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June 22, 2021
Hands-On オーデマ ピゲ ロイヤル オーク "ジャンボ" についての考察 - 新しいプラチナモデルをなぜ誰も好きと言おうとしないのか?

Hands-On オーデマ ピゲ ロイヤル オーク "ジャンボ" についての考察 - 新しいプラチナモデルをなぜ誰も好きと言おうとしないのか?

もしかすると、本当に完璧なものに直面したとき、私たちは皆、それがなくてもやっていけるようにしているのだろうか。

 私は10年以上にわたり、ロイヤル オークについて詳細に書いてきた。実際、この時計に関するいくつかの記事は自分の中で最高の仕事だったと思うし、少なくとも最も楽しく書くことができたと言っていい。それは単純に私が愛して止まないテーマであり、時計についてだからだ。

 GQ(発売中の号)での簡単な紹介から、当時物議を醸していた新しい41mmクロノグラフの徹底レビュー(ビデオ付きで、ブランドとしてのオーデマ ピゲをかなり深く分析したが、これは今でも真実だと思う)、今は終了してしまったJay-Zのウェブサイト(当時としては先を行っていた!)でのヒストリー・レッスン、A品番に関して書いた今でも誇りに思う記事 (TimeZone.comに残っているか、またはWayBackMachineで見ることができる)まで、多岐にわたる。

 私はロイヤル オークが大好きなのだ。10年前、この時計の40周年記念イベントの一つをニューヨークで主催したことすらある。ハイエンドスポーツウォッチの中では、本物中の本物だと思っている。私が買える状態である限り、いや実際それ以前から、私の時計コレクションにはロイヤル オーク"ジャンボ"があった。そして、それはこれからも変わりないのだ。

私は長い間、ずっとロイヤル オークを愛してきた。そして世界はそれを知っている。

 そう思っているのは私だけではない。オーデマ ピゲ(以下、AP)は今や10億ドル規模の時計ブランドであり、世界でも5本の指に入るほどの価値がある。彼らの時計は、そのほとんど全て(!)が定価に近い価格で取引されているが、スティール製のロイヤル オークの場合は、それをはるかに上回る価格だ。この問題を深く科学的に研究した結果(Chrono24.comでの一回の検索だが)、SS製の15202は現在、約10万ドル(1090万円)で取引されていることが分かった。その希望小売価格、つまり「あなたが買いたいと思っている時計を作っている人たちが、実際に価値があると言っている金額」は、APのウェブサイトにはっきりと表示されている。2万6700スイスフラン、今日の換算レートで319万円(税込)だ。この差は大きいと思わないだろうか?

 昔から人気があったわけではない。2010年当時、時計業界の外にいる友人たち(そういう人たちがいる、あるいはいた)が、ロイヤル オークに全く関心がなかったことをはっきり憶えている。「あれに一体いくら払ったんだって?」と言っていた。友人のRobert-Jan(ロバート-ジャン、スピーディ好き)が、1998年もののような気もするがおそらく2010年のホワイトダイヤルの15202を購入した直後、ニューヨークを訪れたときのことだ。彼の妻が「その時計すごく1970年代っぽい!」と言っていたのを思い出す。また、15202を含むすべてのロイヤル オークが、世界中で常に小売価格を大幅に下回る価格で取引されていたことも憶えている。素晴らしかった。世界で最も特別な時計のひとつが、実際に手に入ったのだから。現在と過去を最も密接に結びつける時計であるジャンボは、当時、人々が欲しいと思うものでは全くなかったのだ。

 その一例をご紹介しよう。2010年にクリスティーズで販売された15202は、6000~8000ドルの予想に対し、1万0625ドル(約116万円)で落札された。当時の小売価格は確か1万4100ドル(約155万円)程度だったと思う。ジャンボを欲しがっていたのは私のようなマニアと、純粋主義者やTimezoneのフォーラムに参加していたOGだけだった(APを愛する兄弟、ハワード・パーには感謝!)。顧客は、概してオフショアを求めていた。友人(現在は時計業界の一員)が「なんだこれは、ピンクの文字盤なんて!」と言いながら、14802STジュビリー に1万2000ドルも払う私をクレイジー呼ばわりしたのを鮮明に憶えている。その時計の現在の価格? お察しの通りだ。

