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Introducing グランドセイコー 服部金太郎生誕160周年記念限定モデル SBGZ005とセイコー創業140周年記念限定モデル SBGW260

セイコーの誕生と服部金太郎生誕を祝したグランドセイコーの2つの新作モデル。

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今年は、グランドセイコーが60周年を迎える記念すべき年であることはもちろんだが、セイコーも創業140周年を迎える特別な年だ。さらに、セイコーの創業者である服部金太郎の生誕160周年でもあるのだ。これを記念してグランドセイコーは、創業者の生誕を記念したプラチナ製の“スプリングドライブ SBGZ005”とセイコー創業を記念した手巻きの“SBGW260”という、2つの魅力的な限定モデルを発表。どちらも1960年に登場した初代グランドセイコー Cal.3180(コレクターにとっては時計の代名詞的な存在だ)をベースに、当時、長野県の諏訪精工舎が「正確で、見やすく、美しい腕時計」を追求するという思いを込めて製作したケースを採用。グランドセイコーは、“ファースト”をベースにした復刻版を2011年(限定モデル)、2017年(限定モデル)2020年(通常生産モデル)と複数回リリースしている。

ゴールド製、直径38mmのSBGW252。

 2013年に登場したこのシリーズは、サイズ的にはオリジナルに最も忠実な35.8mmだったが、ファーストが備えていたドーム型アクリル風防ではなく、ボックスサファイアクリスタルの採用や、オリジナルの80ミクロン金めっきではなくソリッドゴールドケース(金無垢)を採用するなど、いくつかの重要な点で違いが見られた。他にもラグがやや異なっていたり、記念モデルではリューズが大きめに作られていたりと、わずかではあるが、決定的な違いをもっていた。
 2017年には、新たな限定モデルSBGW251、SBGW252、そしてSBGW253が登場。それぞれ異なるケース素材(スティール、ゴールド、プラチナ)と、やや大きめの38mm径を採用していた。そして今年、グランドセイコーから、SBGW259、SBGW258、SBGW257が発表された。これらは全て手巻きムーブメントを搭載し、トランスパレントバック仕様である。ケース素材は、イエローゴールド、プラチナの他に、初めてセイコーのブリリアントハードチタンが採用された。

 今回新に発表された限定モデルは、ファーストをベースにしたケースに初めてスプリングドライブムーブメントが採用されたことや、手巻きCal. 9S64の新バージョンが搭載されるなど、この時計の基本的なテーマに加え、目に見える形でムーブメントの仕上げの変更とアップグレードが加えられている。“SBGZ005”はブティック限定50本(1050万円)、“SBGW260”は350本限定(300万円)で、こちらもグランドセイコーブティックでのみ販売される(ともに税抜)。

グランドセイコー 服部金太郎生誕160周年記念限定モデル SBGZ005

グランドセイコー 服部金太郎生誕160周年記念限定モデル SBGZ005は、一見すると初代グランドセイコーの古典的なバリエーションのようにも思える。37.5mm x 9.6mmと古典的なサイズ感で(そして84時間のパワーリザーブを考慮すると薄型だ)、オリジナルよりもわずかに大きい(2017年の限定モデルよりも若干小さい)。

 ケースは、ザラツ研磨が施されており、高いレベルで研磨されたプラチナ特有の銀色の輝きを放ち、針とダイヤモンドポリッシュされたインデックスは、18Kホワイトゴールド製だ。本来であれば、秒針は青焼きのものを期待するが、今回グランドセイコーはグレーと白を基調とした構成にまとめ上げた。対照的な色合いの秒針は、グランドセイコーのトレードマークにもなっているが(雪白のブルー秒針を見ると、他に類を見ない時計の静謐な美しさを感じる)ここでは邪魔になってしまう可能性も秘めているのではないだろうか。

 グランドセイコーは、この特別なダイヤルを生産するためのプロセスをリリース資料では語っていないが、結果はとても興味深いものだ。文字盤には、フランジのあたりで丸みを帯びた形状の、直角三角形の底辺にひと続きの溝が見える。そして、それぞれの三角形の長い方の辺に対して、並行に配された非常に細かい溝があしらわれている。これらの溝は、三角形の最も長い辺、つまり直角三角形の概念を継承するならば、斜辺で切り取られており、文字盤の中心から放射する線のような視覚的錯覚を生み出している。

