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Watches & Wondersやほかの場所で、今年は業界全体のブランドから多くの新商品が発表されたが、我々の多くはこれまで見てきたものを1歩引いて、その背景を改めて評価・理解する機会をまだ持っていない。そこで今回は2023年の中盤に向けて、HODINKEEエディターを集めて個人的なイチオシを聞いてみた。もちろん年内中に発表される時計はまだまだたくさんあるが、とはいえちょっと小休止の時期でもあるため、ここで中盤までのピックアップを決定するにはこれ以上のタイミングはないと思ったのだ。
カルティエやタグ・ホイヤーのような大手ブランドから、独立系、さらには腕時計業界のニューカマーまで、現在までの2023年に発表された各エディターお気に入りの時計を紹介していこう。
タグ・ホイヤー カレラ “グラスボックス” クロノグラフ
私は今年、タグ・ホイヤーの新しいカレラ グラスボックス 39mm クロノグラフとともに、3回にわたって過ごす機会を得た。ひとつ目は、Watches & Wondersに先駆けて、ニューヨークでブルーダイヤルを使ってちょっとしたハンズオンを行った。そしてW&Wのタグブースでブラックの逆パンダを扱い、そして展示会の数週間後、ロンドンで行われたライアン・ゴズリング(Ryan Gosling)氏との新キャンペーンを披露した際、両方の時計にもう少し時間をかけて、そして締めくくった。これはすべて私が考えを深めるための十分な機会を得たということである。表面的な私の考えとしては逆パンダよりもブルーダイヤルのほうが好きだが、どちらのバリエーションも消費者の立場からすると非常に魅力的であり、タグ・ホイヤーにとってはゲームチェンジにつながるものだと思う。
39mmというサイズ感と手首に巻いたとき、37mmのヴィンテージウォッチに近いつけ心地を提供してくれるのが気に入っている。グラスボックス風防は過去を呼び戻すものだが、傾斜を描いたダイヤルは新旧の架け橋となる現代の発案だ。ブルーダイヤルバージョンは未来の成長を犠牲にせずに過去を尊重するための優れたモデルである。これはカレラの新しいプラットフォームとして、大きくスイングしてホームランを打つ必要があったが、このリリースではそれを実現できたと自信を持って言える。私はこれまでタグ・ホイヤーのカレラのターゲットではなかったのだが、新しい39mmのグラスボックスでその対象となった。この新しいデザインコードが今後どのように進化していくのか、とても楽しみにしている。
– ダニー・ミルトン(Danny Milton)、マネージングエディター
ショパール L.U.C 1860
これは私がずっと(ブランドに)頼んでいた時計だ。それは1997年に発売されたショパールの初代L.U.C 1860を現代風にアレンジした時計で、多くのユーザーも同様に求めていた。ルーセントスティール™で展開した新しいL.U.C 1860は直径36.5mm、厚さはわずか8mmという伝統的なサイズ、COSC認定のジュネーブシール製マイクロローターキャリバー、ゴールドのギヨシェ文字盤を備えるなど、オリジナルの1860のいいところをそのまま受け継いでいる。もちろん私はオリジナルにある中央のギヨシェ模様のほうが好きだが、つまらないことを言うのはやめておこう。
ショパールは、オリジナルが持つ最良の特徴を維持するだけではなく、新しい1860を著しくモダンなものにするために、いくつかのアップデートを行った。なかでも最大の変更点は多くの人が求めていたもの、そう、日付なしだ! しかしそれだけではなくケースはSS製で、ラグはやや厚い。文字盤はオリジナルのサーモントーンを模したサーモンコッパーカラーだが、SSケースとの組み合わせにより、さらに現代的になったように感じる。これは現代のドレッシーな時計の、プラトニックな理想に限りなく近いものである。
