trophy slideshow-left slideshow-right chevron-right chevron-light chevron-light play play-outline external-arrow pointer hodinkee-shop hodinkee-shop share-arrow share show-more-arrow watch101-hotspot instagram nav dropdown-arrow full-article-view read-more-arrow close close email facebook h image-centric-view newletter-icon pinterest search-light search thumbnail-view twitter view-image checkmark triangle-down chevron-right-circle chevron-right-circle-white lock shop live events conversation watch plus plus-circle camera comments download x heart comment default-watch-avatar overflow check-circle right-white right-black comment-bubble instagram speech-bubble shopping-bag

Business News スウォッチ、2022年にムーンスウォッチを100万本販売し、スイス時計の記録的な年を牽引

しかし、それは長続きするのだろうか?

 2022年のスイス時計の輸出額は237億スイスフラン(約259億ドル、約3兆3574億2915万円)で、前年比11.6%増となり、業界としては過去最高の数字となった。これは、スイス時計協会(FH)が先週発表した、スイス時計の輸出卸売額の年末の数字によるものだ。

ADVERTISEMENT

 この上昇は、主に輸出される時計の金額の増加によるものであり、数量ではない。2022年の輸出量は約1580万本で、2000年の半分である。しかし、2000年当時、スイスは主に安価なクォーツウォッチを輸出していた(輸出の92%がクォーツだった)。機械式時計の輸出は2000年から3倍近くに増え、2022年には輸出の40%近くが機械式時計、それも高額のものとなった。ここ数年続くパターンは、貴金属(およびツートン)時計の増加でもある(昨年のパテック 5811のホワイトゴールドや、豪華なゴールドスピードマスターのペアなどの最近のリリースは、まさにこの統計を真実だと感じさせる)。

swiss watch exports 2022

 最大の輸出市場であるアメリカは、前年比26%増でリードした。実際には、中国と香港がそれぞれ13.6%と10.5%減少した以外は、トップ10の輸出市場はそれぞれ増加した。もちろん、中国はつい最近、国境とパンデミック規制への取り組みを再開したばかりであり、これらの政策変更が時計の輸出にどのような影響を与えるか(あるいは与えないか)、見守る必要がある。

 しかし、成長は鈍化している。12月の輸出は前年比5.8%増で、年平均を下回った。これは二次市場でも同様で、デイトナなどのモデルの価格は2022年3月頃のピーク時から35〜40%も下落している。しかし、今後数年間は一次市場の成長が鈍化するとの予測がある一方で、二次市場については依然として強気な予測が続く。業界コンサルタントのLuxeConsultによると、2022年の二次市場は前年比20%増で、2033年には二次市場の価値が3倍になり、一次市場の規模を追い越すと予測している。ブランドはこの経済的事実に注目している。ロレックスは2022年11月に認定中古品プログラムを発表した最新のブランドとなった。

スウォッチ グループ、ムーンスウォッチ100万本の販売を達成
omega moonswatch swatch store

 スイス時計業界の動向を知ることができるのは、FHの年末の数字だけではない。1月24日、スウォッチ グループも年末の決算を発表した。そのなかで、スウォッチはムーンスウォッチの販売本数が100万本を突破したと発表した。全体的な業績としては、売上高が前年比4.6%増となったものの、目標に届かなかったことがやや印象的だ。しかし、これはロンジンとオメガが最も人気の高いブランドである中国の需要低迷に大きく引きずられたものであった。スウォッチによれば、中国がなければ売上高は25%増だったとのことで、中国と香港を除く全世界で輸出が増加しているスイス時計輸出の傾向を反映しているという。

 スウォッチ グループの成長率は4.6%で、スイス時計の輸出総額の11.6%の成長には及ばなかったことになる。しかし、グループ最大のブランドであるオメガは、特にアメリカで上昇傾向を示したようだ。12月にレポートしたように、これはムーンスウォッチがスピードマスターへの関心(そして販売)を高めたことも一因であろう。スウォッチ グループの決算報告書では、次のように表現されている。“ムーンスウォッチの宣伝の結果、オメガのスピードマスターコレクション全体、例えばムーンウォッチも、大きく関心を高めて利益を得た”。

 ムーンスウォッチはPRになるだけでなく、スウォッチ グループにとって財務的にも恩恵をもたらした。発売後、モルガン・スタンレーは、スウォッチが2022年に最大50万本を販売し、90%の粗利益率で1億2800万ドル(約166億825万円)の収益が見込まれ、その結果、スウォッチグループの収益が1億1500万ドル(約149億2515万円)増加すると推定していた。結局、同グループは、モルガン・スタンレーが考えていたよりも2倍の数のムーンスウォッチを販売したことになる。スウォッチ グループの年末の決算では、12億スイスフラン(約13億1000万ドル、約1700億6760万円)の営業利益が報告されている。つまり、100万本のムーンスウォッチが、グループの利益の20%を占めていたことになる。プラスチック製、失礼、バイオセラミック製の時計としては悪くない。

長続きするのか?
Swiss watch export trend 2022

2022年を通して前年比の伸びは鈍化しており、スイスの輸出の主要市場が減速する可能性を示している。

 しかし、これらのポジティブな兆候を見る限り、状況は1年前と大きく異なっているように感じられる。例えば、WatchChartsのマーケットインデックスによると、過去6カ月間に流通市場価格は平均29%下落し、特に以前から人気のあった時計の価格は最も大きく下落した。時計業界以外の経済情勢が総じてネガティブであることは言うまでもない(“アニマルスピリッツ”)。潜在的な明るい話題のひとつは依然として中国で、2年以上スイスの輸出における足かせとなっていた中国がようやく復活しつつある。

 時計業界では、二次市場の潜在的な伸びを背景に、慎重な楽観論が浸透しているようだ。一次市場が昨年のように11%で成長する可能性は低いと思われる。私が推測するに、12月の数字と同じように4〜5%ではないかと見ている。しかし、スイスの時計産業は数百年の歴史があるため、広義には“成長市場”とはいえない。

 とにかく、小売り価格が1万5000ドル(日本の税込定価は175万7800円)の現行デイトナが、5万ドル(約650万円)で転売されることは、決して長くは続かないのだ。だから、おそらく市場は1年前よりも健全な場所にある、あるいは少なくとも過熱したものではなくなっているのだろう。大局的に見れば、デイトナはまだ二次市場で希望小売価格の2倍以上で売られている。最高の時計というのは身につけられる時計であり、流通市場での価値は、そう、二の次であり続けるはずだ。