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本稿は2020年2月に執筆された本国版の翻訳です。
現在インターネット上で提供されるヴィンテージ界のベストオブベストと、注目すべきいくつかのユニークな名品を紹介するときが来た。驚くほどキレイなクレバーやブライトリングのローズゴールド製プレミエ、クールなIWCなどをチョイス。それらに浮気をしない人たちのためには、この1週間のうちで最も希少なロレックスと、有名なAシリーズのロイヤル オークの傑出した例をご覧いただきたい。
皆さん、これはいいものだ。
クレバー アラーム Ref.685
文字盤にある名前というのは重要だが、真のコレクターなら、それだけが時計を手に入れる動機であってはならないことを知っているだろう。ときには思いがけないものに驚かされることもある。それゆえ世界で最も重要なコレクションのなかには、あまり知られていない安価なクロノグラフやダイバーズウォッチもたくさん含まれている。以前もお伝えしたように、アラームウォッチは時計の世界ではまだ過小評価されているニッチな分野であるが、多くの有名時計メーカーが製造しているため、時計の勉強にもなる。このクレバーをひと目見ただけで、それが特別な時計であるだけでなく、掘り下げる価値のある興味深い歴史を持つ時計であることがわかった。
話によると、クレバーはブライトリングやゾディアックの時計を販売していたことで知られるアメリカの時計輸入業者、エドワード・トラウナーの商標として生まれた。1940年代を通じて、エドワード・トラウナーはブライトリングを国内に持ち込み、Ref.769 クロノマットやRef.788 プレミエのような時計の文字盤に、セカンドネームであるクレバーを加えた。しかし、すぐにこの名前は文字盤の上に君臨することになる。トラウナーはその後、ゾディアックのアメリカ正規代理店となり、クレバーブランドとして腕時計を生産するようになるのだ。またホイヤーがクレバーのためにどのようにクロノグラフを製造したかも注目すべきであり、その多くは魅力的なカレラのリファレンスとほぼ同じである。
アイコニックなクロノグラフではないものの、独特の魅力を備えている。直径34mmのため袖口の下にすっぽりと収まるが、私の予想では、手首につけている時間のほとんどは人目にさらすことになるだろう。というのも、審美的にも状態的にも、この個体が非常にクリーンだからである。私が気に入っているディテールは、今では心地よいカスタード色にエイジングした大量の夜光塗料で満たされた針と、アラームがオンかオフかを示す9時位置の絞りだ。“アラーム”と書かれた赤い文字のラインと赤く塗られた先端の設定針のタッチは、クラシカルなスタイルの作品に少し気まぐれな雰囲気を添えている。
WatchSteezのジャスティン・ブラカス(Justin Vrakas)氏が、このクレバーを出品。1300ドル(当時の相場で約14万円)という価格は、コストパフォーマンスに優れている。詳細はこちら。
ロレックス オイスター パーペチュアル ディープシー Ref.6532、1956年製
簡単に入手できる特定のリファレンスが大々的に宣伝されているため、ディーラーはあらゆる事例を探し出してユーザーに提供するべく全力を尽くしている。その結果、早朝や深夜にハンティングしているあいだに、そのようないつもの容疑者に出くわすことになる。驚く余地はほとんどないかもしれないが、今週初めにある時計がそうだったように、何かが時折意表を突く。デイトナ、サブマリーナー、GMTマスターがこれほどまでにファンファーレを浴びているなか、その存在感だけで本当に驚かせるロレックスはめったにない。しかしディープシーに遭遇すると、まさにその状態になる。
いや、あのディープシーではなくて、これだ。あなたが今見ているのは、1950年代半ばに製造された、ロレックスが文字盤に“ディープシー”の文字をあしらった最初の時計である。Ref.6532のバリエーションであるこの個体は、1953年にディープシー・スペシャルのオリジナルプロトタイプが3150mまで潜ったという記録を打ち立てたことを記念して、極めて限られた数しか製造されなかったと考えられている。1960年、この記録を再びプロトタイプが破ったのは有名な話だ。このディープシーはダイバーズウォッチではないものの、ロレックスの歴史を物語る魅力的なピースであり、熱心な研究者たちが高く評価している。Ref.6239 コスモグラフ ヨットマスターになぞらえた人も多いが、それには理由がある。この名前はやがて、現行コレクションの文字盤に再び登場することになるのだが、その形は根本的に異なるからだ。
文字盤には光沢感があり、未研磨のステンレススティールケースに包まれているため、オリジナリティとキレイさを重視する人は喜ぶこと間違いなしだ。同じような金額でエクスプローラーを手に入れることもできるが、これは限りなく魅力的な作品であり、ヴィンテージコレクターが集まる場で注目を奪うことができる。記念モデルの生産期間が短いことを考えると、ありふれたRef.1016よりも非常に希少性が高い。過去10年のうち表に出てきたのはほんのひと握りだ。私がよく言うように、これは“別のものを見つける”シナリオであり、タイムマシン技術がSF世界のなかであり続ける限り、すぐに別のものに出合うことはないだろう。
マイアミにある販売店Menta Watchesは、この歴史的な腕時計を1万3500ドル(当時の相場で約144万円)で販売している。あなたの大切なロレックスコレクションにこれらが欠けていたら、どうすればいいか、もうわかるだろう。詳細はこちら。
IWC×ポルシェデザイン コンパスウォッチ Ref.3551
このコラムのほんの数回前の記事で、普段目にすることのない時計を紹介した。以来、IWCとポルシェデザインとのコラボレーションに関する研究はますます深みを増しており、それに拍車をかけているのが、手に入りそうなタイムピースの数々だ。今週初めにeBayをスクロールしていると、そのような誘惑のツールウォッチが現れたので、すぐに今週のまとめ記事で登場させると決めた。
