人の心の複雑さを歌った代表作「いけないアナタ（I Hate Myself For Loving You）」の中で、心模様を最も有能かつ叙情的に表したジョーン・ジェットは、「毎晩毎晩、あなたのことを考えている／あなたは私の心を奪い、私のプライドを奪った」と辛辣な言葉で言っている。まさにHODINKEEのエディターである我々と、我々が夢中になるのを止められないWatches & Wonders（またはその他の）の時計たちのことを言っているようだ。
耳の中でこだまし続ける時計とでもいうべきか、彼らは我々の頭の中に潜り込み、脳内にスペースを確保してしまった。我々は意に反してそれらを好きなのだ。それらの時計は、自分の知る（または知っていると思っている）自分の性格に基づけば、少なくとも嫌悪感を抱くか、最悪の場合は大嫌いになるはずの時計なのに。その時計たちは紛れもない魅力を放っている。今回は読者の皆様に、我々の頭から離れないWatches & Wonders で出会った時計たちをご紹介しよう（忘れようと努力はしたのだ）。
黄色だ。すごく黄色い。そして、ウブロ。この2つの要素は、単独では私の興味を引かない。でも一緒になると？ 認めざるを得ないが、私はそれに夢中だ。 ビッグ・バン ウニコ イエローマジックと名付けられたこのモデルは、ウブロのトレードマークであるハイライトカラーで表現された、堅牢なセラミックのシチューのようなものだ。正直なところ、ジェームスの記事に掲載された最初のプレスイメージから目が離せなかった。Watches & Wonders Zoomの見過ぎで疲れた私の目は、そのセンセーショナルな太陽の美学にすっかり魅了されてしまった。
セラミック表面のシンプルな光沢は、今回初めて鮮やかなカナリアイエローで提供され、内部の自社製HUB 1280自動巻きフライバッククロノグラフムーブメントを見せるスケルトンのダイヤルの完璧なフレームとなった。私のお気に入りのディテール？ アワーインデックスと針のアウトラインに施されたイエローのステンシルがシームレスにマッチしているところだ。この夏、限定の250本が、私と同様に魅了された他の人たちに買われてしまう前に、イエローマジックの実機を見たいと願っている。
この4、5年、時計業界に注目してきた人なら、今回のWatches & Wondersで H.モーザーから何か話題があることを知っていた。たとえ今年の話題のモーザーがショーよりも先に発表したとしても、技術的に言えば、今年最大のトレードイベントに向けて、モーザーのことが頭に浮かぶような仕掛けになっていた。パリを拠点とするヴィンテージウォッチのモデレーター兼“ハンド・スワップ”と呼ばれるseconde/secondeのマスターとのコラボレーションは、本物のスイスのチーズで作られた時計のようには、それほど突飛なものではないが、それでも私の心を捉えて離さない。常識的に考えれば、私が所有すべきモーザーは、優れた、そしてパーペチュアルカレンダーの基準ではかなり控えめなエンデバー・パーペチュアルカレンダーである。しかし、私の頭から離れないのは“消しゴムウォッチ”だったのだ。
紙の上では、私が長い間、聞いたことのなかったような最悪の時計のアイデアのように聞こえる。全く訳が分からない - シルバーは、宇宙の歴史の中で、ダイバーズウォッチに最も適していない金属だ。ゲルマニウムとシルバーの合金であるアルゲンティウムのように変色に強いものもはかなりの確率で防ぐことができる。が、それでもせいぜい楽観的に言った場合だ。それに加えて、シースルーバックなのだ。私はどの価格帯の時計でもシースルーバックの大ファンで、初めて（恐竜が地球を支配していたような大昔に）買ったセイコー5ではローターが回転しているのを見て大興奮したものだが、ロレックスもチューダーもソリッドバックのメーカーだとどうしても思ってしまう（そう、ノースフラッグがシースルーバックであることも知っている）。それなのに、それなのにだ。