 2014年にAPというブランドについての詳細な考察を書いた(ちょうど再読していくつかのことを学び直したところ)とき、基本的に時計に関心のない金持ちオヤジたちはオフショアを、我々マニアはジャンボを手にした。結局、当時APのCEOであったステファン・ウルクハート(オメガのレイナルドの前任者でもある)による「若者のためのロイヤル オーク」という信念は、1993年の発売当時に事実上実現したのだ。そして、見事に成功した。

 非常に大雑把な話をすると、コレクターがロイヤル オーク"ジャンボ"やパーペチュアルを着ける一方で、その他の人たちは別のものを着けている。 それは、簡単にいうと「オフショア」のことだ。

– 私の発言, 2014年

 とにかく、それ以来好みが進化して、マニアに人気のあったジャンボが今では誰にでも好かれるようになった。極端にね。これは良いことだと思わないだろうか? 我々は自分たちの仕事をして、それが今、評価されるべきものになった、ということだ。

プラチナ製の15202は、すぐに名品となった。しかし、人々は色々と考える。

 今年の3月、同僚の(ジェームズ・)ステイシーがプラチナ製ロイヤル オーク ジャンボ(Ref.15202PT)を紹介したとき、私は「ああ、これは究極の逸品だ!」というような感想を予想した。というのも、このモデルはAP(今、世界で最もホットなブランドの1つ)の上級モデルとして誰もが認める時計にプラチナ製のケースを採用し、11までのバリエーションとしたからだ。これは、1972年の誕生以来、無数のバリエーションがある"ジャンボ"にとっては比較的珍しいことで、特にプラチナ製はほとんどなかった。しかし、実際にはそういう筋書きにはならなかった。以下にコメントを紹介する。

 ちょっと待ってくれ。何だ? みんな辛辣じゃないか。つまり、HODINKEEで普段見るような辛辣さよりもさらに辛辣だったのだ。彼らは必ずしも時計や価格に怒っているわけではなかった。なぜそうなったのか? 基本的には、49年間存在してきた最もヘビーな貴金属製の時計が、新しい(私にとってはクールだが、他の人にとってはそうではないようだ)文字盤スタイルで売り出されたからだ。

何が気に入らないんだ?

 要約すると、全体的な感想は「どうでもいい、どうせ誰もこの時計を買えないだろう」というもので、その中にはムーブメントが「弱い」とか「防水性が低い」といった奇妙な意見も含まれていた。...対処法? この2つの批判は過去49年間のジャンボの歴史の中で言われ続けてきたことであり、この日の投稿者は、この時計が事実上入手できないという認識に少し興奮していたのではないかと思う。

 そこで私は、APやロイヤル オーク、さらにはジャンボが、現在のコミュニティにとってどのような存在であるかを考え始めた。昔、この時計は、好きなときに小売店で買えるマニアックで地味な時計で、売るときはどこに行っても定価より安かった。初期のインターネット時計マニアであるあなたは、APをよく知っていて、それはジャンボのことだった。APがどれだけ限定オフショアを作っても、リック・ロスのアルバムカバーにどれだけ掲載されていても、アリが着けていようがいまいが、あなたがよく知っているのはジャンボだった。そして今、もしあなたがスティール、ゴールド、プラチナのいずれかでも購入したいと思ったら、おそらく「帰れ」と言われるだろう。

 AP、特にジャンボは、10代のころにいた、当時は目立たない隠れたスポーツマンの友人のようなもので、いつもそばにいたが、人気者になった途端見捨てられてしまったようなものなのだろうか? あるいは逆に、今日のAPをつくったのは、時計を購入した我々の責任なのだろうか? はっきりさせておきたいのは、APは記録的な売り上げを出し続け、世界的に人気があり、愛されるブランドだということだ。そして、思春期の不器用さがまだ少し残っているものの、このブランドは素晴らしい製品で革新を続けている(スーパーソヌリRD2シースルーの時計やセラミック時計、そして壮大なラップタイマーを忘れることはできないだろう)。つまり、彼らの視点からはビジネスは好調で、近々に戦略に大きな変化が起こるとは思えない。

 しかし、製品の話に戻ると、コミュニティとしての我々は、我々が常に批判してきたこと、つまり新しいことに挑戦しているAPに報いていない。

 Code 11.59についてどう思おうと(この先書くかどうかは分からない話)、APは、前述したモデルのように、マニア向けの非常にクールな方法でヒット商品を出し続けている。素晴らしい リマスター01もそのうちの一つだ。 時間があれば別の機会に書きたいのは、この時計が小売価格をはるかに上回る価格で販売されていないのはなぜか、ということだ。この時計に費やされた時間と思考は、おそらくプラチナ製のロイヤル オークに費やされた時間と労力の何千倍にもなると思う。それなのに、まだ定価ほどで売られている。

