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Editors' Picks HODINKEE編集部が選ぶ、新社会人にこそ持って欲しい“最初の本格時計”

HODINKEE Japanのメンバーもかつてはフレッシュマンだった時期があり、そこで初めての本格時計に出会い、以降遍歴を重ねてきた。ときを経た今だからこそ、“最初の一本”にふさわしいと考える時計とはどのようなものなのだろう?

早いもので2024年度もまもなく3月に突入し、新生活シーズンを迎えようとしている。今この記事を読んでいる人のなかにも、この4月から新社会人として一歩を踏み出すという人や、新天地で新たな仕事に挑戦するという人がいるかもしれない。周りの環境が大きく変わり、ゼロから何かを始めるというのは心細いものだ。しかし同時に、新しいことやものにチャレンジする絶好の機会でもある。スポーツを始めてみるのもいいし、これまで縁がなかったコミュニティに飛び込んでみるのもいい。そしてもちろん、本格的な時計を一本手に取ってみるというのも素晴らしい体験になるだろうと思う。

 今回は、初めての“本格時計”に選ぶべき時計とは何かというテーマについて、HODINKEE Japanの編集部員たちが自身の過去を振り返りながらおすすめの一本を選出してみた。その選考基準もプライスもばらばらだが、検討にあたっての一助になればと思う。すでに時計沼にどっぷり浸かってしまっているという人も、自分の一本目はどんな時計だったかを思い返しながら読んでみて欲しい。


牟田神 佑介 エディター
オメガ スピードマスター ムーンウォッチ プロフェッショナル

僕は時計愛好家としてはまだまだ日が浅い。もともとメンズ向けのカジュアル誌からキャリアをスタートしたこともあり、いわゆる“本格時計”に触れたのは20代も後半のことだった。しかも、時計を選ぶ基準としてはその日の着こなしに合うかどうかだ。その選定基準自体は決して悪いものではないと今でも思っているが、結果としていわゆる定番と呼ばれるものに出会うのに少し遠回りをしてしまった。だから、HODINKEEにジョインする前にこの記事でオメガ スピードマスターを所持することが時計愛好家としての義務だと書かれているのを見たときは驚いたものだ。もちろんスピードマスターの歴史や背景は理解していた(つもりだった)が、所持することでしか理解できない価値というのもあるのだろうと思う。そして現在にいたるまで、僕はこの時計を所有するタイミングを逃し続けている。だからこそ、本格時計に興味を持った新社会人、そして当時の僕に言いたい。何はともあれ、オメガのスピードマスターをまず買ってみるべきだと。

 スピードマスターには現在数多くのバリエーションがあるが、オメガはアポロ計画の際に携行されたものと同じ手巻きのスピードマスター プロフェッショナル、すなわち“ムーンウォッチ”をディスコンにせず大切に守り続けている。クォーツや自動巻きの時計に慣れ親しんでいると、手巻き式の時計にはわずらわしさを覚えるかもしれない。だが、重力の関係で巻き上げローターが動作しない宇宙空間においては、手巻きこそが最善の選択だったのだ。もちろん細かなディテールやクラスプなど要所には現代的なアップデートが施されてはいるが、強化プラスチック風防やアルミニウムベゼルを採用し続けているなど、当時の空気を新品で体験できる時計というのはそうそうない。スピードマスターで何を買うか悩んだなら、まずは王道中の王道、スピードマスター プロフェッショナルを試したい。スポーツウォッチのなかのスポーツウォッチではあるが、多様化を続ける昨今のビジネスシーンにおいては十分装いに合わせられる時計である点も理由として添えておきたい。

 ……と、訳知り顔で語っているが、この原稿を執筆している時点で僕はスピードマスターを所有するという体験をまだしていない。どうか、少々無理をして時計を買えるうちに検討して欲しい。もうアラフォーに差しかかる年ではあるが、僕もあとを追えるよう頑張ってみようと思う。

価格: 107万8000円(税込)
その他の詳細は、オメガ公式サイト


松本 由紀 アシスタントエディター
ユンハンス マックス・ビル バイ ユンハンス ハンドワインド

新社会人の最初の本格時計と聞いてまず、仕事での使用を思い浮かべてみた。スーツ、あるいはオフィスカジュアルの袖口から時計が覗いた際、あまり目立ちすぎない存在感で、パッと時刻を確認したとき瞬時に時刻がわかるものがマストだ。それと私のなかの“本格”という概念的に、クォーツとは打って変わる手巻きがいい。手巻きは毎日リューズを巻く動作があるので、時計にも愛着が沸きやすい。

 以上を踏まえて、私の頭の引き出しから出てきたのがユンハンスだった。もしかしたら最初の1本はロレックス、オメガ、タグ・ホイヤーとかの王道がいいのかもしれないが、それはほかの頼れるエディターたちにお任せすることにした。

 時・分・秒のみのシンプルな機能、アラビア数字インデックスのみならず1分おきには目盛りもあって、その目盛りに針がしっかりと伸びている。クリーンで無駄のないデザイン、そして判読性の高さこそ、スマートフォンで時刻を確認できない場面があるだろう、多くの社会人が求める時計だと思う。

 こちらは34mmと女性の手首に映えるサイズだが、もちろん小型時計が好きな男性にもおすすめ。地味にうれしいのが、ぷっくりとした風防の両面に無反射コーティングを施していること。これによりいかなる角度から時計を見ても、瞬時に針が読み取れるのだ(素材にもよるが、ドーム型風防は反射防止コーティングがされていないと大体斜め角度から時刻が読めない)。

 価格も20万円を切るというお手ごろさ。初めての本格時計としても、ちょうどいいとは思わない? 