ご覧いただいているRef.3551、コンパスウォッチ“(Kompassuhr)”は、シャフハウゼンのブランドとフェルディナント・A・ポルシェのデザインベンチャーとのパートナーシップによって誕生した。前回紹介したRef.3510と同様、ケース上部を開くとコンパスとミラーが現れるが、このモデルはさらに複雑機構を搭載している。1本目で紹介したクレバーと同じく、このIWCはダイヤルに開口部を備えるが、アラームのオンオフを示す代わりに、ムーンフェイズを表示する。IWCのこの時代を大きく定義するシンプルさと有効性を考えると、これは史上最もクリーンなムーンフェイズデザインの指標のひとつであると強く信じている。
初期のPVDコーティングウォッチであるため、これらのケースやブレスレットに見られるコーティングは、今日の時計に見られるものほど耐久性が高くない。そのため、多くの例では着用による傷跡が見られる。それを“パティーナ”とされるのを見たことがあるが、あなたも私もそれがそうではないことを知っている。だからこそこのような時計が、ほぼ手付かずの状態で発見され、オリジナルの仕上げの輝きがそのままに保たれているものだけが私は好きだ。写真を見てもらえればわかると思うが、オリジナルのボックスと書類がそばにある、期待以上の逸品だ。
このIWCは過去にeBayのオークションに出品されていた。公開時点での最高入札額は1310ポンド(当時の相場で約18万円)だ。
ブライトリング プレミエ Ref.790
クロノグラフといえば、どの時計メーカーにも素晴らしい時代がある。ブライトリングは2レジスターモデルを得意としており、なかでもほとんどの人の心のなかでは、1930年代から40年代にかけて頂点に立ったと考えられている。個人的に好きなのは、リファレンス番号と一致していないことが多いマルチスケールダイヤルのもので、そんな素敵なプレミエを拒絶したことはない。スティール製のものを選んでも問題はないのだが、もう少し華やかさをプラスすべく、あまり一般的ではないRGの例で進めよう。
このRef.790 プレミエには、注射器型のブルースティール針が取り付けられている。数字と同じように、針には夜光ラジウムが塗布されており、ダイヤル上の塗布と(年代が)完全に一致するようエイジングしている。文字盤とエイジングについて言えば、文字盤自体が、わずかではあるが一定のパティーナを帯びているように見える。これは目立つ斑点があるものより好まれるものだ。RG製ケースにすっきりと収められ、裏蓋にあるホールマークでそれは確認できる。ノンポリッシュのため、表面にあえて光沢感を出そうとは思わないが、とはいえヴィンテージのDNAが目に見えて残っているのでしっかりとクリーニングは施したいところだ。
たいていディテールにこだわる人が素晴らしい時計を見つけると、それを装着するために同じように素晴らしいブレスレットを探しに行くが、この個体の場合、その作業は完了している。18金無垢ではないが、時計と同じRGトーンに見えるメッキが施され、さらにファンキーな編み方に加えて、ストレートなエンドリンクと、簡単に調整できるクラスプが付いているので、幅広い手首にフィットするだけでなく見た目にも優れている。もう1歩進んで、もっと重厚で頑丈なブレスレットを手に入れることもできるだろうが、私ならそのまま身につけて楽しむだろう。
シカゴに拠点を置くeBayセラーが、このブライトリングを希望価格5500ドル(当時の相場で約55万円)で出品していた。
オーデマ ピゲ ロイヤル オーク Ref.5402、1974年製
高級時計とSSは、かつては同じ文章で見つけることができないふたつの単語だったが、今日の一番アツいSSモデルに提示されるプレミア価格が示すように、ゲームは劇的に変化している。パテック フィリップのRef.3700 ノーチラスと、オーデマ ピゲのRef.5402 ロイヤル オークは、ジェンタというこのような認識の変化をもたらした魅力的な人物が生み出し、その重要性がこれまで以上に認識されるようになったため、コレクターはその初期型というだけでは飽き足らない。前述のロイヤル オークの場合、多くの人の欲しいものリストのトップに君臨するのはAシリーズである。
別名“ジャンボ”としても知られる同リファレンスのオリジナルは、非常に重要であるだけでなく希少性も高い。1972年に、これまでで最も高価なSSウォッチとして発表されたあと、マニュファクチュールが製造したのはわずか1000本だった。その翌々年にもう1000本が生産されただけで、Aシリーズの総生産数はわずか2000本となった。現在、どれだけの数が流通しているかは誰にもわからないが、このようなカミソリのように鋭いコンディションを持つ個体は間違いなく少ない。つまり、この例は長くは入手できないだろう、ということだ。
ロイヤル オークについて知っておくべきことのひとつは、文字盤がほかの時計のような経年変化がしないということだ。タペストリーパターンの特徴である凸凹を考えると、トロピカルトーンである、完全均一な茶色の色合いになることはほとんどない。その代わり、トロピカルの5402の多くはまだらで散発的で、当たり外れが大きい。好き嫌い分かれるだろうが、今週のまとめにこれが含まれていることから、この作品に対する私の立ち位置はもうおわかりだろう。単に汚れているように見えるほかのものとは異なり、問題の作品のトロピカルな部分は、ほかのAシリーズには見られない個性と、独特の経年変化を表現している。
業界のベテランであるヤチェック・コズベック(Jacek Kozubek)氏が最近立ち上げたTropical Watchを通じて、誰もが欲しがるこのAシリーズの世界的な例を7万3550ドル(当時の相場で約785万円)で提供している。詳細はこちら。
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