 このように、珍しくも印象的な文字盤処理はグランドセイコーの特徴であり、これほどまでのものはあまり見たことがないように思う。

 グランドセイコー 服部金太郎160周年記念限定モデル SBGZ005はまた、ファーストの3180ケースに初めてスプリングドライブムーブメントを採用したモデルだ。

 ムーブメントは、今年2月にグランドセイコー エレガンスコレクション20周年記念限定モデルで初登場した手巻きスプリングドライブCal.9R02だ。これまで手巻きのスプリングドライブムーブメントは、主にクレドールのコレクションに限定されていた(叡智I、叡智IIなど)ため、それ以外で見るのは珍しいことだ。9R02は、明らかに叡智IIのCal.7R14の従兄弟のような存在で、似た見た目をもち、―ゼンマイの香箱には、3つの様式化された桔梗(日本を含む極東原産のプラティコドン・グランディフロラス)のスケルトン装飾が施されており、右下の2つの衝撃保護されたピボットは、右上の三日月形の切り欠きで表された月を見るカエルの目を表している(仕上げのレベルも匹敵するくらいほどだ)。 

 本モデルは、長野県塩尻のマイクロアーティスト工房で製作されているが、前述の通り長野の諏訪精工舎でも製作されていたファーストGSのケースへのちょっとしたオマージュがある。ファーストをイメージした時計がそこで造られるのは初めてのこと。ムーブメントの受けには、“Micro Artist”と刻印された18Kイエローゴールド製の記念のプレートがあり、購入者が希望する言葉をエングレーブしたものと交換することもできる。

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セイコー創業140周年記念限定モデル SBGW260

 SBGZ005の兄弟モデルであるSBGW260は、やや大きめのケースに収められており、その直径は38mm。SBGZ005が最高級の手巻きスプリングドライブムーブメントを採用しているのに対して、SBGW260は機械式手巻きキャリバー9S64を採用。

 よく見るとSBGZ005の文字盤には“Diashock”の刻印と石の数が省略されているのに対し、SBGW260では文字盤上にそれが表示されていることに気づくだろう。グランドセイコーはSBGZ005の文字盤上に、ムーブメントの石数と備えられた耐震装置に関する文言を文字盤上に含めることができたかもしれない。しかしこの場合、少し場違いで余計なものに感じさせてしまったかもしれないし、文字盤との相性がよかったとも思えない。

 SBGZ005の文字盤の繊細な模様とは対象的に、SBGW260の文字盤はオリジナルのように模様のない、ややマットな質感を維持している。

 ケースとダイヤモンドポリッシュ仕上げされたアプライドのインデックスは18Kゴールド製で、分針と秒針はともにやや曲げられており、控えめな古きよき雰囲気を醸し出している。全体的に暖かな、暖炉で石炭が燃えているような輝きをもったピンクゴールドである(くだらない冗談を言わせてもらえるのなら―ファーストグランドセイコーにピンクゴールドが採用されたファーストウォッチだ)。トランスパレントケースバックには、グランドセイコーの獅子の紋章が見られる。これまでのモデルでこの意匠があまり好みではなかった人のためにお伝えしておくと、以前のものよりもずっと控えめなものに留められており、ほとんど見えないくらいになっているはずだ。

サファイアケースバックにはグランドセイコーの獅子の紋章が刻印されている。

 手巻きCal. 9S64は、2011年にグランドセイコーが、ファーストグランドセイコー復刻モデルであるSGBW040に初めて搭載し、2017年の限定モデルと2020年の通常生産モデルにも採用されたものだ。SBGW260に搭載されている9S64は、これまでのムーブメントからいくつか顕著なアップグレードが施されている。

2020年登場の通常生産モデルのCal. 9S64。

 9S64の標準バージョンは、エンジニアリングと美学の両面において、古典的なグランドセイコーのデザインだ。剛性の高い4分の3プレート構造を採用した頑丈で正確な設計で、グランドセイコーのハイエンドモデルやクレドールのような手仕上げでは無いものの、ブリッジなどの面取りのシャープな仕上げが正確に施されており、全体的に高い水準で造られた精密機械然とした佇まいだ。プレートに印字された文言も、その技術的な信頼性を保証するもののように見える。一方、SBGW260に搭載されたバージョンは、この手巻きキャリバーをより細かくしたものとなっている。

