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ブルガリ ウォッチの愛好家たちが神戸に集結。上根社長に聞く、オクトのネクストステージ

神戸の名店・カミネにはブルガリのなかでも屈指の名品が集結する。歴史的コラボモデルを製作したことでも知られるカミネの上根 亨社長が見た、ブルガリウォッチの卓越性、オクトの次のステージはどこにあるのか?

5月某日。神戸のホテルオークラにてブルガリとカミネによる顧客イベントが開催され、我々HODINKEEチームも同席した。そこには、近年発表されたオクト フィニッシモの希少なピースや、先のWatches & Wondersでお目見えした最新作が集結すると聞きつけたからだ。そこには期待以上の時計たちが用意されており、発表以来久しぶりに、カーボンケースを採用したオクト フィニッシモ ミニッツリピーターや、プラチナ製のオクト フィニッシモ パーペチュアルカレンダーなども目にすることができた。

 まさに一大コレクションとなり、集まった時計愛好家の皆さんのなかにはすでに複数本所有している方や、ブルガリやカミネとのリレーションのなかで、自身が希望する時計をオーダーメイドした人物もいた。わずか10年でこうした時計に成長したオクトの魅力と、ブルガリのウォッチメイキングについて、会の主催者である上根社長とともに改めて考えてみた。

オクト フィニッシモ パーペチュアルカレンダー、プラチナ製。

 「ここ数年のあいだで見たパーペチュアルカレンダーのなかでも、最も美しいパーペチュアルカレンダーだと思う」

 長年において、多くの時計を看破してきた上根社長は、オクト フィニッシモ パーペチュアルカレンダーについて改めてこう評した。レイアウトの難しい永久カレンダーを、薄型で実現するという制限込みで見事にデザインされたオクト フィニッシモは出色の出来栄えだ。その点については僕も完全に同意見だし、コレクションの誕生からわずか10年でこのウォッチメイキングの一流に達したブルガリには脱帽だ。「オクト フィニッシモはひとつの潮流を作ったと思います。フィニッシモ以前には、“薄型”という概念自体が薄かった時計業界において、何年も根気よく続けた結果、定着させたことは単純に素晴らしいことです」

 上根社長が語るように、ひとつのジャンルを生み出すような時計は10年に1本単位でしか生まれていないのが現実であり、薄型かつスポーティなブレスレットタイプの時計がはっきりと認知されたのは明らかにオクト フィニッシモの功績だと思う。雑多な時計メーカーではないと宣言したようなオクト フィニッシモで見せた、ブルガリのストイックなまでの時計製造への献身は、間違いなく素晴らしい。ただ、実直さだけで魅力が決まるわけではなく、ブルガリのメゾンとしての本質もそのストイックさにはないのではないかと思う。ブルガリウォッチの魅力は、イタリアの感性でつくられたスイス時計、というところにあり、思いもよらないようなクリエイション、デザインが表現されることが本質ではないか? ヘビを腕に巻き付けて素敵に見せられるブランドなんて、僕は他に知らない。

オクト フィニッシモ スケルトン エイトデイズ。ブリッジのデザインがより洗練された印象だと、上根社長も語る。

 我々オトコにとって、そのヘビに当たるのはオクト ローマなのではないかと思っている。もちろん、直接的に生物を思わせるモチーフそこにはない。けれど、時計好きにとってはそれ以上に魅力的なコンプリケーションや、存在感のあるケース・文字盤デザインなど、オクト フィニッシモでは厚みの制約によって不可能なクリエイションはオクト ローマでは可能なのだ。

 「ブルガリがデザインに取り入れている、建築様式がより具現化されたのがオクト ローマだと思います。ブルガリデザインをより感じることができる時計で、ヘッドとブレスレットのバランスがフィニッシモとは大きく違う点も面白いです。薄型時計は万人受けするものとは言い難いですから、ズシッとした“高級時計らしい”重みを求める人には、オクト ローマのバランスは好感されますね」

