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ペリー・ダッシュ(Perri Dash)は、さまざまな人生を歩んできた。「私は自分を変えることを恐れたことがありません」と、35歳のダッシュはニュージャージーの自宅から教えてくれた。「私は常に成長し、成熟しているのです」。その証拠に、彼の履歴書にはこう書かれている。デヴィッド・ヤーマンのサプライチェーンマネージャーだった彼は(ファレル/Pharrell Williamsのブランド、ビリオネア・ボーイズ・クラブ/BILLIONAIRE BOYS CLUBで働いたあと)、イベント団体を立ち上げアートの世界に入り、自ら収集とショーのキュレーションを行うようになった。「多くの先駆的なアーティストと仕事をしました」と彼は言う。「ミスター・スター・シティの最初のショーは私がやったんです」と。
家庭を持つため一時休養したあと、小売業に転身した。「小切手をもらうために人を追いかける必要もなしにビジネスができるのは、ありがたいことです」と笑う。現在、ダッシュはリスト・チェック・ポッドの主催者のひとりとして働く。彼は動画を含むポッドキャストを配信している。共に運営しているのは親友のラシャウン・スミス、ベン・グラロンである。(正直に情報公開すると、私はゲストとして参加したことがあり、彼らのファンである)。始めた理由は、時計の世界にあるギャップを見たからだ。「最初のアイデアは、時計のレビューとジョー・バドゥン(Joe Budden)のポッドキャストを足したようなものでした」と彼は言う。 「この空間にそのようなものがなかったから、セットアップも非常に意図的に行いました。そして、私たちのような人はこの空間にはいなかったんです。だから、視覚的に表現することは本当に重要だと思いました」
ダッシュは常にコレクターであり続けていて、野球カードからポグ(めんこ)、音楽、デニムまで、彼は常に追いかけ続けてきた。父親が時計を持っており、それは特に古いシチズンだった。しかし、ダッシュがその魅力に取りつかれたのは、ストリートウェアが本格的に普及し始めた頃、ビリオネア・ボーイズ・クラブで働き始めてからのことだ。「ファレルがG-SHOCKを持っているから、私もG-SHOCKを買わなければと思っていたんです」
「好きなものを集めるのが大好きなんです」とダッシュは言う。「私の場合、それに引かれなければならないという自分なりの美学から始まります。そのデザインに何か共鳴するものがなければならないし、何か感情を揺さぶるようなものがなければならない。 そして、歴史を知ることは、私にとって非常に重要なことです。そこから“なぜ”を発見できるからです」
その理由を、彼の時計4本とアート作品1点からご紹介しよう。
彼の4本
チューダー オイスターデイト ref.7962 ヴィンテージ
この時計、60年代のオイスターデイトは、ダッシュにとってちょっとしたこだわりだ。「この頃、私はヴィンテージウェアをかなり集めていたのですが、以前、商品を仕入れていた友人のなかにヴィンテージウォッチを売っている人がいました。 これが私のフィードに流れてきて、売っていたのが彼だったんです。毎日オンラインで見ていて、『やばい、買おうかな?』と思っていました。で、妻にいつも見ていることをバカにされていました。すごいのは、そのクリスマスに彼女が実際にこの時計を買ってくれたことなんです」
特にダッシュは、このモデルのバラのロゴに魅力を感じているようだ。「チューダーというブランドは知っていましたが、バラのエンブレムを使っているブランドについてはあまり知りませんでした。しかし、このモデルは今までに見たものとはまったく違っていました。 このモデルを機に私は歴史に深く入り込み、このロゴとその背後にある王室、チューダー家が与えた着想の重要性を理解しました。私は、この作品に惚れ込んでしまったのです」
ヴィンテージのエルジン スキンダイバー
グリュエンのムーブメントを搭載した70年代のエルジンのスキンダイバーは、ダッシュの今のお気に入りだ(スピードマスターにその座を奪われることもあるが)。オンラインで見て、絶対手に入れたいと思ったという。「ボロボロだし、傷もある。持ち主が本当によく使っていたんですね。使い込まれたジーンズを見るような感覚で、これは手に入れなければと思ったんです」。ダッシュは、もともとエルジンのカクテルウォッチやドレスウォッチを知っているが、このスポーティなモデルにはたいへん興味をそそられた。彼はこの時計を“ストラップモンスター”と呼び、数種類の異なる色のNATOベルトを定期的に交換している。