価格: 18万3700円(税込)
その他の詳細は、ユンハンス公式サイト


和田 将治 エディター、Webプロデューサー
チューダー ブラックベイ 54

僕が社会人になってから初めて手に入れた腕時計は、ロレックスのサブマリーナー デイト Ref.116610LNでした。ウェットスーツからスリーピーススーツまで、どんな服装にも合わせられる時計として大活躍してくれました。僕が新社会人に何か1本おすすめするとしたら、自分がそうしたように頑丈で使い勝手のいいダイバーズウォッチを挙げると思います。

 ただ、今何をおすすめするかと言われたら、ロレックスのサブマリーナーではありません。僕が購入した10年前は現実的な選択肢でしたが、2024年にするアドバイスとして考えるとそうではないのです。特にその入手難易度の高さと当時から約2倍になった150万弱の価格は正直最初に手に入れる時計としてはハードルが高いように感じます。

 振り返れば、僕は当時、文字通り年の大半をオフィスで過ごすワーカホリックで、給料の使い道といえば家賃、光熱費、食費ぐらいしかありませんでした。もし僕が働き方改革が進んだ現代で新卒だったなら、もっと多様な楽しみにお金を使っていたと思います。

カジュアルにいくならラバーストラップの選択肢もアリ!

 そんなことを踏まえつつ、僕がおすすめしたいのはチューダーのブラックベイ 54です。銀行口座を空にすることなく耐久性の高い確かな品質のダイバーズウォッチを想像したときに真っ先に僕の頭に浮かんだのがこの1本だからです。

 ブラックベイ 54は、1954年にチューダーが発表したブランド初のダイバーズウォッチであるオイスター プリンス サブマリーナー Ref.7922に由来するモデル。スティールケースは、直径37mm厚さ11.24mm、全長46mmと小ぶりです。コマを外すことなく1.6mmずつ、最大8mmの調節を可能とするT-Fitクイックアジャストクラスプが採用されていることも相まって、非常に快適なつけ心地です。小ぶりなサイズ感ながら防水性能は200m。内部には、70時間のパワーリザーブを誇るCOSC認定のマニュファクチュールムーブメントMT5400を搭載しています。日常使いにおいて弱点がほとんどないスペックだと思います。あえて挙げるなら対磁性能ですが、それならMETAS認定を受けたブラックベイ バーガンディという選択肢もあります。

 僕が言っても説得力に欠けるかもしれませんが、時計にばかりお金をつぎ込むのではなく、友人と過ごす時間を大切にしたり、今までやったことのない何か新しいことに挑戦してみたりするのはとても重要なことだと思います。そしてこのブラックベイ 54ならどんなシチュエーションでも静かに見守ってくれる相棒のような存在になってくれると思います。

価格: ブレスレットは54万6700円、ラバーストラップは51万7000円(税込)
その他の詳細は、チューダー公式サイト


佐藤 杏輔 エディター
オメガ シーマスター ダイバー300M マスター クロノメーター

定番のブルーダイヤル。筆者が社会人になった当時からほとんど変わらないデザインで、オメガ シーマスター ダイバー300Mといえば、ブルーダイヤルのSSモデルだった。

仕事をするようになって未だに後悔していることがある。それは本格的な時計、特に名作と呼ばれるような、誰もがよく知る有名ブランドの高級時計を若いうちに手に入れておくべきだったということだ。

 新社会人になって早々、筆者は時計メディア業界へ潜り込んだ。とはいえ給料は決して多くはなく、生活費を除くとほとんどは流行りの衣服や靴などの消耗品に消えた。当時買っていた時計といえば、数万円のカジュアルウォッチが中心で、高級時計を買うという行為は自分には縁遠い世界だったのだ。そうした社会人生活を過ごした今、当時購入したものがどれほど残っているか? はっきりいってほぼ残っていない。あるのはほとんど出番のないカジュアルウォッチが数本といったところだ。単にお金を消費するのではなく、使い方を考えて価値が目減りしにくい高級時計を買うという選択肢をしていれば、もう少し“生きたお金の使い方”になっていただろう。それにもしそうした時計を手に入れていたら、今もいろいろな思い出とともに過ごせていたかもしれない。それはどんなに後悔しても取り戻せないことだ。カジュアルウォッチから高級時計へステップアップしていくという考え方もあるが、冒頭で述べたとおり、新社会人になり本格的な時計を手に入れようというマインドになっているのなら、回り道をせず高級時計を手にしたほうがいいのではないか?