リマスター01には、ここ数年の時計の中で最も考え抜かれたダイヤルワークが採用されている。

 そして、「ロイヤル オーク コンセプト "ブラックパンサー"」だ。何を言いたいかというと、たくさんあるのだ。私にとっての重要なポイントは以下だ。

1.) この時計のアイデアそのものが、現実とは思えないほど奇抜だということ。
2.) APは、最も興味深いラインであるコンセプトを、最小のサイズ(ダイヤモンドをあしらった38.5mmのコンセプトは別として)、最安の価格帯で発売した。
3.) APは自分たちのブランドを誰にでも知ってもらうための活動をし、その点、マーベルとのコラボには意味がある。やり方はともかく。
4.) APのCEOであるフランソワ=アンリ・ベナミアスは、人がどう思うかを全く気にしていない。そして、それこそがAPが今日のような素晴らしいポジションにいる理由なのだ。パテック フィリップと互角に渡り合うには、何かをやらなければならない。そして、彼はその点で世界トップクラスだ。その証拠?  地球上で最も有名な4人の人物がその時計を身に着けている

 もうひとつの疑問はこうだ。需要と供給という単純な経済の問題を、時計の世界で本当にブランドのせいにできるのか。それとも、HODINKEEやInstagramなど、欲望を均等化させがちなプラットフォームのせいだろうか。もしあなたが今、あるいはいつでも、他の99%の時計と同じように5202STを小売店で買うことができるとしたら、あなたは買うだろうか? 私は自信をもって「買わない」と言える。なぜなら、私の時計界でのキャリアの大部分においてそれは可能だったからだ。そして、ほぼ、それをしなかった。15202を手に入れるのは不可能だと聞いてから、欲しがるようになったのだ。これは必ずしもHODINKEEの読者である「あなた」を指しているわけではなく、時計に少しでも興味を持っている一般の人を指している。

 もうひとつ覚えておいて欲しいのは、このブランドはグレーマーケットでは1セントたりとも売ろうとしないということだ。時計が小売店に並ぶと、希望小売価格以上の金額はすべて他者のものだ。なのでグレーマーケットのディーラーや転売者が要求する価格について、ブランドを批判することは必ずしも公平ではない。私もその経験がある。HODINKEE読者から直接、「本当のファン」が手に入れられなかった限定版について、転売品をどうするのかと尋ねられたことがある。必要としないものにお金を払おうとする消費者と、「正しい理由で」そのものを愛する人を見分けることは、簡単なことではない。誰かが時計を売るとして、それが常に転売目的でそうしているのか、逆に単に買ったばかりの時計が好きになれなかったのか、または他の個人的な動機があるのか、推測することはできない。このような推測ゲームは、ビジネスとしてもよくない。もちろん、APは良いビジネスをしている。非常に良い。

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オーデマ ピゲ ロイヤルオーク 15202PT "ジャンボ"

1155万円(税込)で得られるもの。プラチナの塊と、素晴らしいものの集合体だ。

 さて、目下の課題についてだ。ロイヤル オークをこよなく愛する方からの15202PTへの直接の意見、特にその不評を踏まえてのご意見だ。批判された理由は、「ジャンボであること」が大きいと思う。以前は真のマニア向けだったが、プラチナとなったことでAPに対する潜在的な不満のようなものがコメントで表面化したのだと思う。

 私はこの時計が金属製であることにとても興味を持ち、実際にオーデマ ピゲに半日借りられないかと尋ねた。こういった依頼は何年も前から色々なブランドにしているが、APは親切にも1〜2時間の撮影のために時計を送ってくれた。その結果がこれだ:たしかにロイヤル オークなのだ、プラチナ製の。そして、工場出荷時のまっさらなロイヤルオークのように精巧に仕上げられている。いやあ、すごい。

ジャガー・ルクルトが最初に開発したCal.2120は、現在、オーデマ ピゲが所有している。

49年後、世界のどこかにこれ以上の完成度の高いケースがあるだろうか。

 15202をご覧になった方なら、この時計が何であるかを正確にご存知だろうから、私はここでレビュー(あるいはこの物語)を終えることができる。しかし、時計は時として、その部品の総和をはるかに超えるものだ。この時計が少しだけ筋書きから外れるのは、意外にも文字盤なのだ。ロイヤル オークにはタペストリーダイヤルが必要だろうか? 確かにそうだが、誰も言わない。グリーンのサンバーストは、実際に見るととてもリッチだ。明るいところでは、ほとんど輝いているようである。

15202のグリーンサンバーストの文字盤は、暗い場所と明るい場所ではかなり色合いが変わる。

ご存知?