ダッシュは年季の入ったトリチウム夜光と赤い日付窓を気に入っているが、彼の第二の女性である5歳の娘はあまり気に召さないようだ。「『パパ、これ壊れてるみたい 』って言うんです」
ロレックス オイスター パーペチュアル41mm グリーンダイヤル ref.124300
ダッシュがこの時計を手に入れた経緯や、なぜこの時計を気に入っているのかを説明する前に、彼がつい最近までロレックスを大批判していたことを記しておかなければならない。「私はただ、昔ほど革新的なブランドとは思えなかったんです。 その理由のひとつは、人々がどれだけこのブランドに執着しているか、そして今の状況がそうさせるのだろうと考えたからでした。ここに、どこよりも多くの時計を製造している時計メーカーがあります。しかも、依然として誰にとっても手に入れるのが難しい。でも同時に、ニューヨークの人はみんなロレックスを持っているように見えるんです」。なるほど、理解した。
しかし、この特別な時計が彼の心を変えた。彼は時計そのものも気に入ったが、グリーンの箱に入った時計であったことに心を奪われた。 「箱に入っているのを見たとき、ちょっとワイルドな感じがしました。グリーンの箱のなかに、同じくグリーンのスティール製スポーツウォッチが入っていて、まるで芸術作品のようでした。オイスターのなかのパールです」
この時計にもうひとつの意味を持たせているのは、ダッシュがこの時計を所有することになった経緯である。35歳の誕生日を迎えた直後、ダッシュはグラロンから時計の写真を添付したメールを受け取った。ダッシュは、自分が何をすべきかわかっていた。そして、グラロンとスミスを呼び寄せた。「ADからロレックスを買うと、販売セレモニーがあるんだけど、それを友人2人と一緒にやったのがすごくよかったんです。私が座り、彼らが私の前に座って箱が開けられた。ラシャウンが私を見て、『私たちが何を作ったかわからないけれど、何かを作ったんだ』と言ったんです。それは本当に感動的な瞬間でした」
オメガ ムーンスウォッチ マーズ ref.SO33R100
ダッシュは、これまでのコレクション人生のなかで、新作の発売を待って行列に並んだことは一度もなかった。そして、ムーンスウォッチがやってきた。彼は友達と一緒に朝の4時から並んだが、結局手ぶらのまま終わった。ダッシュは楽しい経験をしたと思い直し、日々を過ごしていた。ある日、妻が出勤途中にスウォッチショップに並んでいる人を見かけた。「彼女は私に電話してきて、『あれがあるみたいよ 』と言いました」。しかし、従業員が出てきて、ムーンウォッチはないことを告げられたのだ。
ダッシュの妻が、いつ再入荷するか見に行ったところ、女性が、午前11時にまた来るように、と教えてくれたそうだ。「それで彼女は午前11時に戻ってきてその女性のところに駆け寄り、『ねえ、また来るように言われたんだけど』と言いました。女性は『どれがいいですか?』と尋ね、奥へ行きスウォッチのバッグを持って出てきました。なかにはムーンウォッチが入っていたんです」。妻はダッシュにマーズを買ってきてくれたのだが、彼女はジュピターが欲しいというので、数日後、彼はまた店に行った。 ダッシュは時計のお返しをしたわけだ。
もうひとつ
ロス・マレー(Ross Murray)による「サン・ラ」限定版ポスター
ダッシュのリビングには、義理の母から贈られたアーティスト、ロス・マレーの限定版ポスターが飾られている。ポスターには、アートへの興味とジャズの奇才サン・ラ(Sun Ra)への憧れが見事に融合している。「ブルックリンのBAM(ブルックリン・アカデミー・オブ・ミュージック)でこの映画を見て、彼に夢中になりました。レコードを片っ端から買い始めました。彼の本も買いました。彼の詩集は素晴らしいんです。彼のやることはすべて神秘的で神話的です。彼はただただ素晴らしい人物だと思います」
ダッシュの自宅はアートやコレクションで埋め尽くされているが、この作品は彼がどのように生きていきたいかを思い出させてくれるものとなっている。「私はいつも、インスピレーションを得るために彼の音楽や文学に立ち戻ります。私は常に成長し、進化し、成熟しているからです。クリエイティブな面でも、友人としても、親としても、パートナーとしても。だから、それが私のモチベーションになるんです」
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