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A Week On The Wrist セイコー 5スポーツを1週間レビュー

時計愛好家のアイコンたる精神を受け継いだセイコー 5が新たな道を切り拓く。

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本記事は2020年1月に執筆された本国版の翻訳です。

2019年、セイコーは長年愛されてきたセイコー 5のラインナップ一新を発表した。エントリーモデルにして機械式時計の入門機でもあったセイコー 5は、セイコー愛好家に向けた基幹モデルとして長く親しまれてきた。しかし、永遠に続くものはないという諺(ことわざ)のとおり、セイコーは新セイコー 5を発表することで、旧モデルを生産終了とし、セイコー 5の輝かしい歴史は、新たな章を刻むことになった。

 興味深いことに、セイコーが最近、引退に追いやった時計愛好家のアイコンはこれだけではない。最初はWebフォーラムでの噂だったものが、のちに拡散されるようになった。その噂とは、セイコーは正真正銘のアイコンであるSKX007(およびその多くの兄弟機)を生産中止する、というものだ。

 先日、僕が初めて買った時計の話をしたが、僕が時計に興味を持つきっかけになったあの質素で小さなタイメックスとは別に、誰もが僕に好きになると断言する“おもしろい”コミックの実写版映画のように、僕の新たな章が加わったのだ。それは数多くのセイコーにまつわる物語だが、僕の場合も読者の皆さんと同じように、熱狂的に愛されたモデル、SKX007から始まった。

セイコーのクラシックモデル SKX007。

 ここまでで、“なぜ彼はセイコーSKXのことをそんなにこだわっているのだろう?”、また“新しいセイコー 5のレビューではないのか?”と思われるかもしれない。しかしそれは先代のセイコー 5と、よりダイビングに特化したSKX007(便宜的にSKX007と呼び続けるが、これはほかの多くのバージョンと互換性があるのだ。詳細については後述)の理解なくしては、新世代のセイコー 5の真価はわからないと僕は考えているからなのだ。

 2019年のセイコー 5、別名SRPD系(編集注記:日本での展開はSBSA系となるが、本記事は海外限定モデルも取り上げておりSBSA系で統一できないためSRPD系とする)セイコー 5の新しい様式を創造するにあたって、セイコーは、長いあいだSNK系やSKX系を買うよう友人たちにすすめてきた時計愛好家たちにある程度の敬意を払う必要があった。ただ新しいセイコー 5のデザインにはその両方の要素が見られる。短期間はまだセイコー 5そのものだが、外観はSKX007のごく一部にすぎない。では詳しく見ていこう。

セイコー 5 SRPD67(左)と、SRPD93(右)。


“5”の由来は?

 セイコー 5は1963年に発売され、当時(少なくとも日本で)セイコー 5からグランドセイコー(1960年に名機Cal.3180を搭載したJ14070を発売)までがラインナップされていたセイコーの入門機として、スポーツに適したデイリーウォッチの提供を意図していた。

 さらに、セイコー 5を所有したことがある(あるいは読んだことがある)人は多いと思うが、この “5”には意味があることをご存じだろうか。セイコーの時計づくりのこだわりを象徴する“5”という数字には、セイコー 5に属する時計が備えるべき5つの基本性能のことを指している。自動巻き、曜日・日付表示、防水性、リューズの保護とねじ込み、堅牢なケースとブレスレットである。1969年のスピードタイマーから、いずれも北米モデルのSNXS77、SNK381、SNK803(またはSNK80x系)といった長年愛され続けているモデルまで、セイコー 5は重要な機能で手を抜かないエントリークラスの機械式時計の代名詞となった。セイコー 5でググると、特定の価格帯のベストウォッチのリストに、高い頻度で1本(または複数本)挙がるのがわかるだろう。SNK803が今でも100ドル以下で手に入るのだから、これには十分な理由がある。

 要するに、セイコー 5の遺産は、時計愛好家の独占欲を満たすためのボードゲーム『モノポリー』における地中海通りやバルト海通りのようなものだ。高価でもなく、派手でもないが、その価値観は純粋なセイコーであり、価値を追求する時計コレクターや購買層に基礎となる構成要素を提供してくれるのだ。


