Photos by Anthony Traina
現代のダイバーズウォッチは、何らかの理由で外付けのベゼルを備えた特定の外観を持つべきだとほとんど決めつけられている。ただし、これは常にそうだったわけではなく、最新の39mmロンジン レジェンドダイバーは今日ではその必要がないことを示している。
1959年、ロンジンはスーパーコンプレッサーダイバー Ref.7042を発表した。当時のユニバーサル・ジュネーブやジャガー・ルクルトなど、時の砂に埋もれてしまったほかの多くのブランドと同様、このダイバーズウォッチはエルヴィン・ピケレ社(Ervin Piquerez、EPSA)の“スーパーコンプレッサー”ケースを使用していた。このケースはインナー回転ベゼルとふたつのリューズが特徴だが、実際には防水技術で特許を取得しており、水圧が高まるにつれてケースバックをさらに密閉する仕組みだ。
これは現代のロンジン レジェンドダイバーの起源である。2007年に登場し、現在(減少傾向にある?)のヴィンテージにインスパイアされたトレンドの最前線に立っていた。長年にわたり、ロンジンは42mm、36mm、グラデーションダイヤルなど、さまざまなレジェンドダイバーバージョンを発表してきた。しかし昨年リリースされたレジェンドダイバー 39mmは、私にとってすべての要素が完璧にそろった初めてのモデルだった。
2023年末にリリースされたスティール製レジェンドダイバー 39mmは、ブルーまたはブラックのラッカーダイヤル、そしてレザーストラップまたはライスブレスレットの選択肢がある。サイズとフィット感はダイバーズウォッチとしてほぼ完璧で、ケース径39mm、厚さ12.7mm、ラグからラグまで47mm、さらに300mの防水性能を備える。ボックス風防はインナーベゼルより高くなっており、スタンダードなアウター回転ベゼルよりも洗練された外観を与えている。これにより一般的な39mmダイバーよりも大きく見えるが、邪魔にはならない。2時位置と4時位置には大きなリューズがあり、それぞれベゼルの回転と時間調整用に使用される。オリジナルのEPSAケースと同様に、リューズはクロスハッチデザインという懐かしさを感じさせるディテールだ。
ポリッシュ仕上げのラグと薄いベゼル、サテン仕上げのミドルケース、サテン仕上げとポリッシュ仕上げが交互に施されたリンクなど、ケースとブレスレットにはポリッシュとサテンがミックスされている。最初はダイバーズウォッチにポリッシュ仕上げのラグがあることに疑問を感じたが、ロンジンが時計のフロントをポリッシュにしたことで、ほかの多くのダイバーズウォッチよりもドレッシーな外観(少なくともドレッシーに見せる可能性)を与えている点が実際には気に入っている。
インナー回転ベゼルのもともとの動機は、ダイビング中に誤ってぶつかってしまうことがないようにするためだったが、現在では標準的なアウターベゼルのダイバーズウォッチよりも少しエレガントな印象が強い。
レジェンドダイバー 39mmは厚さが13mm弱で、例えばチューダー ブラックベイ 58とほぼ同じだが、わずかに下向きのラグと薄いミドルケースのおかげで、実際にはより薄く感じる。クローズドケースバックには、ロンジンではなじみ深いレトロなダイバーモチーフが施されている。
ライスブレスレットは特に価格を考慮すると非常によく作られている。20mmのラグ部分からクラスプまで16mmにテーパーし、手首にきれいになじむ。レトロなライスブレスレットのデザインはレジェンドダイバーと完璧にマッチしており、ストラップバージョンよりも3万3000円多く支払ってでもブレスレットを選ぶことをおすすめする。ダブルセーフティフォールディングクラスプには5つの微調整位置があり、工具不要な微調整機能があればさらによいと思うが、それ以外の点ではブレスレットとクラスプのフィット感や仕上げはこの価格の時計に期待できるものだ。ここは明確にしておきたい。なぜなら、一部のブランドはブレスレットやクラスプの品質を明らかに落とし始めていると感じるからだ。
ダイヤルデザインは2世代目のオリジナルRef.7042にほぼ忠実だ。アプライドインデックスの横には夜光塗料が塗布されているため、ひと目でそれと分かる。筆記体の“Automatic”テキストは、オリジナルのRef.7042を直接引用したもので、この文脈では理にかなっている。
夜光塗料の視認性は良好で、ほかの時計ではもっと強力な夜光が使われているかもしれないが、このモデルに塗布されたものは十分に役立つ。暗闇のなかで、ダイヤルと針に実際に2色のスーパールミノバが使われていることを発見するのも楽しい。
レジェンドダイバー 39mmの内部には、ETAベースの自社製Cal.L888.6を搭載。この自動巻きムーブメントは約72時間のパワーリザーブとシリコン製ヒゲゼンマイを備えている。ほかのレジェンドダイバーのキャリバーとは異なり、同ムーブメントはCOSC認定を受けており、日差-4~+6秒の精度を保証する。2万5200振動/時で動作し、ハック機能も装備。ダイヤルデザインはすでにビジーであり(悪い意味ではない)、レジェンドダイバー 39mmをつくったのは賢明だが、将来的に日付有りバージョンが追加されても驚かないだろう。
内外装の仕様は、ロンジン レジェンドダイバー 39mmがISO 6425に準拠していることを意味する。
ロンジン レジェンドダイバー 39mmが、実際にはオリジナルよりも小さくなっていることを指摘する人もいるだろう。オリジナルは42mmというおおぶりなサイズであった。このバージョンは直径を3mm縮小し、ラグからラグまでの長さも5mm短縮(52mmから47mm)、より多くの人の手首にフィットするようになった。それでもフィットしない場合は、ほかに36mmと42mmの2サイズがカタログに存在するためそちらをチェックだ。既存モデルは常に“ちょうどいい”サイズ感に、若干の不満を感じさせていたが、39mmモデルがその穴をしっかりと埋めた。
加えてこの時計のすべてのディテールは配慮が行き届いている。ロンジンが、熱心な愛好家の声に耳を傾けていることを明確に示したようだ。オリジナルと同様にノンデイト、39mmのダイバー、独自のCOSC認定キャリバーを搭載し、ほかの大手スイスブランドの競合モデルよりも低価格で提供されている。
私は以前から、スーパーコンプレッサースタイルのダイバーズウォッチのファンであり、現代の市場や流行にもふさわしいと感じる。少なくとも一部の購入者は伝統的なスポーツウォッチに興味を示さなくなっているようだが、この時計は依然として本格的なダイバーズウォッチであり、その歴史が魅力のひとつでもある。それに加えて、よりフォーマルな場面にも適している点もポイントだ。
ロンジンは2000ドルから4000ドル(日本円の価格で約32万~64万円)の価格帯を得意とし、ほかの多くの(かつては)“手頃な高級”ブランドのようには価格を上げていない。レジェンドダイバー 39mmは、ロンジンがこのスイートスポットで導入した最近のヒット作のひとつだ。スピリットコレクションからマスターコレクションのドレッシーなオプションまで、ロンジンは競争力のある価格ながら、現代的かつ伝統を感じさせる時計を提供している。レジェンドダイバー 39mmはそのひとつであり、ロンジンのラインナップのなかで私が最も好きなダイバーでもある。
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