APは14802 ロイヤル オーク ジュビリーをプラチナ製のブルーストーンダイヤルで製造したが、11年前なら現在のSS製の15202と同じくらいの小売価格で買うことができた。

 ここで重要なのは、プラチナの時計は常に他の金属とは微妙に異なる文字盤の処理をしているということだ。実際、2011年頃にカフェ・クルニーでウィリアム・マッセナと一緒にいたとき、彼がロイヤル オークを手首から外して見せてくれたのを憶えている。それはプラチナ製の14802で、ブルーストーンの最高の文字盤だった。もちろん、2020年にAPは日本限定のダイヤモンドマーカー付き15202PTブラックダイヤル(ノン・タペストリー)を発表した。だから、ロイヤル オークには特定の種類の文字盤が必要だという人は正しいかもしれないが、プラチナケースのロイヤル オークでなければ、の話だ。

 それでもプラチナのジャンボを初めて見たのがウィリアムのものだったこともあり、私の中では彼のイメージが強い。なので今回の新作やAPについての考えを聞いてみたいと思った。

 「プラチナの15202は好きかって? もちろん。とても美しい時計だと思うけど、この時計を買うためにウェイティングリストに登録するかというと、しないと思う。なぜなら、世の中にはもっと面白くてユニークな時計があると思うから。『もう十分やりつくした』なんて言う飽きっぽい男になりたくはないけど、新しい買い物で感動させる必要があるのは自分自身だからね」

 ウィリアムにこれ以上何を答えろというのだろう?

 さらに、世界で最も注目されているAPの長期的なファンの一人であるジョン・メイヤー氏にも感想を聞いてみた。「ジョン、新しいプラチナのジャンボをどう思う? みんながちょっと辛口なのはなぜだと思う?」

もちろん、グリーンの文字盤の15202PTは美しい。欲しくても手に入らないものを見たときに勝つための唯一の方法は、欲しがるのをやめること。欲しがるのをやめるための唯一の方法は、それが好きではないと自分に言い聞かせること。

私からのアドバイスは、この時計を見て、微笑んで、その当然の美しさに感心して、それからスクロールすることだ。

– ジョン・メイヤー

 なるほど。そこなんだ。私たちは皆、好きなのに手に入らないと思うと、少し怒る。これはAPファンならよくご存知のことではないだろうか。

 さて、私が15202PTを見たいと思った理由の半分は、この5年間私の絶対的なお気に入りだった時計の1つと比べてどうなのか知りたかったからだ:15202BCだ。

次のレベル、そしてされに次のレベルを表す2つのモダンなロイヤル オーク。

 予想通り、「サーモンピンク」の文字盤を持つホワイトゴールドのロイヤル オークは、重厚なプラチナに比べて、よりソフトで軽やかな印象だ。BCはヴィンテージライクで温かみがあり、PTは(良い意味で)冷たくて粋な感じがする。文字盤の色だけでロイヤル オークの着けこなし方は大きく変わる。私は、ロイヤル オークをお金持ちのスラップ・ブレスレットのように考えているが、それはロイヤル オークの色を同じように服装や気分に合わせて着こなしている男性を何人も知っているからだ。不思議なことに、15202のBCとPTのバリエーションは本当にムードに合わせられることに対し、15202のブルー/グレーのダイヤルは普遍的に着用できて素晴らしい。それがスタンダードモデルの文字盤カラーであることも、ホワイトゴールドには温かみのあるヴィンテージライクな雰囲気があることも、プラチナにはクールで尖った雰囲気が出ていたのも納得できる。

 私はRO(ロイヤル オーク)マニアなので、この時計についてさらにいくつか質問があった。そのうちの一つは、プラチナのジャンボを最初に受け取ったジャン-クロード・ビバー氏に触発されたものだ。彼はそのことを投稿し、「この時計はロイヤル オークの50年を記念して作られたものであり、特別だ 」と言っている。面白いことに、今年はロイヤル オークが誕生して49年目であるし、来年は間違いなくこの象徴的なモデルの大ヒットの年となるだろう。しかし、誰もこの時計が記念モデルであるとは言っていなかった。そこで私は、業界で最も優れた人物の一人であり、長年の友人でもあるマイケル・フリードマン氏(APのコンプリケーション部門の責任者でもある)に聞いてみた。答えは、「この時計は記念モデルではありません」だった。