結合組織

 同様に、SKXシリーズはブランドの最もエントリーしやすいラインからワンランク上のものでありながら、もう少しだけスポーツに特化したものである。“SKX”という名称は、この記事の範囲外の時計(クラシカルなSKX779“ブラックモンスター”など)も含む総合的なものだが、セイコーマニアのほとんどが“SKX”という場合、SKX007、SKZX009(ブルー/レッドのベゼル)、SKX011(オレンジダイヤル)、SKX013(SKX007の37mmバージョン)、またはSKX173(ダイヤルデザインが若干異なる米国市場向けのバリエーション)などを指しているようだ。派生モデルにもかかわらず、このデザインのベースとなり、時計コミュニティで圧倒的な存在感を放っているのがSKX007なのだ。

セイコーのダイバーズウォッチ、SKX007

 直径42.5mmのスティールケース(ラグからラグまでの全長は46mm、厚さ13.25mm)に囲まれたブラックダイヤル、逆回転防止ベゼル(夜光ピップ付き)、ねじ込み式リューズ、200m防水と、SKX007はまさにツールダイバーズウォッチだ。僕自身、10年以上愛用している(動画撮影時はもっと短いと思っていたが歳を取ったものだ。僕が初めて一眼デジタルで撮影した下の画像をご覧いただきたい)。この時計は、僕にとって初めての機械式時計であり、初めての本格的なダイバーズウォッチであり、そして時計鑑賞ではなく時計マニアの仲間入りをしたことを象徴している(Poor Man's Watch ForumやWatchUSeekで何時間もかけて、自分の見方が的外れでないことを確認した)。

2007年11月に撮影した、筆者にとって最も古い時計の夜光ショットのひとつ。左から右へ。セイコーのSKX007、ティソのシースター1000オート、バシスの100ファゾム・ルテニウム・ダル、シチズンのアクアランド クロノグラフ、セイコーのSKX779“ブラックモンスター”、そしてトレーサーのクラシック・オート。

 過去10年間(以上)、僕のSKX007は多くの体験をともにしてきた。数え切れないほどの冒険、PADIの資格取得、北米やヨーロッパでの数え切れないほどの仕事への携行などだ。SKX007は、自分にとって必要十分な存在でありながら、困難な状況に陥ったときに外す必要を感じさせない、伴侶となるような時計なのだ。SKX007は、付属のジュビリーブレスレット、セイコーZ22ラバーストラップ、イソフレーン(Isofrane)ラバー、さまざまなレザーオプション、そしてもちろんNATOストラップを装着してきた。数年前、潜水用の時計はほかの時計にもあると思い、Yobokies社製の12時間SS製ベゼルインサートを装着したところ、SKX007はより便利に、より自分らしく変貌した。下の画像は2018年秋、ロンドンで(ニューヨークとの)時差を表示して活躍しているところだ。

前の写真からほぼ12年経った、筆者所有のセイコーSKX007(ベゼル改造済み)。

 実は、セイコーコミュニティでは改造が盛んで、SKXダイバーズほどカスタマイズしやすいモデルはない。セイコーの改造(MOD)コミュニティでは、シンプルなベゼルインサートからサファイアクリスタル風防、針やダイヤルの交換、特殊なケースコーティングなど、あらゆるものを提供している。自分で改造することもできるし、その道のプロの誰かにカスタマイズを依頼することも可能だ。SKX007は、クルマに例えるなら腕時計界のジープ ラングラーのようなもので、実用性を重視したシンプルなデザインでありながら、カジュアルでマニアックな魅力があり、改造やカスタマイズが無限に広がるアンダーワールドでもある。どんなことが可能なのか見てみたいって? Instagramを開いて、#seikomodをスクロールしてみてほしい。

Instagramの#seikomodフィード

 僕の記憶では、このセイコーの改造に約200ドル支払い、少し前にオーバーホールしてもらった(7S26は堅牢性が高いが、精度はあまり正確ではないので、資格を持ったプロフェッショナルに調整してもらうといい)。僕はこの時計が大好きで、友人や家族にも同じもの(または似たようなもの)を買うようにすすめているし、この時計(または僕)が数ある命懸けの冒険によって天に召されるまで、ずっと持っているつもりだ。