 主な違いは、標準バージョンで採用されている研磨された無地のネジの代わりに青焼きのネジが採用されている点、4分の3プレートのエッジに面取りが施されている点だ。通常版の縞模様が直線的な木目調(マイクロアーティスト工房の方によると“ヘアライン仕上げ”と呼ばれているそうだ)に変更され、ムーブメントにはセイコーのトレードマークである“S”を刻印したゴールドプレートが載っている。仕上げは、より日本の美学を印象づけるためだけでなく、グランドセイコーのよりハイエンドなモデルや叡智のスプリングドライブキャリバーのライン、そしてSBGZ005と同等の調和を保つためになされているように感じる。

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進化し続けるグランドセイコーの姿

 これらの時計はどちらも、グランドセイコーの時計としてのメリットがある。緻密に実行され、もはや強迫観念の境界線上にあるような注意の払い方(我々の好みのやり方だろう)をとっている。どちらもいくつかの点で批判される可能性があるだろう。主に、グランドセイコーが全体で製作している限定モデルの数。グランドセイコーのハイエンドモデルの価格設定の上昇と繰り返されるファースト3180ケースの採用だ。これらは順に追って考えると、通常製品のカタログの進化を食い合ってしまうのではないかと気になるところである。しかし、注意すべき部分ではあるが、過度に心配することはないだろう。そして最後に個人的な許容範囲の問題だ。2011年、2017年の限定モデル、そして2020年の通常生産モデルの間には、つまるところ差別化ポイントがある。

SBGW260のリストショット、提供: グランドセイコーのジョー・カーク氏、先日ニューヨークで開催されたHorological Society of New Yorkでの講演にて。

 振り返ってみるとケースデザインを先に通常生産に戻していたとしたら、限定版はどのように受け入れられていたのだろうか。しかし、ファーストの基本テーマに沿ったバリエーションは、今のところケース素材、サイズ、文字盤処理、ムーブメントの仕上げや技術的な違いなど、それぞれの間に目の見えない程度の違いを導入するよう気を配っているようである。

 HODINKEEでグランドセイコーについて書いてきた5年間で、知名度も活動も飛躍的に成長してきたこのブランドを目の当たりにしてきたが、そのようなスピード感をもちながらも、ファンを惹きつけた価値観を捨てていないのは、なかなかの芸当と言える。私はグランドセイコーが、彼らの時計づくりのレベルを長きにわたるグランドセイコーファンにとって、より身近な価格で入手できるよう維持するために取り組んでいることについては、かなりの信頼をおいている。60万円以下で入手できる本当に美しいグランドセイコーの時計はまだいくつもあるが、それが真実である限り、今回のような祝い事は我々全員が参加できるもののように感じられるのだ。

グランドセイコー 服部金太郎生誕160周年記念限定 SBGZ005: ケース 37.5mm x 9.6mm、プラチナ製、表と裏にサファイアクリスタル風防。ホワイトゴールド製のダイヤモンドポリッシュが施された針とインデックス。30m防水。ムーブメント・スプリングドライブCal. 9R02、84時間パワーリザーブ、デュアル・スプリング・バレルとトルクリターン・システムによって実現。4800 A/mの対磁性能。手巻き式。平均月差±15秒(日差±1秒相当)ブティック限定50本。価格は1050万円(税抜)。

セイコー創業140周年記念限定モデル SBGW260: ケース 38mm x 10.9mm、18Kピンクゴールド製、表と裏にサファイアクリスタル風防。30m防水。ムーブメント・グランドセイコー手巻きメカニカルCal. 9S64、24石、2万8800振動/時で駆動。72時間パワーリザーブ。4800 A/mの対磁性能。静的精度:平均日差+5秒~-3秒。ブティック限定350本。価格は300万円(税抜)。

どちらも2021年1月から発売予定。

詳細はグランドセイコー公式サイトへ。スプリングドライブが脱進機をもっていると考えられるかについては、記事「In-Depth スプリングドライブに脱進機はあるのか?」をご覧ください。