それは新しいものと古いものを区別するのに十分な変更である。(やりすぎて)疲弊しきったヘリテージの復刻版ではなく、過去25年間で最高の3針時計のひとつの次世代版なのだ。そしてショパールは現在もスイスに存在する、数少ない独立した家族経営のウォッチメーカーのひとつで、さらにルーセント スティール™のL.U.C 1860のような腕時計により、L.U.Cコレクションを発表した1997年のときのように、ほかとは異なる存在としての地位を確立しているのだ。
– トニー・トライナ(Tony Traina)、エディター
カルティエ ベニュワール バングル
先月の展示会まで巻き戻そう。小さなプレゼンルームのなか、熱心なHODINKEEのエディターたちがカルティエブランドのノートとペンを持って辛抱強く座っている姿を思い浮かべてほしい。そこに登場したのは、ベージュのベルベットが敷き詰められた赤いウッドトレイの上に置かれた、黄金に輝く金色のベニュワールのバングルだった。そして、ジュネーブで過ごす1週間のなかで重要な存在になるとわかっていた彼女を私は誰かが手に入れるよりも早く手にした。
おもしろいことに私はベニュワールにハマったことがない。それは私の好みの範囲にしては少し小さく、あまりにも“女性らしい”タッチだからだ。だがこの曲線的で細長いオーバルウォッチをバングルに装着する考えは、まさに天才的な発想だった。ベニュワールはバングルの上だと、まったく新しいカテゴリーの時計となるのだ。ダイヤモンドをふんだんに使用した伝統的な意味での宝石ではなく、文字盤やベゼルに散りばめられた後付けの宝石によって、“ジュエリー”と誤って大げさに分類されたわけでもない。
この時計はカルティエが認める消費者、つまり時計と宝石の両方が好きで、同じ手首(このバングルウォッチは実際にそのためにデザインしている)にそれらを重ねても平気(扇情的ね!)な女性のために意図的につくられた、洗練されたデザインなのだ。私たちがいる時計中心の世界から飛び出せば革命的とはいえないが、しかし私はこの小さな成功を祝うに値する勝利として受け止めたいと思う。
私はこの時計をイエローゴールドやパヴェダイヤモンドで覆われたものと重ねて、単体で身につけたいと思う。エレガントなヴィンテージ風でありながらコンセプトは完全にモダンなまま。まさにパーフェクトだ。
– マライカ・クロフォード(Malaika Crawford)、スタイルエディター
サイモン・ブレット クロノメーター アルティザン
最近の記憶では、サイモン・ブレットのクロノメーター アルティザンほど私を虜にした時計はない。それは純粋な時計製造が持つ素晴らしさにある。私は時々、個人的なストーリーに心を奪われることがあるが、そうでなければ、ほかの方法では結びつかないような腕時計にも心を奪われることがある。ブレット氏の情熱と個人的なストーリーは確かに評価できるが、純粋なクラフトマンシップがこれほど印象に残り感銘を受けた時計は記憶にないのだ。
この時計には、業界のなかでも最高の職人による複雑な仕上げや、手が加えられていない部分がひとつもない。文字盤が持つ魅力的なエングレービングは、これまでの時計にはなかったものだし、ムーブメントも斬新で美しく、ケースは驚くほど快適だ。確かにウェイティングリストは6年分もあるが、(最終的に、仮にね)私に電話がかかってきたときには、まだお気に入りの時計だと主張することができるかもしれない。
– マーク・カウズラリッチ(Mark Kauzlarich)、エディター
ジャガー・ルクルト レベルソ・トリビュート・クロノグラフ
これまで登場した2023年のお気に入りの時計をひとつに絞り込むというのは、そう簡単なことではありませんでした。METAS認証を取得した新しいチューダー ブラックベイには頭が上がりませんし、自分用に1本欲しいくらいです。それとトリローブのアン・フォル・ジュルネ デューン(Une Folle Journée in Dune)も実に魅惑的で、小さな不思議にあふれています。ですがひとつだけ選ぶとしたら、ジャガー・ルクルトのレベルソ・トリビュート・クロノグラフを選ばなけれざるるを得ません。