 セイコーのダイバーズウォッチは、よりマクロ的視点で見ると、時計愛好家のための時計であると同時に、時計愛好家やカジュアルな購入者の両方にアピールしやすい、誰もが使える時計であるという点で特別な存在だ。SKX007は、手首によっては少し大きく(もしそうなら、SKX013がおすすめ)、ムーブメントも特別正確で洗練されているわけではないが、1968年まで遡ることができるクラシックなセイコーの美学を備えたタフなSS製ダイバーズウォッチで、セイコーはあらゆる形のダイバーズウォッチを知り尽くし、愛しているブランドなのだ

 以上を念頭に置き、僕はセイコーSKX007(そして多くの意味で現行のセイコー 5シリーズ)を、2通りに解釈している。ひとつは製品として、もうひとつは僕の人生の過去10年以上を占める熱狂のきっかけとして、である。話が脱線したように思われるかもしれないが、上記のようなコンテクストを活かして可能な限り説明してみたい。


新生セイコー 5

27種類あるセイコー 5 SRPDのうち、9種類のモデル。

 さて、レビューを始めよう。2018年8月に発表された新生セイコー 5は、先代セイコー 5の哲学と、多くの人に愛されたSKX007の美学をミックスしたモデルだ。SRPD系セイコー 5のラインナップは、27種類(2019年執筆時点)あり、すべてのモデルがダイバーズスタイルで、同じケースとベゼルの構造を採用している(ただし、仕上げは多岐にわたる)。

 このレビューでは、これらの27種類のモデルのうち、色、仕上げおよびスタイルが異なる10本ほどのモデルを取り上げるが、すべてが直径42.5mmのSS製ケース(厚さ13.4mm、ラグからラグの全長46mm)、ディスプレイケースバック(素のSKX007では見られないが、セイコー 5に共通)、100m防水、パッキン入りのリューズ(非ねじ込み式)、ハードレックス製クリスタル風防、幅22mmの貫通ラグ、および新型ムーブメントCal.4R36を共通の仕様としている。

 つまり、セイコー 5としては、曜日&日付表示付き自動巻きムーブメント、防水機能、保護機能付きリューズ、そして耐久性の高いケースとブレスレット(ここではSS製3連リンク、メッシュ、シリコンストラップ、そしてOEMのNATOストラップまで、いくつかのオプションが用意されている)を継承している。そして、引退するセイコーのエントリークラスの王者に応えるかのように、新生セイコー 5系もセイコーSKX007によく似ている。

 ダイヤルデザインは非常によく似通っており(いくつかのブランド表記の変更、アプライドインデックス、新しいセイコー 5のロゴを除く)、ケースは、あらゆる意味でSKXをほうふつとさせる。貫通ラグとディスプレイケースバック(常にユーザーを喜ばせる)にアップデートされたが、セイコーはSKXラインを特にアップデートするつもりはなかったものの(彼らのダイバーズウォッチラインは現在プロスペックスにうまくまとめられている)、セイコー 5の新しいベースとして外観と雰囲気を活かしたかったことは明白だ。セイコー 5の新しいラインナップは、ダイビングに特化したスポーツウォッチ以外にも広がっていく可能性が高いが、僕はセイコー 5のリニューアルに際して客寄せ的にリリースしたモデルと見ていて、SKX007の直系として置き換えを期待していた人たちにとっては、中途半端な出来に感じられたのではないかと思っている。

 新生セイコー 5は、より現代的なセイコー製自動巻きムーブメント、 Cal.4R36を採用することで、確実に進化を遂げている。以前のセイコー 5やSKXに搭載されていたCal.7S26から世代交代した4R36は、ハック(秒針停止)機能と手巻き(Cal.7S26にはなかった)を備え、約40時間のパワーリザーブ、2万1600振動/時(3Hz)、そして僕が今回試した何本かの個体では、Cal.7S26/36ムーブメントと比較して精度が改善されている。新しいセイコー 5シリーズは、前世代の多くのモデルの販売価格よりも少し高い(希望小売価格)が、Cal.4R36はセイコーの最もエントリークラスの製品に共通するものではない(多くの人はプロスペックスダイバーズのムーブメントを経験しているのではないだろうか)。派手なムーブメントではないが、現代のセイコースポーツウォッチとしては十分な信頼性と精度を備えている。

