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In-Depth ロレックス デイトナの系譜をヴィンテージウォッチマニアが徹底解剖 Part.2/3

5年にわたる開発の末に誕生したゼニス デイトナは、堅牢性、効率性、精度、メンテナンス性を向上させるために見事な設計がなされた。

本稿は2013年3月に執筆された本国版の翻訳です。

2000年のバーゼルワールドで、ロレックスは新しいデイトナ(Ref.116520)とともに、50年以上ぶりの完全な新型自社製ムーブメントとなる、デイトナ専用の完全統合型自動巻きクロノグラフ、Cal.4130を発表した(バルジュー72ベースのデイトナ用ムーブメントに加え、ゼニスベースのCal.4030デイトナ用ムーブメントについては、本3部編のPart.1をご覧いただきたい)。

 5年にわたる開発の成果として、堅牢性、効率性、精度、メンテナンス性を向上させるために見事な設計がなされた。ロレックスは、高性能の“垂直クラッチ”クロノグラフ結合機構を採用し、これを実現した。簡単に説明すると…

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 クロノグラフ機構を独立したサブシステムとして考えれば、それはクラッチを通じてムーブメントに結合され、作動するとクロノグラフ表示に動力を供給することが理解できるだろう。最も広く使われているのは“水平クラッチ”で、ロレックスのクロノグラフに使用されているすべての先行ムーブメントに採用されているものだ。水平クラッチを使ったクロノグラフは、一般的にうまく機能し、視覚的にも非常に魅力的だが、いくつかの重大な欠点がある。1)クロノグラフ作動時のテンプの振動の振幅が失われ、計時精度に影響を与える。 2)バックラッシュが起こりやすいこと。クロノグラフを作動させたり停止させたりする際、クロノグラフ秒針は、水平クラッチの歯車とムーブメントの駆動歯車に不完全なズレが生じるため、針飛び(ジャンプ)するのである。

 Cal.4130の垂直クラッチ式は、デザイン上、クロノグラフ秒針の正確なスタートとストップを可能にする。スタート、ストップ、リセットの際に、時計のどの針にも不要なブレは見られない。また垂直クラッチは、クロノグラフの精度に影響を与えることなく、長時間の連続作動を可能にする。ロレックスが長年にわたって最高の計時精度を追求してきたことを考えると、垂直クラッチの採用は理に適った選択といえるだろう。

 スマートなデザインも随所に見られる。ロレックスはクロノグラフの積算表示(12時間積算計と30分積算計)を大幅に簡素化し、ムーブメントの両側にあったふたつの独立した機構をひとつのユニットに統合し、大幅にスペースを削減した。ロレックスはこの空いたスペースを利用して主ゼンマイを大型化し、Cal.4030の54時間から72時間の長時間パワーリザーブを実現した。ロレックスはまた、計時精度を向上させるために大口径のテンプを採用した。テンプは両方向ブリッジに取り付けられ、両側からしっかりと固定されているため、耐衝撃性と耐振動性が大幅に向上している。

 Cal.4030と比較すると、Cal.4130はメンテナンスが非常に容易になっている。あまり知られていない“インサイダー”情報をいくつか挙げよう。

- Cal.4030のネジは40種類以上あるが、Cal.4130では12種類に絞られた。

- Cal.4130はCal.4030より部品点数が約20%少なく、これは一般にいいことだと捉えられる。

- Cal.4130の垂直クラッチは、他の競合する有名ブランドが採用する垂直クラッチとは違い、修理が可能だ。整備時には定期的に潤滑油が注油されるが、分解して修理することも可能である。一方、修理不能な垂直クラッチは、手を加えることができない。そのまま再装着され、経験豊富な時計師の友人の言葉を借りれば、「基本的に時限爆弾で、もちろんいずれは故障する」のだ。

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- Cal.4130の主ゼンマイは、ムーブメントをケースから出さずに交換することができる。一方Cal.4030は、主ゼンマイを交換するために完全な分解掃除が必要となる。

- Cal.4130のクロノグラフ部品はすべてムーブメント側にあり、復針レバ ーと各ハ ートカムとの隙間を調整するのに必要な偏心ピン(例示は難しい)は、ひとつだけだ。Cal.4030は3つの水平クラッチがムーブメントの両面にまたがっているため、正常に機能するためには最大で5カ所の偏心調整が必要だ。

- Cal.4130の自動巻き機構は、Cal.4030のものと比べて68%も効率よく巻き上げられ、固着しやすい複雑なリバーサーを採用するCal.4030と比較して、より信頼性の高いものを採用している。

 多くの尊敬する時計師の総意とするところは、Cal.4130がハイエンドな自動巻きクロノグラフムーブメントの新たなベンチマークを打ち立てたということだ。

 一見したところ、Ref.116520は16520とほとんど変わっていないように見える。しかし、よく見ると、ダイヤルに微妙な、しかし重要な美的変化が施されており、Cal.4130を搭載したRef.116520は見分けがつきやすく、偽造するのは極めて困難なものとなっている。秒表示のインダイヤルは、9時位置から6時位置のサブダイヤルへと移動した。また、クロノグラフの12時間積算表示が30分積算表示と直線上に配置され、これらのサブダイヤルはともにダイヤルの中心軸から7度ほど高くなった。

 そのほかにも、夜光インデックスが幅広になり、ケースのラグはわずかに長くなり、ケース上面は従来のSS製デイトナではブラッシュ仕上げだったのがポリッシュ仕上げになるなど、細かな変更が施されている。Part.3では、ポールがついに、私たちが知りたい“装着感”を明らかにする。

Part.1はこちらから