ブラックダイヤル仕様。シーマスター ダイバー300Mといえば、ブルーダイヤルのイメージが強いが、より使いやすいのは比較的どんな格好にも合わせやすくブルーよりも落ち着いた印象のブラックだろう。

 ちなみに“最初の本格時計”として何を手に入れるべきか迷っているなら、筆者はオメガ シーマスター ダイバー300M マスター クロノメーターをおすすめする。オメガであれば、エディターの牟田神が紹介している現行のスピードマスター ムーンウォッチ プロフェッショナルも捨て難い選択肢だが、このシーマスター ダイバー300Mも、それと双璧を成す誰もがよく知る名作だ。

 現行モデルの直接的なルーツとなるモデルが誕生したのは1993年。それから31年のあいだ、デザインを大きく変えることなくアップデートを繰り返しながら現在も製造が続いている。2018年に発表されたシーマスター ダイバー300M マスター クロノメーターは、その名のとおりマスター クロノメーター認定を得たムーブメントを搭載している。これにより1万5000ガウスの磁気でも影響されない超高耐磁性を備えているため、日常生活ではほぼ磁気帯びの心配をすることなくつけられるだろうし、300m防水のダイバーズウォッチなので、リューズを開けたままで使ってしまうようなミスをしない限り水入りの心配もない。また3針のスタンダードな機械式モデルは機械式クロノグラフと比べてオーバーホールの際にかかるコストも一般的には低く押さえられる。維持をしていくという点でも後々後悔することが少ないはずだ。また、現在オメガでは純正のNATOストラップやレザーストラップを豊富に展開しているため、さまざまなつけ方を楽しみやすい環境が整っている。素材違いやダイヤルバリエーションも豊富なので迷ってしまうかもしれないが、個人的には誕生時からの定番であるステンレススティールのブルーダイヤルか、同じくSSでさまざまシーンで使いやすいブラックダイヤルがいいと思っている。

価格: 91万3000円(税込)
その他の詳細は、オメガ公式サイト


関口 優 HODINKEE Japan編集長
タグ・ホイヤー アクアレーサー プロフェッショナル200 ソーラーグラフ

かれこれ20年近く前になるが、フレッシュマンだった僕の手元には2本の機械式時計があった。ひとつは学生の頃に購入したオメガ スピードマスター オートマチック デイト(10万円と少しで売られていた、あの縦3つ目のやつだ!)とフレデリック・コンスタントのオープンハートの自動巻きだ。今では両方とも手元にないが、人生において最も長い期間愛用した腕時計は、今のところあの2本である。何がよかったのかを思い起こすと、オーバーホールをせずとも10年にわたり問題なく使い続けられた(実際には多少の精度の狂いはあったにしろ)、時計自体の完成度があると思う。実際のところ、多くの人にとって時計は特別気をつけて使うようなものではなく、単に携行品のひとつであることが多いだろう。壊れることもなく頑丈で、淡々と時間を計り続けてくれるものが最良の1本と言えるのだろうな、と思い至った。

 自動巻き時計のようなものも悪くはないが、あえて現代の技術進歩を享受するなら、タグ・ホイヤーのソーラーグラフという選択はかなりおすすめできる。これは、スイスでも大手ムーブメントメーカーであるラ・ジュー・ペレとタグ・ホイヤーによる、光で充電可能なクォーツムーブメントCal.TH50-00を搭載したものだ。例えば、1日分であればわずか2分間の充電で稼働させることができる。もちろん、腕につけている間も充電されるため、平日は毎日着用するような場合はバッテリー自体の寿命がくるまで改めて時刻合わせをすることなく使い続けられる。

タグ・ホイヤーのソーラーグラフは、元々チタンケースを採用して登場した。

 さらに、その恩恵は厚さ約10mmの薄型ケースにあらわれている。アクアレーサーは、ダイバーズウォッチとしての頑強さとプロポーションが魅力ではあるが、反面、人によっては大きく感じることもあるだろう。このソーラーグラフ搭載モデルならば、直径40mmの薄いケースと相まって、多くの人の手首にフィットすることと思う。サイジングについても悩みどころが少ないのは、初めての1本としてはアドバンテージと言える。

 ダメ押しの朗報としては、タグ・ホイヤー アクアレーサー プロフェッショナル200 ソーラーグラフにはSSモデルが拡充されたこと。このシリーズは元々チタンケースが魅力のモデルだったものの、全体にマットな仕上げが施されたグレード2チタンケースはどちらかというと玄人向けなように思う。SSケースは、ポリッシュとサテンを使い分けたオーソドックスな仕上げに変更されており、初めての人にとってはスイス時計の質感をより体感しやすいだろう(なお、シリーズの拡大に伴って34mmのバリエーションも追加されており、女性が日常的につける時計としても有力な候補になった)。

価格: 28万6000円(税込)
その他の詳細は、タグ・ホイヤー公式サイト