 ムーブメントやSKXとの類似性はさておき、SRDP系セイコー 5で次に注目すべき点は、リリース時に用意された無数のバージョンである。今回取材にあたり、セイコーから10本の貸し出しを受けたが、発売時には約27種類のバージョンが用意されているようだ。SBSA005(海外版ではSRPD55)やSBSA003(海外版ではSRPD53)といったスタンダードなものから、オールブラックのSRPD65、ゴールドメッキのSRPD76、カラフルで質感の高いグリーンのSRPD77まで、さまざまなバリエーションが展開されている。

模様の入ったダイヤル、ダイヤルカラーとマッチしたケースの仕上げ、NATOストラップとマッチしたセイコー 5 SRPD77(左)とSRPD85(右)。

 オリジナルのSKX00x系のラインナップが数少ないことを考えると、かなりの量になることがご理解いただけただろうか。これは、セイコーのエントリーモデルの多くが持つMODカルチャーに対する、セイコーの直接的なメッセージだと考えられる。ひとつのベースデザインから、カラー、ストラップ、ブレスレット、個性など、さまざまなバリエーションが生まれる。もはやブラックダイヤルを購入後にインターネット上でパーツを取り寄せる必要はなく、店頭で好きなもの(理論的にはそれに近いもの)を選ぶことができるのだ。また、これらのモデルは北米市場で購入できることによる、無形の恩恵があることも忘れてはならない。多くの人が保証のないセイコーを買うために日本(あるいはその近隣国、僕のSKX007Kの兄弟姉妹たちに賛辞を送ろう)の2次流通市場のディーラーに頼ったが、今ではSRPD系のセイコー 5を地元のセイコー販売店で買うことができ、保証と真贋について疑う余地なく店を後にすることができる(時計趣味の初心者や、怪しいところからオンラインで購入するのが嫌な人にとっては大きな安心材料だ)。


オン・ザ・リスト

 ご想像のとおり、セイコー 5 SRPDラインはSKX007と同じような着用感だ。少し厚みはあるが、僕の7インチ(約17.8cm)の手首には薄くバランスよく収まる。ラグからラグまでの全長は、多少小さめの手首でも、とても心地よいものだろう。厚みと幅は何とかなるもので、リューズの配置により、数値から想像される以上の幅広さは感じられない。

 ストラップのオプションは特筆すべきもので、ブレスレットとラバーは、SKXに標準で付属していたものより大幅に改善されている。3連の“オイスター”スタイルブレスは工作精度が高く、丁寧に作られており、シリコンはソフトで柔軟性があり、メッシュは手首にやや幅広に感じるが(テーパーされていない)、やはり丁寧に作られており極めて快適だ。最後に、NATOストラップは予想以上に高い品質で、金具類ともマッチしており、ソフトで丈夫な仕上げになっている。市販の高級品ほどではないが、この価格帯のSRPD系にはよくマッチしている。取り付けに関しては、上出来だ(貫通ラグのおかげで気分を変えるのは容易だ)。

ソフトシリコンストラップを装着したセイコー 5 SRPD9。

 新しいダイヤルデザインは、十分なネガティブスペースがあり、アプライドマーカーによって存在感が増している。SBSA011(海外版ではSRPD61)のイリデッセントグリーン、SBSA025(海外版ではSRPD79)のフルステルスブラック、SRPD77とSRPD85のテクスチャーダイヤル(とケースのカラーリング)など、これまで出合ったSKXやセイコー 5よりも滑らかでリッチなブラックがさらに進化した仕上がりとなっている。

 ブランド表記や文字盤は抑制が効いているが、夜光は例外だ。新生セイコー 5は、ダイビングに特化した美的センスに欠けるかもしれないが、セイコーにふさわしい輝きを放っている。明るく、長持ちし、あなたのInstagramを#lumeshotで埋め尽くす準備は万端だ。

