3億4155万円)で落札され、フィリップスでもダイヤモンドをセットした6270が369万スイスフラン(日本円で約5億6515万円)で落札されている。オークション市場のすべてのセクションがそれほど好調をふるったわけではなかったが、これらの記録的な結果は、トップコンディションの希少な時計への関心、特にある落札者からの関心がこれまでになく高いことを示している。
オークションに出品された衝撃のロレックス
オークションはロレックスやパテックが中心である。過去3回のライブオークションの全ロットのうち、57%をこのふたつのブランドが占めていた(なおクリスティーズで開催した“アート・オブ・F.P.ジュルヌ”セールに出品された39本の時計は含んでいない)。そして今年はロレックスづくしとなった。
この記録的な結果よりも興味深いのは、(これらの時計を落札した)勝者の存在だ。それはロレックスである。ロレックスの代表者がこの週末中ずっとオークション会場にいて、記録的なミルガウス、JPS、6270のほか、少なくともほかに2ロット、計5ロットを落札したのである。その2本とは、57万1000スイスフラン(日本円で約8740万円)で落札したピンクゴールドの“ジャン=クロード・キリー” 6036と、17万7800スイスフラン(日本円で約2725万円)で落札したGMTマスター “キャプテン ウォーレン”である。
ミルガウス、JPS、6270、キリーはそのコンディションのよさから、そしてキャプテン ウォーレンはその来歴から、この5つのロットはすべて紛れもなく特別なものだった。キャプテン ウォーレンは1950年代のロレックス GMTマスターの広告に登場し、その後オリジナルオーナーの家族によってサザビーズに持ち込まれた個体である。ミルガウスは今まで見たもののなかでいちばん素敵だと、ほぼ全員が賛同していて大差をつけた。ケースはナイフのように鋭く光り、ハニカムダイヤルは元のままで、付属品もほとんど揃っている状態だ。
このモデルはあまり人気がなく、1019に取って代わられた1957年から1960年までしか生産されなかったため、ロレックスは6541を200本ほどしか生産しなかったとされている。確かにオリジナルのミルガウスはニッチな時計であり、おそらく今後もその位置付けは変わらないだろうが、しかしこのモデルを手にしたことで、ミルガウスを“聖杯”と呼んでいる人たちがいる理由がよくわかった。強い面取りを施した38mmの控えめなケースに、豊かなハニカムダイヤル、そして回転ベゼルを備えるなど、ヴィンテージロレックスに求められているすべてを備えているからだと。
また記録的なJPSは、最高品質のコンディションに対する需要が高いことを示している。この例は約250万ドルで落札されたが、アンティコルムに出品されていた別のJPSの例はあまりいい状態を保っておらず、販売には至らなかった。これまで以上にコンディションこそが真に重要なポイントなのだ。
最後に先週行われたプレビュー記事で記録的な6270を取り上げたが、繰り返しにはなるものの、この時計は史上最もクールな時計のひとつだ。何の変哲もないバルジューを搭載した手巻きクロノグラフに、このレベルのダイヤモンドをセッティングしただけ? 正気の沙汰とは思えない。またこの個体の金無垢ブレスレットには派手にパティーナもついている。
もちろん、ロレックスは博物館を持たないが(まだか?)、最近のオークションにおける活動は、ロレックスが自社の遺産や歴史に関心を持ち続けていることを物語っている(ロレックスは昨年の11月にも数ロット落札している)。そしてロレックスは新型デイトナを発表すると同時に、いくつかのデイトナをWatches & Wonders内に(歴代デイトナを振り返るスペースを)展示していた。このモデルには過去のデイトナへの明確なオマージュがいくつかある。ロレックスの公開入札は見ていてワクワクするものだった。ときにはオークショニアとブランドの代表者がアイコンタクトし、互いにうなずくだけで次の入札が入ったこともあった。それは控えめな行為だったことは確かだが、わかる人が見ればすぐにわかるものだった。
そのほか、最高のコンディションを維持していたロレックスの時計も好調だったようだ。アンティコルムでは真のニューオールドストック状態の金無垢の6263が31万2500スイスフラン(日本円で約4790万円、エスティメートは20万スイスフラン~30万スイスフラン)で、プラチナ製のコーラルダイヤルデイデイトは32万7600スイスフラン(日本円で約5020万円、エスティメートは10万スイスフラン~20万スイスフラン)で落札されるなど、ロレックス(それとピアジェ)の宝石をふんだんに使用したものとステラダイヤルの多くがリードする形で取引されていた。
ただすべてのロレックスの時計がこれほど好調だったわけではない。一部から真偽を疑問視する声もあった、裏蓋にハンジャルの刻まれたゴールドの6269は、クリスティーズで110万スイスフラン(日本円で約1億6835万円)で落札され、指標を下回る結果に終わった。
しかし、ブランドそのものを頂点とする入札に後押しされ、ヴィンテージロレックス市場は好調を維持し続けている一方で、モダンウォッチは低迷を続けている(なかにはいまのセラミック製デイトナが5万ドル/日本円で約690万円 で売れているものもあるが、それでも納得のいかない結果もあった)。
ジュネーブで行われたオークションの全貌を紹介するフォトレポートなど、今後もオークションに関する情報をお届けしていく。
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