 15202PTは限定モデルではなく、シリアルナンバーもない。それは、年間75本以下で製造される15202BCと同様だ。しかし、だからといって世の中に出回っているわけではない。価格は1155万円で、ホワイトゴールドの時計のほぼ2倍の価格だ。大金であることは間違いないが、これには大量のプラチナが使われているし、ジャック(・フォースター)が何年にもわたってこのサイトで紹介してきたように、プラチナの加工はゴールドやスティールの加工とは全く別物なのだ。しかもここでは純正の、信じられないほど高度に仕上げられたブレスレットとクラスプについて語っている。

友人のグウェン・ステファニーの言葉を借りれば...。

見れば分かる。

 あなたがお金を持っていて、その時計が欲しいとしよう。APの長年の顧客でなければ、買える可能性はないのだろうか? 骨抜き状態の公式ルートではなく、友人が次から次へとブティックに電話をかけてみた。その結果、こんな感想が返ってきた。

ブティックにも置いていないような高級時計。

 そうそう、この時計は 「APハウス 」でしか買えないと発表されていた。しかし、APハウスとは一体何なのか、どうやって見つけるのか。APのホームページを見ても、ハウスとブティックの違いを読み解くのは難しい。ロンドンとバルセロナにハウスがあり、今後も増えていくようだ。Professional Watchesには2018年の話が載っている。「ソーホーと時計ブティックの融合(Soho House meets watch boutique)」というクールなコンセプトとのことで、その結果は素晴らしいようだ。「お客様はAPハウスで3~4倍の時間を過ごします」とWatchProは言っている。平均的なAPファンにはあまり役立たないようだが、彼らはスティール製のロイヤル オーク以外に何かを買いたいと思うだろうか? しかもAPは「他のものも欲しい」という顧客に応える権利があるのではないか。ほとんどの場合そうだろう。ロレックスの店舗が、インスタグラムで5000人のフォロワーがいると主張する、スポーツウォッチに最近興味をもったばかりの人でなく、何年もゴールドやツートンカラーのドレスウォッチを買い続けてきた顧客にスティール製のデイトナを提供する権利があるのと同じように。

 "ジャンボ"のように数が限られているモデルに関しては、オーデマ ピゲがCal.2121の生産権を独占的に所有していることをご存知だろうか。この極薄の自動巻きムーブメントは匠の技が必要とされるため、専用の工房で特別な訓練を受けた時計師によって生産されている(これは現在、トップ5のブランドがヴィンテージ・ムーブメントを製造しているのと同様だ)。このムーブメントは、事実上、今日作られているヴィンテージムーブメントであり、APのはるかに複雑なキャリバーと並んで、彼らが容易に製造することができるものだ。2121は、人気の高い永久カレンダーや更に複雑な時計にも搭載されているCal.5134のベースキャリバーでもある。

15202PTはプラチナ製の時計がそうであるように、容易に買えることは想定されていない。

 この時計は簡単に手に入るものではなかった。APの歴史の中でも、総プラチナの時計は通りすがりの人間が買えるようなものではなかったから、その点を責めることはできない。同時に、ジェームズがこの時計を我々愛好家の小さなコミュニティに初めて見せたとき、辛口コメントが飛び交った理由もわかる。APが必要としていたときに我々は傍にいたような気がするのだが、おそらく今では彼らは我々のことをすっかり忘れてしまったように感じたためだろう。そしてこの時計はあまりにもビッグになりすぎて、最終的に 「やめろ、もう十分だ」と言いたいところまで来てしまった、ということだ。

 しかし、あなたがAPの長年の顧客であったならば、確実に違うと断言できる。中古で時計を買って、それをインスタグラムに投稿することは、ブランドにとって多くの人がそう信じたいほどの意味はないのだ。誰かが非公式のアンバサダーやインフルエンサーになれるわけでもない。だから、最近のAPの成功に腹を立てる前に、消費者としての自分をしっかりと見つめ直し、ブランドが気にかけるべき人としてどの位置にいるのかを確認してみてほしい。私は最近それをやってみて、目が覚めた。そしてメイヤー氏が提案するように、「時計を見て、笑って、その当然の美しさに感心して、スクロール」することにした。

 スムース・ダイヤルと弱いムーブメントを備えた、49年間続くアイコンになされた、完全に美しくもなく、信じられないほどよくできたとも言えないアップデートについて詳細は、こちらを