セイコー 5 SRPD65の夜光。

 最後に、僕が愛用しているSKX007は、このセイコー 5のフィット感や仕上げを測る基準にはならないが、僕は多くのセイコー製品を愛用している経験から、セイコー 5の顧客接点は改善されていると感じる。ベゼルはスムーズでポジティブ(少し曖昧だが、これはエントリークラスやミドルクラスのセイコーでは珍しいことではない)、リューズの操作感は、僕が触れてきた先代のセイコー 5やSKXよりもずっと堅牢に感じられる。


競合モデル

 希望小売価格は295ドル(SS製ブレスレットのシンプルなモデル)からで、NATOストラップの複雑なバージョンでは335ドル、さらに装飾を加えたSSモデル(ブラック/ブラックのSRPD65やタンカラーダイヤル/SSメッシュのSRPD67)では350ドルに上昇し、競合は熾烈を極めるだろう。まず、セイコー 5(その多くは150ドル以下で手に入れることができる)とSKX007(正真正銘のダイバーズウォッチを得るが、新型ムーブメント、派手なカラーリング、またはメーカー保証の一切)の両方の実勢価格を考慮する必要がある。

 上記で強調したように、セイコーの希望小売価格と実勢価格の差という現実もある。インターネットの時代にセイコーの時計に携わってきた多くの人は、セイコーが提示する価格と、さまざまなオンライン小売業者(2次流通市場を含む)が付ける価格とのあいだに、変動する差分があることを知っている。さらに難しいことに、この差分は需要(新作は希望小売価格と近い価格で販売される傾向がある)および問題の時計の入手困難度に応じて変動することがある。つまり、自分の国の代理店で買えなければ、希望小売価格はほとんど意味をなさないということだ。

 例えば、現在販売されているセイコーのダイバーズウォッチのなかで、僕が最も気に入っている手頃な価格のプロスペックス SRP777(日本国内の型式はSBDY015)を例にとると、発売以来、価格はかなり大きく変動している。当初は495ドルの希望小売価格と実勢価格に差異がなかったが、この時計(および“タートル”ダイバーのほかのバージョン)は300ドル以下の価格帯に落ち込んでいるのを目にしたし、投稿時点では370ドル(希望小売価格からまだかなり割引されている状態)前後で推移している。つまり、セイコーに定価をつけるのは難しく、最も近い競争相手を見つけるのは難しいということだ。しかし、250ドルから400ドル程度の価格帯を想定して、試してみることにしよう。

セイコー SKX007

 前置きが長くなったが、この比較は間違いなくギブアンドテイクのケースだ。もし本当にダイバーズウォッチが必要なら、SKK00x系ダイバーズは依然として素晴らしい選択肢となり得る。とはいえ、製造中止になってから価格は上昇し、新品でも中古でも品薄というわけではないが、現在では、ムーブメントが刷新されていることはもちろん、保証もあるSRPD系セイコー 5の新品とほぼ同じ値段になっている。SKX007やその他の類似したセイコーは、ISO認証を受けたセイコーのダイバーズウォッチで、42mm前後で300ドル以下であれば、素晴らしい選択肢となる。しかしダイバーズ仕様を得ることと引き換えに、新しいSRPDシリーズとほかの現行のセイコープロスペックスで得られるメリットを諦めなければならない。

(生産終了しているが、SS製ブレスレット仕様は290ドル前後で販売されている)

セイコー タートル(SRP777または類似品)

 もしダイビングを楽しみたいのであれば、あるいは単にセイコーのエントリーモデルでダイバーズウォッチを探しているのであれば、SRP系“タートル”ダイバーズは最適だ。確かにケースは直系44.3mmと少し大きめだが、皿型ケースの形状や比較的スクエアなサイズ(ラグからラグまでの全長は48mmしかない)を考えると、タートルは予想以上に装着感がいい。これはSS、ゴールドメッキ、そしていくつかのスペシャルエディションが用意された北米向けモデルだ。いずれも200m防水、セイコー4R36ムーブメントを搭載し、水中での使用も可能だ(バンクーバーでレビューのために何度かダイビングを敢行した)。