私はこの時計に魅力を感じてしまった。ダイバーズウォッチはこうあるべきだという固定観念を意識的に排除しているので、逆に新鮮でオリジナリティが感じられる。また、見た目の美しさも魅力のひとつだ。もし誰かにこの時計のアイデアを売り込まれたら、すぐに却下していたかもしれない...チューダーがそうしなかったことに感謝するし、（シルバー製の）実機が見たくてたまらないのだ。スターリング（＝一級品）の評判に値しないなんて言う人がいるだろうか？
ここで他に何を選べばいいというのか？ ロレックスは探検の旗手であるエクスプローラーをツートンカラーにした（36mmで！）。今回の発売で最も話題になったと言っても過言ではないこのツートンカラーのロレックス エクスプローラーは、ロレックスの中でも最も衝撃的なモデルと言えるだろう。その存在を知ってから、私はプレスリリースの画像を見返していた。見ていて飽きない要素がたくさんあるのだ。最も注目すべきは、ブラックダイヤルにイエローゴールドのコントラスト。そして、YGで囲まれたインデックスや数字が、このモデルの特徴だ。私がツートンカラーを擁護し続けるのは自虐ネタに近いとは思うが、私は私でなければならないのだ。嫌う人はたくさんいるようだが、これはロレックスの中では非常に興味深いモデルであり、良い感じにエイジングしていくことだろう（誰がそんなことを予測できるのか）。ツートンのエクスプローラーを擁護するのは私一人しかいないようなので、このモデルを“ダニー・ミルトン”と名付けることに一票を投じよう。誰か賛成してくれる人はいない？
36mmのロレックス エクスプローラー オイスタースチール＆イエローゴールド Ref. 124273： 114万2900 円（税込）
私は実際にはどの時計も嫌いではない。嫌いという言葉は強烈だ。彼らは時計だ。嫌うべきではないし、それを愛する自分自身をも嫌うべきではない。とはいえ、パネライが時計にリサイクル素材を使用することを促進するために6万ドルを請求するというアイデアには、あまり賛同できない。私の考えでは、このような慣行の標準化を目指すのであれば、この時計をもっと身近なものにするのが理にかなっていると思うのだ。このような不条理は嫌うべきだが、私はこの時計のデザインを愛している。見た目がいい。そして、値段に関わらず、地球を救うことは重要なのだ。
僕はブライトリングファンではありません。というか、少なくともそう思っていませんでした。最近まで、ブライトリングファンというと、いくつかの非常に特殊な人生の選択を思い浮かべていましたが、それらは僕が世界でそうなりたいと思っているものとは一致しませんでした。しかし、ここ数年、CEOのジョージ・カーンと彼のチームはブランドを変革し、クラシックなアビエーターの美しさと真の技術力を復活させ、僕にすべてを問い直させました。この最新作は新型デイトナよりも低価格の見事なスプリットセコンド・クロノグラフで、全てがこの中で一つになり、その上に真の価値を提案しています。あとは42mm×15.35mmのサイズの時計を装着できる手首さえあれば、まだかっこよく着こなせていないレザーのボンバージャケットを着る準備ができそうです。
ブライトリング プレミエ B15 デュオグラフ 42 スプリットセコンド・クロノグラフ SS製 116万6000円 、18Kレッドゴールド製 238万7000円（全て税込）
ローガンに第一候補を奪われてしまったので、これは僕の罪作りな時計として第二候補になりそうだが、このとてつもなくクールで、さらにとてつもなく高価なウブロは、黄色のセラミックには真似できない輝きを放っていると思う（ベイカーさん、賭けてみて！）。元々のニュースについて一晩考えたなら、このウブロは、ケース、ベゼル、ムーブメントプレート、そしてブレスレットにもサファイアを使用しているのだ。ブレスレットにも！ ケースサイズは43mm、ウブロのトゥールビヨン搭載の自動巻きムーブメント HUB 6035を使用し、30本限定だ。価格は 4901万6000円（税込予価） 。私はSS製のスポーツウォッチを愛用しているが、このような時計の純粋な威厳は否定できない。
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