 かつて存在した、ディアゴノがより現代的・都会的になったようだとも上根社長は語る。ディアゴノの時代は、オンオフがはっきり分かれていたころで、バカンスに出かけるためのスイッチのような役目も帯びていただろう。日常生活になじむデザインというよりは、夏の日差しを浴びてつけたいような時計だった。そこへいくと、装いにおいて、フォマールやビジネスとカジュアルの境目が曖昧になった現代において、そこを行き来できるようなオクト ローマのデザインはモダンなのだ。

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オクト ローマ セントラル トゥールビヨン パピヨン

 上根社長に、オクト ローマから発表されてきたコンプリモデルについて伺うと、「オクト ローマ カリヨン トゥールビヨンが特に素晴らしい」と返ってきた。確かにこの時計はスケルトン化されたムーブメントが建築様式を感じさせ、カリヨンとトゥールビヨンを搭載しながらも仰々しさが薄い。それこそ、日常使いできそうなデザインとサイズ感であった。それは、昨年、今年と発表されているセントラル トゥールビヨン パピヨンにも言えることだと思う。現在2、3社ほどしか商品化していないセンター(フライング)トゥールビヨンを備えながら、24時間表示のジャンピングアワーとレトログラード式の分表示とで完結にまとめられている。この場合の建築様式は、オクト フィニッシモ パーペチュアルカレンダーでも見られた、デザインで機構をうまく配置していく方向で用いられていると言える。コンプリケーションそれ自体を過剰に主張させるのでなく、現代的に、つけやすい装飾品としての時計にまとめ上げているのが面白い。

オクト フィニッシモ ミニッツリピーター。世界限定50本として2018年に発表されたが、製作が非常に困難なため年に数本ずつ現在も生産されている。

上根 亨社長

オクト フィニッシモ 妹島和世 限定モデル

 「ナポリのアットリーニに合わせるなら、クタクタになるまで使った金無垢のスポーティな時計やヴィンテージのスポーティなものがいい。それ以外で選ぶなら、今は断然オクト ローマですね」。上根社長はファッションにも独自の見識があり、顧客が求めるものも敏感に察知されている。そのなかで感じることは、洋服をコーディネートするにとどまらず、時計のバランスまで考えるようなカルチャーが生まれつつあるという。カジュアルな着こなしに大きな時計や異素材を用いた時計、という選択肢に、昨今ではヴィンテージウォッチや独自のデザイン主張がある時計が入るのだそうだ。それは、ポストコロナの時代になり、大手を振ってカジュアルな楽しい場所で過ごす人が増えたことに大いに関係しているだろう。

 「色々な楽しい場所、シーンにマッチしやすいという意味でも、オクト ローマは好印象です。僕のような年齢になると、昔選んだようなスポーティな時計では子供っぽくなりすぎることもあります。“オヤジ”でもカジュアルに楽しむには、時計にもそれなりの品格が欲しいところですから、ブルガリはそういう塩梅をうまく抑えていると思います」

当日、参加者の多くの手首に光っていた、カミネで限定販売されたコラボレーションモデル。

 取材の結びに、少しリラックスしてビールを注文しながら語った上根社長の体験談が、ブルガリを象徴しているようで面白かった。

 「ブルガリには、ラテンならではのノリというか、本当に様々なテイストがある。僕は、ジュエリーの工房を見学に行ったこともあるんですが、婦人用の時計やジュエリーのための半貴石は小さなものから大きなものまで本当にたくさんの種類がある。そのひとつひとつすべてに認定証がついているのを確認できたんです。おおらかなラテンテイストの裏で、そういう緻密さがあるからこそ一本筋が通っていると感じさせられるんだなと、感心しました」

 時計自体のみならず、ブルガリのメーカーとしての姿勢も深く理解して時計を取り扱うカミネ。2017年に実現した、故・坂本龍一とのコラボ(オクト フィニッシモ トリロジー オクト フィニッシモ トリロジー)が最も有名だが、時計愛好家の夢が具現化したような時計はカミネのような時計店がその一助を担っていると改めて感じさせられた。

カミネについてはこちらから、ブルガリの時計についてさらに知るには、公式サイトへ。