オリエント マコII

 エントリーレベルのダイバーズウォッチとして、多くのリストで紹介されているファン待望のモデルがこちらだ。マコには数種類のバージョンがあり、最もスタンダードなのはブラックダイヤルのマコIIである。41.5mmのSSケースと、無垢のエンドリンク、サファイアクリスタル、200m防水のSS製ブレスレットがマッチしたマコIIは、そのクラシックなデザインと戦略的な価格帯のおかげで、熱心な支持を集めている。セイコーの品揃えがスタイルに合わない場合、またはより厳しい予算で堅実な選択肢が必要な場合、マコ IIは間違いなく検討の価値があるだろう。

シチズン プロマスター ダイバー

 ダイビングに適した選択肢が欲しいけれど、ソーラークォーツムーブメントを搭載しているほうがいいという人向けには、このシチズン プロマスター ダイバー(Ref.BN0150-28E)がオススメだ。このプロマスターは、リューズを含めると44mmと大きめだが、エコドライブムーブメント、200m防水、4時位置の日付表示などを備えている。週末や休暇のための大きなカジュアルダイバーズとして、あるいはドレッシーな仕事用のコレクションとの釣り合いをとるために、このモデルは気軽につけたり、水中での冒険のためのチケットとなるかもしれない。

スカーファ ベル ダイバー1オート

 ミヨタ製9015自動巻きムーブメント、直系43mmのSSケース、500m防水を備えたスカーファ ベル ダイバー1オートは、実際の飽和潜水士(当人の話はこちら)が作ったプロ仕様のダイビングウォッチだ。実際に使用可能なヘリウムエスケープバルブ(HeV)を搭載したこのベル ダイバーは、セイコーやシチズンといった有名メーカー以外の製品にどれだけの価値があるかを示す例といえるだろう。もし、あなたが何度も同じ道を歩んできたのなら、ベルダイバー1オートのような価値重視かつ、より専門的なオプションに目を向けてみてはいかがだろうか。


結論として

 それでは、新生セイコー 5はどうなるのだろうか? 新作のSRPDラインは非常に競争力のあるスペースにうまく配置されていると僕は思う。たしかに新作モデルはセイコー 5の確立された仕様に準拠しており、防水性能と夜光ピップを備えていないため、ダイバーズウォッチとしては不十分なモデルである(とはいえ、国際標準規格では、100m防水をダイバーズウォッチの下限値としているが)。しかしセイコーはプロスペックスのラインナップのなかで、さらに多くのダイバーズウォッチを提供している。もしあなたがダイバーで、この時計をダイビングに使いたいのであれば、100m防水は十分な性能だと思うものの、ほかを探したほうがいいかもしれない。もしあなたがダイバーではなく、ハンサムでよくできたエントリーレベルのSS製スポーツウォッチをお探しなら、新しいセイコー 5は素晴らしい価値と、好みに合った数多くのバリエーションを提供するだろう。

左から右へ。セイコー 5のSRPD77、筆者の改造したSKX007、セイコー 5 SRPD87。いずれもNATOストラップを装着している。

 新生セイコー 5は、SKX007なき世界で俯瞰したときにこそ、真の意味が見出せる存在だ。セイコーの青い化粧箱を開けて、初めてセイコーダイバーズを手にしたときの感動を覚えている人の視点に立てば、新しいセイコー 5はスペック不足で、おそらく高すぎるように感じるだろう。しかし時計愛好家向けのモダンな製品として、SRPDラインに欠けているツールウォッチとしてのダイバーズの魅力は、プールや休暇中のシュノーケリングに対応できるものを求めるほとんどの購買層にとって重要性を持たないだろう。そんな方たちのために、SKX007だけでなく、値段もそれほど高くないセイコーのダイバーズウォッチの豊富な現行ラインナップがあるのだ。

 正真正銘のダイバーズウォッチではないが、新生セイコー 5は、SKX007のヘリテージを受け継ぎ、価値ある日常使いのスポーツウォッチとして、時計愛好家の泡沫に足を踏み入れて間もない人たちに最適だと思う。それに対し、僕は臆せず飛び込め! と言いたい。水のなかは素晴らしい世界だし、防水が200mもなくても十分楽しめるものだ。

 詳しくは、セイコーの公式Webサイトをご覧いただきたい。