僕はドレスアップすることが嫌いな男です。もしスーツを着てネクタイをしている僕を見かけたら、僕が心のなかで涙を流しているとポール・ニューマン デイトナに賭けて言ってもいいでしょう。しかしここで問題なのは、僕はドレスウォッチが大好きだということ! 見てください、ドレッシーなアイテムをショートパンツやTシャツに合わせることに問題はないのですが、でもスポーツ観戦も好きなため、このふたつの世界を1本のパッケージで楽しめるとしたらどうでしょう? このレベルソは僕にとってその絶妙なバランスを保っているのです。
ほかのレベルソと同様、トリビュート・クロノもふたつの側面を持っています。シンプルでエレガントなスタイルが欲しければブルーグレーのサンバーストのパターンが見事な文字盤を選ぶ。スーツを強制的に着る場合でも、スウェットを着て近所のカフェでくつろぐときも、この時計を身につけたいですね。こちらの面だけでも十分魅力的ですが、裏返すと本格的なウォッチメイキングとしての魅力にも包まれているのです。
クロノグラフ側はスケルトナイズしていて、そこからコート・ド・ジュネーブ仕上げのブリッジや、この時計を動かしているムーブメントの楽しい内部構造を鑑賞できます。構造的には素晴らしく(僕の肉眼では仕上げの良し悪しを判断できませんでした)、中央のクロノグラフ秒針と6時位置の30分計レトログラードカウンターは、スケルトンの文字盤からは想像できないほどぴったりです。30分ごとにミニッツカウンターがゼロに戻っていくのを見るためだけに、何度もクロノグラフ機能を作動させるかもしれません。レトログラードなら何でもありです。
全体的に見て信じられないほど素晴らしく、高級感のある上品なレベルソにスポーティな一面をミックスしている。僕はこれが大好きです。好きなほうを選ぶことはできませんが、それは重要な問題ではありません。ローズゴールドかステンレススティールか。それは決めたいね!
– ブランドン・メナンシオ(Brandon Menancio)、エディター
グランドセイコー SBGW295
グランドセイコー SBGW295は、現在までの2023年のお気に入りの時計であるだけでなく、単に美的観点から見ても、おそらくここ数年のリリースでいちばん好きな作品かもしれない。シンプルでクリーン、そしてシャープでエレガントな文字盤を備えているからだ。簡単に言ってしまえば芸術作品なのだ。賛成か反対かは別として、ここでいう“芸術”は議論の余地はない。これ(芸術)は漆でできたダイヤルの上に、手作業でエナメル加工が丹念に施されたゴールドインデックスと文字盤の話だ。
この傑作は38mmのチタンケースに包まれ、ゴールドの針は手巻きCal.9S64で駆動する。1月に発売されたこのモデルは500本の限定生産であり、価格も181万5000円(税込)と高価格だ。しかし何であれ、これは考えさせられる作品であり、お金や相対的な価値はさておきシンプルさを極めた最高の逸品なのである。
– ウィル・ホロウェイ(Will Holloway)、ビデオディレクター
ジン T50
僕はこの1年間ほど、なにかとチタンモデルに世話になっているが、先日発表されたばかりのジン T50は41mmという手頃なサイズでありながら、チタンをうまく使うことで腕の上で重さを感じさせない存在感と、意図的にツールのような魅力を表現した好例といえる。
同モデルをレビューした僕の記事はここから読むことができるが、T50はジンの優れたSS製ダイバーズウォッチ、U50をチタン製にアレンジしたもので、いくつかの改良が加えられている。まずUXスタイルのバトンハンド(うっとりしてしまう)に、(ベゼルを回転させる際に)若干下方向に力を入れないと回らない誤回転防止構造のベゼル、そして完全なるモノクロームの仕上げ(マジでモノクロ画像みたいな写真もある)などだ。
チューダー ブラックベイ54や、マラソン SSNAV-D ナビゲーター デイトもそうだが、ジンのこのツールウォッチ的で非常に繊細なチタンダイバーは美しく身につけられて、さらにグレード5のチタン構造とトリックベゼルを装備することでU50とは一線を画す存在にもなっている。ジュネーブのタイム・トゥ・ウォッチズで試着してみたが、すぐに忘れられるような時計ではなかった。
– ジェームズ・ステイシー(James Stacey)、リードエディター
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